ブログ

公開日2022.08.26

最終更新日2023.08.30

今話題のリノベーションホテルとは?人気の理由に迫る

今、リノベーションホテルと呼ばれる新しいスタイルの宿泊施設が人気を集めています。今回は、そんなリノベーションホテルの実態を具体的に解説するとともに、その人気の背景について分析してまいりたいと思います。

リノベーションホテルとは?

リノベーションホテルとは、古民家や古い建造物を改築、改装して、ホテルとしてよみがえらせた施設のことを指します。中には学校や銀行や倉庫がホテルとなって再生された事例もあり、ひと口にリノベーションホテルと言っても、その実態は多種多様です。そこで、ここではいくつかの類型別にリノベーションホテルの実態に迫っていきたいと思います。

多種多様なスタイルがある、リノベーションホテル

古民家を再生して地方創生につなげる

全国各地には築100年を超える古民家が数多く残っています。これらは地域に埋もていれる貴重な資源であると捉えることができます。今、古民家の良さを残しつつ、内装には機能性の高い設備やデザイン性の高い調度を取り入れて魅力あるホテルとして再生し、一方、地域の産業や行政と連携して地域全体の活性化につなげようという試みが活発に行われています。

千葉県香取市佐原地区は江戸時代の風情が残る町並みとして人気の観光地です。2018年、この地区に明治から昭和初期に建築された11棟13室からなるリノベーションホテル「佐原商家町ホテル NIPPONIA」がオープンしました。「NIPPONIA」は、古民家再生による地域の活性化を推進するという理念に賛同する複数の事業者の全国各地での取り組みの総称であり、ホテルのブランド名にもなっています。地元企業や行政の賛同と支援を受け、佐原でのプロジェクトが実現しました。

使われなくなった学校や倉庫を再生

少子化の進行によって廃校になってしまった学校が全国いたるところに存在します。また、産業構造の変化などにとって用途を失ってしまった倉庫が数多くあります。このような特殊かつ大型の建築物も次々にリノベーションホテルとして魅力ある宿泊施設に生まれ変わっています。

ザ・ホテル青龍 京都清水」は、明治2年に開校し、昭和8年に移転新築された元清水小学校の校舎を活用して建てられました。もともと、外観上の装飾、内装デザインに優れた歴史的建造物として高い評価を得ていましたが、京都東山という立地の良さと相まって、今ではラグジュアリーでハイグレードな都市型リゾートホテルへと大変身を遂げています。

浅草からほど近い東京都台東区蔵前にある「Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE」は、もともと江戸時代から続く老舗玩具メーカーの倉庫でした。大胆なリノベーションを経て、今では26の客室と広々としたバーラウンジを備えた施設に生まれ変わりました。倉庫ならではの天井の高さを活かした空間デザインが大きな特徴です。

古くなった都市部のビルをおしゃれなホテルに改造

古い建物を改装、改築してホテルとして再生するという試みは、地方や観光地に留まるものではありません。大都市の都心部でもリノベーションホテルは注目を集めています。

例えば、東京の日本橋にある「HOTEL K5(ケーファイブ)」は、95年以上にわたって銀行として使われていたビルをリノベーション、2020年にオープンしました。大正時代に建設された銀行ならではの重厚な外観と、現代的なデザインを駆使したインテリアが融合、東京都心のおしゃれなホテルとして人気を博しています。

この他にも、古くなったアパートや学生寮、商店街、美術館など、さまざまな建築物がホテルとして再生された事例は今では枚挙にいとまがありません。まさにリノベーションホテルには多種多様なスタイルがあります。

リノベーションホテルは海外でも大人気

リノベーションホテルという手法で古建築物をする取り組みは日本だけの現象ではありません。世界各地にも注目すべき事例が数多くあります。

イタリアが発祥と言われるアルベルゴディフーゾという取り組みもその一つです。アルベルゴは「宿」、ディフーゾは「分散した」という意味。その名の示す通り、レセプション、客室、レストランなどがまちの中に点在していて、まち全体を宿と見立てるような考え方です。

イタリアにあるアルベルゴディフーゾ協会では、まちに存在する資源を活用することで、地域全体の「水平的発展」が実現されると共に、訪れる観光客はそのまちで「暮らすように旅する」ことができることを事業哲学としています。同時に、地域における空き家の増加や人口減少や高齢化問題への対策としても注目されています。協会では、これまでにイタリアで100ヶ所以上、EUで約150ヶ所をアルベルゴディフーゾとして認定しています。

アルベロベッロ

アルベルゴディフーゾのあるアルベロベッロ(イタリア、プーリア州)の街並み

この手法は、日本でも「分散型ホテル」という呼称で普及しつつあり、数多くの地域で同様の取り組みがみられます。この手法には現在、ホテル事業者だけでなく、不動産事業者、地域の経済団体、地域行政、関係省庁などから幅広い関心が集まっているところです。

この他にも海外には、昔は刑務所だった建物がホテルに変身した施設(アメリカ・ボストン、The Liberty Hotel)、使われなくなった空港のターミナルが丸ごとホテルとして生まれ変わった施設(アメリカ・ニューヨークJFケネディ空港、TWA Hotel)、元は消防署の建物だったホテル(イギリス・ロンドン、Chirten Firehouse)、元は世界的に有名な自動車メーカーフィアットの本社ビルだったホテル(イタリア・トリノ、NH Lingotto Hotel)など、日本ではなかなか考えつかないようなリノベーションホテルが存在します。

いずれもクリエイティビティに溢れており、多くの旅行者を惹きつける魅力に富んだ宿泊施設となっていて、私たちが参考にすべき点も少なくないと思われます。

リノベーションホテル、人気の背景

それでは、今なぜリノベーションホテルに人気が集まっているのか、その背景についていくつかの視点からご紹介します。

消費者の意識の変化

近年、旅行に対する消費者の意識に変化が生じています。旅行会社が企画するパッケージツアーよりも、消費者が自身の興味関心に応じてプランを決めていく旅行スタイルが定着してきました。また、滞在しながらその土地ならではの食や文化や歴史を体験できる「滞在型」、「体験型」の観光に人気が集まっているといいます。

さらに、若い人々の間では、旅行を特別な体験、非日常的な体験を得る機会ととらえて、目的地や宿泊施設を選択する傾向が高まっています。特に、SNSが普及した現在では、「インスタ映え」するという視点で行き先やホテルなどを選ぶ個人やグループも少なくありません。

女性グループ

女性のグループ旅行も増加傾向

そのような今の消費者にとって、リノベーションホテルでの滞在は、まさにその地域ならではの様々な体験を得ることのできる場であり、他では得られないオンリーワンの特別な体験を得ることのできる機会といえます。一般的なホテルとはひと味違った外観や内装も「インスタ映え」にうってつけの対象となります。

こうした消費者の意識の変化が現在のリノベーションホテルの人気の背景となっていることは間違いないでしょう。

地方創生の一翼を担うリノベーションホテル

先にも述べましたように、地方の古民家などをホテルとして再生する事例が増えています。そのような施設の多くでは、地域の特産品を提供したり、伝統文化を体験したりと、地域住民と連携してその地の魅力を伝えるプログラムを備えています。ホテルと地域が一体となって、地域の産業の活性化、新規雇用の創出、空き家問題の解消など、地域全体の底上げを実現している事例も数多くあります。

古民家の続く街並み

古民家の並ぶ宿場町の街並み

これは地方創生を標榜する国や自治体の考えとも一致しており、政府は、地域に眠っている資産である古民家等の歴史的建築物を宿泊施設、レストランなど地域再生の核となる観光資源として活用する取り組みを支援するため、2016年に「歴史的資源を活用した観光まちづくりタスクフォース」(議長:内閣官房長官)を立ち上げました。

同チームでは、内外からの旅行者の増加、交流人口の拡大、地域の雇用の創出、UIターンの若者の増加、出生率の向上、定住人口の増加、耕作放棄地の解消等を目指す、としています。

現在では、国や自治体から事業者(市町村を含む)の取り組みに対する補助金や経費の一部負担など、様々な支援も充実してきており、その成果として数多くの成功事例も生まれています。リノベーションホテルは地方創生の新機軸にもなっているといえるでしょう。

参考サイト

政府(内閣官房)による歴史的資源を活用した観光まちづくりに関する資料はこちら

ビジネス視点でもさまざまなメリット

事業者の側のビジネスの視点で見ても、リノベーションホテルには数々のメリットがあります。先ず、リノベーションの対象が自社の所有する遊休不動産であれば、不動産の取得のためのコストは不要ですので、眠っている資産を再生して確実に収益化につなげることができます。

不動産物件を主有していない場合、不動産の取得や改築、改装に係る費用については、その規模やスタイルによって大きく異なりますので、ホテルをゼロから新築する場合と一概に比較することはできませんが、対象となる不動産が持つ歴史的文化的な価値を継承することで、あらかじめ付加価値を備えたビジネスを開始することができます。地域によっては、先に挙げた国や自治体、あるいは地域の経済団体などからの支援も期待できます。

また、地域と連携して、魅力ある食や文化のプログラムを開発すれば、より付加価値の高いビジネスを創出することが可能となり、収益の拡大にもつながるでしょう。

メリット

何よりも、2-1で述べましたように、今の消費者が望んでいる、特別な体験、非日常的な体験を実現できる場がリノベーションホテルです。マーケットの動向を考えれば、ここに事業者の注目が集まるのは当然のことだと言えます。新規参入も合わせ、これからますます業界規模は拡大することと予測します。

なお、リノベーションホテルビジネスの成功のためには、対象となる建築物の特性に合わせたしっかりとしたコンセプトやデザインを確立すること、地域の自治体や産業との連携について明確なビジョンを持っておくこと、顧客となる消費者の特性を細かく把握したマーケティングを行うこと、通常のホテルと異なる運営上の注意点を理解しておくことなど、学んでおくべき点も多々あります。この点を最後に付け加えて、章を終えたいと思います。

【まとめ】ますます楽しみなリノベーションホテルの未来

以上述べてまいりましたように、現在リノベーションホテルをめぐっては、消費者(利用者)、地域(行政、地元産業、地域居住者など)、事業者(宿泊事業者、不動産事業者、施設運営事業者など)それぞれにとってWin-Winの関係が成り立っているといえます。斬新なアイデアを取り入れた施設も次々に生まれており、リノベーションホテルの未来はますます楽しみです。

この記事をシェア

  • LINE
  • はてなブックマーク

資料ダウンロード

メールマガジン

最新記事やRemoteLOCKの情報をメールでお届けします