地域活性化にも貢献する「分散型ホテル」(アルベルゴ・デフューゾ)とは?
宿泊業界のトレンドワードの一つに「分散型ホテル」があります。空き家問題や地域再生にも貢献するというこのホテル形態は、非日常感を手軽に味わえることからも人気を集めています。分散型ホテルとはどういうものか、最新の事例とともにメリット・デメリットについても解説します。
全国に広まる分散型ホテル
分散型ホテルとは、一定地域や集落に点在する空き家をネットワーク化し、ひとつの宿泊施設として再生したホテル・宿泊施設のことを意味します。古民家や空き家、空き店舗などをリノベーションするケースが多く、主に「一棟貸し宿泊施設」として利用されています。
この分散型ホテルの起源はイタリアで、2006年に分散型ホテルの普及を目的としたアルベルゴ・ディフーゾ(分散したホテルの意味)協会」が設立されました。
イタリアでも、少子高齢化による空き家問題が深刻化しており、その空き家を宿泊施設として利用することで、「地域再生」と「新しい旅のスタイル」というニーズが合致したことにより誕生したスタイルといえます。
本記事では、そんな分散型ホテルの最新事例とともに、全国で増えている背景やメリット・デメリットについても解説していきます。
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分散型ホテルの最新事例
日本でも分散型ホテルは増加しており、日本まちやど協会というサイトでは、全国の分散型ホテルを検索することができます。
この章では、個性的な最新の分散型ホテルを3つご紹介しましょう。
商店街の空き店舗が散型宿泊施設に 「SEKAI HOTEL」
「旅先の日常に飛び込もう」がコンセプトのSEKAI HOTELは、大阪の下町情緒が残る商店街まるごとがホテルです。レトロな商店街に分散している客室は、空き店舗をリノベーションした一棟貸しスタイルで、計7室あります。
もともと大阪の繁華街にもアクセスの良い地域ですが、朝食は商店街内の純喫茶での提供や、お風呂は銭湯を利用、空いた時間はお店で食べ歩きなど、商店街の中だけでも大阪を満喫することができます。
地元の人とのふれあいで、まるでその土地に住んでいるかのような非日常感を味わえることでも人気を集めています。
SEKAI HOTELに関する口コミ
普通のビジネスホテルかと思って宿泊しましたが、地域のコミニティーの一角として商店街に溶け込んでいる雰囲気がある一風変わったホテルでした。
シャワールームには浴槽が無いため近くの銭湯を紹介されましたが、またその銭湯も味のある銭湯でそれもまた良しでした。ビジネスには不向きですがレジャーには記憶に残るホテルになると思います。
2-2.文化財や城にも宿泊可能 「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」
NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町は、江戸時代の城下町の風情が残る「伊予の小京都」大洲に誕生した、日本最大級の分散型ホテルです。大須城を中心として点在している客室は、10年以上空き家だった古民家や、豪商の別邸であった歴史的な邸宅をリノベーションして活用。
日本初の「城泊」として注目を集めた大須城や、国登録有形文化財に指定されたなど、歴史的建造物や風情のある街並みをゆっくりと体験することができます。
宿泊者限定のおもてなしが受けられる「THE OZU PASSPORT」など、街全体が自然と歴史のテーマパークのような、大人の城下町遊びが楽しめます。
NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町に関する口コミ
大洲城を前に素敵なロケーションです。リノベーションした古民家を一棟借り。夜も静かで快適な時間を過ごせました。
宿泊前には食事メニュー(アレルギー等)を確認いただくなど、スタッフ皆さんの気遣いに感謝です。美味しい食事と地酒、檜風呂でリラックス。
チェックアウトが12時なので、大洲のまち歩きをした後も部屋で寛ぐこともできます。夫婦二人、ゆっくり、贅沢な時間を過すことができました。
港町ならではの風情を楽しむ 「三浦半島の旅宿 三崎宿」
歴史ある建物に宿泊できる三浦半島の旅宿三崎宿は、江戸時代から漁業で栄えた街並みを生かした分散型ホテルで、「蔵宿」「旅宿」「酒宿」の3タイプから客室を選ぶことができます。
フロント・コンシェルジュとして使用されるのは築後百数十年の酒屋で、宿には江戸時代から続く築後二百数十年を鮪問屋をモダンにリノベーションした蔵造や、ノスタルジックな空間を楽しめる古民家の宿などでも宿泊することが可能。
時間がゆっくり流れる、タイムスリップしたかのような非日常感を楽しむことができます。
三崎宿に関する口コミ
時節柄、家族で貸切可能な宿を探していました。
外見は歴史を感じる佇まい、中は伝統的な部分を活かしつつ美しくリノベーションされていて、本当に快適でした。
4人で泊まるのがもったいない広さで、3世代旅行にも良さそう。
以上、人気の分散型ホテルを3つご紹介しました。
なぜ今、このような分散型ホテルが、全国的に広まっているのでしょうか。次の章では、その背景を解説していきます。
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分散型ホテルが増えている背景とは
今、分散型ホテルが増えている背景には、大きく分けて「地域再生」と「新しい旅のスタイル」という2つのニーズがあるからです。それぞれについて説明しましょう。
分散型ホテルは地域再生に貢献する
分散型ホテルは地域の活性化や再生に貢献します。たとえば、上の章でご紹介したSEKAI HOTEL のように、商店街の空き店舗を利用するという発想は、全国の空き家問題や有休不動産の解決策としても有効だからです。
商店街に、シャッターが閉められた(閉店した)店舗が一つあるだけでも、寂しいイメージは拭えません。ましてやそんな店舗が多いほど、地域全体が活気のない印象を与えてしまいます。
しかし、空き店舗をホテルとして活用することでシャッター店舗をなくすだけではなく、商店街の常連客以外の人を呼び込むことができます。ホテルの利用客が商店街で買い物をしたり、喫茶店や銭湯を利用したりすることで商店街自体が活性化し、人と経済の新しい流れを作り出すことも可能になるのです。
また、NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町 のように、少子化や税金の関係で存続が難しくなっていた歴史的、文化的建造物をホテルとして利用することで、新たな価値を生み出し、保存継承が容易になります。このように、分散型ホテルは地域の活性化や歴史的価値の再生に貢献できるのです。
分散型ホテルはトレンドスポットになる
分散型ホテルは空き家利用で地域活性化ができるだけではなく、最近の旅行のトレンドでもある「非日常感」を体験できるスポットとしても注目を集めています。
コロナ禍の外出規制などによって、気軽に旅行や観光ができなくなったことや、リモートワークの増加などにより、閉塞感でストレスがたまっている人が多くなっています。
その中で、遠くの観光スポットにいくのではなく、身近で「非日常感」を体験したいという需要が高くなっており、分散型ホテルはその要望にピッタリと当てはまります。
空き店舗や酒蔵をリノベーションしたホテルなどは今までにない新しい体験になりますし、歴史的文化財などの宿泊は、他に類のない特別な経験となるでしょう。さらに、建物の性質上、一棟貸し型ホテルとなるため、感染症対策としても安心感があります。
分散型ホテルのメリット・デメリット
上記でも簡単に分散型ホテルのメリットをお伝えしましたが、改めてホテル事業者と実際のゲストにとってのメリット・デメリットをまとめてみましょう。
分散型ホテルのメリット
分散型ホテルの最大のメリットは、点在する空き家が一つのホテルになることです。
たとえば、一件の空き家が「民泊」や「宿泊施設」として利用されていても、さほど目立つことができませんし、発信力や広告も限られてしまいます。
しかし、他の空き家とネットワークを形成し一つのホテルとすることで、注目度が増します。多くの人が関わってくるので、地域全体で盛り上がったり、発信力が増し口コミも広がりやすくなったりします。
その他に次のようなメリットがあります。
- 分散型ホテル・事業者側のメリット
- 地域や地元経済の活性化が期待できる
- 歴史的建築物の保存継承を促す
- ゲストへ特別な価値の提供ができる
- 価値のある空き家を利活用することができる
- 遊休不動産を収益化できる
- 分散型ホテル・ゲスト側のメリット
- 特別な空間で、非日常感を味わうことができる
- 地元の人との関わりが多く、その地域で暮らしているような気分を味わえる
- 一棟貸しが多く、気を使わずゆっくりと過ごすことができる
- 一棟貸しが多いので、家族やグループで利用できる
- 一棟貸しの場合、感染症対策になる
このように分散型ホテルにはメリットがたくさんありますが、当然デメリットもあります。
分散型ホテルのデメリット
分散型ホテルのデメリットとして、各施設の連携や地域の協力がないと成立しないという点があげられるでしょう。特に、フロント機能をもつ建物や、食事、銭湯などの施設がバラバラに点在している場合、ゲストはその度に移動することになります。ゲストが迷ったり、困ったりした場合でも、地域住民の方が暖かく接することで、ゲストは最高の体験ができます。
反面、地域の方の理解や協力をえられない場合は、苦情・トラブルが発生するなど、ゲストにも迷惑がかかる可能性もあります。
- 分散型ホテル・事業者側のデメリット
- 空き家、施設同士の連携やネットワーク構築が必要
- 計画から営業・運営までに時間がかかる場合もある
- 自治体や地域の理解、協力が必要
- 分散型ホテル・ゲスト側のデメリット
- コンセプトを理解していないゲストにとっては価値を感じない場合もある
- 移動が多く、天気の悪い日などは不便さを感じることがある
- フロントや食事をとる場所が違うなど、面倒と感じることもある
- 古い建物特有の不便さなど小さなお子様やお年寄りには向かないこともある
このようにデメリットもあるものの、空き家問題や有休不動産に悩む地域にとってはメリットの方が大きいといえるでしょう。分散型ホテルは単一の企業や事業主が運営するのとは異なり、地元住民や自治体の協力、そして建物の所有者同士の連結が成功の鍵となります。
さらに、コンセプトを明確にし、各施設に統一感をだすことも必要です。もちろん部屋ごとに内装やテーマが違うのはゲストにとっても楽しいのですが、内装や設備の「質」など、あまりにも落差が激しい場合は不満を感じるようになるからです。
とはいえ、街ぐるみで暖かくもてなすことで、ゲストは地域の一員になったかのような気分を味わうことができます。そして、「またここに帰ってきたい!」と思ってもらえるのが分散型ホテルの魅力でしょう。
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【まとめ】地域活性化にも貢献する「分散型ホテル」とは?
分散型ホテルは、一定地域や集落に点在する空き家をネットワーク化し、ひとつの宿泊施設として再生したホテル・宿泊施設のことをさします。
空き家や空き店舗、使われなくなった古民家などを利用するため、全国の空き家問題や地域活性化に貢献する上、新しい旅の形としても注目を集めています。このような形のホテルは全国に広まりつつあり、国や地域自治体などの協力も得られる可能性があります。
観光客やインバウンド需要が戻るアフターコロナに向けて、新たな取り組みの参考にしていただけましたら幸いです。