多様化するホテルカテゴリ。近年注目を集めるホテルの業態を分析
近年、宿泊客の価値観やライフスタイルの変化に伴い、「宿泊」に求められる体験は急速に多様化しています。従来の機能別(ビジネス、リゾートなど)の分類だけでは、顧客の細分化されたニーズに応えることが難しくなり、コンセプトを核とした戦略的な差別化が不可欠な時代となりました。本記事では、注目すべき最新のホテルカテゴリを徹底分析し、それぞれの業態のターゲット・ニーズ、事業性・収益性を分析し、人手不足時代でも持続可能な運営戦略の視点も加えて、実例とともに紹介します。
ホテルカテゴリの多様化と、今求められる戦略的視点

ホテルとは、もともとラテン語のhospitale (ホスピターレ)が語源で、巡礼の旅人にベッドを提供し、もてなす施設を指していました。次第に料金をもらって質の高いサービスを提供する宿泊施設へと発展しました。
日本では、さらに「ビジネスホテル」「観光ホテル」「リゾートホテル」「カプセルホテル」など、宿泊客の目的に合わせて業態が多様化し、宿泊料金、客室や食事の有無と質、そして交通の便など機能的な部分が、ホテルを選ぶ際の判断基準となっていました。
最近では、宿泊客のニーズがますます細分化し、従来にはなかった新しいカテゴリのホテルが人気を集めるようになっています。アクティビティを売りにしているホテルや、以前にはなかったような業態、施設形態のホテルが次々と登場し、新たな客層をも開拓しているのです。
この傾向はまだまだ続くと予想され、ホテル独自のコンセプトを明確に発信し、宿泊客の新たなニーズに応えることが、これからのホテル業界で勝ち残るための条件の一つといえるでしょう。
【事業機会分析】多様なニーズに応える注目ホテルカテゴリ
ここでは、特定のニーズを掘り下げ、大きな事業機会を生み出しているホテルカテゴリを分析し、実例を紹介します。
ライフスタイルホテル:体験とエンゲージメントによる高付加価値化
ライフスタイルホテルとは?
1980年頃、これまでのホテルとは異なる概念のブティックホテルという、ラグジュアリーで個性的なホテルが登場しました。その流れをくんでいるのが、ライフスタイルホテルです。
ターゲット&ニーズ
「ホテル滞在自体を旅の目的」とする層や、「デザイン性の高い設備・空間を有する」「そのホテル独自の価値を提供する」など独自のデザイン・コンセプトに共感する層。単なる宿泊ではない、情緒的な体験やパーソナルな価値を求める宿泊者を深くロイヤルティ化(ファン化)できます。
事業性・収益性
高感度なデザイン、地域密着型のアクティビティ、コミュニティ醸成の仕掛けなどを提供することで、価格競争に陥らない高単価なビジネスモデルを構築できます。SNSなどで拡散されやすい「話題性」を持ち、強力なブランド形成と継続的な集客を実現できます。
運営効率化の鍵
スタッフの資源を「チェックイン対応」ではなく、「ゲスト体験の向上」という最も重要な高付加価値業務に集中させることが、この業態の成功を決定づけます。スマートロックによるキーレス化は、定型業務を最小化し、スタッフの労働生産性を最大化するための重要なDX戦略です。
サイクリストをターゲットとしたライフスタイルホテル『コナステイ伊豆長岡』
コナステイ伊豆長岡は、昭和に建てられた温泉旅館をリノベーションし、モダンでスマートに再生した施設です。新築では味わえない心地よさで、癒やされる空間を提供しています。
60台ものレンタルサイクルを完備しており、コナステイのすぐ近くを流れる狩野川でのカヌー体験や、ゆらめく炎を眺めながらゆっくりとお酒や炙りマシュマロを楽しめる焚き火バーなど、他にはないユニークな体験は、コナステイ伊豆長岡の独自の強みとなっています。
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宿泊特化型ホテル
宿泊特化型ホテルとは?
宿泊特化型ホテルとは、その名の通り「宿泊」に特化しており、レストランや宴会場を省く代わりに客室料金を低く設定することで、従来の「ビジネスホテル」以上にリーズナブルな宿泊が可能なホテルです。「宿泊主体型」と呼ばれることもあります。後述するアパートメントホテルやライフスタイルホテルも、宿泊特化型ホテルに分類されることがあります。
もともとは素泊まりが目的のビジネスマンを対象としていましたが、「少しでも安く泊まりたい」というインバウンドや国内の観光客にも人気が出て競争が加熱し、今では独自のコンセプトやスタイリッシュな空間をもつホテルが次々と誕生しています。
ターゲット&ニーズ
「効率性」と「コストパフォーマンス」を最優先する幅広い顧客層(ビジネスマン、単独旅行者)。付帯施設を省くことで、立地や交通の便という機能的な価値と、リーズナブルな価格を追求します。
事業性・収益性
宴会場やレストランなどの付帯施設を持たないことで、複雑な管理体制から解放され、スリムな経営体質を構築できます。また、外部環境の変化に迅速に対応でき、運営に柔軟性がもてます。
運営効率化の鍵
競争力を決定づけるのは、人手不足を前提とした運営体制です。セルフチェックインとスマートロックの連携により、フロント業務の省人化・無人化することで、コスト効率の高い運営の実現が可能になります。これにより、採用難に左右されない安定した運営基盤を構築し、収益性を最大化することが可能になります。
北海道・旭川のビジネスホテル「OYO THE GREEN ASAHIKAWA/オヨ ザ グリーン 旭川」
「Safety=安心・安全を最優先」、「Comfortable=ビジネスシーンを快適に」、「Easy-going=もっと気軽に」をコンセプトとして掲げているOYO THE GREEN ASAHIKAWA/オヨ ザ グリーン 旭川でも、スマートロック「RemoteLOCK」を導入されています。
RemoteLOCKを導入することで、従来の鍵管理をすべてクラウドで行えるためスタッフの省人化や業務効率化が実現してます。それにより、大幅なコストの削減が可能となり、安全性が高く快適な宿泊ができるのに、リーズナブルな価格であることが、ホテルとしての強みとなっています。
アパートメントホテル:中長期滞在ニーズの獲得
アパートメントホテルとは?
アパートメントホテルとは、従来のホテルが提供する基本的なサービスを踏襲しつつ、客室内にキッチンや洗濯機などの生活設備を備え、中・長期滞在に適したサービスを提供する宿泊施設を指します。訪日観光客の平均滞在日数が長くなる傾向があり、従来のホテルでは、中・長期滞在における多様なニーズに対応しきれない、という背景から近年拡大しているホテル業態です。
ターゲット&ニーズ
インバウンドを中心とした中・長期滞在者、またはファミリーやグループ旅行。自炊や洗濯ができる環境を求め、ホテルスタッフとの関わりも最小限となる自由な滞在スタイルを優先する層です。単なる「家具付き賃貸」ではなく、「ホテルの安心感と快適性」に「自宅のような自由と利便性」をプラスしたホテルと賃貸の中間的なコンセプトです。
事業性・収益性
通常のホテルと賃貸住宅の中間に位置するビジネスモデルとして、未開拓の中長期滞在市場を獲得できます。市場の回復と滞在日数の長期化に伴い、安定的な収益が見込めるインバウンド需要の強力な受け皿となります。高い稼働率と安定した収益が見込めるほか、多用途(ビジネス、観光、仮住まいなど)に展開できる柔軟性があります。
運営効率化の鍵
宿泊者のペースで、自宅にいるような自由に過ごせる空間を提供するため、スタッフの関わりを最小限に抑えることで、人件費を抑え、結果として手頃な宿泊価格を提供することが可能です。RemoteLOCKなどのスマートロックで、予約と連動した暗証番号の自動発行を徹底することで、人手を介さない無人でのチェックイン・チェックアウト、鍵管理を実現。属人性の高い業務を自動化し、運営の安定性と効率性を改善します。
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コンドミニアム
コンドミニアムとは?
コンドミニアムとは、欧米では高級分譲マンションを指しますが、日本では少し意味合いが異なります。日本におけるコンドミニアムとは、単なる客室ではなく、利用者自身が生活できるようにキッチンやランドリー設備を備えた宿泊施設を指します。その本質は「自宅のように暮らす空間」を提供することにあります。
ターゲット&ニーズ
家族連れ、グループ旅行など、郊外・リゾート地で数日間以上のレジャー滞在を計画している層。大人数での宿泊や、旅先での自炊・洗濯を通じて自由度を高めたいというニーズに応じます。
事業性・収益性
広い空間と充実した生活設備を提供することで、大人数での宿泊ニーズや「暮らすような体験」を求める層を獲得できます。リゾート地での滞在自体に価値を生み出し、地域の観光資源との連携を深めることが可能です。
運営効率化の鍵
滞在客が求める「プライベート感」を最大化するため、対面での対応を最小限に抑える仕組みが重要です。スマートロックを利用した無人チェックインは、運営側が鍵の受け渡しや紛失対応の手間を完全に排除できます。
大人数で楽しめる都市型コンドミニアム『Vieuno Stay』
パナソニックホームズが宿泊事業に本格参入して提供する新しい宿泊事業ソリューション『Vieuno Stay』。キッチンやバス、リビングを備えた1LDKプランを中心に、家族やグループでも宿泊できる都市型コンドミニアムの宿泊スタイルを提案しています。
こちらの施設もセルフチェックインシステムと当社のRemoteLOCKの活用により、無人運営を実現。人の目を気にせず、まるで自宅にいるかのようなくつろげる空間が宿泊客から好評のようです。
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(番外編)宿泊施設の建物にも新たな形態が登場
ここからは業態というよりも、建物自体が従来のような戸建てやビル型ではなく、新たな空間活用により生まれたホテルの例を紹介します。いずれも、土地やその形状に合わせた、柔軟的な運用が出来る宿泊施設です。
コンテナ型/トレーラー型ホテル
従来のホテル開発では難しかった特殊な立地や遊休地を、収益源に変える柔軟な発想が注目されています。特に、既存のインフラを有効活用したいレジャー施設や複合施設の運営者にとって、コンテナ・トレーラー型ホテルは最適なソリューションです。
見た目にもインパクトがあり、建築用コンテナを客室として利用するもので、土地の形状や大きさによって自由にレイアウトが可能です。室内にはベッド、電子レンジ、冷蔵庫、テレビ、ユニットバスなど必要な物は完備されおり、不便を感じさせません。
また、一部屋一部屋が独立していることから、静寂性とプライバシーの確保がしやすいことも宿泊客には好評のようです。
事業性・収益性
最大のメリットは、建築期間の大幅な短縮と、移設・撤去の容易さです。また、建設コストや初期投資が抑えることができます。
活用例としては、季節性の高いスキー場に設置することで、グリーンシーズンでも雄大な自然の中で特別感のある宿泊体験を提供でき、年間を通した収益化に貢献します。
運営効率化の鍵
客室が分散しているため、フロントスタッフによる鍵の受け渡し等が大きな負担となります。RemoteLOCKなどのスマートロックによる遠隔での入室管理やセルフチェックイン~キーレス入室は、少人数のスタッフで複数の施設を管理するための不可欠なDX戦略となります。
トレーラーハウスのお部屋でプライベート空間を存分に楽しめる『吹上浜フィールドホテル』
吹上浜フィールドホテルのようにグランピングリゾートをコンセプトに、「非日常感を味わいたい」という旅行者へ快適なプライベート空間を提供できたりと、ニーズに合わせてさまざまな層にアピールできるのもコンテナ型やトレーラー型ホテルの特長といえるでしょう。
高架下ホテル
電車が走る高架下のスペースを有効に活用した新形態のホテルが誕生しています。
高架下スペースは以前より商業施設などに活用されてきましたが、2019年、IKIDANEとアジアゲートホールディングスが、秋葉原のJR高架下に、本格的なホテルとして「UNDER RAILWAY HOTEL AKIHABARA」を開業しました。
高架下ということで、通常の建築物にはない梁や、頭上に注意しなければならないことも含めて、他では味わえない体験ができるホテルとしても楽しめるようです。
従来だとネガティブにとらえられる要素を逆手にとったり、そこでしか味わえないような体験や付加価値を提供できるかどうかがこれからのホテル運営成功のひとつの鍵となるでしょう。
【まとめ】近年注目を集めるホテルの業態を解説
いかがでしたでしょうか?ホテル業界は今までのように、場所、宿泊料金、清潔さだけでは、宿泊客にアピールすることが難しくなっています。ホテルのコンセプトを明確にし、宿泊客に驚きや感動を与えるような仕掛けやサービスが求められるようになっているのです。
それは、大掛かりな施策だけはではなく、高品質なのに驚くような低料金であったり、ホテル独自のユニークな体験ができたりすることなど、多岐にわたります。
多様化する宿泊客のニーズに応え、選ばれるホテルに必要な施策とは何か、注目を集めているホテルを参考にしていただけましたら幸いです。なお、RemoteLOCKでは宿泊事業者向けの導入事例集もご用意しております。下記のバナーよりぜひダウンロードをお願いいたします。


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