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公開日2024.11.06

最終更新日2024.11.07

【セミナーレポート】完全無人書店「ほんたす」から学ぶ店舗運営の最新事例~顧客体験を向上させる、持続可能な施設づくりとは~

今回は、持続可能な新しい書店モデルとして完全無人書店「ほんたす 」ブランドを展開する日本出版販売株式会社、そこで活用されているLINEミニアプリを活用したデジタル会員証システム「Lメンバーズカード」を提供する合同会社Oblivion、およびRemoteLOCKを提供する弊社構造計画研究所の3社で開催したオンラインセミナー“完全無人書店「ほんたす」から学ぶ店舗運営の最新事例”の模様をレポートしてまいります。

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営業時間は完全無人運営!「ほんたす」が実現する持続可能な店舗(日本出版販売株式会社)

最初に登壇したのは、日本出版販売株式会社 ほんたすブランドマネージャー 南 光太郎氏です。南 氏からは「ほんたす」への取り組みの背景や事業概要、今後の展望などについて解説いただきました。

日本出版販売株式会社・ほんたすの詳細はこちら!

◆ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店
住所:東京都千代田区永田町2-11-1 東京メトロ溜池山王駅
(山王パークタワー側改札外、地上出口 8番付近)

 

会社概要

日本出版販売株式会社(以下、日販)は出版社が作った本を書店に卸すという、出版取次という業種の会社で、日本の出版流通を支えています。南氏によれば、現在日本国内には約3,200の出版社があり、そこが作った本が同社の王子にある倉庫へ一括で入ってきて、そこから全国約5,000の書店、約32,000のコンビニ等に配送する、というのが日販の業務のイメージです。近年は会社をホールディングス化し、事業の多角化を進めているそうです。

また、物量の面から見ると、一日約500万冊の本が同社の倉庫から全国各地に配送され、それが読者の手元に届くという流れになっています。

ほんたす2-1

ほんたす概要・背景

次に南 氏は、卸売業である日販がなぜ「ほんたす」に取り組んだのか?という点について解説しました。同社が、東京メトロ溜池山王駅に完全無人書店「ほんたすためいけ」 をオープンして約1年です。

南 氏によれば、そもそも「ほんたす」とは、生活動線上に本屋を作ることで、「消費者と本のタッチポイントを増やし続けていく」ことを目的とした事業です。その中で、1. どこでも持続可能な書店モデルの開発、2. また書店に来てもらうための体験価値の創出、ということを実現するために、事業に取り組んでいるとのことでした。

ほんたす3-4

この事業に取り組む背景として、南 氏は全国的に書店の閉店が加速していることを挙げました。これは、おもに人件費の高騰、全般的な人手不足、後継者の不在などの原因によるもので、東京都内の書店の数は、40年前のピーク時と比較して、現在ではその1/5まで縮小しているそうです。

そのなかでも、人件費や賃料の問題から、人の集まりやすい駅に立地する駅ナカ駅前書店の数の減り方が顕著であり、首都圏の1都3県で見ても、本来書店があるべき駅に書店が不足しているという状況が多くあり、「ほんたす ためいけ」を出店した経緯もそのような背景からであるという説明でした。

溜池山王駅の中にある「ほんたす ためいけ」の営業時間は朝7時から夜22時までです。ここでは、営業時間までに本の配送や店舗メンテナンスを終わらせ、営業時間はセルフレジによる無人営業となっていて従業員はいません。毎朝、営業時間前に従業員が品出しや店舗のメンテナンスをするという形態になっています。

ほんたす4

「ほんたす」のコンセプトについて南 氏は、本のライトユーザーに向けて、その生活導線上にあることによって、より気軽な本との出会いの場を作っていくこと、そのような方々に手軽に利用していただくことによって再び書店の価値を高めていくことである、解説しました。

「ほんたす」のセキュリティと運営体制

さらに南氏は、「ほんたす」のセキュリティと運営体制について解説しました。「ほんたす」に導入されているシステムは大きく3つです。一つは入退店管理システムで、ここにRemoteLOCK(TOBIRA)が導入されています。加えて店内には防犯のためのライブカメラが設置されていて、遠隔からリアルタイムで監視する体制が取られています。もう一つはお客様に会計をしていただくためのキャッシュレスのセルフレジです。こうして、お客様がLINEを使って入店し、好きな本を選んで、好きなタイミングで会計をして出ていく、という流れが出来上がっています。

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運営体制としては、1-2でも触れられたように、開店前に本が届き、ラウンダーと呼ばれるスタッフが店舗メンテナンスを行なって、1時間ほどで作業を終えているそうです。営業時間が始まると、遠隔でサポートを行います。

そして南 氏は、この無人店舗を実現することができた一番の要因はセキュリティ対策がしっかりしていることである、と説明しました。何かあったときに、誰がどう駆けつけるのかということを明確にできていることで、管轄の消防署の厳しいチェックもクリアすることができたそうです。

検証速報

実際に1年間運営してみてどうだったか?という点については、無人ということで懸念された商品ロスはなんと0件、つまり万引きがないという結果を得られました。トラブルも、細かな対応事例を除けば、ほとんどないそうです。お客様が無人であることを理解して利用していただけているため、問い合わせも少なく、結果としてセキュリティ面の問題はクリアされているとの説明でした。

ほんたす6

また、現時点での会員数は13,000人を超えており、年齢性別による分布を見てみると、年齢による偏りがないことが見て取れます。ここから、入店するにはLINEで会員登録をする必要があるものの、50代以上のお客様も問題なくLINEを使って入店していることがわかります。

1年間のまとめとして、セキュリティに関してはまったく問題なし、オペレーションに関しても全く問題なしと結論付けられますが、売上に関しては、目標数値には届いていないものの、会員数が増え、来店頻度が向上していることで、改善傾向にあるそうです。今回の成果として、無人運営が問題なく安全に回っているということのノウハウと仕組みを活かしたソリューションを開発して行こうという判断に至り、このことが2店舗目のオープンにつながった、という説明でした。

2号店OPEN

ほんたす2号店目となる「あゆみBOOKS杉並店 supported by ほんたす」は、時間帯によって有人営業と無人営業を組み合わせた有人・無人のハイブリッド型営業というスタイルを取っています。

あゆみBOOKS杉並店でも1.セルフレジ、2.入店システム、3.遠隔からの運営サポートを導入することで、営業時間の延長だけでなく、有人運営の営業時間帯の省人化による人件費の削減も実現しています。この書店は約50坪、以前は2.5人ぐらいで運営していたところ、セルフレジを導入することによってほぼワンオペで運営することが可能になり、人件費を50%以上削減することができたそうです。

ほんたす7

また、日中の有人運営の時間帯に勤務している書店スタッフも、店舗内でさらに丁寧な接客や売り場づくりに集中することができるようになり、結果として、お客様とのより良いコミュニケーションをはかることが可能になっているとのことでした。

最後に南氏は、このモデルを使うことによって、閉店してしまいそうな書店の収益改善や、書店のない街への新規出店などに取り組み、人と本とのタッチポイントを増やしていきたい、と今後の展望を語りました、また、他業種の小売店にもこの仕組みをパッケージとして提供することによって、役立てていきたい、とも語りました。

「あゆみBOOKS杉並店 supported by ほんたす」の詳細はこちら!

住所:東京都杉並区梅郷1-7-15 カーニープレイス杉並1F

営業時間:8:00-24:00(8:00-10:00および22:00-24:00は完全会員制・無人営業)

省コストで会員管理を実現!デジタル会員証LINEミニアプリ(合同会社Oblivion)

続いての登壇は、合同会社Oblivion 代表取締役の佐藤 日出輝 氏です。佐藤 氏は同社が提供するLINEミニアプリ、Lメンバーズカードについて解説しました。

Lメンバーズカード1-1

Lメンバーズカードのサービス概要

Lメンバーズカードとはデジタル会員証のLINEミニアプリであり、機能としては、会員証、ポイントカードなどが中心となっています。取得されたデータをもとに、LINE公式アカウントからのメッセージ配信も可能です。

そして、Lメンバーズカードには拡張機能も豊富に用意されていて、その中から店舗に適した機能を追加して、カスタマイズすることができる点が特長になっています。「ほんたす」の場合には、入退室管理とRemoteLOCK連携というところを拡張して使っていただいているという形になっています。

LメンバーズカードはLINEミニアプリというジャンルのサービスになるそうですが、LINEミニアプリとは何か?ということについて、一番の特長は、お客様がLINEのアプリさえ持っていればすぐに使っていただけるというハードルの低さである、と佐藤 氏は解説します。

Lメンバーズカード2-1

スマホのアプリであれば新しくインストールをする手間がかかりますし、WEB上のシステムであればパスワードを入力したりログインしたりというハードルがあり、そこで離脱する人が多いと考えられますが、そのようなことがまったく不要というのが大きなメリットになっています。

また、利用者がミニアプリを立ち上げたタイミングで自動的に店舗の公式アカウントに友だち追加する仕組みになっていますので、来店後のメッセージやキャンペーン情報などを、開封率の高いLINE上で送ることが可能になります。

その他にも、顧客管理のために会員のランクを割り振ったり、タグをつけたり、クーポンを送ったり、来店後のアンケートを取ったり、といったさまざまな機能が用意されています。このためいろいろな業種でカスタマイズして活用することができ、単なる会員証としてだけではなく、店舗のオリジナルのアプリとして使うことができます

Lメンバーズカード3

RemoteLOCK連携について

LメンバーズカードにはRemoteLOCKと4種類の連携機能があります。1つ目は予約機能連携で、Lメンバーズカードのカレンダー予約機能とRemoteLOCKを連携させることで、お客様がLINEで予約した時間に合わせて、解錠のための暗証番号を自動的に発行することができます。コワーキングスペースやオフィスの会議室予約などでの事例が多いそうです。

2つ目は入退室管理機能との連携です。お客様に店頭でチェックイン用のQRコードを読み込んでいただくことで、当日利用可能な解錠用の暗証番号やQRコードを発行することができます。チェックアウトの機能もあるので、お客様の滞在時間をもとに利用料金を計算するような仕組みの店舗でも利用いただくことができます。

3つ目は、Lメンバーズカードのサブスクプラン機能との連携です。サブスクプラン機能とは、お客様に月額の利用プランを選択していただき、クレジットカードへの自動請求が可能となる仕組みですが、その延長線上にRemoteLOCK連携があることで、お客様が入会したタイミングで解錠用の暗証番号などを自動発行することができます。RemoteLOCKのアクセススケジュールという機能と連携することも可能なので、コワーキングスペースや無人のジムなどにあるように、このプランは土日だけとか、このプランは平日の朝と晩だけなどといった制限をつける設定を行なうこともできます。

4つ目は、Lメンバーズカードの回数券機能との連携です。回数券機能とは、サブスク機能と異なり、1回限りの決済という形でお客様にLINE上で回数券を購入いただく機能です。各回数券にRemoteLOCKの暗証番号やQRコードを紐づけすることができます。

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導入の流れ

「ほんたす」の場合であれば、会員登録いただくだけで鍵(QRコード)を発行できるということになりますが、他の業種では事情が異なってきます。会員登録プラス予約であったり、サブスクに入っていただくであったり、鍵を発行できる方の制御が必要になる場合もあります。

佐藤氏は、現状のビジネスに課題を抱えておられたり、LINEを活用した店舗DXに興味を持たれている方がいらっしゃれば、気軽に同社までお問い合わせください、とセミナー参加者に呼びかけ、ご自身のパートを締めくくりました。オンラインでのヒアリングなどの要望にも応じているそうです。

導入相談・お問い合わせはこちら

スマートロックRemoteLOCKによる入店管理と事例紹介(株式会社構造計画研究所)

最後のパートは、株式会社構造計画研究所から、RemoteLOCKエバンジェリストの池田修一が登壇しました。池田は、簡単に構造計画研究所の会社概要を紹介した後、RemoteLOCKの仕組みや製品概要、活用事例について解説を進めました。

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RemoteLOCKによる入店管理

池田はRemoteLOCKについて、「ほんたす」の入口にあるようなQRコードリーダーを取り付け、ネットワークにつなぐことによって、全国に散らばっている店舗や無人店舗を一元で管理できるソリューションであると説明しました。ネットワークにつながっているので、パソコンやスマホがあれば、解錠用のQRコードを作ったり、暗証番号を作ったり、リアルタイムに開けたり、といった管理をどこからでも行なうことができます。

今回の事例でいえば、LINE上で会員登録をすると、LINE上にミニアプリで会員証のQRコードが表示されて、それを自動ドアの横に設置されているQRコード読み取り用のカメラの10cmほど前にかざすと自動ドアを解錠できる、という仕組みになっています。

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RemoteLOCK概要

RemoteLOCKのラインナップとしては、①暗証番号で開けるタイプ、②QRコードで開けるタイプ、③FeliCa (SUICAなどのICカード)で開けるタイプのものがあります。これとは別に、④自動ドアやエレベーター、セキュリティゲートなどに取り付けてネットワーク化する製品もあります。

導入市場はホテルや民泊での活用が特に多いですが、コロナ禍で宿泊業界全体が落ち込みをみせるなか、会議室や無人の店舗などでの利用が増え、今では公共施設(学校体育館)やオフィスなど幅広い導入実績があります。

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活用のポイントと新機能

RemoteLOCKを取り付けると、入店の履歴をリアルタイムで監視することが可能です。「ほんたす」の場合でも、何月何日の何時何分に誰が入店したかという履歴を全部取ることができます。また、退出の履歴も取っていますので、何分滞在して何時に退出したという記録もリアルタイムでクラウドに蓄積されます。こういったデータを品ぞろえのヒントにする、などといったマーケティングに役立てていただくことができます。

また、多店舗展開を行なっている場合などには、同じQRコードや暗証番号で、他の店舗にも入ることができます。ドアのグループ化という機能があり、多店舗でなくても、ドアが複数あった場合などに共通のQRコードで解錠することができます。

9月にリリースされた「かぎパス」という機能は、スマホのウォレット(Appleウォレット、Googleウォレット)にかぎ情報(QRコード、暗証番号)を登録できるというものです。これは、おもに宿泊施設や時間貸しの会議室などを対象とした機能ですが、スマホからいかにかぎを簡単に取り出すか、という視点に立った新サービスとなっています。

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事例紹介

最後は事例紹介です。池田からは以下のような導入事例を通じて、弊社のスマートロックシステムRemoteLOCKをさまざまな業種で、幅広く利用いただいていることを紹介しました。

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質疑応答/参加者からの質問にリアルタイムに回答

最後は質疑応答のコーナーです。今回もオンラインで数多くの質問を頂戴しました。ここではその中から2件ピックアップしてご紹介いたします。

本の取り寄せは可能ですか?また、溜池山王の店舗での品ぞろえの工夫はどうしていますか?
→ 日本出版販売株式会社  南 氏への質問
【回答】取り寄せは可能で、既に取り寄せのサービスは行っています。Lメンバーズカードの会員証のページから取り寄せのページに飛ぶことができ、そこから注文いただくことができます。商品が入荷すると「商品が届きました」という整理番号付きのメールをお客様にお送りします。店内にはレジの下に客注BOXを設置していて、お客様は整理番号を照合して商品を見つけ、セルフレジで会計する、という流れです。
品ぞろえの工夫についてはまだ検証中ですが、お客様の販売の実績と来店の年齢層の実績にあわせて考えていて、その結果今はビジネス書を中心に、マーケティングの本であったり、自己啓発系の本を多く揃えています。いわば、行動分析と販売分析をもとに品ぞろえを行なっております。
LINEアプリを使った無人店舗や専門学校や大学の書店・売店の事例はありますか?
→ 合同会社Oblivion 佐藤氏への質問)
【回答】はい、まさに大学内の売店で事例がございます。「ほんたす」と同じく、会員登録をしてQRコードで入店をしていただくというスタイルで、鈴鹿医療科学大学の中のMax マートで使っていただいています。
 ⇒ 事例:QRコードを活用した高いセキュリティで、大学構内での無人店舗運営を実現(鈴鹿医療科学大学 様)

以上、2024年10月2日に開催されたオンラインセミナーの模様をレポートしました。筆者自身は、ここで紹介された完全無人書店「ほんたす」は、現在実現可能な無人店舗ビジネスの一つの完成されたモデルではないか、と感じた次第です。一方、業種によっては、AIや顔認証などの最新技術を取り入れた無人店舗のあり方も模索されていると聞きます。今後も本ブログでは無人店舗ビジネスの動向をご紹介します。

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