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公開日2023.07.26

最終更新日2024.01.18

【事例まとめ】本屋の無人運営が増えている?実現のポイント

現在、全国の書店が激減する一方、独立書店や無人書店という形態の書店が増加しているという、興味深い現象がみられます。今回は、そのような書店業界の現状をレポートするとともに、書店の無人運営を実現するためのポイントや、事例をまとめてご紹介します。

全国の書店が激減する中、無人書店がなぜ増えるのか?

急速に減り続ける「街の本屋さん」

書店1

各種統計資料によれば、全国の書店の総店舗数は、1980年代後半には25,000軒を超えていましたが、その後減少に転じました。統計によりばらつきはありますが、現在ではピーク時の半分以下、10,000軒程度まで落ち込んでいるとみられます。この10年間だけで見ても約30%減少しており、業界団体である出版文化産業振興財団(JPIC)が昨年行った調査によれば、書店のない市町村が全国で26.2%、全国1741市区町村のうち456市町村が書店の空白地域となっているといいます。

右肩下がり

書籍・雑誌の市場規模や書店数が縮小している背景について、NTTデータ経営研究所が2015年時点で公表した資料では、以下の3つの要因が挙げられています。

(1)インターネットの進化・普及の影響
インターネットの無料コンテンツ増加、Google、Yahoo!などの検索サイトの普及・進化・利用増加に対して、有料の紙媒体書籍・雑誌が劣勢となったことが大きく影響し、紙媒体の書籍・雑誌の売り上げが大きく減少した。

(2)リアル店舗の書店vsインターネット書店
リアル店舗の書店対インターネット書店の競合のもと、書籍・雑誌購読者層がAmazonなどインターネット書店の利便性を高く評価し、そこで書籍・雑誌を購入するようになり、リアル店舗の書店が劣勢となり、売り上げが浸食された。

(3)電子書籍の進化・普及
電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場が伸長し、媒体の書籍・雑誌の市場規模を浸食し、リアル書店の売上の減少要因となっている。(筆者注:なお、公益社団法人出版科学研究所の統計によれば、2022年の紙の出版物は前年比6.5%減の1兆1,292億円、電子出版市場は前年比7.5%増の5,013億円であり、出版市場における電子出版の占有率は30.7%となっています)

電子書籍

書店数の減少の要因としては、上記のほかに、雑誌を扱うコンビニとの競合が書店の経営を圧迫しているという指摘や、特に地方都市においては、少子化の進行によって若年人口が減少しており、それに比例して小中学校の数も減っているため、教科書販売や図書室等への納入といった地方書店のビジネス機会が失われている、などといった指摘もあります。

オーナーの個性を活かした独立書店が増加中

ところが、書評を中心に本と活字文化に関する話題を取り扱う月刊誌「本の雑誌」が2021年5月号で特集した記事のタイトルは「本屋がどんどん増えている!」でした。これはどういうことでしょうか?

この記事の中で大きく取り上げられているのが「独立書店(あるいは独立系書店)」です。独立書店の定義については、さまざまな見方があるようすが、大まかにいうと、紀伊國屋書店やジュンク堂のような大手チェーン店と異なる、オーナーの個性を活かした独自の品ぞろえや店づくりを特徴とする、比較的小規模な、あるいは個人経営による書店である、と考えて良さそうです。記事によれば、このような独立書店が確実に増加傾向にあるといいます。

本棚

また、検索サイトで「独立書店」を検索してみると、オーナーが目利きとなってセレクトした書籍のみを取り扱う、いわば本のセレクトショップのような形態の書店、本を選びながらビールやコーヒーを楽しむことのできる空間が併設された書店などが、近年、全国あちこちにオープンしていることがわかります。中には、ホテルとカフェと書店が合体したユニークな形態の施設もあります。

一説には、このような独立書店の拡がりは、アマゾンなど巨大ネット書店に対抗するムーブメントとして、2010年頃からアメリカで活発になり始めたことが起点となっているといいます。そして、現在では、独立書店をめぐる同様の動きは、ヨーロッパ、アジアなど、日本とアメリカ以外の地域にも拡がっているという報道もみられます。

いずれにしても、日本国内の書店の数は、全数的には減少し続けてはいるものの、独立書店に代表されるような新しい形態の書店が増加の傾向にある、ということではないでしょうか。

無人化で両立する書店の効率経営と顧客価値向上

書店にまつわる近年のもう一つの特徴的な動向として挙げられるのが、無人運営の書店の登場です。具体的な事例は第3章でご紹介しますが、前項でご紹介した独立書店の運営が無人でなされている例が多数存在しますし、従来型の書店でも、経営効率化のために無人化したり、無人化することで24時間営業を実現しようとする試みがみられます。

現在、無人アパレル販売店、無人美容サロン、無人ジム、無人サウナ、といったように、さまざまな分野で無人店舗型ビジネスが拡がっています。書店という業態でも、新しいビジネス形態として無人運営型の店舗が注目され始めたと考えることができるでしょう。このような潮流には、デジタル技術の飛躍的な発達により、店舗におけるセキュリティ確保や、さまざまな業務の自動化が可能になってきたことが大きな要因となっています。

書店3

無人運営が実現すれば、書店という業態でも、ほかの業種と同様に、まず人件費を大きく削減することが可能である上に、営業時間を早朝や深夜、24時間営業といった形で拡大することも可能となります。経営の効率化営業機会の拡大、という観点からは確実に望ましい成果をもたらすことができるでしょう。

一方、利用者から見た場合はどうでしょう?ほとんどの無人書店では、利用者は事前登録を行ない、入店に必要なIDを発行してもらう、というシステムを取っています。したがって、店内に不特定多数が入店してくるということがありません。本屋が好きという人の多くは、本屋という空間そのものが好き、そんな空間で過ごす時間が好き、という出版業界関係者の分析があります。そのような人々にとって、そんな空間を、静かで落ち着いた時には独り占めできるような環境で利用できるということは、この上ない体験となるのではないでしょうか。

こうしたことから、書店の無人化は、経営の効率化を実現すると同時に、顧客価値の向上をもたらすことも可能である、と考えます。

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無人書店をどうやって運営するのか?

さて、それではどうやったら書店を無人運営することができるのでしょうか?ここでは、そのノウハウを、3つの切り口から解説したいと思います。

心配その1:盗まれないの?

前項で少し触れましたが、無人書店の多くは、事前登録を行なった利用者に入店用のIDを発行するというシステムを取っています。登録の際、利用者は店舗側に個人情報を提供する必要がありますから、その時点である程度のセキュリティは確保されます。同時に、店舗の入口は常時施錠し、登録を行なった利用者だけが入店できる仕組みを導入しておく必要があります。そのためには、入口となるドアに、利用者だけが解錠することのできる機能を備えたスマートロックを設置することが最速の方法です。

弊社の提供するRemoteLOCK(リモートロック)は、暗証番号、またはQRコードによって解錠可能なスマートロックシステムです。利用者が登録を行なう際、この暗証番号、またはQRコードを共有しておけば、その利用者だけがRemoteLOCKを解錠して入店することが可能となります。また、店舗側は、いつ、誰が、入店したか、退店したかを、遠隔地からでもリアルタイムでチェックすることができます。

また弊社では、自動ドアに後付けでスマートロック化することができるアクセスコントロールシステム、TOBIRAもラインアップしています。

このようなスマートロックに加えて、セキュリティカメラを設置する無人書店も少なくありません。最近では、クラウドを活用して複数のスマホやパソコンと映像を共有でき、店舗側での録画も不要というセキュリティカメラのサービスが、比較的低価格で提供されています。遠隔地からの監視が可能ですので、店舗にスタッフを配置しない無人書店にも適しています。

セキュリティ-1

このように、利用者登録、スマートロック、セキュリティカメラなどを組み合わせることによって、無人の店舗であっても、盗難やいたずらなどの心配の無い、万全のセキュリティを確保することが可能です。

心配その2:お金の受け渡しはどうするの?

近年、スーパーマーケットやコンビニエンスストアを始め、飲食店、アパレル専門店など、さまざまな業種でセルフレジシステムの導入が拡がっていることにお気づきの読者の方も多いのではないでしょうか?セルフレジとは、商品を購入した利用客自身が、システム端末に商品の価格を入力(バーコードの読み取りなど)、代金の支払いまでを完了するシステムです。

無人書店でも、多くの場合、購入した書籍などの代金の決済には店内に設置されたセルフレジが利用されています。ひと口にセルフレジといっても、実際には、用途に応じたさまざまな機種が存在しており、その機能も千差万別です。その中で、無人書店に適したタイプとしては、キャッシュレス決済(クレジットカード、電子マネー、QRコードなど)に対応していることが望ましいですが、現金に対応する必要はないと考えます。

これは、コロナ禍以降、現金を取り扱わない非接触会計が一般化してきており、消費者もキャッシュレス会計に抵抗がなくなってきているということもありますが、釣銭機能を備えた現金対応のセルフレジはそもそも値段が高いうえに、釣銭の補充や機材のメンテナンスに手間がかかる、設置のスペースが必要、などデメリットが大きいためです。

セルフレジ

無人書店という、消費者の中のある程度限られた顧客層を対象とした業態を考えれば、決済のためのシステムは、コストを抑えた、コンパクトなものを選択するのが良いでしょう。

心配その3:お客さんは来てくれるの?

業界で話題となっているいくつかの無人書店のWEBサイトを覗いてみると、いずれもそれぞれの個性を強く打ち出していることがわかります。それは、愛書家がセレクトしたという書籍の品揃えのことであったり、ひとりで落ち着いて本選びができる空間のことであったり、利用者も自分の所有する本を販売できる「貸棚」というシステムのことであったりします。

共通して、「無人である」こと自体がセールスポイントになっていることもわかります。Twitter、Instagram、FacebookといったSNS、あるいはブログなどを活用した情報発信を積極的に行っているという傾向も、ほぼ共通しています。

SNS

また、通常は無人書店であっても、有人の期間を設けたり、有人のタイミングに合わせて読書会や交流会などのイベントを開催したり、中には料理家とタイアップしてちょっとした食事や飲み物を提供しているケースもあります。そのようなイベントを通じて地域のコミュニティや読書を趣味とするグループなどとの交流を盛んに行っているオーナーさんもおられました。

多くの無人書店が、それぞれのコンセプトを明確にしながら、SNSなどを通じてこまめな情報発信を行ない、時には手づくりのイベントを企画するなどして、利用者やファンとの結びつきを大切にしています。そうすることが、リピーターや新しい顧客の獲得につながるという、この業界でのマーケティングとして機能しているのだと感じました。この点は、無人書店を開業する際のヒントになるのではないかと思います。

いま話題!無人運営の書店3選

それでは、無人運営を行っている実際の事例をご紹介いたします。

営業時間帯の完全無人を実現「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」

まずは直近で一番の目玉事例であり、2023年9月26日にオープンする「ほんたす」からご紹介します。こちらの事例はLメンバーズカードとRemoteLOCKの連携により、QRコードで会員登録・入室する無人書店です。初回来店時は店頭サインのQRコードを読み込んで会員証を発行し、リーダーに会員証をかざして入店します。次回以降は、LINEから会員証を開くことができ、入店時・退店時にリーダーへかざす仕組みになっています。

若干の推測も混ざりますが、新刊を取り扱う書店で、営業時間を完全無人で運営するのは初めての試みではないかと思われます。導入されたTOBIRAも含めて、ぜひチェックしてみてください。

また、施設のオープン後にはRemoteLOCKチームで体験ブログもお届け予定ですので、そちらもぜひお楽しみに。

ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店の詳細はこちら!

住所:東京都千代田区永田町2-11-1 東京メトロ溜池山王駅構内(地上出口8番付近)

営業時間:平日7:00~22:00、土日祝10:00~20:00

ブックセレクターとメンバーとの出逢いを演出「ふうせんかずら」

「ふうせんかずら」は、奈良県奈良市にある無人書店です。もともとは奈良市で開催された本のイベントでの活動をきっかけに、2018年にオープン(2020年12月に現在の地へ移転)しました。同店の店頭には、8人のブックセレクターが選んだ新刊書や古書が整然と並んでいます。同店は、このブックセレクターの方々と本が大好きなお客さまとの出逢いの場を作りたい、というコンセプトに沿って誕生した、いわば本のセレクトショップです。

同店を利用したい人は、まずWEBサイトからメンバー登録(無料)を行ない、IDナンバーを取得します。店舗のドアには弊社のスマートロックRemoteLOCK 7iが設置されていて、IDナンバーがそのまま解錠キーとなっていますので、テンキーボタンで入力すれば即入店可能です。会計はタブレットを利用したキャッシュレスのセルフレジです。各種クレジットカード、電子マネー、交通系ICカード、PayPayなどが利用可能となっています。

RemoteLOCK7i-1

ふうせんかずらに採用されているRemoteLOCK 7i

店内には、書棚や閲覧スペースのほか、なんと本格的なキッチンスペースもあり、朝食や夕食を提供するイベントが開催されているそうです。書籍を購入した方は、セルフでコーヒーを飲みながら本を読むこともできます。また、週末の午後を中心にスタッフが在店する「カギ開放DAY」が設けられており、その時間帯はメンバー未登録の方も来店可能となっています。

本好きオーナーのとにかくユニークな無人古本屋「BOOK ROAD」

「BOOK ROAD(ブックロード)」は東京・三鷹の商店街にある無人の古書店です。店舗の面積はわずか2坪、店頭には看板もありません。外から見えるのは本の並んだ書棚と、「ガチャガチャ」の機械のみです。ガラス戸には施錠もされておらず、誰でも自由に入っていくことができます。いったいどうなっているのでしょうか?

オーナーの中西氏の経営方針を調べてみると、これがとてつもなくユニークなのです。ヒントは田舎にある野菜の無人販売所だったそうで、人間の性善説に立った、いわばお客さまの善意によって成り立っているビジネスであることがわかりました。

代金のやり取りはどうしているのかというと、その答えがガチャガチャの機械にあります。本には、金額をあらわすシールが貼ってあり、その金額をガチャガチャに入れると、ビニール袋の入ったカプセルが出てくるので、お客さまにはその袋に本を入れて持ち帰っていただくシステムになっているのだそうです。(下の写真をご参照ください)

中西氏がBOOK ROADを始めたのは2013年の春だとのことです。今回参考にさせていただいたインタビュー記事は少し古いもの(2019年)でしたが、それまで盗難にあったことはほぼゼロだといいますから、驚きです!第2章で述べたセキュリティや決済システムの考え方とは真逆のアプローチですが、このようなケースもあるという点では貴重な事例だと思いました。

なお、本好きのオーナー中西氏は、「本を通したコミュニティづくり」を目指して、本の売り場を仲間とシェアするシェア型書店「ブックマンション」という新たな取り組みにも挑戦しているそうです。

出版取次大手との協業で次世代書店に挑戦「山下書店世田谷店」

東京都と千葉県に5店舗を構える首都圏の中堅チェーン山下書店は、出版取次大手トーハン株式会社と組み、今年3月に世田谷区の店舗をリニューアル、無人書店の実証実験を開始しました。報道資料によれば、目的は営業時間外だった夜間・早朝を無人営業化、顧客利便性を高め、売上拡大をはかるというもので、有人と無人の時間帯を組み合わせて、24時間営業化を実現することが計画の中心となっています。

利用者は、QRコード読み込みで山下書店世田谷店のLINE公式アカウントを友だち追加すれば登録完了です。友だち追加用QRコードは店頭にも掲示してありますので、あらかじめ登録していなくても、その場で、5秒程度で、登録が完了します。

無人営業中は、店舗入口はスマートロックで施錠されています。入店する場合は、掲示された入店用QRコードをLINEから読み込めば、認証が完了し、自動ドアが解錠されて入店できるようになるという仕組みです。(注:同店舗に導入されているスマートロックは弊社製品とは異なります)

支払いは、キャッシュレスのみ(現金不可)のセルフレジが用意されており、主要クレジットカード、SUICAなどの電子マネー、PayPayなどのQR/バーコード決済に対応しています。

この実証実験の期間は今年7月末までとされており、その後の方針については発表されていませんが、3月の開始後1カ月経った時点での売上げは前年同期比16.5%増。有人営業時間内の売上げは同4.5%減でしたが、人件費も抑制できており、利益も2桁増になったと報道されています。今後の動向に注目したいところです。

【まとめ】人の少なさや規模の小ささが武器に?無人書店の魅力

以上、今回は書店業界の現状に始まり、独立書店、無人書店といった最近の業界動向を解説するとともに、中でも無人書店について、運営ノウハウの解説と事例の紹介を行なってまいりました。

書いてみて、あらためてこの業界を取り巻く方々の、本や書店に対する深い愛着を感じました。また、書店という業態にあっては、人がいないことや、店舗がこじんまりとしていること自体が、時によってセールスポイントになり得ることを再認識しました。

今回の記事が、これから無人書店を開業してみようかと考えておられる皆さまはもちろん、無人店舗型のビジネス全般にご関心をお持ちの皆さまの、少しでもご参考になれば幸いです。

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