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公開日2022.08.15

最終更新日2023.08.04

【セミナーレポート】無人オペレーション型ホテルと地方創生のモデルケースから考える

今回は、2022年7月7日にオンラインで開催されたホテル・旅館業界向け特別セミナー “持続可能な社会の実現に向けたこれからの宿泊事業とは / ~「無人オペレーション型ホテル×地方創生」のモデルケースから考える~”の模様についてレポートしていきたいと思います。

セミナー概要

セミナータイトル

セミナーには、付加価値の高い不動産を提供し社会に貢献することを理念に、不動産デベロッパーとして「不動産開発事業」「地方創生事業」を行う『株式会社日本ユニスト』、自社ソリューションを用いた次世代クラウド型宿泊施設の企画運営を通して宿泊産業のDX化に取り組む『株式会社SQUEEZE』、そして、キーレス化で宿泊体験の向上が可能なスマートロック「RemoteLOCK」を提供する技術コンサルティング会社『株式会社構造計画研究所』からそれぞれの担当責任者が登壇しました。

これからの宿泊施設が果たすべき地域活性化の役割やその運営を支える宿泊DXの考え方をベースに、実際の運営事例を交えながら具体的な施策やソリューションの紹介という形式で講演は進みました。さらに最後には、参加者から寄せられた質問に登壇者が答えるというスタイルで活発な意見交換、情報交換の場にもなっていました。

無人オペレーションがもたらす効果 / 株式会社日本ユニスト

日本ユニストロゴ

最初に株式会社日本ユニストの取締役兼経営管理室室長 山口和泰氏から、同社が現在取り組んでいる「熊野古道事業」と、そこで実践している宿泊施設の無人オペレーションについてご紹介いただきました。

同社はこれまで不動産事業をコアとしながら地域と密着したホテル事業を手掛けてきました。「熊野古道事業」は同社が新たに取り組んでいる事業であり、収益を地域に還元しながら観光資源を保全することで、地域全体がサステナブルな状態になっていくことを目指しています。

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熊野古道事業とは?

熊野古道は2004年に世界遺産に指定されたこともあって世界的な認知が高まり、コロナ前まではインバウンド客が急激に増加していました。しかし、老舗の温泉旅館や家族経営の民宿が多かったこの地域では後継者不足や経営者の高齢化などから宿不足の問題が顕在化しており、宿泊しながら熊野古道を歩きたいという観光客の要望に応えきれない状況にあったとのこと。

そこで同社は、熊野古道沿いに複数の宿泊施設を設け、来訪者に安心して熊野古道を歩いてもらえるような利便性を提供すべく、宿泊事業「SEN.RETREAT」を構想。その後、コロナの影響で来訪者が激減しましたが、20~30代の女性や家族連れ、グループなど新しいターゲットを創り出すことで地域観光に貢献しようとプロジェクトをスタートさせました。

同社では熊野古道の中辺路ルートに4つの施設を計画しており、うち2ヶ所(SEN.RETREAT TAKAHARASEN.RETREAT CHIKATSUYU)のオープンが完了しています。

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無人オペレーションについて

この熊野古道の施設について、同社では当初は有人オペレーションを考えていたそうです。しかし、すべての施設で、現地での採用が難しい、人を確保したとしても定休日を設けなければならないなどの問題に直面するため、サステナブルな事業になり得ないと判断し、非常駐型の無人オペレーションにかじを切りました。

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無人オペレーションの流れとしては、お客様がチェックインされ、施設に滞在された後、チェックアウトされるまでの間が無人での管理となっており、チェックイン前のリネンや食事などの準備とチェックイン後の清掃や備品の管理を地元スタッフが行っています。

お客様が滞在中の確認事項や問い合わせには、SQUEEZEのサービスであるオンラインコンシェルジュに一次対応をしていただき、そこでの対応が困難なものについてのみ日本ユニストの大阪本社で対応を行なっています。

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結果、日本ユニストが直接行っているのは、地元スタッフのシフト調整と食材の発注のみ。現地でのチェックインなどはSQUEEZEのシステムに対応を行なってもらう形となっています。お客様には、予め無人オペレーションであることをお知らせして不安の解消に努めているそうです。また、入室の管理については、RemoteLOCKのお知らせ機能で常時管理画面を見ていなくともリアルタイムに状況が把握できているとのことで、セキュリティ面も安心な状態です。

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また、施設にはチェックインボックスというブースが設けられていて、2台のタブレットを使ってお客様が入室される前にチェックイン情報の入力とSkypeを使った本人確認を行っており、ここでもSQUEEZEのシステムが活用されています。

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一方、食材、備品、リネンなどの納入について、取引業者の方々へもRemoteLOCKの暗証番号を発行し、施設内の所定の場所に設置してもらうという方法が取られています。ここでもRemoteLOCKのお知らせ機能で、納品が予定通りに行われているかどうか確認するというオペレーションになっているそうです。

その他施設運営のポイントとして、お客様により安心して滞在いただくための館内案内ドキュメントの充実、生ごみ処理機やペットボトル圧縮機の導入などエコへの積極的な取り組み、ごみステーションの寄贈や地元の生産者からの仕入れなどを通じた地域とのつながりなどが挙げられました。

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最後に、同社では、単純に宿泊事業で収益を上げるというスタンスではなく、地域に経済を創り出すという目線から事業の構築を進めているとのことで、同社が実践した仕組みがリファレンスモデルとなって、全国各地で参考にされることを理想として事業に取り組んでいるそうです。地方に経済を創り出す上での選択肢として「無人オペレーション」は今後重要なキーワードになってくる、とのコメントで締めくくられました。

クラウド運営ソリューションで実現する新しい宿泊体験 / 株式会社SQUEEZE

SQUEEZEロゴ

二番目に登壇したのは、株式会社SQUEEZE クラウド運営ソリューション事業部の以倉竜一氏。同社の提供する「クラウドレセプション」を活用した遠隔からの無人・省人運営と、業務の割り当てを見直すことでの人手不足の解消についても解説いただきました。

同社は、ホテル運営に関わる業務の、チェックインからチェックアウトに至る属人性の高い領域をDX化することで、運営スタッフの時間と施設の空間に付加価値を提供し、観光・ホテル業界のアップデートを図るオペレーション・テック企業です。

ホテル運営システム(PMS)「suitebook」やクラウド運営チーム「オンラインコンシェルジュ」などホテル・旅館業界向けのソリューションを提供する一方、自社でも「Minn」、「Theatel」というブランドでスマートホテル事業を全国に展開しています。

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クラウド運営ソリューションとは?

同社は、プノンペン(カンボジア)にあるオペレーションセンターと国内外の在宅ワーカーからなるクラウド運営チームを有しており、遠隔から24時間、365日フロント対応を行うことが可能となっています。

これを活用すれば、ホテルの本部スタッフはフロント業務を離れ、付加価値の高い戦略立案や集客、プロモーションなどの業務に集中することができます。また、フロントに人を配置しないことで、フロントデスクをシンプル化し、施設の空間を有効活用することもできます。こちらが前述の山口氏のプレゼンで言及のあったオンラインコンシェルジュにあたります。

また、同社の追求するクラウドでのホテル運営では、施設ごとに支配人と常駐スタッフを抱える従来型のホテルと異なり、機能別の専門チームが、クラウドワーカーやスポットワーカーを活用しながら、複数の施設を横断的に担当することで、施設の数が増えても人件費が比例的に増えないビジネスモデルとなっています。

ノンコア業務(誰にでもできるような定例業務)はシステムで自動化や効率化を行ない、そこで生じた余剰リソース(人的資源)をマーケティングやレベニュー、集客といった付加価値の高い業務に再配分することができるという訳です。

同社の運営するホテルでは、予約時の事前決済を原則としているため、現地での精算は発生せず、また、入室はRemoteLOCKをはじめとするスマートロックと連携して暗証番号を自動発行、滞在中はプノンペンの運営チームが多言語で24時間対応を行なっているため、チェックインからチェックアウトまで利用者自身で完結する仕組みになっているそうです。

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以上に加えて、以倉氏からは、クラウド運営がホテルもたらす効果として、① 固定人件費を中心とした固定費の低減、② ノンコア業務の削減による効率化と人的資源の適正配分、③ システムに蓄積されたデータの有効活用、そして、④ ウィズコロナ/アフターコロナ時代に求められるニューノーマルとしての非接触/非対面のサービスの実現、の4つが挙げられるとの解説がありました。

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取り組み事例

その後、SQUEEZEがサービスを提供するホテルの事例をいくつかご紹介いただきました。ホテルの事例では、いずれも同社の提供するPMSであるsuitebookとクラウド運営チーム(オンラインコンシェルジュ)を利用しつつ、利用者が自分でカードキーを取得する仕組みや現金取り扱いのための自動精算機との連携など、施設側の事情にあわせてカスタマイズされたサービスが提供されていることがわかります。

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同社のサービスは、ホテルだけでなく、コンドミニアムやヴィラタイプの施設の無人運営にも導入されており、また、ユニークなところでは、来春オープン予定で現在注目が集まっているHOKKAIDO BALLPALK F VILLAGE内の球場に隣接したランドマーク「TOWER11(タワー・イレブン)」のホテル、温浴、サウナ施設の運営パートナーとして同社がプロジェクトに参画しているそうです。

このような新しい施設が、積極的にクラウド運営のエキスパートである同社のノウハウを活用しようとしている点に、時代の進化を感じます。

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非対面・非接触を実現するニューノーマル時代の宿泊運営 / 株式会社構造計画研究所

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最後の登壇者は、クラウド上で入退室を管理するシステムとハードウェア(RemoteLOCK)を販売する株式会社構造計画研究所のRemoteLOCKエバンジェリスト池田修一氏。池田氏は冒頭、簡単な自社の紹介の後、アフターコロナでホテル・旅館業界に求められることとして、①フロント業務の省人化と、②体験価値の向上の2点を挙げました。

ホテルにおけるフロント業務の省人化と体験価値の向上

帝国データバンクの業種ごとの人手不足割合に関する統計を見ると、ホテル・旅館業では人手不足の傾向が再び顕著になりつつあり、今後インバウンドが本格的に再開すると深刻なものになると考えられます。

そのような状況の中、宿泊カードの記入、鍵の受け渡し、チェックアウト時の精算など業務量の多かった従来のフロント業務のうち事務的な業務は、今後はできるだけIoTやITを利用して人手をかけずに行い、フロントは観光情報の紹介やウェルカムドリンクのサービスなどおもてなし業務を強化しつつ、アップセルやクロスセルなど客単価の向上につながる業務にシフトしていく流れになる、と池田氏は予想します。

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一方、コロナ以降ネットで話題になっている宿泊施設を調べてみると、グランピングや一棟貸し施設などが多く、そのような話題になる施設に共通しているのが「プライベートな空間が取れる」、「日常生活とは離れた非日常が体験ができる」といった2点。例えば、BBQデッキやドッグランのあるグランピング施設や一棟貸し施設の中に個人用のサウナがあるなど、いずれも「非日常」、「特別」、「プライベート」が共通のキーワードになっています。

また、楽天トラベルなどの口コミ評価をみると、利用者が施設に到着した瞬間から評価は始まっており、チェックイン時に待ち行列ができていたりするとそれが低評価に直結する事象があることが紹介されました。

その点、RemoteLOCKやSQUEEZEのシステムを利用すれば、タブレットなどで非対面でのチェックインの後、鍵も持たずにすぐに入室でき、必要な時だけ部屋から電話やチャットで問い合わせればよいという環境ができあがります。また、キーレス化で、毎回鍵を持ち歩く、外出時に誰が鍵を持っておくか決めておく、などの煩わしさからも解放されます。

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同社では、QRコード対応の新製品「RemoteLOCK 8j-Q」を発表していますスマホの中のQRコードで、チェックインから、入り口の自動ドア、エレベーター、自分の部屋まですべて開けることができるという世界観の紹介からは、近い将来に一般化するであろう利便性の高いホテルオペレーション像を感じさせられました。

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RemoteLOCKの概要

RemoteLOCKは2017年にサービスを開始。以来顧客は増加傾向にあって、現状ではグローバルで1日10万組以上(約1秒に1組!)の入室を管理しているそうです。また、40以上の公開サービス(ホテル系のシステムやスペースの時間貸し系の予約システムなど)と連動しています。

先に説明のあったSQUEEZEのsuitebookともシステム連携しており、クラウド上でsuitebookからの予約情報が届くと、ゲストごとの暗証番号を作成してsuitebookに戻し、同時にRemoteLOCKの本体に暗証番号がダウンロードされる仕組みになっています。

ゲストから見れば予約後に予約番号をメールで受け取り、チェックインの際にその予約番号をタブレットなどに入力すれば、入室に必要な暗証番号が表示され入室が可能となる、という見え方になります。クラウド上には入退室の履歴も記録されます。

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同社が販売するハードウェアの製品ラインアップは、客室向けのRemoteLOCKに加えて、施設のエントランスやエレベーターを制御するTOBIRAがあります。TOBIRAはRemoteLOCKの鍵情報(暗証番号やQRコード)と連動していますので、これらを同時に設置すれば、ゲストは一つの鍵情報で、エントランスもエレベーターも客室もすべて解錠できるということになります。

RemoteLOCKは、従来の暗証番号タイプのものに新しくQRコードタイプの製品が加わり、施設の性質や運営者の希望に応じた選択が可能となっています。実際に利用する場合には、これらハードウェアの本体費用と工事費用に加えて月額の管理システム利用料が加わる、という形になります。

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この後、池田氏からは、実際のホテル、旅館などへのRemoteLOCKの導入事例について説明がありました。中でも、これまではフロントでの丁寧な対応が良いサービスであると考えられていたようなハイクラスなホテルであっても、コロナ以降は非対面の対応の方がゲストに喜ばれるという理由でスマートロックが選択されるようになってきている、という事例は時代の新しい潮流を感じさせられるものでした。

Q&Aコーナー/参加者からの質問にリアルタイムに回答

最後はQ&Aコーナーです。オンラインで数多くの質問が寄せられ、終了予定時間を超えても、自由参加というスタイルで質疑応答が続きました。参加者の方々の熱心さがうかがえます。ここでは、その中から3件ほどピックアップしてご紹介いたします。

Q&A

利用者はどのような客層が多いですか?また、集客のための施策はどうしていますか?
 → 株式会社日本ユニスト 山口氏への質問
【回答】客層は20~30代の女子グループをメインとして、後は家族連れが多いです。2家族で1棟貸しの施設を利用する方もいらっしゃいます。集客はSNSを中心としたマーケティングを行なっています。単純にSNSで情報発信するだけでなく、定期的にイベントを打ち続けているということがポイントだと考えています。
suitebookのシステムを利用した場合としないで人手をかけた場合を比較して、どの程度の費用削減効果がありますか?
 →株式会社SQUEEZE 以倉氏への質問
【回答】オンラインコンシェルジュに関わる質問だと思いますが、一番大きいのは教育コストの部分と退職リスクがないということです。一概に人件費が何%の削減になるとは言いづらいですが、24時間多言語対応可能なスタッフを現地で雇用するコスト、そのスタッフが辞めた場合に新たに採用するコスト、そのスタッフをまたトレーニングし直すコストを考えると、オンラインコンシェルジュを使うメリットは大きいことを理解いただけると思います。また、施設の数を増やしていく場合、それまでのノウハウがそのまま活かせるので、さらにメリットは大きくなるといえます。
他のスマートロックやカードキーと比べてRemoteLOCKが良い理由を教えてください。
 →株式会社構造計画研究所 池田氏への質問
【回答】カードキーの場合、無人で受け渡しをしようとすると自動精算機のような高額な装置が必要となり、イニシャルコストが相当高くなってしまいます。他のスマートロックとの違いは、まず、ホテル向けシステムとの連携数やそのジャンルの幅広さはRemoteLOCKがNo.1だと考えています。また、他のスマートロックは毎回開けるたびにクラウドとの通信やBluetooth接続が必要なので、その通信に何かしらのトラブルがあると入れないといった事象が起こりえます。他方でRemoteLOCKは本体に暗証番号をダウンロードしていますので、ひとたびダウンロードされていれば、その後たとえ停電やWi-Fi切断が発生しても動作、入室に支障をきたしません

以上、いかがでしたでしょうか?今回は各方面から3名の登壇者を迎え、大変盛りだくさんな内容のセミナーとなりました。構造計画研究所では、今後も同様のセミナーを計画しているとのことです。ご興味があれば、ぜひ参加を検討してみてはいかがでしょうか。

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