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公開日2022.10.20

最終更新日2023.07.24

ホテルアプリでセルフチェックイン?事例を調べてみた

前回の記事では、ホテルや旅館などで導入が進むセルフチェックインシステムについて解説しました。今回は、少し角度を変え、最近目立ってきたホテルアプリの活用について考察してまいりたいと思います。実際のホテルでの導入事例もあわせてご紹介します。

アプリの活用で進化するホテルのセルフチェックイン

旅行者

ホテルでのセルフチェックインとは、宿泊者が事前にインターネットなどを通じてチェックイン手続きを済ませることができる仕組みのことを指します。まずは宿泊業界におけるセルフチェックインの傾向や、ホテルの公式スマホアプリの登場による変化について紹介します。

セルフチェックインの普及

近年では、感染症対策の観点から非対面での接客が求められていること、DX化によるフロント業務の効率化や人件費の削減利用者の利便性の向上などの理由から、セルフチェックインシステムを導入する施設が増加しています。

また、オンライン予約システムやスマートロックなど各種システムと連携して機能を拡張することが可能で、施設運営全般に関わる業務改善につなげることができたり、利用者により一層快適な宿泊機会を提供することができたり、といったこともセルフチェックインシステムの普及の一因となっているようです。

ただ、ひと口にセルフチェックインシステムと言っても、サービスの提供会社やホテル事業者によってさまざまな方式が存在しています。

例えば、施設に備え付けのタブレット端末などを利用する手法、ビデオチャットやSkypeなどを利用して遠隔地からの人的対応を組み合わせた手法、利用者のスマホなどに事前に届いたQRコードを施設側のリーダーに読み取らせる手法、逆に利用者が到着時に施設側の用意したQRコードをスマホで読み取る手法など、多種多様です。

アプリの活用がもたらすセルフチェックインの進化

そんなセルフチェックインシステムのひとつの進化系として今回ご紹介したいのが、ホテルアプリの活用です。ホテル業界では自社単体でのアプリの導入は、これまであまり進んでいるとはいえませんでした。

その背景としては、自社独自のアプリを開発・運用していくには大きなコストと労力が必要であると考えられてきたこと、集客に関しては楽天トラベル、じゃらん、るるぶトラベル、エクスペディア、ホテルズドットコムなどOTAと呼ばれる予約サイト(アプリ)への依存度が高かったことなどが考えられます。

しかし最近になって、独自のアプリを導入するホテルが目立つようになってきました。その外的要因としては、スマホの普及率が急速に高まったことが挙げられます。総務省が5月に発表した令和3年「通信利用動向調査」によればスマホの世帯保有率は88.6%と9割に近づいています。スマホの取り扱いに習熟するにつれ、ユーザーの間ではアプリをダウンロードすることへの抵抗感は薄れ、身近なツールとしてアプリを上手に活用するようになってきました。

一方、ホテル側では、競争が激化する中、集客力をより強化したいとの観点から、スマホアプリならではのさまざまな機能に注目しています。アプリ導入によるメリットとしては大まかに次のような事項が挙げられます。

アプリ導入によるメリット

  • セルフチェックイン機能や施設情報・観光情報など利用者に役立つ要素を自在に搭載できる。
  • アプリの登録情報を活用した属性分析に基づく精緻なマーケティング戦略を構築できる。
  • アプリ限定の商品販売やキャンペーンを通じて販売促進や売上の拡大につなげることができる。
  • ポイントカード機能などを付加することでリピーターの獲得につなげることができる。
  • OTAを介さない自社直接の予約を拡大することで利益率の向上につなげることができる。

ホテル・旅館業界におけるアプリ活用の現状

現在、実際に自社アプリを導入しているホテルを見てみると、アパホテル、スーパーホテル、JRホテルメンバーズ、相鉄ホテルズ、東横INNなど大手・中堅のシティホテルチェーン、富士屋ホテル&リゾーツ、都ホテルズ&リゾーツ、東京ディズニーリゾーなどのリゾートホテルグループを中心に拡がっています。

ただ、App StoreやGoogle Playなどで検索してみると、大手のホテルチェーンに留まらず、必ずしも規模の大きくないホテル単体でもアプリの導入が進んでいることが確認できます。前項で、自社独自のアプリを開発・運用していくには大きなコストと労力が必要であると考えられてきた、と解説しました。

しかし最近では、ホテル業界でアプリに対する需要が高まってきたことを反映して、多くのアプリ開発会社がリーズナブルな費用でホテル向けアプリを提供するようになっています。

アプリ開発会社によれば、一定程度定型化されたパッケージをホテルや利用者の特性に合わせてカスタマイズすることで、オリジナルなホテルアプリを比較的低コストに制作することが可能になったそうです。開発期間も従来と比較して大幅に短縮されているともいいます。ホテル業界のDX化の進展が進んでいると言えそうです。

事例に見るホテルアプリ導入の実態と効果

DX

それでは、ホテルアプリは実際にどのような使われ方をしているのでしょうか?また、アプリが利用者やホテル事業者にどのようなメリットをもたらしているのでしょうか?4つの事例をピックアップして見てまいりたいと思います。

アパホテル公式アプリ:利用者の時間を一番に考えたサービスを提供

アパホテル株式会社(本社:東京都港区)は、681店舗(2022年8月5日現在/海外含む)を展開する国内有数のホテルチェーンです。同社が2017年にいち早く運用を開始したアパ公式アプリは、全国のアパホテルを検索して、条件にあった宿泊予約や日帰り予約、オンライン決済の他、アプリ上でチェックイン手続きを完了させる「アプリチェックイン」機能を備えたスマートフォンアプリで、これまでに300万ダウンロードを記録しています。

最大の特徴としては、予約、チェックイン、チェックアウトをいかにスピーディに簡潔に済ませることができるかということを重視した、まさに同社の最大の顧客層である忙しいビジネスマンのニーズにマッチしたアプリとなっていることです。

アプリを通じて予約し、事前に決済を済ませれば、宿泊予定日前日の15時から部屋の指定とともにアプリチェックインが可能となります。アプリチェックインと行うと、マイページにQRコードが発行され、当日はフロント横に設置されたアプリチェックイン専用機にスマホをかざすだけで瞬時にカードキーが発行されます。チェックアウトもカードキーを専用のポストに投函するだけ。まさに利用者の時間を一番に考えたサービスとなっています。

また、アプリ内にポイントを貯めることができ、特にアプリの利用でボーナスポイントが加算される仕組みとなっています。このような配慮も業界最大級の300万ダウンロードという成果につながっているのではないでしょうか。ホテル側から見ると、アプリを通じた予約はOTAを通さない形の直接の予約となりますので、ユーザーが増えれば経営上のメリットも大きいことと推測できます。

スーパーホテル公式アプリ:顔認証チェックインも導入開始

株式会社スーパーホテル(本社:大阪府大阪市)は国内170店舗・海外1店舗を展開する、こちらも国内有数のビジネスホテルチェーンです。2018年にはロゴとブランドコンセプトが一新され、洗練されたイメージのホテルへと生まれ変わりました。オレンジを基調としたコーポレートカラーはアプリにも継承されていて、スマートなインターフェイスを実現しています。

アプリからは、GPSと連動したホテル検索機能を利用でき、地図から選択したホテルを予約することができますし、地図を利用せずに予約することも可能です。

チェックインに際しては、アプリ会員証のQRコードをフロントのチェックイン機にかざすだけ、並ばずに素早く手続きを完了することができます。また、全施設で暗証番号キーを利用したキーレスシステムが採用されているため、鍵を持ち歩く必要がなく、チェックアウトの際はフロントに立ち寄る必要もありません。

アプリに登録すれば、スーパーホテル公式予約会員としてアプリからポイントの登録と確認ができ、時期によってアプリ限定のボーナスポイントキャンペーンなども実施されています。

特筆すべきは、本年6月から一部施設で導入が開始されたアプリを使った顔認証チェックインです。事前にアプリから顔写真を登録しておくと、ホテル入館時に専用端末で瞬時にチェックインが完了します。フロントに並ぶ必要もなく、両手がふさがっていてもチェックイン可能、深夜12時以降に施錠されるホテルのドアも顔パスで入館できます。

現在は、スーパーホテルPremier東京駅八重洲中央口でのみ利用可能ですが、同社では対象ホテルを順次拡大していく予定としています。キーレスシステムの採用や顔認証チェックインの導入など先進性の高さがうかがえる同社。その中でのアプリの積極的な活用は、リブランディングにより刷新されたホテルのイメージと相まって、同社のブランド価値を高めるとともに、利用者の満足度を向上させる重要な役割を担っていると感じさせられます。

JRホテルメンバーズアプリ:スマホがルームキーに変身

「JRホテルメンバーズ」は北海道から沖縄まで全国に89のホテルを擁するJR系ホテルが提供する会員プログラムです。その会員向けのスマートフォンアプリがリリースされたのは昨年1月。アプリ上での会員登録やホテル情報への簡単なアクセス、宿泊予約が可能となっています。また、スマホがルームキーとなる「モバイルキー」が大きな特徴(対応施設は11施設)となっており、サービスの非接触化と利便性の向上に効果を発揮しています。

GPSと連動した予約機能では、地図上からホテルを選択し、料金を確認しながら予約を行なうことが可能です。チェックインは、アプリのタッチだけでスムーズに完了する「スマートチェックイン」に対応。対応施設ではアプリを起動したスマホがそのままルームキーになる「モバイルキー」機能が利用でき、施設利用者は接触を避けて快適に入室することができます。

その他、GPSを利用したホテルまでのアクセス情報に加えて、客室情報、レストラン情報、おススメの観光地情報にもアクセスでき、利用者のより充実したホテルライフをサポートする設計になっています。

 

アプリが会員証を兼ねていますので、アプリから会員としてのポイントの登録や保有ポイントの確認ができますし、ポイントは宿泊だけでなく、ホテル内のレストランやルームサービスの利用でも貯めることができます。ユーザーの利便性がよく考慮されたアプリだと言えます。

富士屋ホテルズ&リゾーツ公式アプリ:アプリ限定プランやクーポンで得するアプリ

富士屋ホテルズ&リゾーツは、1878年に創業し箱根のランドマークとしても知られる富士屋ホテルを中心に、現在では各地にホテル6店舗、ゴルフ場、ミュージアムなどの施設を運営しています。その歴史ある企業が昨年11月公式アプリをリリースしました。

アプリの特徴としては、アプリ限定の特別な宿泊プランや日帰りプランが利用できること、宿泊やオンラインショップで使用できるクーポンの発行を受けることができること。ダウンロードすることで施設がお得に利用できるアプリです。また、施設紹介に関する情報が充実しており、各施設だけでなく、風景やホテル自慢の食事やスイーツなど写真がふんだんに使用されていて、施設の魅力が伝わるコンテンツとなっています。

このアプリは、先に紹介した3件のアプリと異なり、セルフチェックイン機能は付加されていません。これは出張者などビジネスを目的とした利用者ではなく、ゆっくり休暇を楽しむことを目的とした利用者が多いという施設の性質を反映したものでしょう。

その一方で、限定宿泊プランやクーポンなどによって利用者を惹きつける、いわばマーケティングの側面の強いアプリになっています。ホテル側には、若年層や新規顧客へのアピール、アプリを通じた販売促進、直接予約の底上げなどの効果が期待できるのではないかと考えられます。

【まとめ】加速するホテルアプリ導入の流れ

スマホアイコン

ホテルアプリの活用によるセルフチェックインについてご紹介しました。事例からは、ホテル検索、予約、チェックイン、チェックアウトなどホテル利用時の必須事項がアプリによって簡素化され、利用者の利便性を高めていることがわかります。それに加え、ホテル(チェーン)ごとの異なった機能が付加されていて、そこにはそれぞれの経営コンセプトや顧客アプローチの方向性が反映されていることもわかります。

先に述べたように、スマホやスマホアプリが生活の一部となり、アプリ導入のコストや時間のハードルが低くなりつつある中、ホテル業界でのアプリ導入の流れは今後も加速していくものと思われます。アプリを導入しようとする際には、アプリで何を実現したいのか?という明確なヴィジョンを持っておくことが重要だと考えさせられました。

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