【事例付き】自習室をスマートロックで無人運営するには? 4つのポイント
図書館でもない、コワーキングスペースでもない、「大人向け自習室」というものをご存知でしょうか?実はこのタイプの施設が、全国あちらこちらで増加の傾向にあります、今回は、この大人向け自習室の現状、および運営のポイントについて、事例と一緒に解説します。
いま大人向け自習室が増えている
大人向け自習室って何?
自習室で勉強する人たちといえば、たいていの方は学生をイメージされるのではないでしょうか?ところが、実際に街中にある自習室に足を運んでみると、利用者の大半は学生ではなく、大人の社会人であることを確認できます。
それでは、そうした大人が自習室で何を勉強しているのかといえば、筆者の観察したところ、不動産鑑定士や司法書士といった資格取得のための勉強であったり、ビジネススクールの勉強であったり、社内の昇格試験の勉強であったり、その内容はさまざまのようです。利用者も若い方から、定年過ぎかとお見受けする年配の方まで様々です。
自習室利用者向けポータルサイト「自習室.com」によれば、現在、東京都には177、大阪には111の自習室があることがわかります。それだけ大人向けの自習室というものが一般的な存在になっているということでしょう。
図書館やコワーキングスペースとの違いは?
自習するための場所と言えば図書館を連想される方も多いのではないでしょうか?しかし、大学の図書館など学生のための施設を除けば、図書館は、基本的に、所蔵している資料を読んだり調べたりする場所であると位置づけられています。そのため、個人所有の参考書などを持ち込んでの学習は公式には推奨していないことも多いです。
実際には自習も可能な学習室を備えた図書館も少なくありませんが、大半が公営の施設であることから、多くの場合、遅くまで開いていなかったり、利用するには区域内に在住または在勤していなければいけなかったり、といった制約があります。
- 出典 :
- 山梨県立図書館
一方で、社会人向けとして人気を集めている施設にコワーキングスペースが存在します。コワーキングスペースは基本的に仕事をするための場所と位置付けられています。そのため、自習室と違い、電話や打ち合わせ、オンライン会議などで声を発することは、一般的にはOKとされています。また、多くのコワーキングスペースでは、メンバー間の交流が重視されており、そのようなつながりを求めている利用者が多い点も自習室との大きな違いです。
自習室では、一般的に会話ができないルールになっており、電話に出るなどの行動も制限されています。ある研究によれば、一度中断した作業を元のペースに戻すには20数分かかる、ともいわれています。その点、自習室での勉強は、中断されないことで集中しやすくなり、また、集中した状態を維持しやすくなるという点が大きなメリットであるといえるでしょう。
大人向け自習室の現況
公的な統計はありませんが、いくつかのテレビや新聞の報道を見てみると、このような大人向け自習室は、10年ほど前から、緩やかに増加の傾向にあるといいます。一方、前述したWEBサイト「自習室.com」に登録されている自習室の数は全国で688件。東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、大阪、兵庫、京都といった比較的人口の多い都府県に集中しており、青森、岩手、山形、山梨、鳥取は登録数0となっています。
こうしたことから、大人向け自習室は都市部を中心として確実に増加傾向にあるものの、まだ地域差が大きいことも事実であり、次項で解説する社会背景を勘案すれば、今後は、業界として、地方部も含めた形で成長を続ける可能性が高いと、筆者は予測します。
大人向け自習室が増加している背景とは?
ここ1~2年、リスキリング(Re-skilling)という言葉をよく耳にします。この言葉は企業の従業員が新時代のDX戦略に必要な知識やスキルを再習得するという意味で使われていることが多いようですが、本来は経済産業省も定義しているように、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」を意味しています。
これと類似した概念に、リカレント教育というものがあります。こちらは、仕事に生かすための知識やスキを身につけるための「社会人の学び直し」という意味で使われており、2021年の政府広報では広く国民に推奨されています。
このようなことから、現在、「社会の変化に対応して知識やスキルをアップデートすること」に対する社会のニーズが顕在化しており、それに対応して、社会人の中で勉強や自習に取り組もうという意識が高まっていると考えられます。
その一方、将来の社会に対する不透明感は増しています。若年層を中心に雇用の流動化が進み、転職や起業を考える人の数も明らかに増加しています。そのような状況の中で、資格を取って自立できるようにしておこう、とか、新しい知識やスキルを身につけて昇格や転職を有利に進めよう、といった思考を持つ人が増えるのは当然のことといえるでしょう。
自習室をスマートロックで無人運営する4つのポイント
本章では、視点を変えて、大人向け自習室を事業として考えた場合に参考となる情報をお伝えしてまいりたいと思います。自習室の運営は、利用者に時間と空間を提供するという意味で、レンタルスペースやセルフジムといった業態の施設の運営と共通点があります。
このような性質の施設に相通じる事業の成功のポイントとしては、徹底して業務の効率化をはかり、省人化、無人化を進めて人件費を抑えると同時に、セキュリティを確保、かつ利用者の満足度を高めてリピーターを増やすことである、ということが挙げられます。以下、自習室を無人運営しようとする場合の4つのポイントを具体的にご紹介します。
無人運営のカギとなるスマートロックの導入
自習室はその名の通り利用者が自習するための施設ですから、指導員などを配置する必要はありませんし、利用者に安心して自習していただける環境が整っていれば、原則として、その場にスタッフが常駐する必要もありません。
一番目のポイントとなるのが、どのように利用者の入退室を管理するかという問題です。会員登録をした人、あるいは予約をした人だけが入室できるようにしておく、ということが最も重要です。部外者が自由に出入りできるような環境では、セキュリティ上不安で運営も成り立ちませんし、利用者も安心して施設を利用できません。
弊社の提供するスマートロック「RemoteLOCK」の製品ラインアップ(一部)
これを解決するのがスマートロックの導入です。従来的な鍵(物理鍵)ですと、利用者との間で鍵の受け渡しをどうするかという問題が発生しますし、それ以外にも、鍵を紛失した場合の問題や、鍵の不正利用の問題など、数多くの懸念が生じます。
スマートロックであれば、暗証番号やその他の方法で、会員や予約者だけが、利用を許可された時間の範囲内で、入室できるよう制御することが可能です。現在では、多くの自習室がスマートロックを導入しており、安心、安全な入退室管理を行なっています。各社からさまざまな特徴を備えたスマートロックシステムが提供されていますので、施設の運営方針に適したシステムを選択することが可能です。
予約システムや決済システムの活用で徹底した業務効率化
業務効率化のポイントとして次に挙げたいのが、予約の受け付けや管理、料金の精算、あるいは施設へのチェックインといった、「利用者と運営側の接点となる業務」です。例えば、予約を電話やメールで受け付けて、台帳などを使って人の手で管理する、などというスタイルを取っていては、効率化は進みません。料金の受け渡しや、チェックイン、チェックアウトといった業務に関しても同様です。
現在では、予約から来場確認(チェックイン、チェックアウト)、料金の決済の業務まで、オンラインで完結できる便利なシステムが各社から提供されていますので、数ある選択肢の中から使い勝手の良いと思えるシステムを選ぶのが良いでしょう。ただ、本当にさまざまなシステムが存在していますので、予約、来場確認、料金の決済という一連の業務を、ばらばらに処理するのではなく、統合的に一元管理できるようにしておくことが望ましいと考えます。つまり、システム自体にどのような機能が含まれているか、あるいは、2つ以上のシステムを利用しようとする場合は、それらを相互に連携させることができるかどうか、といった点がポイントになります。
システムによっては、前項で述べたスマートロックの暗証番号を、予約と同時にシステム上で通知する、といったことも可能になります。賢い選択が業務効率化の重要なポイントです。
運営者と利用者、双方の安心を担保するセキュリティカメラ
無人運営という形態において、利用者や、場合によっては部外者による施設内の備品の盗難や損傷というリスクは、避けられない懸念です。また、スマートロックによる入退室管理を行なっていたとしても、会員である利用者が、非会員である知人などを入室させて、料金を払わずに施設を利用させてしまう、などの不正行為も想定しておく必要があります。
このような事態を防止する方法としては、クラウドを活用したセキュリティカメラの導入をおすすめします。クラウドを通じて複数のパソコン、スマホ、タブレットと映像を共有できますので、運営者は離れた場所にいても、施設内の様子を常時チェックできます。また、録画もクラウド上で行われますので、録画機器を購入する必要もありません。セキュリティカメラのサービスも、現在では、各社から、比較的リーズナブルな費用で提供されています。
利用者から見ても、施設が無人であっても、常に監視が行き届いているという体制が整っていれば、不安なく施設を利用できるという安心感につながります。
プラスアルファのアイデアで利用者に選ばれる施設運営
四番目のポイントとしては、これは無人運営に限らない話ですが、サービス面での工夫を凝らすことによって競合施設と差別化をはかり、利用者を増やすこと、そしてリピート率を向上することです。当然のことながら、利用者の増加は経営の安定につながります。
ご参考に具体的な例を挙げてみます。
利用者に好まれる設備例
- インターネット(Wi-FIが使える)
- ロッカーが使える
- フリードリンクが提供されている
- 女性専用エリアが設けられている
- 休憩室が設けられている
- 24時間利用可能である
もちろん、施設によって物理的な制約も異なるでしょうから、提供可能なサービスも異なってくるでしょう。また、施設のロケーションや利用者の属性から、求められるサービスも変わってくると思われます。クリエイティブな発想で、利用者に喜ばれるサービスを提供し、利用者から選ばれる自習室運営を目指したいものです。
事例に見る大人向け自習室のスマート運営(株式会社おおうら様)
- 出典 :
- おとな自習室 公式サイト
最後に、大人向け自習室を全国展開しておられる、株式会社おおうら様の事例をご紹介します。
国内6都市、32施設を展開する「おとな自習室」
「おとな自習室」は株式会社おおうら様が運営する大人向け自習室のブランド名称です。本記事の執筆時点では、大阪を中心に6都府県に32施設を展開しています。利用者としては、税理士、司法書士、宅地建物取引主任者、TOEIC、建築士など、さまざまな資格にチャレンジしている方、大学受験や学校の定期試験のための勉強に取り組んでいる方、仕事や趣味の活動に集中して取り組みたい方などが想定されています。
- 出典 :
- おとな自習室 公式サイト
すべての施設が主要駅から徒歩3分以内という、交通の便の良さが大きな特長です。駅から近いので、雨などの天候に大きく左右されることなく通うことができます。年中無休、早朝から深夜までの営業となっていますので、大切な時間を有効に活用できそうです。なお、同社のWEBサイトによると、社会人の利用が70%、女性の利用が50%となっています。
会費は施設によって多少異なりますが、いずれも、全日コース、平日コース、土日祝コースという区分がなされており、利用者の生活スタイルに合わせた選択ができるようになっています。また、指定席が選択できたり(全日コースのみ)、ロッカー 利用、無線LAN(Wi-Fi)利用、複数店舗利用など、オプションの設定がある点も特徴です。
万全なセキュリティの確保
「おとな自習室」では、利用者の安心、安全確保のため、セキュリティ面における万全の配慮がなされています。まず、施設の入口となるドアには、弊社のスマートロックであるRemoteLOCKを導入いただき、会員以外の入室はできません。入会検討中の方が見学する場合には必ずスタッフが立ち会うという決まりになっているそうですから、セキュリティに対する念の入り方がわかります。そして、受付にはiPadを活用。すべての利用者の入退室の履歴が、どの席を利用していたかも含めて記録されます。
おとな自習室に導入された弊社のRemoteLOCK 7i
また、室内には監視カメラが設置されていて、事務局でリアルタイムに全室のモニタリングが行われています。監視カメラの導入に関しては、利用者からの要望もあったそうです。カメラの設置が利用者の安心に直結しているということでしょう。
さらに、すべての施設が警備会社のSECOMと提携しており、あらゆるトラブルに迅速に対応可能な、万全の体制が取られています。加えて、女性専用席と共用部には非常用ボタンも設置されています。なお、おとな自習室 のご担当者 様からは弊社RemoteLOCKの導入について、以下のようなコメントをいただきました。
おとな自習室 ご担当者様コメント
- 施設を利用される方は、下は小中学生から上は定年を過ぎた方まで、幅広くいらっしゃり、スマホの操作に疎いかたも多数おられます。そんな中で暗証番号による運用ができることがすごく助かっています。
- RemoteLOCKの導入前には、スマホを利用するタイプの他社の製品を使用した時期もありましたが、スマホの操作の説明でかなりスタッフの負担がかかっていました。また、スタッフ自身もスマホの操作が得意な方ばかりでなかったので、暗証番号による運用は利用方法の説明の点で助かりました。
- また、ドアに加工して取付するために、カギの故障関係のトラブルも激減しました。よくある他社の自動施錠のセンサー関係、機体の落下、Bluetoothの接続関係のトラブルはRemoteLOCKではゼロです。カギ関係の利用者からの問い合わせも激減しました。
利用者に快適な環境を提供
すべての施設に女性専用席が設けられており、全体の席数の1/4~1/3が女性専用席としてエリア分けされています。前述のように「おとな自習室」では女性の利用者の比率が50%(業界平均20~30%)に達しています。女性に対する配慮が行き届いているからこそ、女性に選ばれる施設になっているということでしょう。これは男女を問いませんが、各施設ではブランケットの貸し出しも行っています。
- 出典 :
- おとな自習室 公式サイト
その他にも各施設では、利用者に快適な環境を提供することを目的として、ロッカーの設置、机ごとのコンセントの設置、Wi-Fiの提供、空気清浄機の設置、フリードリンクと有料ドリンクの提供などの施策を行なっています。ユニークなところでは、森永製菓とのコラボにより「森永ラムネ」を提供(現在は有料となっています)、「森永ラムネ」は、集中力を高めると話題になったブドウ糖が90%配合されていて、社会人や学生など集中力を必要とする方に注目されている商品です。
このように、「おとな自習室」では、利用者の視点に立った、きめ細かなアイデアが随所に活かされています。
【まとめ】キーワードは、業務効率化、セキュリティ、顧客満足
今回は、利用者が増加しつつある大人向け自習室について解説してまいりました。これまで、本ブログではレンタルスペースや無人ジムなどについて取り上げてきました。業態は異なりますが、大人向け自習室においても、「業務効率化(省人化、無人化)」、「セキュリティの確保」、「顧客満足度の向上」が共通した事業成功のポイントである、と言えそうです。
加えて、利用者やリピーターを増やすための施策として、資格取得や新しい知識の吸収のために自習に取り組む前向きな社会人の立場に立った、きめ細かなサービスが期待されます。