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公開日2022.05.24

最終更新日2024.01.18

グランピング開業のための支出項目を解説

現在、グランピング事業は人気度が高まり、市場規模が急速に拡大しています。そこで今回は、グランピング事業を始めるにあたって気になる初期費用と運営費用について解説します。さらに、グランピング事業において課題やリスクになりやすい人件費問題についても考察します。低リスクで収益構造が安定したグランピング運営のヒントにしていただければ幸いです。

いまが参入のチャンス?!グランピング市場の最新動向

グランピング開業の支出項目を整理する前に、まずは、グランピングの概要やビジネスとしての将来性について、まとめてみます。

グランピングとは?

グランピング

テレビ、雑誌、Webで数多く特集されて認知が広がっているグランピングですが、「そもそもどんな施設なの?」「運営形態やサービス内容は?」という疑問にまずは答えていきたいと思います。一言で言えば、「手軽に誰でも楽しめる豪華なアウトドア体験」です。グランピングはキャンプとは違い、アウトドアの専門知識や、道具、食材などの事前準備が必要ないので、性別や年齢に関係なく誰でも楽しむことができます。

また、利用するテント内には、冷暖房、Wi-Fi、トイレ、シャワールーム、ゆとりのあるサイズのベッド、各種アメニティなどが完備されており、豪華で快適なアウトドア体験ができます。さらに、施設によっては、天然温泉や屋外プールなどが体験できるところもあります。まさに語源(グラマラス+キャンピング)通りの非日常体験が可能な宿泊施設と言えるでしょう。

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市場の現状と成長性

成長性

全国国グランピング協会によると、全国には大小やサービス形態が異なるものをあわせて、約350件のグランピング施設が存在する(2020年12月)とされており、国内グランピング業界の市場規模は800億円~900億円と推計しています。

コロナウイルスによって日本のサービス業は多かれ少なかれダメージを負っています。このような状況下で、順調に市場規模を伸ばしているグランピング事業は、これから急速に拡大すると考えられています。具体的な予測として、日本グランピング協会は2023年までに、グランピング業界の市場規模が約1,000億円まで成長すると見込んでいます。

出典:一般社団法人日本グランピング協会

また、グランピングの認知度調査からも、グランピングの人気度が高まっていることが確認できます。LINE株式会社が2021年9月に発表したグランピングに関するアンケート調査結果によると、回答者の72%が「グランピングを知っている」と回答。しかしながら、「グランピング施設を利用したことがある」と回答した人は全体の5%でした。

グランピングの認知度の高さに対して、実際の経験率は低いことがわかります。他方で、利用意向に関する調査結果としては、回答者の57%が「今後利用したい」としており、高い利用意向が見て取れます。このことから、今後、若年層を中心にますます利用が拡大することが予想されます。

出典:LINEリサーチ、今と近未来の流行予想調査(第十弾・グランピング編)を実施

新規事業としてもチャンスあり

土地や屋外施設を所有している宿泊事業者、不動産オーナー、飲食事業者などは特に、新規事業としてグランピングがおすすめです。宿泊事業をすでに手掛けている場合は、産地直送の食材、温泉、プール、農場、屋外アクティビティ、自然を使った庭園など、グランピングを経営する際の、差別化ポイントを数多く所有していることが多いです。

独自性があり、高付加価値な施設体験を提供することで、定常的な集客が見込め、安定した利益を得ることができます。また、既存リソースをグランピングと組み合わせることができれば、後述する土地代や駐車場工事費などの費用が削減できます。結果として、グランピング開業にあたっての初期費用を抑えることができます。

グランピングの開業にあたり気を付けたい支出項目とは?

支出項目とは?

初期費用

ドーム型テントを購入してグランピング経営を始めるというケースで支出項目を解説していきます。まず、グランピングを始めるにあたってほぼ確実に必要になってくる支出項目は「テント購入費用」のほかに、水回りや電気工事などの「設備工事費用」、テント内の「インテリアや備品費用」、テントに付帯する「BBQスペースやウッドデッキ、駐車場などの設置・整備費用」、開業後の「集客費用」などがあげられます。

当然ながら既存の土地がなければ「土地代」や「土木工事代(整地・造成)」もかかります。このあたりは、所有しているリソースをうまく活用できれば初期費用を抑えることができます。ビジネスホテルなどの既存事業者は、隣接している土地を活用するなどして、スモールスタートでグランピング開発を行うこともおすすめと言えます。また、抑えた投資費用は後述するインテリアや体験コンテンツにあてることでメディアなどに取り上げてもらいやすい仕掛けをつくると良いでしょう。

運営費用

一般社団法人日本旅館協会が発表する令和2年度の営業状況等統計調査によると、ホテル・旅館の経費区分としては、人件費、営業費(販売促進費、広告宣伝費など)、業務費(リネン、アメニティ、水道光熱費、通信費など)、管理費(地代・家賃、保険料など)、減価償却費の5つの区分に分けられています。これらの経費項目はグランピングにおいてもほぼ同様と言えるでしょう。

グランピング施設は、その用途柄、ビジネスホテルやリゾートホテルのように都心や一等地に設ける必要はないため、賃貸でも保有でも、地代や家賃といった管理費を抑えやすいことが特徴です。

他方で、グランピング施設は、ビジネスホテルや都市型の観光ホテルとは異なり、季節による繁閑差が生じやすいという特徴もあります。この点、閑散期で売上が下がれば、売上に伴って変動費は下がります。集客やクレジットの手数料、リネン費、食材仕入れ費用など、グランピング事業で負担となりやすい経費項目は変動費であることが多く、閑散期も赤字になるリスクは比較的小さいと言えるでしょう。

また、ゲストの宿泊料金設定についても、ダイナミックプライシングのように時期で料金に差をつけるなど、適切なレベニューマネジメントを行うことで、客室の売り逃しは抑制することができます。これはホテルでもよく取り入れられている方法ですが、一棟貸し系の宿であるグランピング施設でも利用することをおすすめします。

そのため、運営費用の中で特に注意すべきは「人件費」と言えます。この人件費を抑える仕組みさえ作れば、グランピング経営における赤字リスクを軽減することが可能でしょう。

グランピング経営の収益向上のカギは人件費

そもそも宿泊業の人件費率はどのくらいの割合なのでしょうか。他の業界と比較しながら紹介します。

ホテル事業の人件費率はなんと約38%

人件費率

一般的に業界別の人件費率(売上高に対する人件費の割合)は、飲食業が30~40%と高く、建設業が15~30%、小売業は10~30%とされています。これらに対して宿泊業は、一般社団法人日本旅館協会が発表する営業状況等統計調査によると、平成30年度のホテルの人件費率は37.9%と比較的高めであることがわかります。

また、近年、労働者環境を改善する流れにより一人当たりの人件費は増加傾向にあります。つまり、このままいくと人件費率は、ますます高まる可能性があると言えるでしょう。さらに、グランピング事業においては、繁忙期と閑散期の差が大きいため、効率的な人員の確保や業務の平準化がしにくいという課題もあります。そのため、開業前などできるだけ早いうちに人件費削減のための仕組みについて考えておくことは非常に大切です。

さらに、現状グランピング業界の市場規模は拡大傾向にあり、あと数年はこの流れが続くと考えられます。しかしそれ以降は、市場は上限に達し、グランピング業界では宿泊ゲストを呼びこむための価格競争が始まる可能性が高いです。その日のために、今から人件費について考えることで、利益率の高い事業モデルを構築し、同業者と差別化を図る必要があります。また、人件費を抑えることによって、浮いた資金を新たな顧客獲得のために利用できます。

人件費を抑える「無人運営」「フロント省人化」とは?

人件費を抑えるアイデアとして人の仕事の一部をITツールに任せてみましょう。具体的にITを導入できそうな部分は、ずばりフロント業務です。

例えば、宿泊者自身が自分のスマートフォン上でセルフチェックインを行い、そのままスマートフォン上で鍵を受け取ることができれば、フロントでのチェックイン対応をする必要がなくなります。さらに、その鍵が暗証番号型であれば、鍵の預かりや返却対応も必要ではありません。

つまり、フロントに定常的に人を配置する必要がなくなるのです。駆け付けできるスタッフが近くにいれば、必ずしも現地に常駐スタッフを置かずに、無人や省人という体制でグランピング施設を運営できます。加えて、繁忙期と閑散期で売上の差が大きいグランピング事業において、フロント業務を省人化できれば、安定したビジネスモデルが構築できます。

  フルオペレーション フロント省人化
運営体制と人数

チェックインタイム フロント :1人
その他の時間 :1人
(社員:2人、アルバイト:1人)

チェックインタイム フロント兼清掃 :1人
その他の時間 :0人
(社員:1人、アルバイト:1人)

雇用人数 4人・シフト制 2人・シフト制
変換の人件費

25万/月×12カ月×4人+20万×12カ月×1人
=1,440万円

25万/月×12カ月×2人+20万×12カ月×1人
=840万円

※チェックインタイムは15:00-23:00の8時間、1人あたり人件費25万円/月と想定

フロント業務を省人化する想定の人件費を算出すると、年間約600万円の人件費削減につながります。ちなみに、遠隔で鍵を管理する方法は、最近認知度が上がってきたスマートロックを導入することで解決できます。グランピングを始める際は、スマートロックの利用を考えることも、視野に入れておいた方が良いでしょう。

【まとめ】省人・無人のグランピング経営の時代がやってくる

以上、グランピング開業のための初期費用と運営費用を解説して、最後には同業者に差をつけるために、人件費についてご紹介しました。この記事を読んで、グランピング開業への意識が高まり、さらに人件費について考えていただければ幸いです。

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