【セミナーレポート】スマホで完結できる次世代型旅館運営とは?
近年、宿泊需要の盛り返しで加速する恒常的な人手不足を背景に、宿泊特化型ホテルや民泊・一棟貸し施設だけでなく、旅館やよりハイクラスなラグジュアリー・リゾート系ホテルでも、フロントの非対面化や宿泊施設のDX化が進んでいます。今回は、「スマホで完結できる次世代型旅館運営とは?」と題して開催されたWEBセミナー(2023年5月23日開催)をレポートします 。
これからの観光DXの方向性 /株式会社 陣屋コネクト
はじめに、株式会社 陣屋コネクトから、代表取締役 CEOの宮﨑 知子 氏が登壇。「陣屋コネクト」は、鶴巻温泉 元湯陣屋が自らの経営変革のために開発した宿泊管理システム(PMS)で、全国500施設以上に導入(2023年1月時点)されるだけでなく、働き方改革や地方創生を実現するモデル事例としても大きな注目を集めています。
セミナーでは「鶴巻温泉 元湯 陣屋」の経営を改善するための様々な取り組み、自社開発した陣屋コネクトの機能、スマホを活用したチェックイン方法など、様々なお話をいただきました。本記事では内容を抜粋してご紹介します。
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陣屋グループの取り組みについて
陣屋グループは「鶴巻温泉 元湯 陣屋」という旅館を運営し、創業106年を迎えています。宮﨑 氏は2009年に4代目女将に就任し、存続の危機に直面していた陣屋旅館の経営改善に取り組み、自社開発した「陣屋コネクト」を活用して業務を効率化しました。
高付加価値・高単価・低稼働率に経営方針を転換した現在では、働き方改革や地方創生のモデル事例として注目されていて、株式会社陣屋コネクトでは、陣屋コネクトの仕組みやノウハウを同業他社にも提供しています。
また、最近では創業106年目の新しい 挑戦として、 2023年3月に兵庫県で「湯村温泉 緑屋」をリニューアルオープンしました。8月には長野県に「別所温泉 緑屋」もオープン予定です。「緑屋」は 廃業してしまった旅館を引き取ってリニューアルオープンしていて、元々は「陣屋コネクト」を長く利用していたユーザーとのことです。オーナー様がご高齢であること、後継者が不在であること等の理由から、陣屋グループで事業を承継しています。
陣屋コネクトとは
陣屋コネクトはSalesforceをベースにした、旅館・ホテル向けクラウド型システムです。一般的に宿泊施設では、PMSやPOSレジのほか、コミュニケーションツール(社内SNSなど)、様々なシステムが活用されていますが、陣屋コネクトはこれらの機能をまとめて備えている点が特徴です。
また、弊社のスマートロック「RemoteLOCK」とシステム連携が可能で、チェックイン完了後に客室の鍵となるQRコードや暗証番号を自動発行することができます。このQRコードと暗証番号はお客様が予約した宿泊期間内のみ有効になる仕組みです。
これからの観光DXの方向性
宮﨑 氏はデジタル化は自社だけでなく、地域で取り組むことがトレンドになっていると指摘します。陣屋コネクトではブッキングエンジン「里山トラベル」を新たに開発しました。PMSである陣屋コネクトと併せて宿泊事業者に使っていただきつつ、宿泊データを地域の観光振興団体に共有しています。
地方にある中小零細の宿泊施設では、各施設でマーケティングのための人材を確保することが難しい現状もあるので、地域全体で役割を担うための仕組みとのことです。
『事例』緑屋でのIT活用について
最後に、宮﨑 氏から「緑屋」の事例紹介がありました。緑屋には「ITをフル活用する」というコンセプトがあり、スマホで施設予約からチェックアウトまでの手続きが完結する点が特徴です。例えば、ゲストは予約時に決済情報まで入力することで事前決済(キャッシュレス)に対応していて、チェックイン完了後はRemoteLOCK 8j-Qを解錠するためのQRコード・暗証番号がメールで送られます。
また、チェックイン完了後は「モバイルコンシェルジュ」機能にアクセスできるようにもなります。ゲストはスマホで館内施設の予約や、ルームオーダーを行うことが可能で、また、チェックアウトもスマホで行います。これらの機能はゲストにとっての利便性を向上させるだけでなく、施設側にとってはレジ締め業務やレジカウントを省力化することにもつながります。
講演中には「旅館を憧れの職業に」という言葉もありましたが、陣屋グループの宿泊・観光業に対する想いが感じられる、本当に素晴らしい内容でした。
スマホで完結できる次世代型 旅館運営とは?/ 株式会社構造計画研究所
次に登壇したのは弊社、株式会社構造計画研究所 RemoteLOCK エバンジェリスト 池田修一です。
これまで/これからの宿泊施設運営
冒頭には宿泊施設における、チェックインやカギの受け渡し方法を紹介しました。近年はタブレットや顔認証等を活用したセルフチェックインの導入が増えているものの、タブレットの使いづらさや、顔認証に対する心理的ハードルの高さが課題となり浸透していないと説明します。
これからの宿泊施設は、人手不足の課題を解消しつつも、フロントの非対面化やゲストの利便性・体験価値の向上を図る必要があります。その点で、「ゲスト自身のスマホで、予約から入室まで完結できる」点は、陣屋コネクトとRemoteLOCKの連携の魅力の一つです。
池田からは、フロント業務をシステムで自動化し、捻出した時間を顧客接点の強化(おもてなし)や、施設PRのために使うべきであると指摘し、ゲストに対してもオンライン予約やセルフチェックインのシステム、スマートロックなどを活用していただくことで、ゲストにとっての施設の体験価値を高めることができると紹介しました。
例えば、QRコードで解錠ができるRemoteLOCKの最新機種、8j-Qを導入すれば、宿泊者はチェックインから入室まで、スマホにあるQRコードだけですべて完結することができます。また、QRコードはスマホだけでなく、紙にプリントアウトしたり、スマホカメラで撮影して同行者とシェアしたり、といったことも可能です。当日は解錠の様子を動画で紹介しました。
RemoteLOCK(リモートロック)の概要
続いては、同社が販売するRemoteLOCKの概要説明です。RemoteLOCKは、日本国内では2017年に販売を開始、ホテルや宿泊施設のほか、レンタルスペース、貸会議室、無人店舗、自治体などへも利用が広がっています。
RemoteLOCKは物理カギではなく、暗証番号やQRコード等で解錠するスマートロックです。陣屋コネクトをはじめとする約50のシステムと連携をしていて、OTA(楽天トラベル等)やサイトコントローラー、PMSとのデータ移行・連携がスムーズであるという点、また、複数の施設を一元管理しようとする場合に便利であるという点をメリットとして紹介しました。
RemoteLOCKの導入事例
最後は事例紹介を紹介しました。RemoteLOCKのWEBサイトに多数の事例が掲載されていますので、ご興味があれば、ぜひそちらをご参照ください。(RemoteLOCK 利用事例のページはこちら)
質疑応答/参加者からの質問にリアルタイムに回答
最後は質疑応答のコーナーです。セミナーの進行と並行して、オンラインで20件以上のご質問をいただきましたが、ここでは、その中から特に質問が多かった数件をご紹介します。
(陣屋コネクトに関する質問については、株式会社 陣屋コネクトの江崎 氏が回答しています。)
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陣屋コネクトを導入する場合、Salesforceとの契約も併せて必要なのか?また、料金体系について教えてほしい
→ 株式会社 陣屋コネクト 江崎 氏への質問 - 【回答】Salesforceと契約する必要はなく、陣屋コネクトとの直接契約のみで完結する。
- 料金については、例えばフリープランは初期費用・月額固定費用0円、予約手数料2.4%(含、カード手数料)といった料金体系で、必要に応じて社内SNSや勤怠機能管理を利用可能なプランや、モバイルコンシェルジュ、RemoteLOCK連携等のオプションを追加で上乗せすることができる。
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陣屋コネクトと他社PMSの違い、自動精算機との連携は可能か?
→ 株式会社 陣屋コネクト 江崎 氏への質問 - 【回答】他社PMSとの大きな違いは、自社で施設を運営しながら開発されているPMSであること。また、Salesforceをベースに開発されているため、主に顧客管理等で、施設ごとに柔軟なカスタマイズを提供できる。
- 陣屋コネクトは、 スマホでチェックアウト・オンライン決済が可能であるため、自動精算機とは連携していない。自動精算機の導入が不要なぶん、初期投資をかなり抑えて導入いただくことが可能。
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RemoteLOCKと他社スマートロックの違いについて
→ 構造計画研究所株式会社(弊社) 池田への質問 - 【回答】 宿泊業界ではRemoteLOCKが一番導入されていると考えている。PMSとの連携数もその理由の一つであるが、Wi-Fi接続で暗証番号/QRコードがスマートロック本体側に事前に登録されるので、他社製品よりも当日の通信トラブルに強い点が理由としては大きい。
当日は150名以上が参加し、充実したセミナーとなりました。弊社では、宿泊業界を対象としたIT活用やオペレーションの効率化など、定期的にセミナーを開催しております。次回もぜひご参加ください。