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公開日2024.06.14

【セミナーレポート】~ゲストのスマホが全てのカギ~タッチレスチェックインとフロント業務改善のススメ

コロナ後の旅行需要の高まりや外国人訪日客の急増で活況を呈しているホテル・宿泊業界ですが、一方では深刻な人手不足に直面しています。その解決策の一つが最新のデジタルツールとデジタルシステムを活用した徹底的な業務効率化です。

今回は、RemoteLOCKとシステム連携を開始したタッチレスチェックインサービスをテーマに、5月22日に開催されたオンラインセミナー「タッチレスチェックインとフロント業務改善のススメ」をレポートします。

「タッチレスチェックインサービス」について(全日空商事株式会社)

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初めに登壇したのは、全日空商事株式会社 事業創造室 新規事業開発チームの酒井 総 氏です。全日空商事は、航空関連事業を中心に多彩な事業を展開しているANAグループの中核企業です。2024年2月より株式会社アコモと業務提携、同社がが提供するタッチレスチェックインサービスの日本国内における独占販売代理店として、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを開始しました。

深刻な「人手不足問題」、観光産業の現状と課題

まず酒井氏は、現在の宿泊業界を取り巻く環境について解説しました。酒井氏によれば、観光立国を目指す日本政府が掲げている年間訪日外国人旅行者数の2030年における目標は6,000万人となっており、直近2023年の実績2,506万人と比較すると、約2.4倍となっているそうです。

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一方、帝国データバンクが国内宿泊施設運営事業者を対象に今年4月に行った調査によれば、宿泊施設の7割以上(71.1%)が人手不足を感じると回答していること、国内の生産人口(15~64歳の人口)の推計データを見ると、2023年が7,385万人であるのに対して2030年には7,075万人と予測されており、7年間で約310万人が減少すると見込まれていること、の2点を指摘しました。訪日外国人旅行者数6,000万人の政府目標が掲げられる中、今後さらに深刻な働き手の不足が予測されると、酒井氏は解説します。

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宿泊業界における人手不足対策の一つに、株式会社タイミー他が提供しているスキマバイトサービスのような新しいスタイルの求人方法があるそうですが、求人の性質上、得られる人材は客室の清掃やレストランでの配膳など裏方業務に限られ、対人の接客スキルが求められるフロント業務の人手不足解消にはあまり役立っていないというデータも示されました。

訪日外国人を中心に旅行者数が増加する中で、人手不足の問題はより強まっていくことは確実であるとした上で、その解決策として提唱したいのが、デジタルツールを用いてフロント業務など人手でやっている業務の代替であり、そうすることによって最少人数でオペレーションが回るように施設運営していくことが解決策の一つである、と解説しました。

タッチレスチェックインサービスが実現できること

次に酒井氏は、フロント業務の省人化という課題に対して、「宿帳の入力と決済はタッチレスチェックインサービス、鍵の受け渡しはRemoteLOCKによって業務を置き換えていく」という今回のセミナーの趣旨を再確認した上で、同サービスの概要に関する解説に移ります。

サービス概要の解説に先駆け、酒井氏からは全日空商事の紹介をいただきました。同社はANAグループの中の商社として、空港内店舗の運営、半導体の輸出入など、さまざまな業務を展開する中、近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)支援事業にも取り組んでおり、空港におけるデジタル広告事業やデジタル決済サービスの提供、クーポンのデジタル化サービスなどを行なっています。

このDX支援事業の一つとして、宿泊施設の人手不足という課題を解決するために、株式会社アコモとパートナー提携して取り組んでいるのが、タッチレスチェックインサービスです。このサービスは、ひと言でいうとスマートフォン端末ひとつで宿帳の入力と決済を完結できるサービスです。

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予約済みのお客様には、宿泊の前日にメールで宿帳のフォームが送られます。お客様が自宅や移動中に宿帳の入力を済ませると、QRコードもしくは4桁のパスコードが発行され、このQRコードかパスコードを利用してチェックインを行なう仕組みです。
フロントにQRコード読み取り機を置いておけばお客様は手元のQRコードをかざすだけでチェックインが完了します。あるいは、フロントにチェックイン用のQRコードを掲示してお客様のスマホから読み込んでいただくことでチェックインが完了するという方法もあります。

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酒井氏によれば、同サービスを導入したある施設では、それまでフロントで平均3分かかっていたチェックインのフローが導入後は30秒まで短縮され、スタッフの数もそれまで2名で回していたところを1名に減らすことができたというような実績もでてきているそうです。

タッチレスチェックインサービスは、施設が導入しているPMS(ホテル・宿泊施設管理システム)と接続することで、宿泊者ごと予約情報(お名前、宿泊日、メールアドレスなど)を取り込みます。宿泊予定日の前日になると、このメースアドレスに宿帳入力フォームを送信し、お客様に宿帳の入力をしていただくという仕組みになっており、入力された情報はPMSの方にフィードバックされる形になっています。PMSへは、お客様のチェックインや決済のステータスなど、その後の情報も随時更新を行ないますので、PMS側で何か対応しないといけないという事象は発生しません。

サービスの特徴について

同サービスの一番の特徴として酒井氏が挙げたのが、各施設のオペレーションに合わせた形でシステムをカスタマイズできるということです。例えば決済については、チェックイン時支払い、チェックアウト時支払い、デポジットの有無など、施設ごとのポリシーに合わせた形でデザインすることができるという説明でした。

これに加えて、酒井氏は同サービスの3つの特徴について解説しました。

タッチレスチェックインサービス3つの特徴

  1. アプリが不要
    ブラウザ上でのサービスになっているため、専用アプリをダウンロードする必要がありません。特に高齢のお客様などにはスマホにアプリをダウンロードすることのハードルが高いという傾向がありますが、同サービスではそのような方にも使いやすい環境になっています。
  2. 多言語対応
    英語、中国語、韓国語に対応しているため、インバウンドの旅行者にもご利用いただくことが可能となっています。海外からのお客様に対してはパスポート情報の入力を行なっていただく機能も備えています。
  3. マイページ
    チェックイン後、お客様はマイページが使用できるようになります。マイページには、レストランや大浴場の利用案内など施設情報機能やダイレクトメッセージ機能があり、お客様の宿泊体験の向上につなげていただくことが可能です。

ここから酒井氏は、画面上でタッチレスチェックインサービスのデモ操作を行ないました。一連の操作の流れの中で、お客様に届くメールのサンプル、お客様に入力いただく入力フォーム、入力後にお客様に届くチェックイン用のQRコードと4桁のパスコードのサンプル、マイページのサンプルなどをご紹介いただきました。

タッチレスチェックインサービス導入事例紹介

前半のパート、最後は事例紹介です。酒井氏からはタイプの異なる3つの宿泊施設への導入事例をご紹介いただきました。

事例 ①50部屋のビジネスホテル

この事例では、スタッフの確保が困難なためできる限り人の手がかかる業務をなくしたいという要望応えて、事前チェックインを行い客様へのフロントでの対面対応を最小化した点がポイントとなっています。これは、フロントでお客様にQRコードを読み込んでいただくと、お客様のスマホに現地で宿帳入力をしていただくフォームが立ち上がり、その場で入力いただくという仕組みです。こうすることで、フロントスタッフの手間ひまを最小化することが可能となりました。

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事例 ②全160部屋の老舗旅館

この事例では、良好な顧客体験につながるお客様とスタッフのコミュニケーションを大事にしながら、ピーク時間帯のお客様の行列を無くしたい、というのが施設側の希望でした。ここでは、フロントスタッフがカウンターではなくラウンジのソファに座って、タブレットを使ってお客様と一緒にチェックインする、という仕組みを構築しました。加えて、エクスプレスチェックアウトという機能を使って、お客様がカウンターに並ばずに、お部屋で自分のスマホで精算を行なう、という方法を採用いただきました。こうして、チェックイン時やチェックアウト時のフロントでの行列を解消することができました。

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事例 ③エリア内に複数展開する1棟貸しの宿泊施設

フロント棟と各客室棟が離れているこの施設では、フロントでの対面接客をなくしたいということに加えて、鍵の受け渡しもスDX化したいというご要望でした。フロント棟にQRコードを設置してお客様が自分でチェックインできる環境を用意し、さらにチェックインが完了すると同時に各客室棟に設置されたRemoteLOCKを解錠するためのPINコードが届くという仕組みを構築しました。これによってフロントの無人化が実現した事例です。

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最後に酒井氏は、タッチレスチェックインサービスの料金体系の紹介を行ない、前半のパートを締めくくりました。

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RemoteLOCKを活用した施設運営事例(株式会社構造計画研究所)

後半のパートは、株式会社構造計画研究所から、すまいIoT部RemoteLOCKエバンジェリストの池田 修一が登壇しました。池田からは、構造計画研究所の会社概要を紹介した後、「鍵の受け渡しの問題」を中心に、これからの宿泊運営のあり方について解説を進めました。

これからの宿泊運営

フロント業務を無人化・省人化しようとすると、必ず出てくるのが鍵の受け渡しの問題です。物理鍵やカードキーの受け渡しには必ず人手が必要になりますし、カードキーは自動精算機で自動発行することも可能ですが、その場合は自動精算機にかかるコストやメンテナンスの手間の問題が発生します。

このような課題に対して、タッチレスチェックインサービスRemoteLOCKを使うことによって、フロントの非対面化とお客様の利便性や体験価値の向上を同時に実現することができる、と池田は解説します。具体的なイメージはというと、お客様がスマホを使ってフロントでチェックインをすると、RemoteLOCKを解錠するためのQRコードや暗証番号がスマホに飛んできますので、お客様はそのまま客室に入っていただくという流れです。

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これによって、対面での鍵の受け渡しにかかる時間が必要なくなりますし、フロントを無人化・省人化できますので、浮いた分の人件費はそのままホテル側の収益になります。池田は、これまでのフロントでの業務を削減することで浮いた分の人件費や時間を、施設案内や周辺の観光案内、ウエルカムドリンクの提供といったおもてなしの強化にあてて、売り上げの拡大や新たなファンづくりを行なっていく、というのがこれからの宿泊運営のあり方である、と解説しました。

RemoteLOCK概要

RemoteLOCKは、構造計画研究所が日本でサービスを開始して8年目、もともとはアメリカのRemoteLOCK社が展開していたサービスでしたが、現在は弊社も出資する形で一体となって展開しています。PMSやチェックインシステムを始めとするさまざまなサービス提供者とパートナーシップを結んでいる点が特長となっており、その数は日本でもトップクラスです。海外も含めたところで、1日10万組以上の入室をクラウド上で管理。ユーザーはホテルが6~7割ですが、他にも公共施設の入退室管理、オフィスのエントランスやエレベーターの制御などの実績も増えています。

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ホテルの建物を想定した場合、RemoteLOCKはそれぞれの客室のドアを制御できることはもちろん、エントランスの自動ドアやエレベーターの制御を行なうことができますので、ホテルを無人化しようとする場合にも最適なシステムとなっています。また、RemoteLOCKはWi-Fiにつないでいただくだけで、運営者のパソコンやスマホから、クラウド上で暗証番号の発行や変更や中止などの作業を行なうことが可能になります。クラウド上で管理することのメリットは、現在ほとんどのチェックインシステムやPMSのようなシステムはクラウド上で動くようになっているため、これらと連携して予約情報などを共有することができることです。

続いて、池田はRemoteLOCKの商品ラインアップの紹介を行ないました。暗証番号を使ったシンプルなタイプ、QRコードを使用できるタイプ、交通系ICカードやFelicaを使用できるタイプに加えて、自動ドアやエレベーターの盛業を行なうTOBIRAというシステムが主なラインアップになります。

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このうちシンプルタイプのRemoteLOCK 500i(旧RemoteLOCK 5i)、QRコードタイプのRemoteLOCK 9j-Q(旧RemoteLOCK 8j-Q)、FeliCaタイプのRemoteLOCK 9j(旧RemoteLOCK 8j-F)は7月から発売開始を予定している新機種であることもあわせて発表し、QRコードタイプのRemoteLOCK 9j-Qの動作紹介ビデオも上映しました。

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また、お客様がホテルを利用される際のイメージとして、お客様の予約情報がサイトコントローラーとPMSを経由してタッチレスチェックインのシステムに伝達され、そこでRemoteLOCKが連携して、お客様に暗証番号やQRコードが発行されて客室に入室できるようになる、という一連の流れを図解させていただきました。エントランスの自動ドアの制御を行なう場合には、ここで発行された客室用の暗証番号やQRコードをそのままエントランスの解錠に利用できるようにコントロールすることも可能です。

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池田は、RemoteLOCKの料金体系(初期費用および月額システム利用料)を簡単に紹介した後、事例紹介に移りました。

RemoteLOCK導入事例紹介

まず、タッチレスチェックインサービスとの連携事例として、株式会社エンゼルが運営する「エンゼルグランディア越後中里」と「エンゼルフォレスト那須白河」が紹介されました。ここでは、それぞれ275室と130室をRemoteLOCKとタッチレスチェックインサービスによって管理いただいています。

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次に、QRコードタイプのRemoteLOCK8j-Qが導入された事例として取り上げられたのが、昨年北海道にオープンした新球場エスコンフィールドに隣接するヴィラ施設「VILLA BRAMARE」、霞が関キャピタル株式会社が全国展開する「FAV HOTEL」の2例です。いずれの施設も上質な宿泊体験をコンセプトとしており、お客様に先進的な体験をしていただけるQRコード方式のシステムを採用いただいています。

続けて、RemoteLOCKは温泉旅館との相性も良い、ということで兵庫県の「湯村温泉 緑屋」、熊本県の「地獄温泉 清風荘」の事例が紹介されました。温泉地でのグループ旅行で起こりがちなのが、温泉に入る際に誰が最初に鍵を持って帰ってくるのかという問題です。暗証番号でもQRコードでもシェアすることの容易なRemoteLOCKならそのような問題は起りません。

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これら事例の他、新築マンション内の時間貸しテレワークブース(住友不動産)や、無人書店(ほんたす溜池山王)など、RemoteLOCKが宿泊施設以外での利用も拡がっているという解説も付け加えられました。特に無人店舗の事例は、その入室管理や決済に関する仕組みがホテル内の売店で夜間無人になる時間帯の運用に応用できるという点で注目です。

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ここまで事例の紹介を終えたところで、セミナーはひと区切り。ここからは質疑応答のセッションに移りました。

Q&Aコーナー/参加者からの質問にリアルタイムに回答

現在使用中のPMSでタッチレスチェックインサービスを使いたい場合にはどうしたらよろしいでしょうか?
 → 株式会社全日空商事 酒井氏への質問
【回答】どのPMSともつなぎます、というのが私たちの基本的なスタンスです。現在実際につないでいるPMSは10社さんほどありますので、その10社であればいつでもつなぐことができますし、新規のPMSであれば、詳細を伺って調整させていただくということになります。ですので、現在使っていただいているPMSを使って、私たちが接続させていただきます

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質問に回答する全日空商事 酒井総氏

タッチレスチェックインサービスではパソコンが必要とのご説明でしたが、パソコンの代わりにタブレットでも運用は可能でしょうか?
→株式会社全日空商事 酒井氏への質問
【回答】パソコンが必要とご説明したのは、QRコードの読み取り機を接続するのにパソコンが必要ということです。QRコードの読み取り機はUSB端子で接続するので、タブレットでは難しいと考えております。一方、お客様がチェックインをするという限りにおいてはタブレットでも対応可能です。ただ、施設様側の利便性の観点からはパソコンを推奨させていただいております。
グランピングやプライベートビラでもチェックインサービスは導入可能ですか?
→株式会社全日空商事 酒井氏への質問
【回答】実際に棟の入口でチェックインしていただいている施設様もありますので、可能です。その場合はQRコードを各棟のドアの前に掲示しておいていただき、それをお客様にスマホで読み取っていただくことでチェックインが完了する、という流れになります.
RemoteLOCKと他社スマートロックの違い、優位性について教えてください。
→株式会社構造計画研究所 池田氏への質問
【回答】まず、つながっているPMSの数が全然違うというところがあります。他社さんの場合は、つながっているPMSが1社か2社に限られることが多いですが、RemoteLOCKはPMSだけで20社ぐらいつながっています。あと、通信の違いというのもあります。他社さんのものは、ゲートウェイというWi-Fiとつながる別の装置が介在していて、スマートロック本体はBluetoothだけでしか通信しないというものが多く、どうしても故障の確率が高くなってしまいます。RemoteLOCKは直接Wi-Fi に接続するシンプルな構造ですので、その点も優位性があると考えています。あと、QRコードによる解錠ができるのは、ほぼRemoteLOCKだけです。

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構造計画研究所 池田修一

以上、去る5月22日に開催されたオンラインセミナーの模様をレポートしましたが、いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介したシステムは、「エアライン系商社」という立ち位置で幅広い顧客接点を持つ全日空商事株式会社ならではの視点が反映された誰にでも使いやすいシステムと感じました!

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