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公開日2021.10.27

最終更新日2023.10.05

ホテル運営の完全キャッシュレス化におけるメリット・デメリットとは

支払いの「キャッシュレス決済」が急拡大しています。政府も、2025年の大阪万博までにキャッシュレス決済を40%にまでに引き上げることを目標としており、ますます加速する傾向です。ホテル業界においてもキャッシュレスの導入は進んでいますが、すでに「完全キャッシュレス決済」で運営を始めたホテルも登場しています。ホテル運営のキャッシュレス決済にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。詳しく解説します。

キャッシュレス決済とは

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キャッシュレス決済とは、物理的な現金(紙幣・硬貨)を使わずに、商品やサービスなどの支払いをする方法」を指します。以前よりクレジットカードの使用は一般的に行われていましたが、交通系のSuicaや、nanacoカードなどの電子マネーを使ったプリペイドカードの登場で一気に普及しました。さらにQRコード(バーコード)決済も登場し、多様化が進んでいます。

日本でも進むキャッシュレス化

諸外国ではキャッシュレス決済が進んでいる国が多く、特に韓国での普及は96%と高い水準を誇っています。イギリスや中国、オーストラリアなどでも広く普及が進んでおり、日本に観光に来た旅行者が、現金しか利用できない店舗の多さに不便を感じることも多いようです。

そもそも日本では、諸外国に比べ「現金」の利用頻度が高い傾向にありました。紙幣の品質が高く、偽造が難しいことから信頼性が高いこと、また、治安がよくて現金の盗難リスクが低いことから、キャッシュレス決済にする必要性が少なかったといえるでしょう。

しかし、外国人観光客の増加に伴い必要に迫られたことや、クレジット決済よりも気軽に使えるさまざまなタイプの電子マネーが登場したことで、日本でもキャッシュレス決済を利用する人が一気に増加しました

さらに、コロナの影響で、非接触で支払いが完了するQRコードを使った電子マネーが注目されるようになり、2020年時点での普及率は約30%にまで達しました。近年では年率3%程度でキャッシュレス比率が増加しています

そんな「キャッシュレス決済」にはどのような種類があるのでしょうか。それぞれの特徴を見ていきましょう。

日本でも進むキャッシュレス化

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クレジットカード決済

消費者庁が2021年1月に行った調査によるとによると、キャッシュレス決算の手段として一番利用頻度が高いのは、依然としてクレジットカードになりました。ただし、令和元年に調査した時点よりもポイントが下がり気味であり、最近では少額の支払いは電子マネーを使う人が増えているようです。

とはいえ、他の決済手段にくらべて、作成するには審査があり信用度が高いこと、また大きな金額が利用でき、後払いできることから、クレジットカード自体はこれからも必要とされる決済方法といえるでしょう。

デビットカード決済

デビットカードは、基本的に使ったその場で銀行口座から直接引き落としされるシステムです。

クレジットカードとは違い、チャージする必要がないことや預金の残高以上に使用できないことで「使いすぎの心配がない」のが大きな特徴ともいえます。

電子マネー決済

電子マネー決済とは、現金ではなくデータのやり取りによって決済を行うサービスのことです。セブン&アイ・ホールディングスのnanacoカードや交通系のSuicaカードなど、あらかじめお金をプリペイドカードにチャージするタイプと、スマートフォン上のアプリなどにチャージして利用するタイプがあります。

QRコード決済(バーコード決済)

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QRコード決済(バーコード決済)も電子マネーの一種ですが、スマートフォンを使って決済する方法です。スマートフォンさえあれば、いつでも簡単に決済を行うことができ、QRコード決済ができるサービスが続々と登場したことから急速に利用者が広まっています。

店舗に設置されている読取りリーダーに自分のアプリに表示したQRコードをかざして使用するタイプや、店頭に準備されている専用QRコードを自分のカメラで読み取って決済するタイプがあります。

今、一番勢いのある決済方法といえるでしょう。

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ホテル運営での完全キャッシュレス決済のメリット・デメリットとは

キャッシュレス決済を導入している店舗の中には、現金を一切取り扱わない「完全キャッシュレス化」に踏み切ったケースがあり、飲食店を中心に増加傾向にあります。実際にホテルなどの宿泊施設に取り入れることで、どのような効果があるのでしょうか。メリットとデメリットについて見ていきましょう。

完全キャッシュレス決済のメリット

完全キャッシュレス決済の導入は、ホテルスタッフのフロント業務を効率化したり、現金の管理がないことで不正や盗難、会計時の人的なミスを防ぐことができるなど管理者側のメリットが多くあります。さらに、コロナ禍以降は、感染症対策も重視されるようになったことで、キャッシュレス決済に抵抗感を持っていた現金派ユーザーもキャッシュレス決済を受け入れ、キャッシュレス派に変わってきているのではないでしょうか。これらメリットを詳しく確認していきます。

会計の簡素化で業務が効率的に

ホテルのフロント業務は複雑ですが、中でも会計は工程も多く、お釣りの渡し間違いなど人的ミスが起こりやすい業務です。現金のやり取りは、何度も確認が必要で時間もかかりますし、管理も大変です。

しかしキャッシュレス決済なら、ゲストとの現金のやり取りがなくなるので会計業務がシンプルになり、作業効率が良くなります。時間も短縮できるので、同じ時間で多くのゲストに対応することが可能になるでしょう。

また、現金の取り扱いがなくなることで、スタッフの負担も大きく軽減され労働環境の向上にも貢献します。余力を他の業務に活かせるので、働き手不足解消や人的コスト削減にもつながります。

完全キャッシュレスの効果

ロイヤルホールディングス株式会社が完全キャッシュレス店舗として2017年11月にオープンさせた GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町店では、従来、約40分かかっていたレジ締めが、約5分で終了できるなど、劇的な変化が表れています。

現金の取扱いが少なくなり、セキュリティアップに

キャッシュレス決済が多くなると、フロントで現金を管理することがなくなります。

お釣り用の現金を用意したり、多額の売上金を持って銀行へ行くこともなくなるので、盗難などの防犯対策になります。レジ締め作業や精算処理が簡素化し、「金額が合わない」「お金が足りない」などのトラブルやリスクもなくなるでしょう。

ゲストを選ばず集客アップに

ゲストの中には、できるだけ現金を使いたくないというニーズが存在しています。

ホテルでの決済方法が現金のみだった場合、キャッシュレスで決済したいゲストからは敬遠されてしまうのです。さらに、アフターコロナに向けて、インバウンド需要を取り入れるためにはキャッシュレス決済の導入は不可欠といえるでしょう。

QRコード決済なら、店舗の専用リーダーに読込ませるだけなので、どこにも触れることなく支払いを済ませることができます。完全キャッシュレス決済は、感染症対策など衛生面でのアピールもできるのです。

ゲストにとってもメリットは大きい

消費者庁が行った調査によると、「キャッシュレス決済のメリットは(現金と比べて)どのような点にあると思いますか。」という問いに対し、「支払いが簡単で迅速に行える」「現金を持ち歩く必要がなくなる」「現金を下ろす手間がなくなる」などの利便性に多くの方がメリットを感じているという結果になっています。

さらに、「現金に触れず、衛生的に支払いができる」という回答が、2019年の調査よりもかなりの比率で伸びていることがわかります。

キャッシュレス決済は、ホテル事業者だけではなく、ゲストにとっても大きなメリットを感じてもらえるのです。

キャッシュレス決済のデメリット

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キャッシュレス決済にはさまざまなメリットがありますが決してすべてにおいて万能というわけではなく、利用シーン、および、その施設や店舗の利用者層に合わせて現金対応とキャッシュレス対応を使い分けたり、併用したりする必要があると言えます。

ここからはホテルに完全キャッシュレス決済を導入する際のデメリットについて解説しましょう。

初期費用がかかる

クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済のシステムを導入する場合、専用の端末が必要になることがあり、端末の種類によっては数万円かかるケースも。ただし、クレジットカードやQRコード決済に加え、現金にも対応した自動精算機を置くとなると数十万円から百万円以上の設備導入費用がかかることを考えると、大幅に初期コストを抑えることが可能です。

PayPayなど、初期導入費が0円のキャッシュレス決済もありますが、決済方法の種類が多いほどお客様に選ばれやすいため、多少コストがかかっても多くの種類のキャッシュレス決済に対応したシステムを導入したほうが安心です。

決済に手数料がかかる

キャッシュレス決済を運営しているシステムによって変わりますが、平均3%の決済手数料がかかります。月額費用を払うケースや手数料が別途請求されるケースもあり、現金決済のようにゲストが支払った額面そのままが売上とはならないので注意が必要です。

すぐに現金化できないシステムが多い

決済システムによって、入金されるタイミングがバラバラになります。月2~3回に設定されている場合が多く、売上はあるのにすぐに現金として利用できない期間があります。電子マネーの事業者によっては、売上金額に関わらず翌日に入金が可能なところもあるので、導入する前にチェックする必要がありそうです。

現金派の利用者が多いホテルや宿泊施設には不向き

ホテル事業で完全キャッシュレス化に踏み切れない一番の理由としては、利用者層を狭めてしまうことにあるでしょう。特に国内の中高齢層をメインターゲットにする場合、完全キャッシュレスではなく、現金支払いと併用できるようにすべきでしょう。

他方で、若年層をターゲットにしていたり、「圧倒的な低価格」や「ほかにはない独自のコンセプト」といった強みを持っていれば、思い切って完全キャッシュレスに踏み切っても、キャッシュレス化が進んだ2020年以降の社会においてはさほどダメージはないと判断してもよいかもしれません。

ホテル運営にも完全キャッシュレスの波が

2019年の観光経済新聞によると、「キャッシュレス決済に対応している」ホテル・旅館は83.6%となっていますが、電子マネーなど、すべての手段に対応している施設は12.4%にとどまっています。一方で、支払いを「完全キャッシュレス化」しているホテルも登場し、話題となっています。

JR千葉駅にほど近いホテルシュランザCHIBAでは、2021年2月に完全キャッシュレス化を導入しました。ゲストはインターネットでの予約時にクレジットカード決済を行うか、現地決済の場合も現金払いはできませんが、クレジットカード、PayPay、d払い、id、楽天Edyなど多様な決済サービスに対応しています。

さらに、2021年4月30日に開業したthe b 銀座(ザビー ぎんざ)でも、現金は取り扱わない完全キャッシュレス形式を採用しています。フロントに自動チェックイン機を導入し、キャッシュレス決済を実現されています。完全キャッシュレス決済は、待ち時間の少ないスムーズなチェックインチェックアウトができ、感染症対策にもなるので、ゲストも安心してご利用いただけるようです。

上記のような、現金の取り扱いのない完全キャッシュレス化は、業務効率化を強力に進めるだけではなく、その分の余裕ができたスタッフや時間を他のサービスやマーケティング活動にまわすこともできます。また、人手不足や人的コストの削減にも貢献し、他のシステムと組み合わせることで「無人ホテル」の運用さえも可能になるでしょう。

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ホテル運営の完全キャッシュレス化のメリット・デメリット【まとめ】 

紙幣への信頼感が高く、キャッシュレス後進国と言われていた日本でも、ますますキャッシュレス決済は拡大していくことでしょう。

日本政策金融公庫による「外食に関する消費者調査結果(飲食店でのキャッシュレス決済の意向・利用状況、2019年3月)」では、消費者が飲食店でキャッシュレス決済を利用したいと考える方が約5割という結果が出ました。飲食店対象の調査とはいえ、いまや、約半分の方がキャッシュレス決済を利用したいと考えているのです。

ホテル事業者もアフターコロナの本格的な需要回復に向けて、完全キャッシュレスを検討してみてはいかがでしょうか。参考にしていただけましたら幸いです。

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