宿泊施設の運営における無人化・省人化のポイントと必須ツール
旅館業法の改正による玄関帳場等の規制緩和はサービス産業におけるIT技術の発展、働き方改革の時世と重なり、ホテル運営の”無人化”という新たな潮流を生み出しています。実際にRemoteLOCKのユーザー様、ご検討中のお客様からも「無人でホテルを運営したい」とのお問合せを多くいただいており、各地でRemoteLOCKやチェックインタブレットを用いた無人運営の新たなスキームが誕生しています。
今回は、無人運営の肝ともいえる、玄関帳場等の規制緩和のポイントと運用ツールをご紹介します。
この記事の目次
- 1.ホテルの無人運営のポイント-改正旅館業法を解説-
- 1-1.玄関帳場等の規制緩和のポイント
- 1-2.4つのポイントをクリアするためには?
- 2.無人運営に必要な運用ツールと組合せ
- 2-1.無人運営に必要な運用ツールのまとめ
- 2-2.RemoteLOCKとの連携サービス一覧
- 3.【まとめ】宿泊施設の運営における無人化・省人化のポイントと必須ツール
(掲載情報は2019年8月時点の情報です)
1.ホテルの無人運営のポイント-改正旅館業法を解説-
Airbnbの日本展開や住宅宿泊事業法施行など昨年は”民泊”が大きな話題となりました。しかし住宅宿泊事業法は、180日の宿泊制限などビジネスとして利益を上げるにはハードルが高いのが現実です。今年に入り、昨年のような盛り上がりからは落ち着いてきているように思えます。
一方で、東京オリンピックや大阪万博といったホテル需要の過多、改正旅館業法施行による中小規模ホテル展開の現実化が相まって、中小規模のホテル営業に乗り出す企業が増えています。中小規模ホテルを複数展開するうえで問題となる『人材獲得』を解消するキーワードとして無人化がトレンドとなっています。
そこで本記事では宿泊施設の運営における無人化・省人化のポイントをご紹介します。
1-1.玄関帳場等の規制緩和について
無人化と言われる際に押さえておきたいポイントとなるのは、旅館業法の規定を受けて定めている「旅館業法施行令」の第1条で規定される構造設備の基準です。そこには玄関帳場に関して下記のような文言があります。今回の改正で玄関帳場の代替措置が認められるようになり、これがいわゆる無人化運営を可能とした根拠となります。
第一条一項 二
宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合するものを有すること。
当然、無人化といえども清掃など一定時間はホテルで業務を行う人間は必要となります。上記を前提としたうえで、以降は玄関帳場の規制緩和に絞ってポイントを整理します。ここで旅館業法施行令で委任している厚生労働省で定める基準を確認しましょう。
第四条の三
旅館業法施行令(昭和三十二年政令第百五十二号。以下「令」という。)第一条第一項第二号の基準は、次の各号のいずれにも該当することとする。
一 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備を備えていること。
二 宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備を備えていること。
無人化運営を進めるうえで各自治体との保健所との協議は、上記を元とした内容が中心となります。ポイントをまとめると以下の4つとなります。
- ① (緊急時に)迅速な対応を可能とする設備を備えていること
- ② 宿泊者名簿の取得を担保できること
- ③ 出入りの状況を確認できること
- ④ 鍵の適切な受渡しが可能であること
1-2.4つのポイントをクリアするには?
さて、ここで重要になってくるのは玄関帳場の代替措置をクリアする方法は何か?ということです。しかし、残念ながら、これだ!という解はありません。というのも上記の条文をもとに許可を出すのは各自治体となるからです。各自治体により解釈は様々で要求されるレベルも異なるのが実情です。
また、法律よりも厳しい基準を課す上乗せ条例と呼ばれる条例を制定している場合、そもそも無人化が認められていないケースもあります。これは条例を確認すれば分かりますが、運営する施設のある自治体の保健所へ問い合わせるのが一番確実でしょう。
以上を踏まえたうえで、一般論に立った時、各自治体に向けて条例の解釈指針となる「旅館業における衛生等管理要領」が参考となります。
Ⅱ 第1 8(玄関帳場又はフロント)
善良風俗の保持上、宿泊しようとする者との面接に適し、次の(1)から(4)までの要件を満たす構造設備の玄関帳場又はフロントを有すること。ただし、(5)の要件を満たす場合は、玄関帳場又はフロントに代替する機能を有する設備を備えているものとして、玄関帳場又はフロントを設置しないことができること。
(1)~(4) 略
(5) 次の全ての要件を満たし、宿泊者の安全や利便性の確保ができていること。
1) 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。緊急時に対応できる体制については、宿泊者の緊急を要する状況に対し、その求めに応じて、通常おおむね10分程度>で職員等が駆けつけることができる体制を想定しているものであること。
2) 営業者自らが設置したビデオカメラ等により、宿泊者の本人確認や出入り
の状況の確認を常時鮮明な画像により実施すること。
3) 鍵の受渡しを適切に行うこと。
解釈指針をもとに先ほど挙げた4つのポイントを見ていきましょう。
①(緊急時に)迅速な対応を可能とする設備を備えていること
運営の体制によるところになります。衛生管理要領にもある通り、おおよそ宿泊施設から徒歩ないしは自転車で10分圏内に事務所などがあれば問題とされないケースが多いです。事務所などのご用意が難しい場合、大手のセキュリティ会社や運営代行会社などに駆けつけ対応を受け持ってもらうケースが多いようです。
② 宿泊者名簿の取得を担保できること
日本人であれば基本的に予約サイトなどで事前に情報を取得できますので問題ありません。外国人の宿泊の場合、パスポート画像の取得が必要となります。これはチェックインサービスを利用いただくことで可能となります。チェックイン用のタブレットでゲストの方に宿泊者名簿の記入、パスポート画像の撮影を行ってもらうことで自動で宿泊者名簿が蓄積されます。
以下で詳しくご紹介しますが、RemoteLOCKは市場シェアの高いチェックインサービスのほぼ全てと連携しています。連携することで、ゲストがチェックイン・本人確認を行うとタブレット上に入室のための暗証番号を表示することができます。これにより、ゲストはチェックインしないと入室ができないため、チェックインのし忘れも防止できます。
③出入りの状況を確認できること
これは衛生管理要領に記載のあるようなビデオカメラをエントランス部分に設置し「都度遠隔から防犯カメラのチェック、および録画をしている」としているケースがほとんどでしょう。最近ではクラウド型防犯カメラなどもあり、遠隔地から複数拠点を管理する際に利用している事業者もいるようです。また、②で記載したチェックインサービスは本人確認も行えるため、なりすましの防止も可能です。
④鍵の適切な受渡しが可能であること
さて、肝心の鍵の受け渡しですが、どこを見ても「適切な受渡し」という文言しかありません!RemoteLOCKのサービス提供元として非常に悩ましい問題です…。このことから条例で「適切な受渡し=直接人が渡すこと」としている自治体もあります。
一方で、こうした上乗せ条例がないにも関わらず、「適切な受渡し=直接人が渡すこと」と指摘する保健所さんもいらっしゃるようです…。その場合は、慌てずに、根拠となる条文を書面化してもらいましょう。
RemoteLOCKはお使いいただいているお客様ごとに既に保健所の許可を得ており、実際に無人運営を実現しています。導入実績があることは説得材料として大きなポイントになるかと思います。また「適切な受渡し」としてRemoteLOCKでは以下のような説明が考えられます。最終的には自治体ごとの判断によりますが、ご参考となれば幸いです。
・ワンタイムパスであること(番号を使いまわしていない)
・チェックインサービスとの連携で本人確認後の番号通知が可能
・番号の使用履歴が残ること(明らかな異常利用の際に検知可能)
2.無人運営に必要なツールと組合せ
2-1.無人運営に必要なツールのまとめ
ここまで、旅館・ホテル営業における無人運営を実現するにあたり、押さえておきたい法律上のポイントをご説明してまいりました。ここからは、実際に無人運営をする場合、どのようなツールの検討・導入が必要なのかをご紹介してまいります。
以下に記載しているのは、無人・有人問わず、ホテル管理を効率化し、利益を上げるために欠かせないツールです。特に無人化においてはタブルブッキングや部屋割りのミスなど、有人であれば現地でフォローできる可能性のあるミスも致命的となります。そのため、下記のようなツールで、人的なミスを防ぎ、システムにより正確な管理している事業者様がほとんどと言えるでしょう。
◆OTA:
予約サイトのことです。AirbnbやBooking.com、楽天トラベルなど、どのサイトに掲載するかは、ターゲットにあわせた検討が必要です。
◆サイトコントローラー:
複数のOTAおよび自社HPの予約システムを一元管理するシステムです。これにより、在庫の同期から、ダブルブッキングの防止、各OTAの提供価格の一括管理などが可能となります。
◆PMS:
宿泊予約者の管理や精算、提供価格設定のためのデータ分析など宿泊情報を管理するツールです。最近では、小規模ホテル向けにサイトコントローラーと一体となったサービスも展開されています。
◆チェックインサービス:
宿泊者名簿の取得やビデオ通話によるリアルタイムでの本人確認が可能なツールです。ゲストは現地にあるタブレット上に必要事項を記入することでセルフチェックインが可能となります。無人での運営を考えた場合、必要となってくるサービスです。
※リアルタイムでの本人確認などはサービスによって異なります。
◆精算機:
無人運営の場合、クレジットカードによる事前決済が基本となります。しかしながらターゲット層、土地柄などからどうしても現地決済が必要という場合は、無人精算機などのサービスもあります。
詳しくは下記ブログもご確認ください。
2-2.RemoteLOCKとシステム連携しているサービス一覧
さて、実際に運用ツールを選択するうえでどのような組み合わせがあるのでしょうか?
無人運営をするうえで欠かせないチェックインサービスの中で、RemoteLOCKの暗証番号をタブレット端末に表示可能なサービスは下記となります。前述したように市場に出ているほぼすべてのチェックインサービスと連携していますので、機能や費用感に合わせて複数のサービスからご選択いただくことが可能です。
- RemoteLOCKとシステム連携しているサービス一覧
- ABCチェックイン
- minpaku-in
- m2m checkin
- Key station
- エアサポタッチ*1
- AirHost PMS *2
- innto *2
- YOYAKEY(SmartPaw) *2
- suitebook 対応チェックイン( あんしんステイIoT 、Tabiq)
- 多機能 自動精算機RONT
*1 PMSとしてAirhost PMS,Besd24,suitebookのいずれかを導入している場合に連携が可能
*2 同サービスのPMSを利用し、オプションのcheckin機能がRemoteLOCKの番号表示が可能
また、上記のチェックインサービスを導入した場合でもバックオフィスでは、予約情報をチェックインサービスの管理画面に登録する作業などが発生します。そして、なんとこの作業をさらに自動化することができる方法があります。
以下の表には、RemoteLOCK活用によるバックオフィスでのデータ登録作業の自動化&無人チェックインが可能な組合せを示しています。組み合わせ可能なサービスを使うことで、『OTAの予約情報から自動で滞在期間に応じた暗証番号を発行し、チェックイン端末に表示する』ことが可能となり、現地だけでなくバックオフィスでの玄関帳場機能も自動化されます。
【RemoteLOCK活用によるバックオフィスの自動化&無人チェックイン連携組合せ】
※2019年8月時点の情報です
*3 m2m systemとの併用によりm2m systemが対応しているOTAから予約情報の自動取得、番号の発行・表示が可能。
*2 上記参照
3.【まとめ】宿泊施設の運営における無人化・省人化のポイントと必須ツール
いかがでしたでしょうか。改正旅館業法から1年が経過し、無人運営による旅館・ホテル営業はビジネスとして成立することが徐々に認識されてきているかと思います。しかしながら、実際にどうオペレーションを組み立てるかというハードルはまだ高いのが現実です。
旅館業法の解釈にしても自治体・担当者ごとに異なるため、初めはプロの方(行政書士さん、運用代行さん)に助けを求めるのがベターと言えます。運用ツールの選定も施設ごとに異なるためご不明点がありましたらぜひ弊社までお問合せ下さい。ご要望に応じては行政書士さん、運用代行さんのご紹介も可能です。
※地域・場合によってはご紹介が困難な場合もございます。
※ご紹介のみにとどまり結果につきましては弊社では一切の責を持ちません。
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当然、許可取得はゴールではなくスタートです。一番大切なのはその後のオペレーションにおいて問題なく宿泊名簿の取得や鍵の受け渡しができるかどうかになります。
RemoteLOCKは数あるスマートロックの中で宿泊関連サービス各社様から連携いただいております。これはRemoteLOCKが”不特定多数の出入りがあるスペース貸出ビジネス”に最適な設計がされている所以です。RemoteLOCKと他スマートロックと違いについて詳しく知りたい方は詳細資料もぜひご参照ください。