エレベーターのオートロック化と客室キーの連動でセキュリティと利便性を向上
株式会社リクリエ 様
西日本を中心に無人化・省人化ホテルを企画・運営、自社チェックインシステムを開発。2016 年の創立以降、全国 50以上の無人ホテル「GRAND BASE(グランドベース)」を展開。無人化・省人化ホテルを実現するために開発したチェックインシステム「Tabiq(タビック)」はフロント業務の大幅な効率化を可能にするとともに、コロナ禍における「非接触のおもてなし」を提供している。
リクリエ様では運営するホテルの客室300室以上でRemoteLOCKを採用いただいています。今回は2021年5月にオープンした「ホテル・ザ・博多テラス」にて、ホテルの無人運営のメリットから無人運営を実現するITツールについて、さらには、今回新たに採用したTOBIRAを用いたエレベーターのオートロック化についても詳しくお話を伺いました。
(掲載内容は取材日:2021年7月20日時点の情報です)
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- Q.「ホテル・ザ・博多テラス」について教えてください
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築10年の既存ホテルをリニューアルして2021年5月にリクリエが運営を開始しました。通常のビジネスホテルとは異なり、広々としたリビングエリアを備えた部屋もあるため、長期間の滞在にもおすすめです。最も広い客室だと53平米で、ご家族や友だち同士のグループでも快適に滞在いただけます。ホテル・ザ・博多テラスならではの特徴として、キャナルシティ、中洲の街が一望できる部屋からは、ネオンがキラキラと輝く夜景を楽しむこともできます。
リクリエでは2021年7月現在、全国 50以上の無人ホテル「GRAND BASE(グランドベース)」を展開していますが、ホテル・ザ・博多テラスも同様に常駐スタッフがいない無人での運営となっています。
- Q.50以上の無人IoTホテルを展開する中で「無人・省人」という運営形態にはどのような可能性があるとお考えですか?
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リクリエはもともと民泊運営代行としてスタートしたのですが、2018年からはグランドベースシリーズのオープンと、旅館業法改正に伴って無人IoTホテルの運営を開始しました。無人IoTホテルとは、フロントに人を置かずに、チェックインからチェックアウトまでをIoTツールを活用することで完結できるホテルです。
ホテルに常駐スタッフを置かないことで、スタッフはカスタマーサティスファクション業務(ゲストへの情報提供、問い合わせ対応、オンラインでの付加サービス提供など)を遠隔から集約して行い、これにより、人件費の大幅な削減を実現しています。実際に運営にかかる人件費を試算をしたところ、無人は有人より月100万円ほど削減できるケースもあり、収益の向上とともに安くていいホテルをお客様へ提供することにつなげています。
フロント業務で時間を要するのは主に記帳、鍵の準備、部屋のアサインです。ただ、これらの業務は必ずしも人が行う必要はないと考え、ルーティン業務を自動化させて、ホテルスタッフは人にしかできないおもてなしに注力しています。こうしたフロント業務の効率化を通じて、従業員の満足度向上にもつながっています。
- Q.無人という運営形態について宿泊者からはどんな反応がありますか?
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無人運営という点がネガティブな評価につながることはほとんどないと考えています。逆にコロナ禍では「非対面であることで飛沫感染のリスクがなく安心」というレビューをいただいたり、「フロントスタッフの目を気にすることなく自宅のようにくつろいで過ごせる」といった好意的な評価をいただくこともありました。
- Q.無人運営について法的な点やチェックインのオペレーションはどのようにクリアしているのですか?
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ホテル運営において宿泊台帳の取得や宿泊者の本人確認は必須ですが、必ずしも人が対面で行う必要はないケースもあります。IoTツールを活用して、ビデオ通話など対面に準じた方法での本人確認が許可される自治体もありますし、フロントで取得しなければならない宿泊者の情報も自治体によって異なります。リクリエでは保健所への確認のもと条例に合わせて無人、対面が必要な場合は省人で運営しています。
チェックインは自社開発のホテル向けのチェックインシステム「Tabiq (タビック) 」を活用しています。実際にホテル運営を手がけるリクリエだからこそ現場の声をそのままツールの開発に活かしています。ホテル向けのチェックインシステムは他社も出していますが、「Tabiq」の場合、自治体の条例に合わせて記帳情報の項目を簡単に設定できたり、管理画面も運営スタッフにとって直感的で使いやすい構成にしています。
客室の鍵は「RemoteLOCK(リモートロック)」と「Tabiq」のシステム連携により、予約ごとに自動で生成されるチェックイン期間のみ有効な暗証番号を、タブレット上に表示することで受け渡しています。
- Q.「TOBIRA」によるエレベーターのオートロック化にはどんな目的があったのでしょうか?
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スタッフ無人の場合、宿泊者以外が不正に館内に立ち入ってしまうリスクがあります。それを防ぐために、通常はエントランスの自動ドアをオートロック化して、宿泊者には事前に通知した暗証番号で自動ドアを解錠してもらうといった対策をしています。この自動ドア制御と暗証番号の発行には「TOBIRA(トビラ)」を活用しています。
一方、「ホテル・ザ・博多テラス」については、福岡の繁華街である中洲や、「キャナルシティ博多」といった商業施設も徒歩圏内という立地柄、ウォークインでの宿泊者も見込めると考えていました。ウォークインで利用してもらうとなると、まずは館内へ気軽に入れるようにする必要があったため、エントランスにセキュリティを設けることは適しませんでした。
そんな時に、構造計画研究所の営業担当の方から「TOBIRA」を使ってエレベーター制御をしている海外の複合施設の事例を聞いて、早速検討に入りました。幸い、「ホテル・ザ・博多テラス」はエントランスがある1階には客室がないため、エントランスにはセキュリティを設けずにエレベーター側にロックをかけることで、宿泊フロアのセキュリティ確保が可能でした。
- Q.エレベーターへのTOBIRAの導入はスムーズにすすみましたか?苦労した点などもあれば、あわせて教えてください。
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TOBIRAの導入は、構造計画研究所の営業担当の方から紹介してもらった専任のご担当の方が進めてくださったため、当社(リクリエ)の方で苦労した点は特にありませんでした。
今回は自動ドアではなくエレベーターへの導入ということで、TOBIRA導入の担当の方とエレベーター会社の方をお繋ぎして、直接やり取りをしてもらいました。エレベーターの設定変更で何度かエレベーター会社の方に現地に来てもらったのと、想定外だったのは、エレベーター側の設定の変更にあたりエレベーター会社に対して25万円ほど費用が発生したことでした。
- Q.300室以上でRemoteLOCKを利用いただいての効果や今後期待していることなどもあれば教えてください。
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スマートロックはRemoteLOCK以外にも活用したことがありましたが、比較すると、RemoteLOCKはゲートウェイなしでWi-Fiと直接接続できるので通信が安定していることと、管理画面のUIが見やすいことが良さだと感じています。ほかのスマートロックの場合、通信トラブルで暗証番号の発行ができずにゲストが入室できないなどのトラブルもありましたが、その点、RemoteLOCKは通信が安定しているので安心感があります。
また、暗証番号は自動発行なので管理画面を使うことは少ないですが、Wi-Fi通信状況や電池残量が一目でわかるので複数の施設・部屋を管理していても異常に気づきやすいです。
そのほかにもRemoteLOCKを利用してのメリットとして、
・ 暗証番号は個人単位で発行できるため清掃者やスタッフの鍵管理がしやすい
・ 入室履歴がとれるため無人でもお客様の動きがわかる
・ 解錠方法がシンプルなので「操作がわからない」といったトラブルは少ない
(万一入室できないなどのトラブルがあっても)
・ 管理画面の情報をもとに入室できる正しい暗証番号を伝えることが可能
・ 入室できないという状況に対して番号の押下履歴をもとに原因を把握できるといった点を感じています。
今後、期待している点としては、客室内の照明や電化製品と鍵の連動ができれば、省エネによる環境への配慮やコスト削減にも繋がるのではないかと考えています。この点は、RemoteLOCKだけでなく、Tabiqでも何か仕掛けができないか検討していければと考えています。