泊まれるスナックって何?!エモいだけじゃない地域貢献やIoT活用の要素とは?
先日テレビで紹介されたGOOD OLD HOTELは、昭和感あふれる「スナック」に宿泊できることで注目を集めています。実はこのホテル、宿泊場所のインパクト以外にも、人気のホテル運営に求められる要素がたくさん詰まった施設です。このホテルの魅力とともに、これからのホテルのあり方について解説しています。
「ナニコレ珍百景」で紹介された泊まれるスナック「GOOD OLD HOTEL」とは?
青森県広前市の鍛冶屋町にあるGOOD OLD HOTELは、2022年2月にテレビ朝日系「ナニコレ珍百景」で放送され、大きな反響を呼んだ「泊まれるスナック」。昭和のバブル以前に作られた集合ビル2Fの「スナック街」をリノベーションして作られました。
スナックの壁や照明、インテリアなど、使える設備をそのまま生かし、当時の面影を残しつつ、ホテルとしては最新ITシステムを導入している、レトロとテクノロジーが融合したホテルです。
注目すべきところは、部屋の名前が元のスナックのままであること!たとえば、「ニューうさぎ」「スナック ターゲット」「ぴちぴち」など、昭和感あふれるネーミングセンスで、部屋の扉も当時のまま。部屋の前に立つと、本当にスナックに入店するかのような不思議な感じがします。
扉を開けるとスナックの面影がありながら、清潔感のあるベッドルームが広がっています。レトロな空間を楽しみつつも、セルフチェックインシステムやスマートロック(電子キー)などの最新ITシステムの活用で、非日常感を機能的で快適に過ごすことができます。
スナックを懐かしむ世代はもちろん、TVやSNSで拡散されたことによって、「面白そう!!」と若い世代にも反響は大きく、アフターコロナでは珍しい体験をしたいインバウンドに対してもアピール力は抜群でしょう。
とはいえ、「奇抜さ」だけでは一時的に注目されるものの、リピーターや常連などがつきにくく、すぐに飽きられる可能性も高くなります。GOOD OLD HOTELは注目を集めるだけではなく、広い世代に受け入れられ、多くの方に愛されていますが、その理由は何でしょうか。次の章では、GOOD OLD HOTEが多くの人に支持されている秘訣を解説しましょう。
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「GOOD OLD HOTEL」から学ぶ、今のホテルに求められる3要素とは?
GOOD OLD HOTELが多くの人を惹きつけるのは、客室がスナックであること以外にも、ホテルに求められている3つの要素が揃っているからです。
今、ホテルに求められている3つの要素
- そこでしかできない「価値体験」
- 地域との共生・地元の人にも愛されるホテルづくり
- IT技術との共存
それぞれ詳しく解説していきましょう。
そこでしかできない「体験価値」
GOOD OLD HOTELは、顧客が思わず「なにそれ!体験してみたい!」という好奇心や探究心を十分に満たしてくれます。スナックが全盛だった頃の看板や内装は、懐かしいノスタルジックな気分を掻き立てられ、タイプスリップしたかのような「エモい」感覚に陥ります。スナックを知らない人にとってはまさに「異世界」ともいえる空間で、テーマパークに宿泊するような「ワクワク感」を味わえるでしょう。
さらに、近くの本物のスナックを利用し、地元の方とのふれあいを楽しむことで、ホテルの歴史やその地域の生活に触れ、ストーリーを疑似体験できることも貴重な経験となります。
ここでしか味わえない「体験価値」は、今やゲストから「選ばれるホテル」になるための必須条件です。GOOD OLD HOTELのように古い、歴史のある施設を再利用して「本物」が味わえる施設は、ゲストの郷愁や興味を掻き立てる唯一無二の存在になるでしょう。
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地域との共生・地元の人にも愛されるホテルづくり
コロナ禍以降、ホテルは地域との共生が必要不可欠となっています。感染症対策として他府県や観光地への移動が制限されている中、遠くの観光地に行くのではなく、仕事や日常の延長として近隣のホテルや宿泊施設に泊まってリフレッシュすることが一般化しているからです。
GOOD OLD HOTELも、計画当初はインバウンド向けの事業でした。しかし、インバウンド需要が無くなったことや、近隣の人が「懐かしい」と利用されることが増えたことから、コンセプトを「思い出映えするホテル」として打ち出しました。
もともとホテルのある弘前の鍛冶町は有名な飲み屋街であったこともあり、地元の方はもちろん、青森・秋田・岩手の近隣3県からも、昔の雰囲気を懐かしむ方の利用が多くなっています。さらに、ダンスホールを地域のためのイベントスペースに利用する計画など、地元の方が気軽に利用し、集える場所としての取り組みも積極的に行っています。
こういった、地元の人にも愛されるようなホテルは、地域再生としての役割も担います。空き家・空き店舗をホテルにすることで人を呼び込み、地域の店舗を利用することで経済も活発になります。
ゲストも地元の方とのふれあいで、まるで地域に溶け込んだかのような最高の体験を得ることができます。リピーターになったり、口コミが拡散したりして、地域全体が活気を取り戻す起爆剤ともなるでしょう。
IT技術の活用で利便性とサービス向上
GOOD OLD HOTELはノスタルジックな外観とは逆に、最新のIT技術を積極的に活用しています。ホテル内にスタッフが常駐していない「無人ホテル」で、チェックインは非対面・非接触で行えるセルフチェックインシステムを導入。
さらに、お部屋の鍵はスマートロックを利用しています。スマートロックは解錠にパスワードを使用するので、物理的な鍵の受け渡しや持ち歩きの煩わしさがありません。このようなITシステムの導入は、これからのホテル運営にとって欠かせないものであり、さらに顧客満足度を上げる一因となります。
たとえば、ホテルの業務効率が上がり、少ない経費や少人数でのホテル経営が可能になります。それによって、余ったコストを客室料金に反映したり、サービス向上のために利用したりすることもできます。
また、ゲストにとってもチェックインやチェックアウトに時間をとられることなく、さらに鍵の持ち歩きをしなくて済むなど、ホテルでの生活がスムーズで快適なものになるのです。さらに最近では、ITシステムによるスタッフの省人化や非対面での接客を「感染症対策」として、ゲストが進んで受け入れるようになっています。
特に、古い建物を利用したホテルでは、清潔さや利便性はゲストが気になるポイントでもあります。「古いけど新しくて便利」は、滞在の満足度を上げることになります。GOOD OLD HOTELは、まさに今のホテルに求められている要素を満たしているといえるでしょう。
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【まとめ】泊まれるスナックって何?地域貢献やIoT活用の要素とは
GOOD OLD HOTELはスナックという話題性だけではなく、地域との深い関わりや、最新ITシステム導入での利便性など、人々を惹きつけるポイントがたくさんあるのがお分かりになりましたでしょうか?
泊まれるスナックが人を惹き付けるポイント
- そこでしか味わえない体験価値
- 地域との共生
- IT技術の活用で利便性とサービス向上
これらは、アフターコロナの需要回復に向けて、競合との差別化を計るための大きなヒントにもなるでしょう。これからのホテル運営の参考にしていただけましたら幸いです。