物流施設における生産性向上の障壁とは?物流施設運営によくある課題
オンラインショッピングが普及し、EC市場が拡大したことで、物流施設への需要が高まっています。施設管理者様にとっては、企業をさらに成長させる好機となるでしょう。企業の成長のために、生産性の向上は必須となります。本記事では生産性の向上の大きな妨げとなっている2つの課題について解説していきます。
生産性向上はなぜ必要なのか?
生産性とは、投資に対してどれほどの成果を生み出せたのかを表す指標になります。投資には、従業員の人数や作業時間、保有する施設や機械が含まれています。そもそも生産性はなぜ向上する必要があるのでしょうか。
少子高齢化の進む日本では、年々労働人口が減少すると予測されています。みずほ総合研究所が2017年に発表したデータによると、40年後の2060年には、40%以上の労働人口の減少が推測されています。労働人口の減少が予測される日本では、少ない人手で、より多くの成果を生み出すことが必要となります。また、生産性の向上にはいくつものメリットがあります。ここでは、生産性を高めることで得られる3つのメリットについて簡単にご紹介します。
一つ目は、利益の向上です。生産性が高いということは、少ない投資で多くの成果を生み出せるということです。生産性が高まるほどより多くの成果、つまり利益の創出となり企業の成長へとつながります。
二つ目は、新たな取り組みを行う余裕が生まれることです。生産性が向上することで企業に金銭的、時間的な余裕が生まれます。生まれた余裕を新たな施策や設備への投資に当てることで、さらなる企業の進化へとつながります。
そして三つ目は、従業員の気持ちの前向きな変化です。生産性の向上は残業や長時間労働などの解消にもつながるため、従業員の定着率やモチベーションの上昇も期待できます。これにより、従業員一人一人の作業効率も上がり、さらなる生産性の向上につながるでしょう。
【まとめ】生産性を高めることで得られる3つのメリット
- 利益の向上
- 新たな取り組みを行う余裕の創出
- 従業員の気持ちの前向きな変化
特に従業員の定着率やモチベーションの上昇は、今後さらなる労働人口の減少が予測されている日本において重要な要素となるでしょう。
しかし、現状の施設状況を見てみると、残業や長時間労働を解決するような生産性の向上は非常に困難です。そこには、いくつかの生産性の向上を阻む壁が存在するからです。
生産性向上を妨げる2つの壁とは?
生産性の向上は企業にとって今後欠かせないことです。生産性の向上のためには、従業員が働きやすい環境を整える必要があります。高いモチベーションを持って作業にとりくめる環境は、従業員一人一人の作業効率を上げるからです。
しかし、現在の物流施設の多くでは、従業員にとって働きやすい環境を用意することは容易ではありません。実際に従業員が作業する現場には、課題が数多く存在するからです。ここでは、多くの物流施設を悩ませる生産性向上の妨げとなる2つの大きな壁について見ていきます。
従業員を苦しめるトラック長時間待機問題
物流業界において、長年問題視されてきたトラックの長時間待機問題。一定時間帯にトラックが集中することで、受付や誘導、他のトラックの作業終了をドライバーが長時間待たされる問題です。
上の図は、国土交通省が発表したある物流倉庫における荷待ち時間の分布を表しています。図を見ると、1時間以上の待機を強いられるケースが数多く発生しており、中には3時間以上の待機を強いられているケースも存在します。トラックの長時間待機は、ドライバーだけでなく、倉庫内作業者にも大きな負担を強いています。
普段の作業では、作業の合間を縫って息をつくこともできます。しかし、待機車両がある間はどうでしょうか。従業員は、待機車両がなくなるまで永遠と作業をこなしていかなければなりません。待機トラックの台数が多ければ休む間もなく、長時間労働や残業を強いられることになります。
このような環境下では、待機車両が増えるほど従業員の疲労やストレスが増していくことになるでしょう。また、作業が激務化するほど、ミスも増えてしまいます。度を越した負荷は従業員の集中力を奪い、生産性の低下につながります。
実際の物流施設であった問題
- 朝の受付開始前に全体の3割もの入荷車両が集中し、倉庫作業者のシフトと合わなかった。待機時間の長さからサプライヤーやドライバーに「納品したくないセンター」といわれていた。
- 作業効率の悪さから、長時間の待機をドライバーに強いたことで、多くのクレームがよせられた。ドライバーに「待たされる倉庫」だというイメージを持たれてしまったことで、納品を後回しにされ、従業員の残業の原因となっていた。
トラックの待機問題を解決するには、トラックが施設を訪れる時間を分散させる必要があります。しかし、トラックのドライバー側が施設の利用状況を見えない中では、分散を図ることは難しいでしょう。待機問題を解決するにはまず、施設側の利用状況を「見える化」し、ドライバー側に伝達することが必要となります。
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モチベーションを下げる作業内容
二つ目の壁は従業員のモチベーションを下げてしまうような作業内容の存在です。物流施設の中には誰にでも簡単にこなせるような事務的な作業や単純な作業がいくつも存在しています。しかし、簡単にこなせるような作業でも数や回数が多くなることで、従業員への負担が増し残業や長時間労働の原因となっています。誰にでもできる仕事が原因で残業や長時間労働を強いられた従業員は、不満を抱きモチベーションが下がってしまうでしょう。
また、事務作業や単純作業だけを任される従業員は、仕事に対してやりがいを感じることができるでしょうか。やりがいのない作業は、ただこなすだけになり従業員の作業効率を下げています。従業員のモチベーションを高めるためにも、使命感ややりがいを持って取り組めるような作業を多く行わせる必要があります。
その一方で、事務的な作業や単純作業でも必ずこなさなければなりません。今後日本の労働人口はさらに減るため、人手不足が深刻化すると予測されています。このままでは、やりがいの感じられない仕事をさらにこなしていかなければならなくなるでしょう。そこで、事務的作業や単純作業はITや機械に任せ、従業員には本当に人の手が必要な作業だけに集中させることが今後必要になっていくのではないでしょうか。
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【まとめ】IT技術で壁を超える時代へ!
生産性向上の壁となる "トラックの長時間待機"、"作業内容"という2つの課題。ともに長年問題視されつつも、なかなか解決できなかった課題です。しかし、2つの課題を解決することは、従業員の生産性向上につながるだけでなく、ドライバーやテナントの満足度の上昇にもつながります。ドライバーやテナントの満足度は、契約の更新や新規契約の獲得につながるのではないでしょうか。
そこで注目すべきは、IT技術です。IT技術を組み込むことで、トラックのスムーズな誘導や一定時間にトラックが集中する現状を改善することができます。
また、誰にでもこなせるような事務的な作業や単純作業をIT技術を用いることで、人の手が必要なくなります。手が空いた分、従業員はやりがいの感じられるような、人の手が必要とされる仕事に集中できるようになります。IT技術を用いることで、従業員の負担を減らし業務を効率的に行うことが可能となります。生産性の向上を妨げている壁をIT技術を用いて解決していくことが、物流施設を運営していく上で重要になってくるのではないでしょうか。