近年、新しいアウトドアアクティビティの一つとしてグランピングが注目を集めています。 新規事業の企画や起業テーマにグランピング業界への参入する際は人件費が気になるポイントです。そこで今回はIT技術を活用してグランピング運営の人件費を削減する方法をご紹介します。
グランピング施設は近年急速な広がりをみせています。
ビジネスモデルとして比較的新しいこともあり、定型的な運営スタイルは確立しきれていないことも多いでしょう。運営する中で、オペレーション、システム、サービス内容、集客方法などを見直し、改良に努めている施設様も少なくありません。本章では、その中でもグランピング施設の「オペレーション業務」についての現状を整理していきます。
グランピングを運営する場合、現地のスタッフにはどのような仕事があるのでしょうか。まずは、グランピング施設のスタッフの一日の業務内容を項目ごとに整理しました。
グランピング施設のスタッフの仕事
①宿泊予定者の受付
宿泊予定者からの連絡を受け、予約を管理します。電話やメールでの予約の場合は予約表に入力する手間がかかります。
②チェックイン手続きと鍵の受け渡し
宿泊者が来場したときに、宿泊者名簿の取得と管理、本人確認を行い、鍵の受け渡しや会計を行います。チェックイン・チェックアウトの時間帯は人が集中し、宿泊者を待たせてしまうこともあります。
③宿泊者への各種案内
テントや宿泊棟が分散している施設では特にお部屋への道案内が必要になります。宿泊者をお部屋までお連れして、設備や備品の案内を行う場合もあります。夏や冬は事前に空調を操作し、宿泊棟を快適な温度にして宿泊者を迎え入れます。
④食事の準備、片付け
食材、食器、調理器具の準備から、貸出器具の回収、洗浄、清掃、ごみ捨てなどを行います。
⑤レジ対応
食材やレジャー用品を販売する売店を備えた施設の場合、レジの対応を行います。
⑥部屋の清掃
宿泊者が帰宅した後に、次の宿泊者が快適に過ごせるようにリネン交換や清掃を行います。グランピングで用いられるドームテントは床面積も大きく、掃除には時間がかかります。
⑦不足備品の確認発注
宿泊者が部屋の備品を使用したら、不足分を発注し補充します。宿泊棟が施設内に分散している場合は特に、各棟を巡回するのにも時間がかかります。
⑧宿泊者のお困りごと解決
宿泊者からの質問に答えたり、トラブルへの対処を行います。
このようにグランピング施設のスタッフは数多くの業務を行う重要な役割があります。
このスタッフの人数を単純に減らしてしまうと、サービスの質の低下を招き、宿泊者満足度の低下につながる恐れがあります。
また、従業員への過度な負担は、モチベーションの低下や離職率の増加などの問題を引き起こしてしまいます。 そこで、全体の業務の中でIT技術を活用できる部分については、自動化や省人化をすすめ、業務効率化を行い、顧客体験を向上させながら人件費を削減させていくことが大切になります。
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それでは、グランピングのオペレーションの中で、IT技術を活用して自動化できる業務にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は6つの業務とIT活用例をピックアップして紹介していきます。
宿泊者の受付を自動化する方法として、セルフチェックインシステムが挙げられます。施設に設置されたタブレット端末などで受付を行うことで、カウンター越しでの対面でのチェックインが不要になったり、ビデオ通話による本人確認が行えるというものです。
セルフチェックインシステムには、事前にWEB上で宿泊者情報の記入や宿泊約款への同意をとるような事前チェックインの機能があります。これにより、宿泊者は長々とした説明をフロントで受ける必要がなくなるため、現地での時間を余すことなく楽しむことができます。結果として、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。スタッフも事務的な案内作業から解放され、おもてなしなどに注力できるようになります。
つづいて、鍵管理についてです。一般的にテントに施錠するというイメージは持ちにくいと思われますが、グランピングに用いられるドームテントの出入口には扉があり、住宅のような鍵が備え付けられているものが多く存在します。そのため、ホテルのフロントのように宿泊者への鍵の受け渡しが発生します。 この鍵をスマートロックにすれば、鍵の受け渡しと管理から解放されます。
スマートロックはインターネットに接続できる鍵の事で、スマートフォンで操作するものや生体認証を使用するものなどさまざまな種類があります。そのなかで、テンキーを備えたスマートロックは、鍵代わりとなる暗証番号を予約ごとにオンライン上で発行、受け渡しが可能です。物理的な鍵の受け渡し、預かり、回収、紛失への対応がなくなり、スタッフはフロントでの鍵管理の負担から解放されます。宿泊者にとっても、鍵の持ち歩きが不要となることで、グループ内で鍵をシェアしやすくなり、屋外アクティビティも手ぶらで楽しむことが可能です。
また、先述のセルフチェックインシステムと連動させることも可能です。チェックイン完了後にタブレットやスマホの画面上に暗証番号を表示して受け渡し、チェックアウト後は自動的にその暗証番号は使えなくなるため、鍵の管理を完全自動化して業務の効率化に貢献します。
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ホテルの空調は中央のシステムで一括管理できるものが多いのですが、グランピング施設では宿泊棟が独立しているので、それぞれの部屋に家庭用のエアコンを装備するケースが多く見られます。宿泊者が来る前にエアコンを操作して空調を入れておけば、快適な温度のお部屋で宿泊者を迎え入れることができますが、グランピング施設では宿泊棟が離れているので、エアコン操作のために各お部屋を巡回するとなるとスタッフへの負担が大きくなります。
スマートエアコンを設置すれば、遠隔で複数の室温とエアコンの稼働状態を確認して操作することが可能になり、空調管理の手間を大幅に減らすことができます。
- 出典 ：
- ダイソンロボット掃除機
施設の清掃を省力化する方法としては、ロボット掃除を利用する方法があります。 最新のロボット掃除機は性能が高く、部屋の形状を学習して隅々まで効率的に掃除してくれます。活用のポイントは最初にスタッフが大まかな片付けを行い、清掃の邪魔になるものがないことを確認した上で、ロボット掃除機を稼働させる事です。
ロボット掃除機は遠隔から起動し、掃除が完了すると自動的に充電スポットに戻るので、無人でこまめな清掃を行うことができます。これにより、埃がたまりがちな閑散期においても清潔な環境を宿泊者に提供できます。機種を選定する際はグランピング用のテントでは床にじゅうたんを敷くケースが多いので、じゅうたんの上でも安定して走行できるクローラベルトを搭載したモデルがおすすめです。
- 出典 ：
- アイリスオーヤマ ストックアイ
冷蔵庫に入れられた備品のソフトドリンクやお酒などは使用した分を把握し、補充のため発注する必要があります。しかし、賞味期限がある食材の在庫はなるべく抱えたくないはずです。そこで、カメラ付き冷蔵庫を導入するというアイデアがあります。
カメラ付き冷蔵庫は遠隔地から備品の使用をリアルタイムで把握することができるので、使用した備品をすぐに発注リストに入れることができます。
空調、照明、テレビの消し忘れを防ぐことは、純粋に電気代という運営コストの削減ほかにも、電力需給ひっ迫への対応や地球温暖化対策の面でも重要です。 ホテルの節電対策には、ルームキー連動コンセントが一般的ですが、IoTプラットフォームの活用というアイデアもあります。
2022年3月に株式会社LiveSmartは、自社のIoTプラットフォームが『フォーズホテル 近鉄 大阪難波』に導入されたことを発表しました。内容は客室のスマートスピーカーを介して空調・照明・テレビを操作可能するというもので、主に宿泊者の体験価値を向上させたり、アフターコロナを見据えた非接触化を実現することが目的となっています。
そのほかにも、IoTプラットフォームを活用することで、遠隔から空調・照明・テレビの操作を可能にして、これにより家電の消し忘れに対応しやすくなったり、複数の家電を一元管理しやすくなる点は、管理側のメリットと言えるでしょう。
省人化は経営に有益なだけではありません。スタッフのルーティンワークの負担を減らし、おもてなしや観光案内などの人にしかできない業務に集中することで、従業員の成長や満足度の向上にもつながります。
また、IT 活用により業務の一部を効率化したり、遠隔地から行えるようになりることで、従業員に対して働き方の選択肢を増やすことも可能です。時間や場所にとらわれることなく、いつ、どこでも仕事ができる世界は宿泊業界にも訪れているのかもしれません。グランピング事業での人件費削減を検討する際は、ぜひともIT技術を活用して業務を効率化することをお勧めします。
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