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公開日2022.03.28

最終更新日2024.01.18

【2022年最新版】遊休不動産はどのように有効活用されているのか?

以前より、空き家問題や地方のシャッター街などの遊休不動産は大きな問題となっていました。加えて、近年のコロナウィルスによる社会情勢の変化により、遊休不動産は都市部でも深刻な問題となっています。その中で、今までにない角度からの提案や取り組みも始まっています。この記事では、最近の遊休不動産の問題点とまったく新しい遊休不動産の活用事例をご紹介します。

遊休不動産の増加と問題点

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遊休不動産とは、適切な活用がされていない土地や店舗などをさします。古い住宅地などでは、人が住まなくなり放置された「空き家」が問題となっていますが、商業地でも、テナントが入らないビルや利用されなくなった施設などが増えており、社会的な問題になっています。

平成30年に国土交通省が行った「法人土地・建物基本調査」によると、「宅地など」の土地の利用状況のうち、低・未利用地の面積は12.6%にものぼり、その6割が「今後も転換の予定はない」と回答しています。

補足:「宅地など」とは

「宅地など」は、事務所、店舗、工場、倉庫、ホテルなどが含まれており、「宅地など」以外は「農地」や「林地」などがあたります。

この章では、増え続ける遊休不動産の新たな問題点について解説します。

コロナ禍以降、遊休不動産は都心でも増えている

コロナ禍以降、急増しているのが都心のビルや店舗などの遊休不動産です。インバウンド客が消滅したのをはじめ、外出規制によりファッションや化粧品などのニーズが低下、さらに通販や食事のデリバリーサービスの需要が増加するなど、街へ出る人が急激に減少しました。それにより売上が落ちた店舗や飲食店、ホテルなどの撤退が増え、空室率が増加しています。しかも、赤坂や池袋のような日本を代表するオフィス街、繁華街も例外ではありません。

そのような「空室の増加」は、高い家賃が必要な都心のオフィスビルも同様です。オフィスビルの仲介を行っている三鬼商事のレポートによると、2022年2月時点で東京ビジネス地区(都心5区/千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の平均空室率は6.41%となっており、2020年2月の1.49%と比べると空室率が4倍以上に増加しています。2023年以降は、さらに大型の新築オフィスビルが複数竣工されることから、この傾向はこれからも続く見通しです。

新築オフィスに限ると空室率は15%を超えており、テナント料の大幅値下げなどが続くと既存のオフィスの空室状況がさらに悪化する恐れもあります。しかも、この調査はビジネス地区に特化した調査であり、この地区以外でのオフィスビルはさらに空室率が大きい場合も考えられるでしょう。

遊休不動産がかかえる問題点

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「空室率」の問題は、賃料が発生しないだけではありません。たとえば、空室が目立つビルは、いかにも活気のないような印象を与え、ビル全体のイメージが悪くなる恐れがあります。人の出入りが途切れ、管理の目が届かなくなった空間は、手入れがされないことで衛生面も悪化、不審者の侵入やゴミの投棄など、さまざまな問題が起きる可能性もあるでしょう

さらに、建物自体が遊休不動産である場合は、建物の老朽化が加速し、倒壊の危険性さえあります。建物を取り壊したとしても、大型のゴミや廃車などの不法投棄が問題になることもあり、近隣住民への影響から、行政的な指導が入ることもあります。

国土交通省では、「遊休土地制度(国土利用計画法第28条~35条)」を設け、特に取得後2年以上経過した土地の所有者に対して、行政が必要な助言や勧告を行えるようになりました。これにより、悪質な空き家に対して罰金や行政代執行が可能になり、所有者はその費用も全て負担することになります。

このような遊休不動産は「マイナス資産」といわれ、所有しているだけでも固定資産税や都市計画税などの課税対象になります。また、管理の状態によっては「空家等対策の推進に関する特別措置法(法律第百二十七号)」により税金の軽減措置を受けられなくなる可能性もあり、収益があがらないにもかかわらず、管理に手間や費用がかかる「負の資産」となってしまうのです。

しかし一方で、このような流れに歯止めをかけるべく、遊休不動産を活用し経済を活性化しようとする新たな取り組みも始まっています。次の章では、遊休不動産を有効活用する最新の事例をご紹介しましょう。

遊休不動産を有効活用!最新の事例は?

遊休不動産の活用というと、空き地ならトランクルームや駐車場、空き家なら賃貸住宅などを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?しかし、近年のコロナウィルスによる社会情勢の変化に対応し、以前のような社会や経済を活性化するための、まったく新しい提案や取り組みが始まっています

そんな、最新の遊休不動産活用の取り組みをご紹介しましょう。

泊まれるだけではない!遊べる宿泊施設/三井不動産株式会社

HUBHUBプロジェクトは、三井不動産株式会社および三井不動産グループの株式会社ShareTomorrowが手がける移動式ユニットを活用した宿泊施設で、遊休不動産の単なる土地活用だけではなく、場所や期間に応じて「にぎわい拠点」を創出するプロジェクトです。

HUBHUB日本橋人形町はその実証実験施設の役割もになっており、観光やビジネスの宿泊施設とは異なる「遊べる宿泊施設」をコンセプトに、パーティールームユニット、プールユニットを設置して営業をスタートしました。

大きさや機能を自在に変更可能な移動式ユニットなので、設置場所によってニーズに沿った施設や人々が集まる場所を提供することができます。

利用が難しい都市部の狭小地や遊休不動産など、設置する周辺エリアを活性化することが容易になり、これからの市街地の空洞化解消や遊休不動産の活用法として期待されています。

アパレル、レストランなどを備えた複合施設/株式会社セクションL 

「原宿再生のきっかけになりたい」と積極的な遊休不動産の活用を行い、2022年2月23日にグランドオープンしたのが複合施設Section L Pop-upです。日本有数の繁華街でもある原宿でも、コロナウイルスの影響で客足が遠のき、空きビルが問題となっています。

そのような中で、ホテル経営などを手掛ける株式会社セクションLと、若者向けの企画・コンサルティングをおこなっている、僕と私と株式会社が共同企画し、原宿エリアの価値を維持・向上させるためのプロジェクトが進められました。

入るテナントも全フロアをZ世代(1990年後半から2000年代に生まれた人)の若い経営者に託し、若者カルチャーの聖地であった原宿のエネルギーを取り戻すという想いが込められています。

これは、単に遊休不動産である空きビルを活性化するだけではなく、「その地の文化やカルチャーの創生」に貢献する不動産活用の例でもあり、EGS(持続可能な世界の実現のために、企業の長期成長に重要な環境・社会・ガバナンス)をも視野に入れた地域再生プロジェクトとして注目を集めています。

廃校をコワーキングスペースへ/一般社団法人オンラア未来会議

地域に根付いた遊休不動産の活用事例として、廃校となった校舎を「働く場」として積極的に利用しているケースがあります。一般社団法人オンラア未来会議が運営・管理している「トゥーノー イシデショウ」は、千葉県香取郡東庄町にある廃校を利用し、地域の農作業や地域活動の拠点として活用されています。すでに近隣住民や仕事仲間が集い、交流する「ハタラキバ」として生活の一部となりなじんでいます。

2022年4月、ニーズの高まりによりトゥーノー イシデショウの3Fにコワーキングスペースハタラキバをオープン。勉強や仕事に集中できる場所や、さまざまな人との交流の場所として、あらゆる人が自由に「知ること」から「やってみたい」「やってみた!」を実現できるためのスペースと機会を提供します。

ハタラキバは学校の設備や教室を使える部分はそのまま再利用したり、人と人との繋がりを全面的にサポートしたりする一方で、コワーキングスペース運営には、実店舗の運営をサポートする最新のITシステムが導入されており、少ない人数でも効率的で柔軟な運用が可能となっています。

この取り組みは、テクノロジーの力によって不動産の新しい仕組みを生み出す「不動産テック」の考え方が取り入れられており、これからの遊休不動産のありかたとしても注目されています。

【まとめ】遊休不動産はどのように有効活用されているのか?

いかがでしたでしょうか?遊休不動産はコロナウィルスによる外出規制などの理由で、都心の繁華街やオフィス街にまで広がるようになり、経済的な打撃やさまざまな問題をかかえるようになりました。一方で、遊休不動産を積極的に活用する新たなプロジェクトや取り組みも始まっています。

期間や住民のニーズに合わせた「遊び場」、「賑わい」を創出する移動型ユニットを利用すれば、利用の難しい狭小地も活用できますし、単なる空きビル利用ではなく、その地域全体の文化やカルチャーを活性化するプロジェクトや、最新のIT技術を導入しつつ、受け継がれてきたものを再活用し活性化させる取り組みなど、今までにない遊休不動産の活用が注目されています。

遊休不動産の新たな問題点と、最新の活用法をご理解いただければ幸いです。

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