公開日2024.08.22
外国人観光客が宿泊施設に求めるものとは?インバウンドに向けた対策9選!
インバウンド観光客の数が過去最高を更新しています。オーバーツーリズムという新たな課題も浮き彫りになる一方で、地元経済の活性化や、文化交流の促進など、多くのメリットをもたらしています。そんな外国人観光客は、日本の宿泊施設に何を求めているのでしょうか。具体的な施策について解説します。
【インバウンド対策】外国人観光客が宿泊施設に求めているもの
インバウンドの数が過去最高になり、早急な「インバウンド(外国人観光客)対策」が、全国の宿泊施設で必須となっています。日本政府観光局の調査では、2024年6月の訪日外客(インバウンド)数は3,135,600人となり、前年同月比では51.2%増となりました。過去最高を記録したコロナ禍前の2019年同月と比べても、8.9%増となっています。
最近の特徴としては、訪れる場所が、有名観光地や都市部だけではなく、地方へと足を伸ばす傾向が強いことでしょう。地方経済の活性化や、文化交流の促進など、多くのメリットをもたらしています。そんな外国人観光客を迎え入れるために、宿泊施設に求めているものをしっかり把握し、対策を行うことが大切です。この章で、詳しく解説していきましょう。
①外国語対応のオペレーション
インバウンド対策として、まず重要なのは外国語対応のオペレーションです。どんなに施設やサービスが立派でも、コミュニケーションが取れないことで、ゲストの顧客満足度が低下するためです。たとえば、ゲストの要望や質問に対し、片言やジェスチャーで答えると、伝えたいことが伝わらず、誤解を招く原因になります。また、緊急時にスムーズな対応をすることが難しく、ゲストに不安や混乱を与えてしまうでしょう。
不満を感じたゲストは、「お客様の声」やクチコミサイト、SNSに、不満を書き込むことになりかねません。一度悪い評判が拡散されてしまうと、施設やブランドイメージの低下につながってしまいます。外国語対応のオペレーションは、一番最初に取り組むべき施策といえるでしょう。
②日本らしさを感じるおもてなしと文化体験
多くのインバウンド観光客は、「日本らしさを感じる」おもてなしや体験を期待しています。スタッフの温かいサービスや、館内・客室の和風な装飾、歴史や地域の文化など、日本が感じられる体験などが喜ばれる傾向にあります。日本人が「当たり前」「古臭い」と思っているようなものでも、ゲストにとっては新鮮に映るものもあるのです。たとえば、室内着に「浴衣」を選択できるようにするだけでも、「特別な体験」を提供することが可能です。
一方で、ウォシュレット付きトイレなどの機能性に優れた設備や、最新の機器も、現代日本を象徴するものです。古き良き文化と最先端技術をうまく組み合わせることで、多くの外国人観光客に、特別な体験を提供することができるでしょう。
③施設の安全性と快適性
日本は「安全性が高く、どこも清潔で快適」と評価されることが多くなっています。もちろん、外国人観光客は、宿泊施設にも同様のことを求めています。
そのため、日本人には気にならないことも、不安に感じることもあります。たとえば、目立つところに監視カメラを設置する、施設の中には関係者以外は立ち入り出来ないシステムにするなど、「目に見えるセキュリティアップ」も必要でしょう。また、客室やトイレ、共有スペースは常に清潔にし、日本クオリティの快適さを提供しましょう。
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多言語対応のオペレーション施策3選
1章では、インバウンドの外国人観光客が、日本の宿泊施設に何を求めているのかを解説しました。この章では、それぞれの項目ごとに、どのような施策があるのか、具体的に見ていきましょう。
まずは、コミュニケーションに必要な外国語(多言語)対応のための施策は次の3つです。
多言語対応のための施策3選
- スタッフや案内の外国語対応
- チェックイン・チェックアウト、予約システムの多言語対応
- 観光スポット・交通機関案内の多言語対応
それぞれ解説していきます。
スタッフや案内の外国語対応
スタッフや案内の「多言語対応」とは、どのようなものがあるのでしょうか。
スタッフや案内の多言語対応の施策例
- 外国語が堪能なスタッフを採用する。
- スタッフに対して外国語研修を実施する。
- 施設内の案内表示を多言語化し、宿泊客が迷わず移動できるようにする。
- 翻訳アプリや機器を利用し、コミュニケーションの円滑化を図る。
- 宿泊客への対応マニュアルを多言語で作成する。
- ホテルのホームページを多言語化対応にする
小規模施設や地方の宿泊施設では、外国語が堪能なスタッフを採用することは難しいかもしれません。しかし、宿泊に関する基本的な事項などは、スタッフに外国語の研修を行うことである程度カバーしましょう。細かい質問やご案内については、翻訳アプリなどを活用し、コミュニケーションが取れるようにします。スタッフも、アプリの入ったモバイルなどを携帯し、すぐに対応できるようにするとよいでしょう。
また、パンフレットや案内表示すべてに「英語」「中国語」「韓国語」で表記すると、ゲストの大半に対応することができます。
チェクイン・チェックアウト、予約システムの多言語対応
チェックイン・チェックアウトや予約システムの多国籍対応も、インバウンド対策として有効でしょう。
ェクイン・チェックアウト、予約システムの多言語対応の施策例
- 多言語に対応した予約システムを導入する
- 多言語に対応したチェックイン・チェックアウシステムを導入する
- キャッシュレスに対応した自動精算機を導入する
このような多言語に対応したシステムは、スタッフが外国語が話せない場合でも、宿泊施設を利用することができます。コミュニケーションが取れないスタッフが対応するよりも、余計なストレスを与えず、かえってスムーズになるケースもあります。ただし、システムの使い方に戸惑っているゲストには、積極的にサポートするようにしましょう。
観光スポット・交通機関の案内の多言語対応
宿泊施設周辺の観光スポットや交通機関の案内も、多言語で対応できるようにしておきましょう。
観光スポット・交通機関の案内の多言語対応の施策例
- 観光スポット・施設周辺の情報をまとめたパンフレット
- 交通機関や乗り換え、時刻表などをまとめたチラシ
- 情報や案内をまとめた電子看板(デジタルサイネージ)の設置
- 外国語対応できる店舗や飲食店などの紹介
これらの多言語対応は、インバウンドのゲストにとって、大きな安心に繋がります。よく聞かれる場所や、有名スポットなどもわかりやすくまとめておきましょう。歓迎していることが伝わるので、顧客満足度も高くなる施策です。
日本らしさを感じるおもてなし3選
次に、日本らしさを感じるおもてなしを見ていきましょう。
一番喜ばれるのは、館内を和風にすることです。ただし、コストが高くなるため、そこまで手を加えなくても、できる施策はいくつかあります。それが、次の3つです。
『おもてなし』を感じてもらう施策3選
- チェックイン・チェックアウト時のおもてなし
- 日本文化体験(アクティビティ)の提供
- 文化や思想に合わせた日本食の提供
それぞれ解説していきます。
チェックイン・チェックアウト時のおもてなし
チェックイン時のおもてなしは、日本らしさを一番最初に感じてもらうサービスです。また、チェックアウト時の印象によっては、施設の評価が大きく変わります。
チェックイン・チェックアウト時のおもてなし施策の例
- ゲストが到着時にお出迎えをする
- チェックイン時に抹茶や和菓子の提供をする
- チェックアウト時にお見送りをする
チェクインやチェクアウトのお出迎え・お見送りは、高級旅館のようなクオリティは必要ありません。手が空いているスタッフがいれば、施設を出入りするゲストに向けて、しっかりと頭を下げて挨拶をする程度で良いでしょう。
また、チェックイン時に抹茶や和菓子の提供が難しい場合は、客室に用意しておく方法もあります。日本の「抹茶」は、世界的に人気があるため、抹茶味のチョコレートなどは広く喜んでいただけます。
日本文化体験(アクティビティ)の提供
宿泊施設で簡単に「日本文化の体験」ができることも、外国人観光客に喜ばれます。わざわざ体験をしに行かなくても、手軽に経験できることが大きなポイントとなります。
日本文化体験(アクティビティ)の施策例
- 数種類の中から浴衣が選べるサービス
- 浴衣の着付けサービス
- 茶道、茶道、書道体験
- 温泉がある場合、効能や入り方のレクチャー
- 近くの文化財や史跡などの簡単なツアー
茶華道の体験や着付けなどは、地元の先生などに協力してもらうことで、実施しやすくなるでしょう。また、インバウンドの中には、温泉に入ったことがない人もいます。初体験の方に向けて、温泉の効能や入り方をレクチャーするだけでも、温泉を心から楽しんでいただけます。これも、日本文化の貴重な体験の一つとなるでしょう。
文化や思想に合わせた日本食の提供
レストランなどで提供する料理は、さまざまな国の習慣や思想に合わせることが求められます。日本食であっても、タブーの食材排除やベジタリアン向けに工夫することで、多くの人に喜んでもらえるでしょう。
文化や思想で避けるべき食材の例
- 豚肉:イスラム教では禁忌(ハラーム)となっている
- アルコール:イスラム教では禁忌(ハラーム)となっている
- 乳製品や卵:ヴィーガンやベジタリアンは避ける
- 小麦粉:グルテンフリーを求めている人が増えている
その他、海藻類や魚卵、生魚、納豆、こんにゃくなどは、外国人観光客にとって抵抗を感じる場合が多いので配慮が必要です。どのような食材を省くべきなのか、予約の際にチェックできるとよいでしょう。限られた食材で日本料理が提供できると、競合との差別化にもなり、満足度も大きく向上します。
安全性と快適性を提供するサービス3選
次に、外国人観光客が求めている、宿泊施設の安全性と快適性について見ていきましょう。施策としては、次の3つがおすすめです。
安全性と快適性の施策3選
- 荷物の預かりサービス
- システムを利用した安全性への配慮
- キャンセルポリシーの整備
それぞれ解説していきます。
荷物の預かりサービス
外国人観光客は、長期間日本に滞在する人も少なくありません。そのため、スーツケースがかなり大きい場合が多く、荷物の預かりサービスは大変喜ばれます。
荷物の預かりサービスの例
- チェックイン前の荷物預かりサービス
- チェックアウト後の荷物預かりサービス
- 事前配送の受け取り
- 長期間の預かりサービス
- 宿泊後も利用できる大型のコインロッカー
ゲストは、宿泊施設に荷物を預けると、観光や移動が快適になります。他の宿泊施設にはない手厚いサービスは、クチコミなどで拡散されることも多く、リピーター獲得にもつながります。
システムを利用した安全性と快適性への配慮
外国人観光客が求める、システムを使用した安全性と快適性への配慮にはどのようなものがあるでしょうか。
安全性と快適性への配慮が可能なシステムの例
- 防犯カメラ:防犯予防以外にも安心感につながる
- スマートキー:鍵の紛失や盗難防止+鍵を持ち歩かない身軽さ、手軽さ
- セルフチェックインシステム:待ち時間の削減、スムーズな受付ができる
- 混雑状況配信システム:大浴場やレストランなどの混雑状況がわかる
- モバイルコンシェルジュ:多言語可能のチャットボットなら24時間ご案内が可能になる
これらのシステムは、外国人観光客の便利さや快適さを向上するだけではなく、セキュリティアップにも有効です。施設管理者としても、ゲストの状況を把握しやすいため、トラブル回避にも役立つでしょう。
キャンセルポリシーの整備
キャンセルポリシーとは、宿泊施設の予約をキャンセルする際に適用されるルールや条件のことです。あいまいな言い回しはトラブルの元になるため、条件を明確に定めておくことが必要です。
明確にしておくべきキャンセルポリシーの例
- キャンセル可能な期限
- キャンセル料の発生条件と金額
- ノーショー(無断キャンセル)の場合の扱い
- 返金の方法と時期
- 繁忙期、イベント期間など、特別期間の異なるキャンセル条件
- 天災や感染症などの不可抗力によるキャンセルの扱い
- 部分的なキャンセル(宿泊日数や人数の減少)の扱い
- 早期割引や特別料金プランなど、特定の料金タイプに対する固有のキャンセル条件
整備しておくことで、無断キャンセルなどのトラブルを回避することが出来ます。外国人観光客にとっても、キャンセル条件等が分かるので、安心して利用することができます。
【まとめ】外国人観光客が宿泊施設に求めているもの
いかがでしたでしょうか。外国人観光客が求めているものは、日本を感じる体験をはじめ、日本の安全性や快適さ、そして最先端技術など、多岐にわたります。
この記事では、宿泊施設におすすめの9の施策を解説しました。一つ一つは、さほど大きな施策ではありませんが、丁寧に実施していくことで、外国人観光客の満足度を大きく上げることができるでしょう。宿泊施設のインバウンド対策として、参考にして頂ければ幸いです。