ホテル事業でできる「SDGs」の取り組み例!
今では広く認知が行き渡ってきた感のある「SDGs」。今回は、特にホテル・宿泊業界においてこの「SDGs」に対してどのような取り組みが進んでいるのか、具体例と一緒にご紹介します。
この記事の目次
- 1. SDGs(Sustainable Development Goals)とは
- 2. ホテル事業におけるSDGs
- 3. 注目を集めるホテルのSDGs取り組み事例
- 3-1. 【コンフォートホテル】地産地消を重視、地元食材を活かした無料朝食を提供
- 3-2. 【軽井沢プリンスホテル】宿泊者がSDGs活動を体験できる「SDGsステイプラン」
- 3-3. 【スーパーホテル】プラスチック製アメニティ客室提供の廃止とマイ歯ブラシ持参の推奨
- 3-4. 【ホテルウィングチェーン】カードキーをプラスチック製から木製に!
- 3-5. 【インターゲートホテルズ】地域の伝統産業・文化を体験できるワークショップ
- 4. 【まとめ】ちょっとしたアイデアがSDGsへの貢献につながる
SDGs(Sustainable Development Goals)とは
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月に開催された国連サミットにおいて決議された、持続可能でよりよい社会の実現を目指す国際社会共通の目標です。2030 年を達成年限とし、17のゴールと169のターゲットから構成されています。日本国内でも、SDGsの認知度は徐々に高まり、SDGsを取り入れている企業の割合も確実に増加しています。
ホテル事業におけるSDGs
宿泊事業者のプロモーションDXを手掛けるSOCIALPORT株式会社が昨年11月に行ったSDGsの目標達成に向けたホテル旅館の取り組みに関する旅行者の意識調査(オンラインで実施)の結果を見てみると興味深いことがわかります。(以下は同社が2021年12月1日に発表した報道資料に基づいています。)
まず全般的なSDGsへの関心度は、「強く関心がある」「関心がある」と回答した人が全体の約8割と多数を占めています。調査対象の年齢層が若い(約9割が20~30代)ことを勘案すると、特に若年層ではSDGsへの関心が非常に高いということがわかります。
ここでは宿選びにおけるホテル旅館のSDGsの影響度についての調査も行われています。これまで「ホテル旅館のSDGsへの取り組みが宿泊先の決定に影響していましたか?」との問いに「影響していた」とする人の割合は16%にとどまりましたが、「今後の宿泊先選びにおいてホテル旅館のSDGsへの取り組みはどの程度重視しますか?」との問いには、「SDGsに取り組んでいるホテルを優先的に選ぶ」と回答した人が24.3%、「取り組みの内容次第で決める」が49.5%でとなっており、今後SDGsを意識して滞在先を検討する旅行者が全体の約74%を占める結果となっています。
また、「あなたが良いと思うホテル旅館の取り組みは何ですか?」(複数回答可)との質問に対して、上位8項目は以下のようになっています。
1位:地産地消、生産者との連携 71.0%
2位:食品ロス削減 67.3%
3位:植物成分由来で環境にやさしいアメニティを用意 60.7%
4位:エコ清掃の推進(連泊のお客様の掃除不要カード設置) 57.9%
5位:受動喫煙防止や健康推進のための全館禁煙 49.5%
5位:装飾用のお花を廃棄せず、ブーケなどにアップサイクルして販売 49.5%
7位:バスアメニティのミニボトルを廃止、ポンプボトルに変更しプラスチックごみ削減 46.7%
8位:伝統文化、伝統工芸の継承に向けた取り組み、地域の経済活性化 45.8%
その他、「館内照明のLED化」(43.0%)、「ユニセックスなユニフォームの着用」(37.4%)、「自動チェックインシステム等のデジタル化の推進」(35.5%)、などの項目も目につきました。
いずれにしても、一連の調査結果を見ると、今後のホテル、宿泊施設経営において、SDGs達成への取り組みが極めて重要な要素になってきていることは間違いありません。同時に、この業界ではさまざまな方向からSDGsへのアプローチが可能であることも示唆しています。
注目を集めるホテルのSDGs取り組み事例
それでは、実際にホテルや宿泊施設でどのようなSDGsへの取り組みが行われているのか、具体的な事例をご紹介しながら、見ていきたいと思います。
【コンフォートホテル】地産地消を重視、地元食材を活かした無料朝食を提供
地産地消のコンセプトは、SDGsの視点から見ると、「12.つくる責任、つかう責任」、「17.パートナーシップで目標を達成しよう」の項目に該当すると考えられます。さらに、広い意味ではエネルギー削減や健康増進の効果も期待されます。
全国73ヶ所にコンフォートホテルを展開する株式会社チョイスホテルズジャパンでは、2019年からSDGs達成に向けたCSR活動の一環として、無料朝食の「地産地消メニュー」を提供してきました。導入対象となるホテルも段階的に増え、現在では全国の同ホテルの半数以上にあたる41施設で提供しています。地産地消メニューは宿泊者にも非常に喜ばれているとのことですから、まさにWIN-WINの取り組みといえるのではないでしょうか。
■ メニュー例(出典:株式会社チョイスホテルズジャパン 2022年2月28日付報道資料
儀平味噌 田舎味噌汁(提供ホテル:コンフォートホテル彦根)
“「環境こだわり農産物」から作られた滋賀県産の儀平味噌を使用。上品な風味と自然な甘みのある味噌を使った味噌汁には八幡名物の赤こんにゃくが入っています。”
北海道ポテトサラダ(提供ホテル:コンフォートホテル釧路・コンフォートホテル帯広)
“北海道士幌周辺のホクホクとしたじゃがいもと、北海道十勝産のコーン使用。じゃがいも本来の風味が一層引き立つ味に仕上げました。”
【軽井沢プリンスホテル】宿泊者がSDGs活動を体験できる「SDGsステイプラン」
軽井沢プリンスホテルが提供する「SDGsステイプラン」は、旅行者がホテルに宿泊しながら地域の産業、人々、自然とつながり、持続可能な社会の実現に向けたアクションに取り組むことを目的としており、具体的には「『御牧いちご』を復興させる 地域と繋がる農業お手伝いプラン」と「SDGsの森で「持続可能」を考える 学習プログラム付きプラン」の2種類が用意されています。 社会のSDGsに対する意識の高まりを背景にした、ホテルならではのユニークなプロジェクトといえます。
もちろん、軽井沢プリンスホテル自身も、プラスチックごみの削減、食品ロス削減、自然エネルギーの活用など、SDGsの達成に向けたさまざまな施策に取り組んでいます。
【スーパーホテル】プラスチック製アメニティ客室提供の廃止とマイ歯ブラシ持参の推奨
出典:株式会社スーパーホテル 2022年2月28日付報道資料
国内169ヶ所、海外2ヶ所に展開するホテルチェーン、株式会社スーパーホテルでは、2022年4月1日から施行される「プラスチック資源循環促進法」も視野に入れ、SDGsへの取り組みの一環として、客室ユニットバス内のアメニティ(歯ブラシ、カミソリ)の設置を取りやめ、希望の利用者にはフロントロビーで必要分のみを提供する取り組みをスタートしました。あわせて、利用者にはマイ歯ブラシの持参を呼び掛け、脱プラスティック化の推進をはかっています。
同ホテルでは、以前から「エコひいき活動」を提唱し、連泊時の翌日以降の清掃が不要と申し出た宿泊者には、その協力に対してオリジナルミネラルウォーターを提供するなど、SDGsに対して積極的な活動を行ってきました。同社のWEBサイトにはSDGsのための特設ページも設けられています。
- 出典 :
- スーパーホテル 公式ホームページ
【ホテルウィングチェーン】カードキーをプラスチック製から木製に!
全国39ヶ所にホテルウィングチェーンを展開する株式会社ミナシアでは、環境にやさしい取り組みとして、2022年2月上旬より、プラスチック製カードキーを廃止し、木製の環境配慮型カードキーへと順次変更することを決定しました。この木製カードキーは、国際的な森林管理に関する認証機関FSC(Forest Stewardship Council/森林管理協議会)の認証を受けており、プラスチックの削減効果と同時に適切な森林管理の支援にもつながっています。
出典:株式会社ミナシア 2022年2月9日付報道資料
同社では、以前から、一部ホテルで生ごみのリサイクルを目的とした「大型コンポストバッグ」の導入や、もったいない野菜を効率的に活用したフードロス削減メニューの開発など、環境問題を意識した取り組みを行なってきましたが、今回の木製カードキーの導入は、日本国内でも特にユニークな取り組みとして注目を集めています。
【インターゲートホテルズ】地域の伝統産業・文化を体験できるワークショップ
株式会社グランビスタホテル&リゾートが運営するインターゲートホテルズでは、地域の魅力を発信する取り組みとして、その地域の伝統産業・文化を体験できるワークショップを開催しています。例えば、ホテルインターゲート京都四条新町では、「舞妓はんから学ぶ京都の伝統産業」をホテル内のラウンジにて毎月開催、舞妓さんが身に着けている、京都の伝統産業である簪(かんざし)や帯留めなどの装束に関する説明やトークショー、和蝋燭の絵付け体験、舞妓さんによる舞踊、「お座敷あそび」などを体験することができます。
同様に、ホテルインターゲート広島では熊野筆作り体験、ホテルインターゲート金沢では加賀八幡起上り絵付け体験のワークショップを開催するなど、その土地その土地の伝統産業・文化の振興に貢献するとともに、宿泊者には貴重な体験の機会を提供しています。
【まとめ】ちょっとしたアイデアがSDGsへの貢献につながる
以上述べてまいりましたが、現在ではホテル事業でもSDGsへの取り組みは不可欠になっていること、そのためのアプローチは多種多様であることにお気づきいただけましたでしょうか?そして、その取り組みにも様々な工夫が考えられ、ちょっとしたアイデアで効果ある施策を実現することができますし、宿泊者に提供する付加価値の向上につなげることも可能です。
先に木製のカードキーについてご紹介しましたが、例えば、今では木製のカードキーすらも必要としない、鍵の受け渡しをすることも必要ない、暗証番号ひとつで部屋への入退室が可能なスマートロックシステムが提供されています。
このようなシステムを導入するだけで、完全に資源レスで環境負荷を抑えた、かつ宿泊者にも利便性の高いホテルの鍵運用が可能になります。