ホテルのチェックイン・アウトにQRコードの活用が人気の理由とは?
ホテルのフロント業務の省人化や無人化が進んでいるのをご存じでしょうか?新型コロナ流行の影響もあり、非対面や非接触が可能になるセルフチェックインシステムや鍵のスマート化など、フロント業務のIT化が拡大しています。中でも、今注目の「QRコード」を活用したチェックインシステムについて、人気の理由を解説しています。
QRコードを使ったセルフチェックインが選ばれているわけ
ホテルのチェックインに「セルフチェックイン」を導入する施設が増加しています。中でも注目の、QRコードを使ったチェックインシステムとはどのようなものなのでしょうか?特徴やメリットをご紹介する前に、まずはセルフチェックインシステムについて簡単に解説します。
※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
セルフチェックインシステムが増加している背景
ホテル業界を取り巻く環境はここ数年で大きく変化しています。コロナの影響で、絶好調だったインバウンドの利用が突然なくなり、国内観光や出張などの利用さえ控えられるようになりました。
収益が上がらない中でも、複雑な業務の多い従来通りのホテル経営を続けていくには、スタッフの長時間拘束が必要です。人件費の高騰に悩まされながら、一方で「人手不足」であるというジレンマに陥っている施設も少なくありません。そのような問題を一気に解決するのが、チェックインシステムです。
セルフチェックインは新しい形の「おもてなし」を提供できる
チェックイン業務をシステム化することで、業務が効率化しフロントスタッフの人数を減少することができます。たとえば、従来のフロント業務だと、宿泊予約の確認や宿泊台帳の記入、鍵の受け渡し、施設によっては料金の支払いなど、かなりの手間と時間がかかります。
しかしシステムなら、わずかな時間でチェックインが完了し、ITが正確に処理するので人的ミスも起こりません。スマートロックやキャッシュレス決済などと連携すれば、スタッフは現金や鍵の管理からも解放される上、感染症対策にもなります。
また、セルフチェックインではゲストの情報をいち早く得ることができます。その情報を利用して、利用状況に合わせたサービスを提供したり、ゲストの好みに合わせたプランを提案できたりと、新しい形の「おもてなし」も提供ができるのです。
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QRコードを使ったチェックインが人気の5つの理由
チェックインシステムの中でも、QRコードの利用が注目されている理由はいくつかあります。順番に見ていきましょう。
「非対面」「非接触」のチェックインが可能になる
現在、ホテルのセルフチェックインシステムは、フロント設置されている精算機やタブレット端末を利用した方法が中心です。しかし多くの場合、画面にタッチして操作したり、情報を入力したりする必要があります。
QRコードを利用したチェックインの場合、事前に宿泊者情報を自分のスマートフォンなどから入力・送信しておくことで、現地ではQRコードをかざすだけで予約情報を照会することができ、一瞬でチェックインが可能になります。
特に、感染症に対して敏感になっているゲストへの大きなアピールポイントになるでしょう。
チェックインの時間が圧倒的に早く、混雑緩和になる
ゲストは当日、ホテルのQRコードリーダーに、事前に送られてきたQRコードをかざすだけ(または、ホテルに用意されているQRコードを読み込むだけ)でチェックインが開始されます。
名前や予約番号を入力することもなく、一瞬で予約状況の確認ができるので、入力に時間がかったり、入力間違いをしたりなどの問題もなく、混雑緩和に大きく貢献します。
スマートなQRコードのチェックイン体験を提供できる
最近、QRコードを使った「キャッシュレス決済」が一気に広まりました。最初は抵抗のあった世代でも、一度使うことでQRコードを便利に扱う方が増えています。
そんなQRコードをチェックインに利用するホテルはまだまだ珍しく、スマートでスピーディなチェックイン体験を提供できることで、ゲストに「最先端のホテル」として特別な印象を持っていただけます。
簡単・低コストで実現できる
QRコードでのセルフチェックインを実現するには、必ずしも大掛かりな精算機や専用機器は必要ではありません。機器はタブレット端末をフロントに設置するだけで済む場合もあります。
タブレット端末を利用したチェックインの場合、タブレット端末のインカメラにQRコードをかざすことでチェックインを行います。現地決済や現金精算をしない場合は精算機の導入に要するイニシャルコストを大幅に削減することができます。
スマートロックとの相性が良い
- QRコードと暗証番号、2つの解錠方法に対応する「RemoteLOCK 8j-Q」
さらにQRコードは、スマートロックとの相性が良いのも大きな特徴でしょう。QRコードで解錠できるスマートロックを併用すれば、物理的な鍵の受け渡しがなくなり、ゲストはどこにも触れず客室のドアの解錠まで実現できます。
このように、感染症対策の面でも非接触で安心でありながらスピーディで利便性の高いQRコードは、今後ますます多様なシーンで利活用されていくでしょう。
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QRコードを使用したチェックインのデメリットとは
QRコードによるチェックインは大変便利である反面、デメリットもあります。場合によっては、頻繁にスタッフが呼び出されたり、アナログなフロント業務も併用するようになったりすると、せっかくシステムを導入しても意味がないと感じる可能性もあります。
しかし、あらかじめ対策をたてておくことで、利便性を十分に享受することが可能になり、ゲストにとっても満足していただくシステムとなります。
QRコードに慣れていない方には丁寧な説明が必要
QRコードを使用したチェックインシステムは、QRコードを使用したことがない方にとっては不安を感じることもあるでしょう。利用するゲストの層によっては、「チェックイン方法がわかりづらい」「操作がうまくいかない」などの問い合わせが多くなる可能性もあり、チェックインやチェックアウトの際もスタッフの立ち会いが頻発するかもしれません。
QRコードを活用したセルフチェックインを導入した後も、以下のように柔軟な対応が必要になるでしょう。
セルフチェックイン導入後の注意点
- 繁忙時やお客様に合わせてスタッフを配置する
- 図や写真を使った説明を提示しておく
- スタッフが常駐していない場合も電話で問い合わせできるようにしておく
- わからない方には丁寧に説明し、理解してもらう
ただし、QRコードは急速に全世界に広まっており、年配の方でも「現金を持ち歩くよりも安全」であることから、進んで利用する方も増えているようです。QRコードを利用したチェックインは、一度利用すれば簡単に利用できるので、様子を見ながら導入を進めると良いでしょう。
QRコードやチェックインシステムのトラブルも想定される
チェックインシステムは業務が効率化し、スタッフの省人化も可能になります。しかし、その便利さに慣れてしまうと、機器の故障やトラブルなどに対応が遅れ、ゲストに大きな迷惑をおかけする可能性もあります。
そういう場合に備えて、
チェックインのトラブルを防ぐためにできること
- 日頃からシステムのメンテナンスを欠かさないこと
- 何かあった時にすぐにスタッフが駆けつける体制を整えること
- QRコードを利用しないでもチェックインできる方法を用意しておくこと
などの準備をしておくとよいでしょう。前もって対策しておくことで、不測の事態でも落ち着いて対応することができます。
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QRコードを利用したチェックインの3つのタイプを解説
では、実際にQRコードを利用したチェックインシステムはどのように活用されているのでしょうか? 現在、QRコードを使ったチェックインシステムは大きく分けて3種類に分けることができます。
チェックインシステムの種類
- フロントに設置してあるQRコードをスマホで読み取りチェックインする方法
- 事前に受け取ったQRコードを現地の端末にかざしてチェックインする方法
- ホテルの専用アプリでQRコードを表示させ、現地端末にかざしてチェックインする方法
すべてQRコードを利用する方法ですが、それぞれに特徴があり、システムなどが多少異なります。それぞれの利用方法と特徴を見ていきましょう。
フロントに設置してあるQRコードをスマホで読み取る
フロントに設置してあるQRコードを読み込めば、チェックインのほとんどをゲスト自身のスマートフォンで行える方法です。ゲストは自分のペースでチェックインを進めることができ、あとは鍵を受け取るだけです。
ゲストの予約からチェックインまでの流れ
予約時
①ゲストが予約システムなどで予約を入れる
②チェックインに必要な情報を登録するためのフォームが送られてくる(メールなど)
③期限までに入力し、事前チェックインが完了
当日
④ホテルに設置してある「チェックイン専用QRコード」をゲストのスマートフォンで読み取る
⑤ゲスト自身のスマートフォン上で予約の確認や追加の記入、オペレーターとの通話などを行い、チェックイン完了
チェックインシステムとシステム連携しているスマートロックを導入すると、チェックイン後のスマートフォンの画面に各予約に合わせた客室の暗証番号(解錠用)表示できるので、ゲストはそのままスムーズに客室に向かうことが可能です。
事前に受け取ったQRコードを現地の端末にかざす
オンライン上での予約が完了すると、チェックイン専用のQRコードがゲストにメール等で送られます。宿泊当日、ゲストはフロントにあるタブレット端末にQRコードをかざしてチェックイン手続きを完了させます。フロントには、客室数に合わせて数台のタブレット端末を設置すればいいだけなので、シンプルでスマートなエントランスを演出することができます。
ゲストの予約からチェックインまでの流れ
予約時
①ゲストが予約システムなどで予約を入れる
②チェックインに必要な情報を登録するためのフォームが送られてくる(メールなど)
③期限までに入力し、事前チェックインが完了
④ホテルから「チェックイン用のQRコード」が送られてくる (メールなど)
当日
⑤ホテルに設置したあるチェックイン用のタブレット端末などに、事前に送付されているQRコードをかざしてチェックイン
⑥タブレット端末上でチェックイン情報の確認や追加情報の記入、オペレーションとの通話などを行い、チェックイン完了。
チェックインシステムとシステム連携しているスマートロックを導入すると、チェックイン後のタブレット端末の画面に各予約に合わせた客室の暗証番号(解錠用)表示できるので、ゲストはそのままスムーズに客室に向かうことが可能です。
専用アプリでQRコードを表示させて現地端末にかざす
ホテルの公式アプリで予約、チェックインを行う方法です。ゲストはアプリ上で事前チェックインまで済ませて、当日は現地の専用端末にアプリ内(もしくは公式サイトのマイページなど)で表示できるQRコードをかざすことで、チェックインが完了します。
チェックイン時にアプリを開いてもらうことで、ホテル独自のポイントサービスやお得な情報などもゲストに伝わりやすく、アップセル・クロスセルへと導くことができるでしょう。
一方で、ホテル専用のアプリの構築にはコストがかかります。この方法は全国展開しているようなチェーンホテルやラグジュアリー寄りのホテル向きと言えるでしょう。
ゲストの予約からチェックインまでの流れ
予約時
①ゲストがホテル専用のアプリで予約を入れると、宿泊用のQRコードが表示されます。
(アプリを登録する時点で、住所や氏名などの情報は入力済み)
当日
②当日は、アプリ内で事前チェックインを済ますことが可能
③フロントにある専用のチェックイン専用の機械にQRコードをかざすだけでルームキーなどが発行されます。施設や機械にもよりますが、数秒でチェックインが完了します。
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【まとめ】QRコードをつかったチェックインが人気の理由
いかがでしたでしょうか?急速に広がるホテルのIT化ですが、中でもQRコードを利用したチェックインはその手軽さで注目を集めています。QRコードを使った方法は、現在およそ3タイプに分かれています。いずれのパターンでも「非接触・非対面でコロナ禍でも安心」「チェックインのスピードが早く待ち時間短縮になる」「フロントの混雑緩和につながる」などがメリットとしてあげられます。
QRコードに慣れていない方へも丁寧に説明することで、その利便性を感じていただけるでしょう。人件費高騰や人手不足などの問題をも解消するQRコードのチェックインシステムは、感染症対策が叫ばれるいまこそ導入のタイミングかもしれません。参考にしていただけましたら幸いです。