ホスピタリティで客室単価up?稼働率を下げて利益を生み出す方法について
ホスピタリティと客室単価の高さは密接に関係していて、ホスピタリティが高いほどそれに比例して1泊あたりの料金を上げることができます。本記事では、ホスピタリティとサービスの違いを定義しつつ、具体事例を紹介します。
まずは「ホスピタリティ」の定義を考える
日本では「ホスピタリティ」「おもてなし」「サービス」など、お客様への対応について様々な言葉が使われています。まずはホスピタリティとサービスの違いについて考えてみます。
「ホスピタリティ」と「サービス」の違いは?
まず、「サービス」とは、すべての顧客に「一律の価値」を提供することであるのに対し、ホスピタリティは顧客一人ひとりに合わせた「唯一の価値」を提供することです。「サービス」はどんな顧客に対しても一律の、統一的な接遇を提供することですが、「ホスピタリティ」とは一人ひとりの顧客の状況に応じて、臨機応変に対応することです。ある意味でマニュアルにない接遇こそがおもてなしとも言えます。
一般的に「サービス料」という言葉がありますので、「サービスは有料・おもてなしは無料」という考え方が利用者にとっては普通かもしれません。しかし、施設のオーナーの視点では、おもてなし(ホスピタリティ)こそ付加価値が取れる、と考える方も多いです。昨今で急増中のスモールラグジュアリーホテルなどでも、このホスピタリティを重要視しています。
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「ホスピタリティ」は顧客満足度(エンゲージメント)を高める
お客様は施設を利用する際、期待水準を無意識に設定しています。この期待水準通りのサービスを提供していれば、お客様に不満を持たれることはありませんが、感動することもありません。お客様一人ひとりのためにカスタマイズされたサービス(ホスピタリティ)や、おもてなしをすることで期待水準を超えると、お客様は満足し、感動します。
お客様からの信頼を獲得し、施設のファンになっていただくと、次の機会でも利用いただくことができます。このエンゲージメントが高まっていくと、家族や友人へ紹介したり、SNS等で自発的に宣伝していただくことにもつながります。(このような顧客をエヴァンジェリストと言います)。
「ホスピタリティ」はブランディングにも関係する
この「ホスピタリティ」はブランドイメージとの関連性も強いです。例えば有名な高級ホテルの高い客室単価(ADR)も、決してブランド知名度だけで設定されている訳ではありません。ブランド特有の充実したサービスやおもてなしによる付加価値が、宿泊や料飲サービスの料金に含まれています。
ホテルの歴史的な価値が客室単価に転嫁されることは一般的だと思いますが、例えば帝国ホテルのクリーニングサービス(素材に合わせて洗い方を変え、水洗いだけで20種類以上のパターンがある)や、リッツ・カールトン大阪のコンシェルジュ(要求を何でも叶えてくれると噂された)も、ブランドイメージの構成要素として挙げられます。ブランドが大事にしている価値観・世界観を実現するために、このようにホスピタリティのための取り組みは重要視されています。
コロナ禍のレベニューマネジメントでは、価格を下げても必ずしも需要喚起にならないことが分かってきています。「決してお安くはないですが、その価値は充分にありました」とお客様に認めてもらえる接客や宿泊体験を提供することが、リピーター獲得の面でも大切といえます。
ホスピタリティ提供の成功事例
ホスピタリティを提供することで得られる効果について分かったところで、次はどのように価格に転嫁するのかをご紹介します。
客室単価が上がれば客室稼働率を下げてもよい?
はじめに用語の説明をします。客室稼働率(OCC)は「宿泊利用された客室数」÷「販売可能な客室数」で求めることができます。そして「販売可能な客室1室あたりの収益(RevPAR)」は、客室稼働率(OCC) × 客室平均単価(ADR)から算出されます。コロナ禍では客室平均単価を下げることで稼働率を上げようとした施設は非常に多かったものの、客室あたりの収益も下がってしまうので、判断に悩んだ施設は多かったのではないでしょうか。
また、最近では全国旅行支援で需要が拡大したことを受け、客室単価を高くすることで、これまでの赤字分を取り返そうとする施設も見受けられます。これはダイナミックプライシングの方針とも合致しますし、特段問題ありません。
しかし、ここで振り返るべきは、「最初に設定した客室単価」の是非です。最初の価格の時点で、施設が提供しているサービスの価値を低く見積もっていないでしょうか?
実際に計算してみる
計算のサンプルとして以下の例を用意しました。売上は客室単価×想定宿泊客数ですので、年間4億1,474万円となります。
ホテルAの基本情報:売上は4.14億円
- 客室数:50室
- 営業日数:360日
- 客室稼働率(OCC):80%
- 客室単価:12,000円
- 1室あたり宿泊客数:2.0人
- 販売客室数/年:14,400室
- 想定宿泊客数/年:34,560人
例えば客室単価を12,000円から18,000円まで引き上げた場合、稼働率を53.5%まで下げても売上はほとんど同じです。値上げした後の価格にゲストが納得できるのであれば、ホテルAは経費を削減しつつも売上を維持できるので、利益性を大きく改善することもできます。
有名な施設では、東京ステーションホテルもコロナ禍に価格改定(値下げではなく値上げ)を数度に分けて行い、確かな質のホスピタリティ・サービスの提供を続けています。また、鶴巻温泉 元湯 陣屋はあえて定休日(週休3日)を設けて、客室単価も上げていますが、根強い人気をキープしています。陣屋コネクトという自社システムも開発してDX化を積極的に進めつつも、週休3日でスタッフが心身リフレッシュした状態でおもてなしができるようにしています。
両施設に共通することは、たとえ宿泊単価を上げて販売数が落ち込もうとも、「売上ではなく利益を生み出そうとした」点です。外資系ラグジュアリーホテルと競合しつつも、価格競争をするのではなく、施設のブランディングやホスピタリティで独自性を持つことで、根強いファンを獲得できるのだと思います。
【まとめ】ホスピタリティによる価値を客室単価に反映しよう
ホスピタリティによる付加価値はお客様のエンゲージメントを高めることはもちろん、利用単価に反映することで利益性向上にも効果があることを解説しました。なお、従業員がホスピタリティ溢れる対応をできるようにするためには、組織風土・ブランドイメージへの理解浸透が非常に重要です。
お客様と従業員の両方を大事にしながら、施設運営ができることが大事だといえますね。日本人は謙虚なのでつい忘れてしまいがちですが、日本の宿泊施設は非常に高いホスピタリティを提供しておりますので、自信をもって価値を訴求してきましょう。
最後に、RemoLOCKは導入することでフロント業務を効率化し、おもてなしの時間を創出することができます。業務オペレーションに課題感をお持ちのかたはぜひ下記の資料もご確認ください。