これからはミレニアル世代?ライフスタイルホテルの戦略・トレンドについて
日本各地で「ライフスタイルホテル」の開業が相次いでいますが、この人気の後押しをしているのが「ミレニアル世代」です。これからは、この世代に対する戦略こそが「収益を大きく左右する」といわれています。ミレニアル世代を魅了するライフスタイルホテルについての解説と、取るべき戦略、最新トレンドの事例もご紹介します。
ミレニアム世代を惹きつけるライフスタイルホテル
現在、宿泊業界は多様化が進んでおり、単にホテルに宿泊するだけの「宿泊特化型」ではなく、ホテルでの滞在自体を楽しむ「宿泊主体型」が増えています。中でも、「ライフスタイルホテル」といわれるホテル形態がトレンドとなっており、日本各地に続々と開業しています。この人気を牽引しているのが、ミレニアル世代です。
そもそも、ミレニアル世代とはどのような世代なのか、そしてライフスタイルホテルが選ばれる理由について解説します。
世界のトレンドを牽引するミレニアム世代
現在、世界中のあらゆるトレンドを牽引しているのは「ミレニアル世代」です。ミレニアル世代とは、1980年以降〜1990年代半ばにかけて生まれた世代で、2000年(ミレニアル)以降に成人となった、現在20代後半〜40代前半の人たちを指します。
前の世代(団塊世代・団塊ジュニア世代)との大きな違いは、学生の頃からインターネットや携帯電話を使いこなし、デジタル機器の発展とともに成長していることです。自発的な情報収集がしやすいため、生き方や価値観が柔軟であり、趣味、興味も多様化しています。
ミレニアム世代の5つの特徴
- デジタルネイティブ:ITリテラシーが高い
- 個人主義:団体行動よりもプライベートを大切にする
- 結婚に固執しない:年齢に関係なく結婚したい時に結婚する
- モノよりコト:物よりも経験・体験に重きを置く
- 多様な価値観:様々な考え方を柔軟に受け入れる
ミレニアル世代がトレンドを牽引している理由の一つに、「購買力」があります。流行の最先端というと10代や20代前半を思い浮かべますが、経済や社会活動の中心となっているのは、20代後半〜40代前半のミレニアル世代です。
また、興味のある分野へお金を使うことにさほど抵抗がない世代であるため、収益アップを考える上で、最も重要視するべき世代と言えるでしょう。特に宿泊業者にとっては、「ミレニアル世代を惹きつける施策である」ことが、戦略の基本となります。
ミレニアム世代がライフスタイルホテルを選ぶわけ
ライフスタイルホテルは、ホテルによって、独自のテーマやコンセプトがあります。そのため、「多様性を好む」「個人主義」「モノよりコト」などのミレニアル世代の好みにピタリと当てはまるのです。
ビジネスホテルなどの「宿泊特化型ホテル」と違い、ライフスタイルホテルは「滞在することが目的となるような付加価値を持ったホテル」です。特に決められた様式はありませんが、ホテルごとに強いこだわりがあり、施設のデザイン性や、ワクワクするようなサービスを提供します。そのため、特に観光などをしなくても、ホテルでゆっくりと贅沢な時間を過ごすことができます。
トラベルマーケティングのバリーズ株式会社による「ミレニアル世代の旅好き約200人に聞いた2022年GW旅行の実態」の調査結果によると、旅のテーマは「ご褒美旅」が49%、次に「おこもりホテルスティ」22%と回答しています。ほどよく贅沢で、ホテルの滞在自体が楽しいライフスタイルホテルは、まさにミレニアル世代に刺さるホテルといえるでしょう。
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ミレニアム世代に向けたライフスタイルホテルの戦略
ミレニアル世代に向けたライフスタイルホテルには、どの様な戦略が必要となるのでしょうか。まずは、絶対的なコンセプトを作り、それに沿ったホテルを作り上げることが前提です。清潔で綺麗であることはもはや当然ですが、「贅沢」であれば何でも良いわけではありません。
その上で、ライフスタイルホテルには、次のような戦略が必要です。それぞれを解説していきます。
ミレニアム世代をターゲットにする場合のポイント
- 他のホテルと一画を期す高いデザイン性
- 滞在自体を楽しめるホテルの付加価値
- 非日常感を演出するユニークな施設形態
他のホテルと一画を期す高いデザイン性
ライフスタイルホテルの最大の特徴として、他のホテルと一画を期す「高いデザイン性」があります。ホテルに入った瞬間、思わず歓声をあげるような、非日常感の演出があると大きな印象を残せます。
たとえば、アートをテーマにしたホテルでは、ホテル自体が美術館のようになっており、ロビーやギャラリー、または客室で作品をじっくりと楽しむことができます。また、ホテルの建物自体を著名な建築家によってデザインされたホテルや、ホテルに入った途端、地域の文化や歴史を体感できるホテルもあります。
ただし、「他に無い、突飛なもの」だけを追求しすぎると、すぐに飽きられてしまいます。その土地に由来するものや、運営者の想いが現れたコンセプトなど、「ストーリー」が感じられる演出こそが、ミレニアル世代の心に響きます。
滞在自体を楽しめるホテルの付加価値
ライフスタイルホテルは、滞在自体を楽しめるような「付加価値」が必要です。特別な体験ができたり、客室以外で楽しめるスペースがあったり、そのホテルにしかない「価値」を演出するのです。
たとえば、「都心のくつろぎ」がテーマのホテルでは、眺めの良いテラスでのんびりと読書などを楽しめたり、ジャングルのような空間でリラックスできたりするスペースが提供されています。旅行に行かなくても気軽に気分転換ができるので、都市部で人気のスタイルです。
地方では、地域の穴場や歴史的遺産を体験するホテル独自のツアーを展開するケースや、特産品を全面的に利用したおもてなしで、注目を集めているホテルもあります。
「ホテルでどのように過ごせるのか」を明確に伝えることで、特別な体験をしたいミレニアル世代の興味を惹きつけます。ミレニアル世代は口コミでの拡散力も大きいので、効果的なアプローチが期待できます、
非日常感を演出するユニークな施設形態
大掛かりな仕掛けがなくても、ユニークな施設形態やシステムで「非日常感」を演出することも可能です。最新システムと連携すれば、ゲストは誰にも邪魔されず、ストレスフリーな滞在を楽しむことができます。
たとえば、QRコードを利用したチェックインシステムなどは、あまりの簡単さに驚くゲストも多いでしょう。ゲストはフロントに並んだりすることなく、自分のスマートフォンでチェックイン・チェックアウトが完結します。
さらに、スマートロックを導入すると、鍵の受け渡しや、持ち歩きが無くなります。また、共用部分の混雑を回避するシステムなら、待ち時間なしに施設を利用することができますし、客室に設置したモバイル1つで地域の観光案内や、お土産物を購入できるシステムもあります。
このようなシステムは、単に非日常感や利便性を体験してもらえるだけではなく、ホテルスタッフの負担を減らし、業務の効率化が可能です。浮いた労力を、ゲストへのサービスやおもてなしに活用できるので、ミレニアル世代へ向けてホテルの価値をさらにアピールすることができます。
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【事例紹介】ライフスタイルホテル最新トレンド
実際に人気となっている、ライフスタイルホテルの実例をご紹介しましょう。
ラグジュアリー&ポップなライフスタイルホテル「W大阪」
建築家の安藤忠雄氏がデザインを手掛けたW大阪は、「シンプルな外観に対比して、内部は色鮮やかなネオン装飾で華やかな内装」というデザインコンセプトを持ったホテルです。
折り紙からインスパイヤーされたエントランスは、四季の移ろいを演出する日本らしさを表現する一方で、夜は大阪を象徴する賑やかなネオンを楽しむことができます。贅沢な非日常感を心ゆくまで味わえるライフスタイルホテルです。
有名ホテルチェーンが展開するライフスタイルホテル「アンダーズ東京」
ハイアット系列のライフスタイルホテル「アンダーズ東京」は、ゲスト自身のスタイルで、居心地のよい上質な滞在を楽しむことができます。
モダンでありながら、日本美を意識した館内で、多数のアートワークを満喫することができます。客室からは、東京タワーや皇居、レインバーブリッジ等の壮大なパノラマを満喫することができます。
日本特有のライフスタイルホテル「NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO」
滞在そのものが「京都」体験となるNOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTOは、滞在するだけで、千年の都、京都の歴史や文化に触れることができるライフスタイルホテルです。
京都産抹茶を利用したお茶体験をはじめ、瞑想(座禅)やヨガ、アロマ調香など、ホテル内で様々な体験をすることができます。地下1回にある「メディテーション」は、己をリセットし、再構築する特別な時間を持つことができると好評です。
【まとめ】ミレニアム世代が魅了されるライフスタイルホテル
いかがでしたでしょうか。これからの経済とトレンドを牽引するミレニアル世代が好む「ライフスタイルホテル」は、これからも増加する可能性が高いです。
単に「スタイリッシュ」「贅沢」だけではなく、その地域や文化、由来など、ストーリーに共感し、「そのホテルに滞在したい」と思ってもらえるようなホテル戦略が、成功の鍵を握っているといえます。ライフスタイルホテルについて、理解を深めていただけましたら幸いです。