公開日2025.03.25
旅館の課題解決の鍵は「DX化」!人手不足もITシステムが解決
現在、昔ながらの旅館運営は、人手不足や業務の非効率、利益率の低さが大きな課題となっています。それらを一気に解決するのが、旅館のDX化です。なぜ旅館が最新システムを取り入れるべきなのか、DX化のメリットなどをご紹介します。
これからの旅館の課題解決には「DX化」が必須
これからの旅館の課題解決には、「旅館のDX化」が必須となります。というのも、現在の旅館が抱えるさまざまな問題は、最新のITシステムを導入することで、一気に解決する可能性が高いからです。
たとえば、深刻な人手不足や人件費の高騰、また、インバウンドの受け入れなどは、DX化を進めれば、ほぼ解決できるでしょう。そもそも、「旅館のDX化」とはどのようなことでしょうか。旅館業界の今後と併せてご紹介していきます。
旅館のDX化とは
旅館のDX化とは、旅館業務にIT(デジタル)技術を取り入れて業務効率化を向上させ、旅館側にも、ゲスト側にも多くのメリットをもたらす取り組みのことです。
旅館業務をすべて機械が行うということではありません。最新ITシステムを取り入れて、スタッフの負担を減らすことで少人数でも旅館としての品質を保ちながら運営が可能になる取り組みです。
DXとは
企業がデータとデジタル技術を活用し、顧客や社会のニーズに基づいて、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
出典:経済産業省『デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~』
旅館のDX化は、具体的に次のようなことが可能になります。
旅館のDX化が可能にすること
- フロント業務のペーパーレス化、無人化
- 予約、チェックイン作業のオンライン化
- スタッフ業務の自動化
- 経営のデータの活用
旅館のDX化により、今までの業務が効率化、または自動化することで、手の空いたスタッフが、今まで以上の「おもてなし」を可能にする施策なのです。
旅館業界の今後とDX化
近年、旅館業界は、観光需要の回復やインバウンドの増加により、さらなる成長が見込まれています。とはいえ、少子高齢化による人手不足が深刻化するとともに、ランニングコストや人件費の高騰、インバウンド対策など、課題も多く、不安を抱えている旅館も少なくありません。
旅館のDX化は、これらの問題を解決し、さらに競争力を高めるために欠かせない施策となっています。たとえば、業務の効率化やコスト削減が進むだけではなく、データ分析による客室稼働率や、価格戦略の最適化なども、簡単に行うことができます。今後は、最新のシステムを適切に導入することで、古き良き旅館の魅力を保ちつつ、その可能性を最大限に引き出すことが求められるでしょう。
宿泊施設のDX化|成功事例を紹介
では、実際に、宿泊施設のDX化の成功事例をご紹介しましょう。
宿泊施設Aでは、配膳スタッフの負担軽減として、食事の提供に「配膳ロボット」を導入しました。配膳ロボットは1日に約100往復し、人の運搬作業の代替となります。結果的に、人件費換算で月約16万円分の効果となっています。また、別の宿泊施設では、フロントスタッフの人手不足で、一人が長時間対応しなければならないことが問題となっていました。
セルフチェックインシステムとスマートキーを導入することで、フロント作業が自動化し、スタッフのシフトに余裕をもたせることが可能になりました。結果的に、人件費も大幅に削減することにも繋がったのです。DX化は、スタッフの身体的負担の軽減や、ヒューマンエラーの減少により、スタッフのモチベーションや定着率にも大きな影響があります。
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旅館のDX化による5つのメリット
では、旅館のDX化によるメリットを具体的に見ていきましょう。
旅館のDX化によるメリット
- 人手不足が解消する
- インバウンド対応が簡単になる
- ゲストの利便性・快適性が高くなる
- 今までの顧客データを活用できる
- コストの削減と業務効率化が進む
それぞれ詳しく解説していきましょう。
人手不足が解消する
旅館のDX化が進むと、人手不足が解消します。
予約管理やチェックイン業務などのフロント業務が、自動化するためです。また、その他多くの業務が効率化するため、スタッフの負担が大幅に軽減されます。
さらに、ゲストもスマートフォンやアプリから欲しい情報を得られるため、「お問い合わせ」が少なくなるでしょう。少ない人数で、今までと同じように旅館を運営することができるため、人手不足を解消することができます。
インバウンド対応が簡単になる
旅館がDX化されると、インバウンド対応が簡単になります。多言語対応のタブレットや、自動翻訳機付きのチェクインシステムなどの導入により、スタッフが外国語を話せなくても、基本的なご案内ができるようになるからです。
また、チャットボットやSIを活用したサービスを取り入れれば、24時間体制でのインバウンド対応が実現します。旅館や周辺の観光情報なども多言語で提供できるので、外国人観光客にとって、より快適で魅力的な滞在環境を提供することができます。
ゲストの利便性・快適性が高くなる
旅館をDX化すると、ゲストの利便性や快適性が高くなります。オンラインでの予約システムの導入により、ゲストは24時間いつでも簡単に予約が取れるようになるからです。
さらに、セルフチェックインシステムによって、フロントの待ち時間が短縮され、スマートキーを利用すれば、直接客室に入ることも可能になります。旅館側としても、DX化により業務負担が軽減されたスタッフが、より充実したおもてなしを提供することができるでしょう。
今までの顧客データを活用できる
旅館をDX化することによって、今まで積み上げてきた顧客データを分析し、サービスの向上や、売上アップにつなげることができます。従来の紙の台帳などで管理していた情報を、デジタル化することで、さまざまな分析ができるからです。
顧客データの活用法
- リピーターの宿泊履歴やサービス内容に基づいて、特別なサービスを提供する
- 好きな食材や避けた食材などを分析して、料理に活かす
- 特別なおすすめプランを自動的に提案する
- データ分析を活用して、最適なキャンペーンを実施する
- 過去のデータを参考に宿泊料金を最適化する
- LINEやメール、ポイント制度を活用したリピーター施策をする
このように、データを活用することで、無駄な作業を削減し、ゲストの満足度を上げることで、収益をアップすることに繋がります。
コストの削減と業務効率化が進む
旅館のDX化を進めることで、業務の自動化や効率化が実現し、人件費や運営コストを削減することができます。特に、タブレットやスマホのチェックインシステムを導入し、スマートキーを活用すれば、フロント業務が自動化します。
さらに自動精算機を導入すると、現金の取り扱いや管理の手間も無くなるでしょう。AIによる空調管理や清掃の効率化が進めば、施設管理コストの削減も可能になります。また、データをもとに、ターゲットに合った広告を配信できるため、膨大な広告費も削減することができます。
旅館のDX化のデメリット
2章でお伝えしたように、旅館のDX化は、メリットはたくさんありますが、もちろんデメリットも生じます。
旅館のDX化のデメリット
- 初期費用がかかる
- システムの不具合や故障のリスクがある
- 高齢のゲストが対応できない場合がある
初期費用がかかる
旅館のDX化には、初期費用がかかります。旅館の規模や導入範囲によって費用は異なりますが、設備投資・システム導入・インフラ整備など、約数十万円〜数百万円くらい必要でしょう。
ただし、業務効率化・人件費削減・売上向上による回収は、比較的早く実現するでしょう。また、さまざまな製品や導入方法があるので、自分の施設に合ったものを導入することをおすすめします。
システムの不具合や故障のリスクがある
旅館のDX化によって、業務の効率化が進む一方で、システムの不具合や故障が発生するリスクもあります。特に、ソフトウェアの不具合が起きた時には、業者に連絡し、技術者を要請しなければならない可能性もあります。
ゲストをお待たせしないためにも、トラブル対応マニュアルを作成し、すぐに対応できるようにする必要があるでしょう。また、日頃からメンテナンスを積極的に行い、情報のバックアップ体制を取っておくことも重要です。
システムに慣れていないゲストが対応できない場合がある
旅館のDX化は、高齢者のゲストが対応できない場合があります。特に、スマートフォンさえ持っていない方は、オンラインでの予約などはできません。
その場合、予約やお問い合わせは、スタッフによる対応を希望されることが多いでしょう。中でも旅館は、高齢者のゲストの割合が多いため、アナログとの併用も考えておく必要があります。
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旅館のDX化を実現する6つのシステム
これまでに解説してきたように、DX化はこれからの旅館経営において、必要不可欠となる施策です。とはいえ、すべての業務に最新システムを一気に取り入れることはありません。
課題を抱えている業務に対してのシステム化を、まずは考えるとよいでしょう。
ただし、それぞれのシステムは、関連するシステムと提携をすることで、一層利便性が上がります。たとえば、セルフチェックインシステムは、予約システムやスマートキーと連携させることで、省人化を実現できます。
ここでは、旅館のDX化を実現するシステムについて、それぞれご紹介していきましょう。
配膳ロボット
配膳ロボットは、大量の料理や食事後の食器などを、一度に持ち運びができる自律移動ロボットで、事故を防ぎながらルートの最適化を図ることができます。24時間稼働ができ、約60kgの料理を一度に配膳できる能力は、スタッフの負担を大幅に軽減します。
食堂やレストランでの配膳以外にも、ルームサービスにも活用でき、人員不足を補うことが可能です。また、スタッフが客室に料理を用意する際も、客室近くまで大量の料理を運搬できるため、配膳や下膳のスピードが向上するでしょう。
スタッフに余裕が生まれ、接客時間が長くなることから、旅館の「おもてなしの質」も向上します。
清掃ロボット
掃除ロボットは、広範囲を24時間、品質のばらつき無く清掃できる広範囲を24時間、品質のばらつき無く清掃できる自律移動ロボットです。ロボットが基本的な清掃を担当することで、スタッフの身体的負担を軽減し、スタッフはよりきめの細かい清掃に集中することができるでしょう。
ロボットの清掃能力は、外部委託の清掃スタッフ1〜2名と同等ともいわれています。掃除ロボットの導入は、単なる業務効率化だけでなく、旅館全体のサービス品質向上と、人件費の削減に大きく貢献するでしょう。
予約システム
予約システムとは、宿泊施設が予約の受付や管理を、効率的に行うためのソフトウェアです。PMSやサイトコントローラーと連携して使用されることが多く、これにより、下記のような宿泊施設の運営をより効果的に行うことができます。
予約システムの主な機能
- 予約の受付、変更、キャンセル処理
- 空室状況のリアルタイム管理
- 客室の状態(滞在中、空室、清掃中など)のリアルタイム確認
- 顧客情報の登録と管理
- 宿泊履歴、食べ物の嗜好、アレルギー情報などの記録
- 支払い処理と売上管理
- 追加精算の確認、日次売上集計
- 売上や稼働率などの重要データの集計
このように、予約業務だけではなく、顧客管理やデータ分析など、手作業による予約管理の負担を軽減し、人的ミスを減らすことができます。
セルフチェックインシステム
セルフチェックインシステムとは、ゲストが自身のスマートフォンや、旅館に設置しているモバイルなどを用いて、チェックイン作業を行えるシステムです。
チェックイン・チェックアウトが24時間可能になるほか、次のような機能があります。
セルフチェックインシステムで可能になること
- 予約情報の自動取得
ホテル予約管理システム(PMS)と連携し、予約内容を自動的に取得 - 本人確認機能
パスポートや身分証明書などの本人確認の実施 - 多言語対応
インバウンドなど多国籍言語に対応 - 顧客情報の管理
宿泊者情報を自動的に登録し、今後のマーケティングに活用 - 鍵の受け渡し
カードキーやスマートキーの発行
スマートキーや予約システムと連携することで、フロント業務が自動化し、人手不足の解消に効果的です。また、チェックイン時の待ち時間が短縮されることや、多言語対応が可能になることから、サービス品質を高め、ゲストの満足度を向上できる施策となります。
スマートロック(RemoteLOCK)
スマートロック(RemoteLOCK)は、物理的な鍵を使用せずに、スマートフォンなどを用いて、ドアの施錠・解錠を行えるシステムです。フロントでの物理的な鍵の受け渡しが不要となり、ゲストのスマートフォンに送られた暗証番号やQRコードを利用して、客室の解錠を行うことができます。
スマートロックで可能になること
- 物理的な鍵の受け渡しの廃止
フロントでの鍵の受け渡しがなくなる - 鍵の管理
鍵がデジタル化するため、管理業務がなくなる - 入退室管理
遠隔で鍵の利用状況(入退室)を把握できる - 鍵トラブルの防止
鍵の持ち歩きがなくなるため、紛失や盗難などの鍵トラブルを防止できる
入室の鍵に「有効期限」を設定することができるので、予約のない人の不正入室や無断延泊などを防止することができます。また、鍵の持ち歩きが無くなるため、紛失や盗難リスクも大幅に削減されるでしょう。チェックインシステムと連携することで、フロント業務の省人化を促進します。
※QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。
【まとめ】これからの旅館の課題解決にはDX化が必要不可欠
いかがでしたでしょうか。
人手不足や業務の非効率など、旅館運営で課題となっているものは、「旅館のDX化」によって、ほとんど解決できることがおわかりいただけましたでしょうか。
最新ITシステムの導入は、旅館としての魅力を半減すると考える方もいるかもしれません。しかし、業務の効率化により手の空いたスタッフが、今まで以上にゲストに対して「おもてなし」が実現できるなど、旅館にとってもゲストにとってもメリットの多い施策です。
今後の旅館運営の参考にしていただけましたら幸いです。