物理鍵から暗証番号型スマートロックへの変更で客室と温泉の行き来が手軽で便利に
有限会社地獄温泉清風荘 様
地獄温泉 青風荘.
熊本県南阿蘇、鳥帽子岳に湧く地獄温泉は古くから湯治場として栄え、200年以上にわたり人々に愛され続けている。2016年4月熊本地震とその2カ月後に襲った土石流の被害を受け、宿泊棟を含め壊滅的な被害を受けるも、徐々に復興への歩みを進め、2019年4月には地獄温泉 「青風荘.」のシンボルである『すずめの湯』の営業を再開。宿泊棟も2020年9月を皮切りに順次オープンしている。これから続く新たな200年への思いを込めて、屋号は「清風荘」から「青風荘.」へ変更している。
有限会社地獄温泉清風荘様では2019年9月の宿泊棟再オープン以降、離れ3室、曲水舎3室、本館10室の計16室でRemoteLOCK 5iを採用いただいています。今回は有限会社地獄温泉清風荘の副社長 河津謙二様に、「青風荘.」の復活へのあゆみから、再開にあたって新たに採用したRemoteLOCKの導入背景や、温泉旅館ならではのスマートロック活用のメリットなども詳しくお話を伺いました。
(掲載内容は取材日:2021年7月19日時点の情報です)
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- Q.地獄温泉 「青風荘.」について教えてください。
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史料によると地獄温泉は文化元年(1803年)に発見されたとあり、文化5年(1808年)には入湯の掟が定められています。その頃は熊本細川藩が所有していましたが、明治以降、一般にも開放されました。江戸時代には藩士のみに入浴が許され、以降も、傷ついた身体を癒す『湯治宿』としてご愛顧いただいています。
そんな中、2016年4月の熊本地震とその2カ月後に発生した土石流によって、敷地の7割ほどが土石流の被害を受け、建物については約8割が土砂に埋まるような状態でした。これにより、営業休止を余儀なくなれましたが、3年にわたる復旧工事を経て、2019年4月に地獄温泉 「青風荘.」のシンボルでもある「すずめの湯」の営業を再開しました。以降、その他の浴場、レストラン、フロント棟と順次オープンしていき、2020年9月には宿泊棟も再開となりました。
建物は一からの建て直し、または一部はリフォームを施していますが、これまで通り、湯治宿としてお湯を中心とした癒しを提供するというコンセプトは変わりません。見ず知らずの人同士がお湯につかりながら自然と会話が生まれるような空間、雰囲気を守りながら、ますます愛される地獄温泉を目指したく考えています。
画像出典:地獄温泉 青風荘.WEBサイトより
- Q.熊本地震と土砂災害の甚大な被害から約3年にわたる営業再開に向けたあゆみにはどんな思いがあったのでしょうか?
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土砂災害で壊滅的な被害を受けた当時、このまま廃業するという選択肢もなかったわけではありません。ただ、建物が被害を受けた中、「すずめの湯」は奇跡的に被害を逃れ、お湯も湧き続けていたことが力を与えてくれました。類を見ない貴重な温泉を自分たちの代で決して終わらせてはいけないという強い思いのもと地獄温泉の再開を目指しました。
土石流の甚大な被害により道路の復旧にもかなりの時間がかかったため、幸いにも地獄温泉をどのような形で再開するか、その検討の時間は豊富にありました。多くの方との意見交換を通じてたどりついたのは、あくまでも「湯治」という軸はしっかりと残しつつ、その文化を継承していくために若い世代や、湯治を経験したことがない人にも興味を持ってもらえるような新たなスタイルを取り入れることでした。
例えば、すずめの湯は基本的なところは以前と変わりませんが、大きく変わった点としては男女別の内湯以外の休憩室及び露天部分は着衣(湯浴み着又は水着)でのご利用が必須になりました。これにより、ご家族連れや若い世代の方でも、以前より抵抗感なくゆったりとご入浴いただけるようになりました。また、宿泊棟も「離れ」は、部屋のつくりやインテリアに北欧の要素を取り入れ、本館の宿泊棟とはひと味違った魅力を備えたとともに、雄大な自然との調和を図っています。
画像出典:地獄温泉 青風荘.WEBサイトより
- Q.2020年の宿泊棟のオープンに際して、RemoteLOCKを導入いただいた背景を教えてください
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今回の復旧にあたっては、利用者、宿泊者の方にゆったりと快適に過ごしてもらえる空間づくりを重視しました。すずめの湯の着衣利用への変更や、離れやライブラリースペースのゆとりある空間設計も、くつろぎを意識しての取り組みなのですが、同様に客室の鍵についても、施設利用者にとっての利便性と快適性の向上を目的に選定を行いました。
実は最初のきっかけとしては、東京へ出張した際に宿泊したホテルの客室キーが暗証番号方式であり、>物理的な鍵がないことの快適さに感動したことがはじまりでした。その後、熊本へ戻り、暗証番号式の電子錠をインターネット上で調べる中で、RemoteLOCKのWEBサイトを見つけ、キーレス化を実現できてかつ、オンライン上で簡単に鍵管理ができる点も使い勝手が良さそうだと思い、お問い合わせさせてもらいました。
- Q.老舗温泉旅館で最新のIoTデバイスの活用というとギャップがありそうですが、抵抗感はなかったですか?
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Wi-Fiに接続してオンライン上で鍵管理するというスマートロックの導入に対して、スタッフ内から反対や心配の声は特にあがりませんでした。もちろん、停電やWi-Fiが切れた時にどうなるのかという基本的な心配はありましたが、その点、RemoteLOCK 5iは物理鍵も付属しているので、万一のときは物理鍵で対応できるという安心感がありました。
ドアへの取り付けにあたっては、構造計画研究所の営業担当の方からRemoteLOCKの施工パートナーへの依頼を推奨されましたが、建物の工事が入っていたので建具屋さんに設置してもらいました。ただ、実際に設置後に見てみると、部屋側のサムターンが回らずによくよく確認すると設置の仕方が間違っていたようで、再度設置しなおしてもらいました。
- Q.現在の運用状況と今後の活用で検討していることがあれば教えてください。
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ゲスト用の暗証番号は、スタッフがオンライン上で管理画面を使って発行しています。暗証番号の採番はボタンでランダム生成し、チェックインの30分前からチェックアウトまでの宿泊期間のみ利用できるように有効期限を設定しています。
暗証番号のお渡しはチェックイン時に、暗証番号を記載した紙をお渡ししています。あまりないのですが開け方に戸惑われる場合は、お部屋へのご案内時にドア前でも操作方法を詳しくご説明しています。
以前は暗証番号の作成を私自身がやっていたのですが、たまたま出張している時に、現地のスタッフから暗証番号を発行方法を緊急で教えて欲しいとの連絡が入ったことがありました。電話で教えることもできたのですが、RemoteLOCKの管理用アプリを使ってスマホから番号発行ができることを思いだし、その場で遠隔から発行したこともありました。その時はクラウド管理の手軽さ、便利さを改めて感じましたね。
宿泊者の方から鍵について直接的な反応を聞くことはまだないですが、快適性は高まっていると思います。温泉旅館だと特に、物理的な鍵があることでお風呂に行く際の荷物が増えて煩わしかったり、例えばご夫婦での滞在の場合、鍵のためにお風呂から上がるタイミングを合わせたり、待ち合わせをする必要が出てきます。そのほかにも、館内を移動したり、施設利用時に鍵をなくしてしまうリスクもあるため、以前は物理キーに大きめのキーホルダーをつけることで紛失対策をしていました。こうした鍵の持ち歩きの手間や紛失トラブルはキーレス化により解消しています。
今現在、スタッフは付属の物理鍵で開け閉めを行っていますが、今後はスタッフごとに暗証番号を作成して、かつ、それらの暗証番号には入室できる時間帯を限定するスケジュール機能を設定して運用すると良さそうだなと考えています。また、ゲスト用の暗証番号の発行も今時点ではスタッフが手動で行っていますが、将来的には今使っている宿泊業支援システムと鍵の連動により自動発行をして運用の効率化を図っていければと考えています。