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公開日2023.05.03

最終更新日2023.07.19

インバウンド需要復活の鍵?最近のアパートメントホテル事情

2022年10月に政府が水際対策を緩和して以来、落ち込んでいた訪日外国人数は、2023年に入って順調に回復しています。そのような中、インバウンド需要復活の鍵として「アパートメントホテル」が注目されています。アパートメントホテルが注目される理由と背景について解説します。

インバウンド需要復活の鍵はアパートメントホテル

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2022年10月に政府が水際対策を緩和して以来、落ち込んでいた訪日外国人数は、2023年に入って順調に回復しています。インバウンド需要復活の鍵として「アパートメントホテル」が注目されています。その人気の理由と背景について解説しています。

2023年はインバウンド再生元年

新型コロナウィルスで、一気に落ち込んだインバウンド消費は、2022年10月に水際対策が緩和され、明けて2023年は「インバウンド再生元年」と言われています。

2023年1月の訪日外国人は約150万人となり、3月には180万人を突破。コロナ直前の2019年3月の267万人と比較すると半数を超えており、現在、中国からの受入れがほとんど始まっていないことを考えると、かなりの勢いで回復しているのが分かります。

▼2023年3月までの訪日外国人数(人)

日本政府も本格的なインバウンド再開に向けて、様々な取り組みを行っています。たとえば、2025年までに、インバウンド消費5兆円、1人当たりの消費額を20万を目標とするなど、具体的な数値を設定しています。

▼2025年に向けた訪日観光の目標

目標を達成するための観光庁による取り組みは、次のようなものがあります。

観光庁による取り組みの1例

  • SNS、メディアを活用した発信
  • 空港会社、旅行会社との共同プロモーション
  • 国際会議の誘致
  • 持続可能な観光の実施
  • 高付加価値旅行市場への取り組み

このような取組みは、水際対策緩和前から水面下で行われており、今後も継続することでさらなる成果が出るとみられています。

インバウンド需要は「安さ」から「質」へ

インバウンドが回復する中、需要は「安さ」から「質」へ変化を見せています。例えば、三井住友カード株式会社のキャッシュレスデータによると、訪日外国人受入れ再開以降、キャッシュレス決済の消費が急増しています。

金額だけを見ると、コロナ以前の水準まで急回復しており、来日数自体はコロナ以前の半分程度なので、1人あたりの消費が大きくなっているのが分かります(参考:三井住友カード・日本総研「インバウンド需要の回復状況~ クレジットカード決済データが示す構造変化 ~」)。

このように、消費が増加している要因として、次のことが考えられます。

消費が増加している要因

・円安を背景に、高級品を買い求める人が多い

 →コロナ以前よりも1〜2割程度円安
・コロナ貯金(どこへも行けず溜まった資金)が潤沢
・3年ぶりの海外旅行で、日本での滞在を贅沢に楽しみたい

・富裕層旅行者の増加

円高の影響もありますが、以前の「爆買い」のように、単に「物」を消費するだけではなく、上質で贅沢な日本観光を楽しみたいという傾向が強くなっているといえます。

それを後押しするかのように、注目を集めているのが観光庁による「高付加価値旅行市場」への取り組みです(高額付加価値旅行とは「旅行1回あたりの総消費額が1人100万円以上の旅行者」)。

コロナ以前は、訪日旅行者は増えていたものの、高付加価値旅行を望む人を受け入れる受け皿(施設)、アクティビティが圧倒的に少ない状態でした。そのため、観光庁でも「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり委員会」を設置するなど、高付加価値な宿泊施設の整備や観光資源の発掘、磨き上げ、ガイドなど人材育成の取り組み等の施策を行うとしています。

インバウンドがアパートメントホテルを選ぶわけ

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インバウンド再開後、利用する宿泊施設の特徴として、アパートメントホテルを選ぶ人が増えていることがあげられます。上質な旅行を、中長期間、自由気ままに楽しみたいというニーズと合致しているからです。

通常のホテルとは何が違うのでしょうか。解説していきます。

インバウンド需要が増しているアパートメントホテルとは

アパートメントホテルは、「ただ食費を浮かせるために自炊をする」場合とは異なり、ホテルと同等のサービスを受けながら、普段のような生活を楽しむことができます。客室にキッチンやランドリー(共同の場合あり)が備わっており、賃貸住宅のような感覚で、中長期間、家族単位でゆっくりと過ごすことができます。

そのため、ホテルを拠点として、日本全国を時間をかけて楽しみたいグループや家族連れのインバウンドに人気が高まっているのです。「インバウンド需要復活の鍵」と言われているのもこのためです。

人気のアパートメントホテル事例:UNPLAN 神楽坂

UNPLAN神楽坂は、客室をドミトリールーム、セミプライベートスペース、プライベートファミリールーム、プライベートダブルルームの4タイプから選択できます。また、コモンルームは、ソファ、テーブル、TV、キッチンを備えており、IHコンロ、電子レンジ、トースター、ケトル、冷蔵庫、冷凍庫に加えて調理器具、カトラリーなどが自由に利用できます。

なお、UNPLANは神楽坂のほかに新宿、福岡にも存在しますが、このUNPLAN 神楽坂は施設の1階で個室サウナ店「ソロサウナtuneも営業しています。個室サウナ店としてはかなり早い段階から営業を開始していて、昨今の個室サウナブームの先駆け的な存在です。サウナだけの利用もできますので、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

人気のアパートメントホテル事例:FAVホテル

FAVホテルは、都会から自然豊かな地域まで展開しており、「発見と体験があふれる自由な旅」を満喫することができます。外国人旅行者が、友達同士や家族と一緒に普段の生活をしながら、旅行を楽しめることで人気のホテルです。

部屋には、電気ケトル、金庫、ハンディ掃除機、ローテーブル、冷蔵冷凍庫、電子レンジなどが備わっています。FAVホテルの客室の扉にはRemoteLOCK(リモートロック)を導入いただき、チェックインから入室までが非対面で行える点も魅力です。

アパートメントホテルの利用メリット・デメリット

他のホテルと比較した、アパートメントホテルのメリットは次の通りです。

アパートメントホテルのメリット

  • ホテルのような設備、家具が揃っている
  • 清掃、リネン交換サービスがある
  • ホテルスタッフが常駐している
  • ホテルの施設を利用することができる
  • 自分たちで自由に炊事、洗濯ができる
  • 同等のホテルより安い

「自由気ままに、上質な旅を楽しみたい」という、外国人旅行者のニーズが、アパートメントホテル需要を引き上げているのです。

アパートメントホテルのデメリット

  • 食事を自分で用意する必要がある
  • 契約手続きが必要な場合がある
  • 最低利用期間が決められている場合がある

また、このようなデメリットもありますが、これらを分かった上で利用する人がほとんどなので、トラブルなどは少ないといえます。

アパートメントホテルだけじゃない!インバウンドに人気の宿泊施設

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アパートメントホテルだけではなく、インバウンドに人気の宿泊施設は他にもあります。アパートメントホテルと同様、需要が高まっている長期滞在型高級ホテルや、反対に、気軽に泊まれる簡素な長期滞在向け施設の人気も継続中です。

それぞれ解説していきましょう。

長期滞在型高級ホテル

長期滞在型の高級ホテルがインバウンドに人気です。
たとえば、2022年12月1日に開業した「東急ステイ メルキュール 大阪なんば」は、「中長期滞在と洗練されたデザインの融合」をコンセプトとし、既に宿泊の8割が海外からの旅行者です。全288室のうち、74室はキッチンや電子レンジ、洗濯乾燥機を備えており、長期滞在向けとなっているのも人気の理由です。

また、大手住宅メーカーである積水ハウス株式会社も、訪日外国人に向けた長期滞在型ホテル開発に参入するなど、短期滞在型ホテルが主流だった日本のホテル業界も、長期滞在型ホテルがトレンドとなりつつあります。

簡素な宿泊施設も人気継続

ドミトリーやユースホステルのような、簡素な宿泊施設も人気継続中です。宿泊はとにかく安く済ませて、他に色々楽しみたいという需要も根強く、民泊なども利用も順調に増えています。

長期滞在向けには、一般のマンションや戸建てなどを宿泊施設にしたタイプなどが、気軽に家族で楽しみたい外国旅行者から支持されています。

コロナ後のインバウンド向けアパートメントホテル・成功のポイント

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これまで解説したように、コロナ後のインバウンド向け宿泊施設は、アパートメントホテルのような、高付加価値のある長期滞在型の需要がますます増加するでしょう。しかし、ただ上質なホテルを建てるだけでは、成功するとは限りません。

アパートメントホテル成功のポイントは次の3つです。それぞれ説明します。

アパートメントホテル成功のポイント

  1. 明確なターゲット付けと付加価値
  2. インフラ整備と地域の連携
  3. 1つ上のおもてなしとITシステムの導入

明確なターゲット付けと付加価値

これからのホテルには、明確なターゲット付けと付加価値が重要です。コロナ後のインバウンドの特徴は、目的を持って旅行先をえらぶ傾向があるからです。
キーワードは「文化や起源、遺跡、本物志向」です。

例えば、コロナ前でも熊野古道は「富裕層」に人気のスポットとして有名でした。美しい自然だけではなく、その歴史や神秘性に多くの外国人旅行者が惹かれ、10万円以上する古道歩きツアーも好評でした。土地の文化や歴史が感じられる、ストーリー性のある宿泊体験が旅行者を魅了します。

しかし、旅行者を魅了する価値は、自然や歴史だけではありません。アート、ファッション、スポーツ、そこでしかできない体験など、様々なテーマが考えられます。

そのためには、

・どの様なターゲットに
・どの様な価値を提供できるのか

を明確にし、それをわかりやすく発信することが必要となります。

インフラ整備と地域との連携

大都市以外のアパートメントホテルには、インフラ整備と地域との連携が欠かせません。たとえば、周辺にネット環境がない、駅や交通手段がない、さらに外国語表記がないなどは「整備不足」で、外国人旅行者が行きたくても行けない状況になります。

また、日本各地には、訪日外国人にとって魅力のある素晴らしい自然や伝統文化があります。しかし、いくらホテルや地域が魅力的でも、これらを海外向けに発信したり、海外の旅行会社に紹介したりしなければ、利用に繋がらないのです。

そのためには、地域や地元自治体と連携し、地元全体で受け入れ体制を整える必要があります。

ワンランク上のおもてなしとITシステムの導入

これからのインバウンドの受入れには、1つ上のおもてなしとITシステムの導入は必須です。日本のおもてなしは世界的に有名ですが、「日本語の壁」は多くの外国人にとって、日本旅行を困難なものにしています。

そのために、ITシステムを導入・活用することは、ホテル運営者側にとっても負担の少ない施策です。外国人ゲストが施設をスムーズに利用できることが、これからの「おもてなし」のスタンダードになっているのです。

たとえば、スタッフに英語などの教育を徹底するよりも、多言語対応のチェックインシステムを導入すると、多くの国に対応できます。スタッフは、フロント業務から開放されるので、サービスだけに専念し、時間をかけたおもてなしをすることができます。

また、各種キャッシュレス決済に対応するシステムなどは、日本のお金に慣れていない外国人ゲストに好評です。スタッフも現金の管理から開放されるので、ゲストとゆっくりコミュニケーションを取ることが可能になります。
ITシステムをうまく活用することで、外国人ゲストの需要に柔軟に対応することができます。

【まとめ】アパートメントホテルはインバウンド需要復活の鍵となる

コロナ後のインバウンドの傾向として、「上質な日本旅行を楽しみたい」というニーズが高いことがあげられます。また、「長期間ホテルを拠点として、日本各地を訪れたい」、「グループや家族連れで気楽に楽しみたい」という要望も高く、日本に多い「ビジネスホテル」タイプでは、受け皿になりにくくなっています。

インバウンドの様々な欲求に応えられるのが、アパートメントホテルです。グループ単位での長期滞在が可能で、自分に合った生活スタイルが自由に選択できることが人気の理由でしょう。コロナ後のアパートメントホテルについて、理解が深まりましたら幸いです。

 

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