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公開日2023.07.12

長期滞在型ホテルにおすすめの運営体系、フロント業務効率化について

「長期滞在型ホテル」の開業が、外資系を含め日本全国で相次いでいます。日本ではなじみの薄い宿泊スタイルですが、訪日する外国人観光客は長期的な滞在をする傾向にあるため、需要が高いのが現状です。長期滞在型ホテルならではの運営や問題点、フロント業務を効率化する方法についてお伝えします。

外資も続々参入!長期滞在型ホテルの需要が急増!

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長期滞在型ホテル」は、コロナ禍以前よりインバウンドからの需要はあるものの、供給が少ないことが問題となっていましたが、最近になって開業が相次いでいます。

外資系や大手も続々と参入して注目をあつめている長期滞在型ホテルとはそもそも何か、カテゴリや、長期滞在型ホテルが選ばれる理由などをお伝えしましょう。

そもそも「長期滞在型ホテル」とは

「長期滞在型ホテル」は、シンプルに「滞在型ホテル」ともいわれ、客室を一定期間借りるためのホテルです。外国人旅行者の多くは、およそ1週間~1カ月の滞在となるため、通常のホテルで行うと、費用が高額になります。長期滞在型ホテルは、長期間の滞在がしやすくなる工夫や柔軟なサービス、料金体系が整っているホテルです。

長期滞在型ホテル料金設定の例

通常1泊10,000円以上するホテルでも、一週間や一ヶ月単位の設定があり、割安となっている。

▼中堅ホテルAの料金体型

  • 1週間の滞在金額:50,000円~
  • 1か月の滞在金額:145,000円~

利用者の層は、休暇のために同じ場所でのんびりと過ごしたい人や、ホテルを拠点として近隣の観光地を周遊する人、または、ビジネスの長期的なプロジェクト等で利用する人など、さまざまです。そのため、「長期滞在型ホテル」と一口にいっても、スタイルやカテゴリが多様化しています。

意外と多い!長期滞在型ホテルのカテゴリ


様々な目的で利用される長期滞在型ホテルですが、そのカテゴリを見ていきましょう。

レジデンシャルホテル

レジデンシャルホテル(Regidential hotel)の「レジデンシャル」には、「住居用の」という意味があります。ホテルにいながら、まるで自宅のように過ごせることが大きな特徴です。

そのため、生活するための設備である食器や冷蔵庫、洗濯機などが完備されており、リビングスペース、キッチン、独立したバスとトイレスペースがあります。

ただし、それらはホテルクオリティであり、清潔で洗練された空間と手厚いサービスなど、まるで都会の中の別荘のようにホテルを利用することができます。

コンドミニアム

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コンドミニアムもレジデンシャルホテルと同様に、生活をするための設備や備品がととのっています。ただし、コンドミニアムの場合はどちらかというと観光地やリゾート地に多く、のんびりとリフレッシュをするために利用されることが多くなります。

アパートメントホテル

アパートメントホテルは、休暇やリフレッシュのためというよりは、アッパークラスの長期主張や単身赴任に利用されることがメインになります。キッチンや洗濯機等はそろっていますが、清掃サービスやレストラン、ルームサービスなど、ホテルとしてのサービスを受けることを前提としたホテルです。

ライフスタイルホテル

ライフタイルホテルは、近年海外ではメジャーになってきたホテルのカテゴリで、日本では2014年に、アンダーズ東京が開業しています。スタイリッシュでデザイン性が高いのが特徴ですが、宿泊以外の付加価値や、ゲストの生活スタイル、好みに柔軟に合わせた滞在ができるホテルで、長期滞在にも対応します。

マンスリー/ウィークリーマンション

マンスリー/ウィークリーマンションは、滞在を楽しむというよりは、観光やビジネスの拠点としての意味合いが強くなります。生活するための備品は整っていますが、通常のホテルとしてのサービスはなく、お得に長期間借りたい場合に選ばれるスタイルです。

民泊

民泊は、旅行者に普通の住宅の全部、又は一部を宿として提供する宿泊施設です。2018年に住宅宿泊事業法が施行され、急増するインバウンド対策として急増しました。大きな組織が運営しているわけではないため、ゲストの好みや、長期滞在などにも柔軟に対応することができます。

1-3.外国人旅行客が長期滞在型ホテルを選択するわけ

日本を訪れる外国人観光客が長期滞在型ホテルを選択するのは、単純に滞在日数が「平均20泊」と、かなり長いからです。海外では、1か月間のバケーションなど、長期休暇が当たり前となっています。そのため、「長期滞在型」に特化したホテルは珍しくありません。

一方日本では、国民1人当たりの平均宿泊数は「2泊3日」が一般的(参照:公益財団法人日本交通公社「日本人の国内旅行」)で、長期宿泊に対応している宿泊施設はさほど多くありませんでした。

長期旅行の場合、移動するたびに大きな荷物を持ち運ぶのは大変です。そのため、アクセスの良い大きな都市などの滞在型ホテルを拠点として借り、そこから日本各地へ観光にいくなど、便利に利用しているのです。

長期滞在型ホテル運営で気をつけるべき3つのこと

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長期滞在型ホテルは、単純に、「通常のホテルのプランに長期間の設定をすれば良い」というわけではありません。長期滞在ならではの問題点があり、運営側はそれに対応できる体制を整える必要があります。

長期滞在型ホテルで気をつけるべきことは次の3つです。それぞれ解説していきましょう。

長期滞在型ホテルで気をつけるべきこと

  • オペレーションの効率化に取り組む
  • 多国籍に対応できるようにする
  • 無銭飲食「スキッパー」対策をする

オペレーションの効率化に取り組む

長期滞在型のホテルは、オペレーションの効率化に取り組む必要があります。長期滞在型で宿泊しているゲストは、稼働率にムラができやすく、さらに行動を把握しにくいため、業務が煩雑で非効率になるためです。

たとえば、一般的なホテルなら、1日、又は2〜3日空室があったとしても、パズルのピースのように、うまく埋まる可能性は十分にあります。しかし、滞在型は長期で予約を入れるため、空室がうまく埋まらない可能性が高くなるのです。タイミングが合わないと予約が入らないため、稼働率にムラができてしまいます。

また、滞在型はチェックイン、チェックアウトのピークの時間が曖昧なため、スタッフの配置も計画的に行うのは難しいでしょう。そのため、オペレーションを効率化し、どのような場合にも迅速に対応できるような体制を整えておくことが、円滑な運営の鍵となります。

多国籍に対応できるようにする

長期滞在型ホテルのゲストは、外国人旅行者がメインとなる可能性が高くなります。そのため、少なくとも英語、中国語、韓国語などには、対応できる体制が必要です。多くの外国人旅行者は、宿泊先でのコミュニケーションに対して不安を持っているからです。

観光庁が行った外国人旅行客のアンケートによると、「旅行中に困ったこと」の問いに対し、一番多い解答が、「施設などのスタッフとのコミュニケーションが取れない」26.1%、次に「多言語表示の少なさ・分かりにくさ」が21.8%と、言語に対する不満が見られました参考:観光庁「訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」)

多国籍言語に対応する手段としては、多言語翻訳ができるモバイルをフロントに置く、ピクトグラム(絵文字)を多用するなどが考えられるほか、最新のITシステムの導入も有効です(システムについては、次の3章で詳しく解説します)。

▼国籍が違ってもわかりやすいピクトグラム

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また、言語だけではなく、食事についても多国籍への対策を考えておいたほうが良いでしょう。特に、ベジタリアンや宗教上口にできない食文化、食習慣を持つ人の来日は増えています。レストランや売店でのメニューに加えるなどの対策が必要です。

食事提供をしないスタイルのホテルでも、食事についてのお問い合わせは頻繁にあります。ゲストをがっかりさせないためにも、ホテル周りのレストランやショップなどの把握を徹底し、外国語のガイドマップなどを用意するとよいでしょう。

無銭宿泊「スキッパー」対策をする

「スキッパー」とは、ホテルの料金を意図的に支払わずに逃亡する人、いわゆる「無銭宿泊者」を指します。長期滞在型ホテルは、性質上、ゲストがホテルに帰らない場合もあり、運営側も連泊者の出入りを注意深く管理しきれないので、そのまま立ち去る可能性が高くなるなのです。


長期滞在の場合、宿泊料金はかなりの額になるので、被害も大きくなります。スキッパー対策として可能なのは次のようなことです。その他、できる限りスタッフによるお声がけをし、怪しい行動がないか、さりげなく観察も行いましょう。

「スキッパー」対策の例

  • 料金を先払いにする
  • デポジット(保証金制度)を導入する
  • 一定期間(3日、1週間など)ごとに一度精算をしてもらう
  • 身分証明をしっかり行う
  • 目立つ場所に監視カメラを設置する

長期滞在型ホテルの効率化を促進する4つのシステム

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長期滞在型ホテルは、業務が変則的になりやすく、効率が悪くなりがちです。長期間宿泊するための手続きや、精算にも時間がかかりますし、一日のピークも読みにくいためです。また、長期宿泊ならではの要望や、サービスも求められるでしょう。

人手をかけず、できる限り効率よく運営するには、ITシステムなどをうまく活用することをおすすめします。システムは日常業務を自動化するので、スタッフはゲストへのサービスに専念することができ、顧客満足度も向上するなどのメリットもあります。

セルフチェックインシステム

セルフチェックインシステムは、ゲストのスマートフォンを利用して、チェクインやチェックアウトができるシステムです。ホテルには、モバイルを数台用意しておくだけで、ほとんどのフロント業務を自動化できます。

外国人旅行者にも有効で、多国籍言語での対応ができる他、パスポートの読み取りや情報のデータ化など、人が対応するよりもスムーズなチェックインが可能になります。

スマートロック

スマートロック(電子キー)は物理的な「鍵」ではないので、手間や時間を大幅に短縮できます。ゲストが持っているスマートフォンを利用したアプリや暗証番号で、簡単に客室の開閉が可能です。鍵の管理や受け渡し業務がなくなるため、フロント業務が簡素化します。

さらに、客室の解錠状況や鍵の有効期限なども管理画面で一元管理できることから、セキュリティ面でも安心でしょう。外国人旅行者にとっても鍵の持ち歩きによる紛失や、盗難などのトラブルも回避することができ、身軽に行動しやすくなります。

キャッシュレスシステム

キャッシュレス決済ができるシステムは、業務効率化という点からも非常に優れています。現金の取り扱いは、準備や管理、そして締めの作業など、手間のかかる業務ですが、キャッシュレスにすることで、次のようなメリットがあります。

キャッシュレスにするメリット

  • 釣り銭の間違いなど、ヒューマンエラーがなくなる
  • お釣りの準備をしなくてもよくなる
  • フロントで現金管理をしないので、セキュリティ面で安心できる
  • レジの締め作業がすぐに終わる

また、滞在費用が大きくなりがちな長期滞在型ホテルでは、キャッシュレスシステムは必須といえます。日本では、まだ現金支払いがメインですが、キャッシュレス決済は世界のスタンダードとなっており、導入していない施設は選ばれない可能性もあります。

セキュリティシステム

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長期滞在型ホテルは、一般的なホテルでのゲストの行動パターンが当てはまらないため、セキュリティには十分に注意するべきでしょう。とはいえ、24時間フロントにスタッフを配備し、監視するのは、コスト的にも難しいといえます。

セキュリティとしてのシステムは、直接的なものとして「防犯カメラ」が考えられます。しかし、ITシステムを総合的に活用することで、高い安全性を実現します。

キャッシュレスシステムによる事前決済

事前決済が可能なシステムを導入すると、支払いのトラブル防止やスキッパーなどの予防に高い効果を発揮します。また、フロントで高額現金を管理することがなくなるので、セキュリティアップにもなります。

スマートロックによる客室管理

スマートロックには、宿泊期間だけ使える有効期限月の暗証番号を発行できるので、鍵の使い回しやコピーが不可能です。また、客室の利用状況を常時管理できるので、不審な動きを把握しやすくなります。

スマートロックを利用したエントランスのオートロック化

エントランスとスマートロックを連動させ、利用する客室と同じ暗証番号を使って解錠できるシステムです。ゲスト以外の不正侵入を、エントランスから防ぐことができます。

エレベーターのセキュリティロック

客室と同じカードキーやスマートロックの暗証番号がないと、エレベーターが反応しないシステムです。同じホテルのゲストでも、客室以外のフロアーへ立ち入ることができません。女性専用階などにも有効です。

【まとめ】長期滞在型の運営体系とフロント業務の効率化

いかがでしたでしょうか。インバウンドの復活とともに、長期滞在型ホテルの需要は、今後もますます増える見通しです。ただし、滞在型ホテルの円滑な運営のためにも、フロント業務の効率化は必須です。中でもITシステムの導入は、日常業務を自動化し、フロントの負担を大きく軽減します。多国籍対応のシステムなら、外国人旅行者にとっても、便利にホテルを活用できるでしょう。

長期滞在型ホテルについて、理解が深まりましたら幸いです。

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