スマートロックにおけるQRコード解錠のメリット・デメリットとは
コロナ禍において普及が進んだITツールの一つにスマートロックが挙げられるでしょう。オンライン上で鍵の受け渡しができるので非対面による感染症対策につながるほか、さまざまなメリットがあります。その中でもさまざまなシーンで活用が進む「QRコード」をスマートロックの解錠方法として利用するメリットとデメリットを解説します。
スマートロックのQRコード解錠とは?
※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
スマートロックのQRコード解錠を解説するまえに、そもそもスマートロックとはどのようなものかを説明しましょう。なお、本ブログでは、ホテルやスペース貸しビジネスなどにおける、スマートロック、そして、QRコード認証について紹介していきます。「ビジネスシーン向け」の内容である点はあらかじめご了承ください。
スマートロックとは
スマートロックは、物理的な鍵の代わりにスマートフォンなどを用いて鍵の解錠・施錠が行える機器、および、その管理や制御をするシステムのことを指します。
近年、鍵の受け渡しが必要なホテル、コワーキングスペース、貸し会議室などのスペース貸しビジネスにおいては、感染症対策や人件費削減の観点で「非対面」で鍵の受け渡しができることで注目を集めています。
さらに、解錠・施錠ログの取得により入室状況の管理ができる、物理鍵の紛失リスクがなくなる、受付やフロントオペレーションを自動化できるなど、ビジネスシーンにおける入室・入館に関わるセキュリティの向上や業務の効率化に大きく貢献します。
また、物理的な鍵の受け渡しがなくスマートに入室できることで、施設自体が先進的で洗練されたイメージを与えることもできるでしょう。
このように便利なスマートロックですが、解錠方法にはいくつか種類があります。
スマートロックの解錠手段まとめ
- 暗証番号を利用するタイプ
→ 暗証番号をテンキーリーダーに入力して解錠 - スマートフォンで解錠するタイプ
→ Wii-FiやBluetoothなどを経由して、スマートフォンのアプリなどから解錠 - ICカードを使うタイプ
→ 事前に登録しておいたカードを認証リーダーにかざして解錠 - 生体認証を利用するタイプ
→ 事前に登録した顔や指紋などで認証して解錠 - QRコードを利用するタイプ
事前に登録されたQRコードを機器にかざして解錠
- このようにいくつも解錠方法があるスマートロックですが、ここからは、QRコードを使ったスマートロックについて説明していきましょう。
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QRコードをつかったスマートロック
QRコードは、スマートフォンで読み込むだけで、多くの情報や説明などが簡単に手に入ることで、広い世代で利用されるようになりました。特に近年では、感染症対策としての後押しもあり、現金に代わって「QRコード決済」の普及も進んでいます。
そんなQRコードを使ってドアの解錠を行えるのが、QRコード認証が可能なスマートロックなのです。QRコード認証を使ったスマートロックの普及が進んでいるのは、その手軽さや利便性にあります。
他の認証方法の場合…
たとえば、暗証番号を使った解錠方法では、メールや受付・チェックイン時に受け取った暗証番号をドアに設置されたキーパッドに入力する必要があるため、解錠操作に数秒程度の時間がかかります。
また、指紋や顔を使った認証も認証スピードは早くて便利ではありますが、事前に個人情報を登録をする必要があるため、1度きりや不定期の利用の場合では、情報提供や登録の手間の方が大きくなります。さらに、個人情報保護の観点で公共のシーンにおける生体認証の活用にはまだまだハードルが高いことも事実です。
このように、ほかの認証方法であげられる「暗証番号の入力の手間」、「解錠までにかかる時間」、「通信のためのタイムラグ」、「個人情報提供や登録の手間」、「個人情報保護の問題」などをバランスよく解決できるのが、QRコード認証と言えるでしょう。
QRコードの表示方法は自由度が高い
QRコード認証はツールに縛られないことも特徴と言えます。
カードやスマートフォンアプリの場合、専用のカードを使う必要があったり、専用のアプリをダウンロードする必要があるなどの制約が発生します。他方、QRコードだと、QRコードを表示できさえすればいいので、例えばLINEやメールでQRコードを送ったり、施設のアプリ上で表示したり、その場でレシートに印字するようなことも可能です。
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QRコード解錠の安全性は大丈夫?
QRコードは、スマートフォンなどで簡単に送ることができるため、宿泊施設やレンタルスペースなどでは、同じ部屋のゲスト同士で手軽にQRコードをシェアして使うことができます。反面、一度利用した人が不正利用するなどのリスクなどはないのでしょうか?
実は、ゲストに提供されるQRコードはそのゲスト固有のものであり、予約した時間に限り使えるように有効期限を設定できます。つまり、予約や利用時間以外にQRコードを使っても不正に入ることはできないのです。
また、利用情報を細かく区切ることも可能で、ゲストによって、この区域は入れるがこのスペースには入れない、または利用する曜日や時間帯を制限する、など細かい設定をすることも可能です。
これにより、物理的な鍵にありがちな不正利用や不正侵入などを未然に防ぐことが可能で、この点においては安全性も高いといえるでしょう。
スマートロックにおけるQRコード解錠のメリット
QRコード解錠のメリットは他にもたくさんあります。運営者側のメリットやゲストにとってのメリットをまとめてみました。
- QRコード認証を採用する運営者側のメリット
- 鍵の紛失や持ち帰り、不正利用などのリスクを回避できる
- 鍵の受け渡しを非対面で行えることで、人件費を削減できる
- 完全非接触で解錠できることで感染症対策につながる
- 感染症対策としてゲストにアピールできる
- 鍵の管理や受け渡しが無くなり、業務の効率化が進む
- ゲストごとに利用できる時間や場所を設定でき、セキュリティアップになる
- 他のシステムと連携することで無人運営が実現する
- QRコードを採用するゲスト側のメリット
- 非接触で鍵の受け渡しができるので衛生面で安心
- 鍵の持ち歩きがなく、鍵を受け取ったり返却する手間が省ける
- チェックインなどの手続きがスムーズになり、時間短縮となる
このようにさまざまあるメリットの中でも、特に押さえておきたい3つについて説明しましょう。
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鍵の受け渡しを非対面で行えるので人件費を削減できる
宿泊施設やレンタルスペース、貸し会議室などで一番問題になるのが「鍵の受け渡し」ではないでしょうか?鍵の受け渡しのためだけに人を配置する必要があり、人件費がかかる上、鍵の管理も意外と大変です。
しかし、QRコードを使ったスマートロックなら、物理的な鍵の代わりに「QRコード」をゲストに送信するだけで済むようになります。現地にあるセルフチェックイン端末を経由してレシートに印字して出力するような方法もあり、受け渡し方法もシーンに合わせて柔軟に対応できます。
このようなことから、他のシステムと連携し、スタッフの省人化や無人化を実施する施設も増えています。人件費がかからなくなった分、料金やサービスに反映できるので、顧客満足度が上がるケースも珍しくありません。
他方で、非対面で鍵の受け渡して受付業務の省力化をしたいのであれば、「暗証番号」で認証するスマートロックの場合も同様のことが実現できます。それでは、暗証番号で解錠するスマートロックにはないQRコード認証独自のメリットを紹介します。
完全非接触で解錠できることで感染症対策につながる
暗証番号でドアを解除するスマートロックの場合、読み取りリーダーに暗証番号を打ち込む必要があります。コロナ禍では特に、不特定多数が利用するキーパットを触れることに抵抗を感じる人も少なくはないでしょう。
その点、QRコード認証なら、読み取り部にQRコードをかざすだけで解錠できるので、物理的な接触を最小限に抑え、入室者に安心感を与えることができます。
スマート入室体験を提供できる
最近ではスマートフォン、スマートストア、スマートカーなど、「スマートさ」を意識した施設や物が増えています。日本では「ほっそりした」などと使われがちですが、スマートには「頭のよい、洗練された、最新の」などの意味があり、最近ではIT技術によって高度に快適で省エネルギー化されたシステムを表現する言葉となっています。
スマートフォンを使った QRコード解錠は、従来の手間のかかる鍵の受け渡しを無くし、ゲストに快適でスマートな入室体験を提供することが可能になります。認知が進んでいるとはいえまだまだ珍しいシステムなので、ゲストは鍵のいらないスマートな体験に驚きつつ、その施設に特別な思い出を作っていただけるかもしれません。
弊社の製品では、RemoteLOCK 8j-Q および TOBIRA がQRコード解錠に対応しています。解錠イメージを動画にしましたので、ぜひご覧ください。
スマートロックにおけるQRコード解錠のデメリット
一般的な認知が広がり、便利に使えるQRコードですが、やはりデメリットも存在します。
スマートフォンやQRコードの操作に慣れていない人には…
ゲストの中には、スマートフォンの操作に慣れていない高年齢層の方や、QRコードの使い方がわからない方もいらっしゃいます。場合によっては、「施設として不親切だ」と捉えられるケースもあり、顧客満足度を下げる一因になりかねません。
また、QRコード解錠が一般的ではない今のうちは、解錠方法について個別に丁寧な説明をしたり、わからないことがすぐに聞ける体制も必要となります。たとえば、ドアの前まで同行し、実際に実演することで不安も解消されるでしょう。さらに、QRコードを紙に印刷して渡す場合は、紛失しないように説明することも必要となります。
解錠端末やQRコードを出力する機器に依存したトラブルも
スマートロックを導入すると、物理的な鍵の受け渡し業務が不要となったり、鍵の紛失トラブルから解放されることで業務の効率化が進みます。一方で、便利さに慣れてしまうと、ついついシステムや機器に頼ってしまい、いざという時に対応が後手になる可能性もあります。
たとえば、紙にQRコードを印刷してお渡しする場合、システムのトラブルや紙詰まりで QRコードが印刷できず、鍵の受け渡しができなくなるリスクもあります。スマートフォンを利用している場合は、ゲスト側のトラブルも想定されるでしょう(充電切れ、紛失、アプリが動かないなど)。
この点、暗証番号の場合は、口頭(対面や電話)やメールで番号をお伝えすることも可能ですが、QRコードの場合は口頭では伝えられないため、万が一の時は駆けつけなどの対応も検討しておく必要があるでしょう。
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スマートロック自体の価格が高額になりやすい
QRコード解錠を利用したスマートロックは、「読み取り」という機能が付加されている分、他の機種に比べて本体価格が高くなる傾向にあります。さらに動作も、一般的なスマートロックは乾電池なのに対して、QRコードを利用したスマートロックは読み取りリーダー自体に電源供給が必要となる場合もあり、工事費用も高額となる場合があります。
ただし、リーダー自体に電源供給があることで、電池切れのリスクは無くなり、日々のチェック作業も簡略化できるので、安心して利用できるというメリットはあります。
さまざまなスマートロックがある中で、QRコード認証は管理者と入室者の双方にとって利便性の高い解錠方法として今後ますます普及することが予想されます。他方で、QRコードの場合、その発行、表示、受け渡しなどはシステム化することが前提となり、その過程のどこかでシステムトラブルが起きると緊急対応がしづらいというリスクもあります。
QRコード解錠を標準の解錠方法として運用したい場合も、万一の場合に備えて、暗証番号などほかの方法でも解錠できるスマートロックを選ぶことをお勧めします。
【まとめ】QRコード解錠のスマートロック メリット・デメリットとは?
いかがでしたでしょうか。意外と種類が多いスマートロックの中でも、QRコード解錠の特性は、その手軽さにあります。ドアに設置している読み取りリーダーにかざすだけで、ドアの解錠ができますし、スマートフォンに表示させることも、レシートなどに印字することも可能なので、お客様の層に合わせた使い方もできるでしょう。また、非接触でドアの解錠ができることから、感染症対策としても安心感があります。
とはいえ、QRコードの利用に慣れていない方にとっては、使用するのに戸惑いを感じるかもしれません。しかし、QRコードは一度利用すれば簡単に操作を把握することができます。丁寧な説明によって、鍵のいらないスマートな最先端の体験を味わっていただくことができるでしょう。
スマートロックは、ビジネスや入室に利便性や快適性をもたらしてくれますが、すべてにおいてシステムに依存するのは危険です。スマートロックなどの技術を活用しながらもおもてなしやサービスの形をどのように発展させるかによって、いっそう顧客満足度も高くなるはずです。
参考にしていただけましたら幸いです。