公開日2025.06.16
インバウンド需要の受け皿となるアパートメントホテル
訪日観光客の滞在日数が長期化する中で、「アパートメントホテル」が、インバウンド需要の受け皿となっているのをご存知でしょうか。ここ数年で、インバウンドは驚異的な増加を見せ、2024年には過去最高の3,687万人が訪日し、2025年には4,020万人に達する見込みです。アパートメントホテルの人気の理由と成功ポイントについて解説していきます。
インバウンドに人気の「アパートメントホテル」とは
近年、「アパートメントホテル」が訪日外国人観光客(インバウンド)から大変注目されています。その背景には、訪日観光客の平均滞在日数が長くなる傾向があり、従来のホテルでは、長期滞在における多様なニーズに対応しきれない、という現状があるからです。
アパートメントホテルとは
キッチン、洗濯機、乾燥機などの設備が備わっており、一般住宅のように生活できる宿泊施設です。
自炊が可能で、ファミリーやグループ単位の滞在に人気があります。
1週間〜月単位での滞在を想定しており、ホテルと賃貸住宅の中間的な存在です。
観光庁による「2024年10月〜12月 訪日外国人の消費動向インバウンド消費動向調査結果及び分析 月期報告書」によると、回答者全体の平均宿泊数は8.7泊でした。また、同行者は「家族・親族」が26.2%で最も多く、子供や高齢者を伴って観光する旅行者も増加しています。
家族での長期間の滞在を、コストを抑え、快適に過ごすには、アパートメントホテルは最適な選択肢といえるでしょう。
また、一般的なホテルほどのサービスを必要としないアパートメントホテルは、人手不足や業務効率化など「ホテル業界全体の課題」を解決する経営モデルとしても注目を集めています。
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インバウンドがアパートメントホテルを選ぶ3つの理由
次に、インバウンドがアパートメントホテルを選ぶ理由を、さらに掘り下げてみていきましょう。
1章でも軽くお伝えしましたが、大きく3つの理由に分けることが出来ます。
インバウンドがアパートメントホテルを選ぶ3つの理由
- 日本に長期滞在するインバウンドが増えているから
- 自由度が高く自分のペースで滞在できるから
- コストパフォーマンスが良いから
それぞれ詳しく解説していきます。
日本に長期滞在するインバウンドが増えているから
アパートメントホテルが選ばれる一番大きな理由は、日本に長期滞在するインバウンドが増えているからです。長期滞在の場合、都市部のアパートメントホテルに拠点を定めれば、日本中を身軽に観光することができます。
日本での観光は、主に電車を利用することになりますが、長期間の滞在中、大きなスーツケースを持ち運びながら移動するのはかなり困難です。
たとえば、観光・レジャー目的で訪れた訪日外国人のうち、ドイツ人の平均泊数は15.7 泊、フランス人は15.4 泊と、長期滞在が顕著になっています(観光庁「2024年10月〜12月 訪日外国人の消費動向インバウンド消費動向調査結果及び分析 月期報告書」)。国によって異なるものの、長期滞在を希望する外国人観光客は増加する傾向にあります。
アパートメントホテルは、通常のホテルよりも制約が少ないため、荷物置き場や、グループや家族が集合する拠点としても利用できるのも、人気の理由の一つです。
自由度が高く自分のペースで滞在できるから
アパートメントホテルは、基本的に自由度が高く、自分のペースで滞在することができます。自炊や洗濯を行う環境が整っているため、食事の時間などを気にしたり、洗濯の心配をする必要もありません。
サービスも最小限に抑えられており、ホテルスタッフとの関わりも最小限となります。まるで自宅にいるかのような、自由気ままな滞在ができることも、選ばれる理由といえるでしょう。
長期滞在になるほどコストパフォーマンスが良いから
多くのアパートメントホテルでは、一定期間以上の滞在に対して、割引料金が適用されることがあります。また、キッチン設備が整っているため、外食を減らして食費を抑えることが可能です。
そのため、長期滞在者は、ホテルよりも低コストで宿泊することができます。電気、水道、ガスなどの光熱費は、宿泊料金に含まれているため、追加料金が発生せず、「予算管理が楽」という点も評価が高いポイントでしょう。
とはいえ、単に「安い」という理由だけで、選ばれているわけではありません。豪華な客室や設備を、自分のペースで楽しみたいというニーズにも応える、ラグジュアリーなアパートメントホテルも近年人気を博しています。多様化するインバウンドのニーズを満たすホテル形態といえるでしょう。
インバウンドに人気のアパートメントホテル2選
では、実際に、どのようなアパートメントホテルがインバウンドに人気なのでしょうか。
人気のホテルを2つご紹介しましょう。
自分らしいラグジュアリー体験を提供する「seven x seven 石垣」
seven x seven 石垣は、「ラグジュアリーとセルフホスピタリティの融合」がコンセプトの、アパートメントホテルです。プライベートプール・サウナ付きのスイートルームや、屋上から海を臨むインフィニティ―プールなど、ラグジュアリーな設備のほか、各客室には、キッチンや洗濯機も完備しています。
人による過剰なサービスを廃すことで、ゲストの自由を尊重し、快適さ、利便性を提供する「セルフホスピタリティ」と、新しい時代の「ラグジュアリー」を体現した、インバウンドに人気のホテルです。
このような世界観を実現するために、seven x seven 石垣では、予約からチェックイン、ルームキーの受け渡しまでを、従来の「対面」で行うのではなく、ゲストのスマートフォン(QRコード)で完結するシステムを採用しています。
FAVホテルの客室の扉には、RemoteLOCK(リモートロック)を導入していただいており、セルフチェックインシステムで利用する「QRコード」は、そのまま「客室の鍵」となります。グループステイでも、簡単に鍵を共有することができ、鍵の紛失や管理の手間もありません。
ホテル内での利便性が高く、シームレスな宿泊体験ができることも、インバウンドから支持されている理由の一つです。
※QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。
旅行スタイルに合わせた部屋が選べる「UNPLAN 神楽坂」
UNPLAN神楽坂は、ドミトリーとアパートメントホテルの両方の要素を持っているホテルです。部屋は、
・ドミトリールーム
・セミプライベートスペース
・プライベートファミリールーム
・プライベートダブルルーム
の4タイプから、ゲストの旅行スタイルに合わせて選択のすることが出来ます。
プライベートルームには、室内にシャワー、トイレ、バルコニー、冷蔵庫が完備されています。また、宿泊ゲストが自由にくつろげるコモンルームは、ソファ、テーブル、TV、キッチンを備えており、IHコンロなどの調理家電に加えて、冷蔵庫や調理器具、カトラリーなどを自由に利用することができます。
「自由気ままに、上質な旅を楽しみたい」という、外国人旅行者からの人気が高いアパートメントホテルです。
インバウンド向けアパートメントホテルの成功のポイント
これまでお伝えしてきたように、アパートメントホテルは、客室にキッチンや洗濯機を設置して、長期滞在やグループ滞在がしやすい環境を提供しています。
とはいえ、設備だけを整えても、インバウンド向けに成功するわけではありません。
インバウンド向けアパートメントホテルが成功するには、次の3つのポイントを押さえる必要があります。
インバウンド向けアパートメントホテル成功の3つのポイント
- 多言語対応のセルフチェックインシステム
- スマートロックで安全性と利便性を向上
- 日本らしいおもてなしも必要不可欠
それぞれ解説していきましょう。
多言語対応のセルフチェックインシステム
インバウンド向けのアパートメントホテルには、「多言語対応のセルフチェックインシステム」が必須です。アパートメントホテルは、スタッフによるサービスを可能な限り排除し、ゲストによる「セルフサービス」で、コストメリットを最大化できるためです。
セルフチェックインシステムなら、ゲストは自分で、好きなときにチェックインができるため、フロントスタッフが常時待機する必要はなくなります。また、多言語対応のシステムを選択することで、スタッフがしどろもどろになって外国人旅行者に対応するよりも、スムーズにホテルを利用することができるでしょう。
多言語対応セルフチェックインシステムは、ゲストと運営者側、両方にとって負担が少なくなるシステムです。
スマートロックで安全性・利便性を向上
アパートメントホテルは、スマートロック(スマートキー)を利用することで、ホテルの利便性と安全性を高めることができます。というのも、ゲストは、スマートフォンに配布されたQRコードなどを利用して、客室の施錠・解錠をするため、鍵の受け渡しや管理の手間がありません。
誰でもQRコードで共有できるため、グループステイで問題になりがちな、鍵の問題(誰が管理するかなど)や、持ち歩きでの紛失、盗難のリスクもなくなります。
さらに、スマートロックは、運営側がリアルタイムでアクセス履歴(施錠・解錠の履歴)を管理できるため、不正侵入の防止やセキュリティ向上に役立ちます。一般的なホテルよりも少ない人数で運営することが多いアパートメントホテルでは、安全かつ快適な滞在環境を提供するには、今や欠かせないシステムといえるでしょう。
日本らしいおもてなしも必要不可欠
アパートメントホテルでは、インバウンドが滞在しやすい環境や施設を提供することはもちろんですが、「日本らしいおもてなし」を入れることも、成功するためのポイントです。日本らしさを感じてもらうことで、SNSなどで発信され、人気に火がつくことも多いからです。
施設全体に、和の雰囲気を演出する手法も喜ばれますが、何よりも日本人スタッフのちょっとした声かけや、心配り、気遣いが称賛されることも少なくありません。セルフチェックインシステムやスマートロックなどITシステム導入で、業務が効率化した分をおもてなしに活かすことで、十分に対応することができるでしょう。
たとえば、前出の「UNPLAN神楽坂」では、茶道体験などのイベントや、日本の四季に合わせたプランなどを提供して、おもてなしを演出しています。インバウンド向けアパートメントホテルは、アパートメントホテルの利点を活かしつつ、「日本らしさ」を感じてもらうことが、成功の鍵といえるでしょう。
【まとめ】アパートメントホテルはインバウンド需要の受け皿となるわけ
いかがでしたでしょうか。アパートメントホテルがインバウンドの受け皿になっている理由や、アパートメントホテルの成功ポイントなどがご理解いただけましたでしょうか。
外国人観光客は、「長期間ホテルを拠点として、日本各地を訪れたい」、「グループや家族連れで気楽に楽しみたい」という要望が高く、日本に多い「ビジネスホテル」タイプでは、受け皿になりにくい状況です。
インバウンドの様々な欲求に応え、生活スタイルが自由に選択できるアパートメントホテルは、これからもさらに需要が伸びる宿泊スタイルといえるでしょう。