公開日2024.12.13
ホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティへの嗜好の高まり
コロナ禍の「非対面・非接触」対策から急増したホテルの「セルフサービス」「セルフホスピタリティ」は、コロナが落ち着いた現在でも、拡大の一途を辿っています。その理由と、セルフ化が与えるメリットについて詳しく解説していきます。
ホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティはコロナ禍後も拡大
現在、ホテルの「セルフサービス」「セルフホスピタリティ」化は、拡大の一途を辿っています。特に、スマートフォンを利用した事前チェックインや、セルフチェックインサービス、スマートキーなど、多くのホテルでの導入が進みました。
ホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティとは
- セルフサービス
ゲスト自らが、従来ホテルスタッフが行っていた業務を、ITシステムなどを利用して行うこと。 - セルフホスピタリティ
ゲストのニーズや要望に合わせたサービスを、非対面や自動化などの手法で提供すること。
当初はビジネスホテルなどが主体でしたが、最近ではラグジュアリーホテルなど、高級ホテルなどでも導入されるようになっています。コロナ禍がきっかけとなったホテルのセルフサービス化は、なぜ今も拡大しているのか、くわしく解説していきましょう。
コロナ禍で拡大したホテルのホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティ
ホテルのホテルのセルフサービス化・セルフホスピタリティ化は、コロナ禍の感染リスク低減のために一気に導入が進みました。「非接触」「非対面」が求められるようになり、ホテルがそのニーズに応える手段として、積極的に取り入れられたからです。
コロナ禍で進んだセルフ化の例
- セルフチェックイン・チェックアウト
- キャッシュレス対応自動精算機
- ルームキーのスマートキー化
ウイルスを含んだ飛沫を避けるための三密(密閉・密集・密接)対策が叫ばれるなか、ホテルのスタッフと対面したり、接触したりする危険を回避し、安心してホテルでの宿泊が可能になったのです。
アフターコロナでも進むホテルのセルフ化
コロナ禍で一気に導入が進んだホテルのセルフ化ですが、外出が制限されていた時期を経た現在も、増加傾向にあります。
というのも、セルフ化は、感染症対策以上の効果があるからです。特に、セルフ化による業務の効率化が、従業員の負担軽減やゲストの待ち時間の短縮効果など、ホテル、ゲスト双方に大きなメリットにつながっています。
また、様々な企業が参入し、様々な製品が投入される中で、安価で気軽に導入できるようになったことや、さらに、プライバシーを重視したいというゲストのニーズや嗜好の高まりも、拡大の後押しをする一因といえるでしょう。
ホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティがもたらすメリット
では、実際に、ホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティがもたらすメリットを見ていきましょう。
ホテルのセルフ化がもたらすメリット
- チェックインの待ち時間が解消する
- ゲストのプライバシーを優先することができる
- 手続きの簡略化で快適な滞在を提供できる
- 人手不足解消とコスト削減が可能になる
チェックインの待ち時間が解消する
セルフチェックインシステムを導入すれば、チェックイン時の待ち時間が大幅に解消します。ホテルスタッフによるチェックインを自動化し、業務を大幅に簡略化できるからです。たとえば、従来のチェックインでは、宿泊者情報の記入や、本人確認などに時間がかかります。混雑時には、多くの人が集中するので、待ち時間の長さがゲストの不満につながっていました。
しかし、セルフチェックインシステムでは、事前チェックイン機能やQRコードを利用することにより、複数のゲストが同時に手続きを行うことが可能になります。手続き自体も短時間で済むことから、待ち時間が解消されるのです。
※QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。
ゲストのプライバシーを尊重することができる
ホテルのセルフ化は、近年のゲストの高いニーズでもある「プライバシー」を尊重することができます。というのも、ホテルスタッフなどとの接触が減るため、プライバシーに関わる情報が漏れにくくなるためです。
従来のフロントでのチェックインでは、スタッフなどの第三者に、名前や住所などの個人情報をさらすことになります。また、答えにくい質問に、口頭で伝えなければならない場合もあります。
しかし、セルフチェックインシステムがあれば、ゲストは周囲を気にせずに、チェックインを行うことができます。また、ホテルの都合に合わせなくても、各自のペースでホテルを利用できることも、行動を制限されないことから好評です。
手続きの簡略化で快適な滞在を提供できる
ホテルのセルフ化は、ゲストの快適な滞在を提供することができます。フロントでの対面手続きがなくなることで、待ち時間によるストレスが軽減され、ゲストのペースで滞在を楽しむことができるためです。
また、スタッフとの接触が必要最低限となるため、開放感にも繋がります。特に、たまたま態度の悪いスタッフに接客された場合、ホテルの満足度は低くなる傾向が強いため、評価を底上げすることにも繋がるでしょう。
人手不足解消とコスト削減が可能になる
ホテルのセルフ化は、ホテル事業者にとっても「人手不足解消」と「コスト削減」が可能になる施策です。ホテル業務を効率化し、自動化となるため、スタッフを何人も常駐させる必要がなくなるためです。
たとえば、セルフチェックインシステムやスマートキーがあれば、夜遅くにチェックインするゲストのために、フロントスタッフが待機している必要はありません。また、キャッシュレス対応の自動精算機を設置すると、現金の取り扱いが極端に減り、現金の管理や精算業務がなくなります。
少人数でホテルを運営することが可能になるため、人手不足解消やコスト削減につながるのです。
ホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティがもたらすデメリット
では次に、ホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティがもたらすデメリットについて見ていきましょう。一見メリットが多いホテルのセルフ化ですが、デメリットも存在します。それが、次の3つです。
ホテルのセルフ化のデメリット
- 初期投資費用がかかる
- システムトラブルなど緊急時に対応が贈れる場合がある
- システムに慣れていないゲストには不評の可能性がある
初期投資費用がかかる
当然ですが、セルフ化を可能とするシステムを導入する場合、初期投資費用がかかります。それぞれの性能やオプションによって、大きく費用は異なります。初期費用無料のサービスもありますが、自動精算機などは、高いものでは数百万円もかかる機械もあります。
ただし、人件費などが軽減されるため、長期的に見ると元は十分に取れる施策といえるでしょう。
システムトラブルなど緊急時に対応が遅れる場合がある
セルフ化を可能にするシステムがトラブルを起こすなど緊急時の場合、対応が遅れ、ゲストに迷惑をかける可能性もあります。たとえば、次のようなトラブルが考えられます。
システムトラブルで起きるトラブル
- オンライン予約システムの障害による予約ミス
- 停電などによるシステム停止
- システムの内部トラブル
- 領収書等を印刷する用紙などの備品切れ
トラブルが起きた場合、常にスタッフが近くにいるわけではないので、駆けつけるまでにタイムロスが発生します。また、システムの内部トラブルの場合は、ホテルスタッフでは対応出来ません。なにかトラブルがあった際は、ゲストがすぐにスタッフを呼び出せるよう、対策をきっちりと行っておく必要があります。
システムに慣れていないゲストには不評の可能性がある
システムに慣れていないゲストには、ホテルのセルフ化は不評の可能性があります。システムを使いこなせない高齢者の方や、ホテルスタッフからの温かいおもてなしを期待しているゲストにとっては、無機質に映る場合があるでしょう。高齢者の方の利用が多い場合は、スタッフがホテル内を巡回する頻度を増やすなどして、ゲストへのお声がけを強化するなどの工夫も必要といえます。
あわせて読みたい記事
ホテルのセルフ化を可能にするシステム3つ
これまでの解説で、取り上げてきたセルフ化を可能にするシステムについて、具体的に解説していきましょう。セルフ化を可能にするシステムはたくさんありますが、基本的に次の3つが連携することで実現します。
それぞれのシステムについて、どのようなことが可能になるのか、解説していきましょう。
ホテル予約管理システム(PMS)
ホテルの予約・宿泊管理システム(PMS)とは、宿泊施設の運営を効率化するためのシステムです。主に、オンラインで受けた予約を一元管理して、予約の変更やキャンセルなども管理します。
ホテル予約管理システム(PMS)で可能になること
- 予約管理
オーバーブッキングを防ぎ、予約の変更、キャンセルを管理 - 客室管理
客室の状況を管理し、適切な部屋割りを実施 - 顧客管理
ゲストの基本情報や滞在履歴を記録 - 会計管理
宿泊料金やサービス料金などの請求、支払いを管理
予約・宿泊管理システム(PMS)を導入することで、運営の効率化が進みます。ゲストのデータ分析で需要予測に沿った価格設定も可能になり、収益性も向上するでしょう。
セルフチェックインシステム
セルフチェックインサービスは、ゲスト自身がチェックイン作業を行えるシステムです。ホテル予約管理システム(PMS)と連携することで、ゲストはホテル到着後、設置されたモバイルを用いて、簡単な操作で手続きが行えます。
セルフチェックインシステムで可能になること
- 予約情報の自動取得
ホテル予約管理システム(PMS)と連携し、予約内容を自動的に取得 - 本人確認機能
パスポートや身分証明書などの本人確認の実施 - 多言語対応
インバウンドなど多国籍言語に対応 - 顧客情報の管理
宿泊者情報を自動的に登録し、今後のマーケティングに活用 - 鍵の受け渡し
カードキーやスマートキーの発行
セルフチェックインシステムは、スマートロックなどと併用することで、フロント業務を無人化することが可能になります。
スマートロック(RemoteLOCK)
スマートロック(RemoteLOCK)は、物理的な鍵を使用せずに、スマートフォンなどを用いて、ドアの施錠・解錠を行えるシステムです。セルフチェックインシステムと併用することで、チェックイン時の鍵の受け渡しがなくなります。
ホテル予約管理システム(PMS)と連携することで、予約に紐付いた鍵を自動的に(パスワードやQRコード)発行することができます。ホテルやシステムの仕様によっては、ホテル入館後、直接客室に入室することも可能です。
スマートロックで可能になること
- 物理的な鍵の受け渡しの廃止
フロントでの鍵の受け渡しがなくなる - 鍵の管理
鍵がデジタル化するため、管理業務がなくなる - 入退室管理
遠隔で鍵の利用状況(入退室)を把握できる - 鍵トラブルの防止
鍵の持ち歩きがなくなるため、紛失や盗難などの鍵トラブルを防止できる
このように、ホテル予約管理システム(PMS)・セルフチェックインシステム・スマートロックがうまく連携することで、ホテルのホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティが可能になるといえるでしょう。
※QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。
ラグジュアリーホテルにも拡大するホテルのセルフ化|石垣 seven x seven
これまで、ホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティは、ビジネスホテルが中心となって拡大していました。しかし現在、高級ホテルと呼ばれるホテルでも、セルフ化は進んでいます。
seven x seven 石垣は、2024年9月9日に石垣島にオープンしたばかりのラグジュアリーホテルです。沖縄特有の石材「琉球石灰岩」を取り入れた館内は高級感に溢れ、窓の外には石垣島の美しい海が広がっています。
このseven x seven 石垣には、スマートチェックインが導入されており、事前に登録したQRコードを利用すれば、一瞬でチェックインが終了します。さらに、同じQRコードはスマートロックとして、客室の施錠・解錠に利用できます。人の目を気にすること無く、プライベート感覚で、滞在を心ゆくまで楽しむことができるでしょう。
【まとめ】ホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティへの嗜好の高まり
いかがでしたでしょうか。ホテルの「セルフサービス」「セルフホスピタリティ」化についての現状と、メリット・デメリット、また導入のためのシステムなどがおわかりになったのではないでしょうか。セルフ化は人手不足やコスト削減という面だけではなく、ゲストのニーズや嗜好の高まりが、需要の後押しをしていると言えるでしょう。
ホテル予約管理システム(PMS)・セルフチェックインシステム・スマートロックが、うまく連携することで、ホテルのホテルのセルフサービス・セルフホスピタリティが可能になります。
参考にしていただけましたら幸いです。