美術館の入場受付業務を効率化するには?ITシステム導入のススメ
近年、業種を問わずデジタル技術を活用した業務サポートシステムを導入することで受付の業務を省人化しようという動きが広がっています。今回は美術館や水族館などの集客型施設の受付業務を省人化する方法や重要となるポイント、メリット、デメリットをご紹介します。
アフターコロナにおける美術館の受付常務
COVID-19の感染防止の観点から施行された外出制限や入場制限は、美術館を含む集客施設に経済的に大きなダメージを与えました。美術館においても、収入減により企画展を行うことができなかったり、休館せざるを得ない施設が後を絶ちませんでした。
そのなかで、多くの施設が①人同士の接触回数を可能な限り減らす、②施設内の人数を事前に管理する、といった目的から事前予約システムや人数管理システムを導入しています。では、「アフターコロナ」と呼ばれる現在では美術館はそれらのシステムをどのように活用していくのが良いのでしょうか?スマートロックを扱っている中の人が考えてみました。
受付業務の現状
コロナ禍以前では、入場チケットを受付の方に見せて入場することが一般的でしたが、コロナ禍以降、入場チケットを当日販売以外に、事前予約制にて販売する集合施設が増えています。
事前予約が完了すると、メールとともにQRコードが送られてきます。事前予約者はそのQRコードをリーダーで読み取ってもらうことで入場し、当日券の購入者はこれまでどおり受付の方に見せて入館する、といった2つの入場方法を併用することが美術館では一般的です。
言い換えれば、受付業務にもコロナ禍以前のチケット確認や案内などに加えて、「QRコードを読み取る」というオペレーションが追加されたはずです。
その仕事って本当に必要?
↑無人運営を実現している「セルフ脱毛サロン ハイジ」の例
ところで、事前予約の際に「QRコードを受付スタッフが読み取る」仕事は本当に必要なのでしょうか?最近ではスマートロックと予約システムを連携し、認証用のQRコードを予約されたら自動発行することで、店舗の受付を無人化する事例も複数あります。
そのため、 利用者がメールで送られてきたQRコードを読み取ってもらい施設の中に入る、という運用は美術館でも適用できるように思えます。
美術館の受付を省人化するメリット・デメリット
接客業や集客型施設に特に言えることですが、業務を何でもシステム化・自動化・省人化すればいい、というものではありません。どのような利点があるのかを見極め、判断することが必要です。それでは機械(システム等)に受付業務を任せることでどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下の3つの観点から考えてみました。
受付業務のシステム化のポイント
- 受付業務にかかるコスト(人件費・システム導入費など)
- お客様へのサービス(業務と接客)
- 施設のセキュリティ(入室管理)
それぞれを人間だけで受付業務を行う場合と、システム導入による効率化・省人化を図った場合で比較してみます。
受付業務にかかるコスト(人件費・システム導入費など)
受付業務のコスト面では、システム導入をしたほうがコストを削減できます。
まずはじめに、受付スタッフの大半は学芸員ではなく、受付業務のために雇ったアルバイトスタッフで構成されています。東京都の最低賃金1,072円で考えたとしても、アルバイト1人当たり約8,600円/日の人件費がかかります。これを30日続けると、1ヶ月あたりにかかる人件費は約260,000円になり、1年間では約312万円にも上ります。
それに比べて、例えば「TOBIRA」という自動ドアやセキュリティゲートなどの電子錠に後付けできるアクセスコントロールシステムで省人化を図ると、本体価格50万円+施工費が初期費用になります。実際には追加で月額の利用料も発生しますが、受付スタッフの人件費を削減したぶん、元は十分に取れます。
お客様へのサービス(業務と接客)
サービス面では、一部を除いて人間だけで受付業務を行う方がメリットは大きいでしょう。たとえば、QRコードに慣れていない方や、オペレーション上想定していない行動をされるお客様に対しても、有人であれば柔軟に接客を行うことができます。
ただし、混雑時には受付の方はQRを読み取ることで手一杯になることも考えられます。その場合はシステム導入で受付業務を省人化してしまった方が、一時的に誘導などの人数を増やす等の対応が取りやすく、より良いサービスが提供できるのではないでしょうか。
これらのことからお客様へのサービスという観点では、混雑時などの場合を除いて人間だけで受け付けする場合の方がメリットが大きいと考えられます。
施設のセキュリティ(入室管理)
コスト面では省人化した場合の方がメリットは大きく、サービス面では特定の場合を除いて人間だけの場合の方がメリットは大きいといえます。では美術館のセキュリティを考えたときはどちらのメリットが大きいのでしょうか。これは難しいところですが、機械で省人化した場合の方がメリットは大きいと考えられます。
セキュリティの役割は警備員や監視カメラが担っているため、受付業務が美術館のセキュリティに関して関与できる部分は決して多くありません。とはいえ、機械で省人化した場合はセキュリティに少しだけ貢献することができます。例えば、スマートロックなどの製品はどのドア(セキュリティゲート)から誰が入ったかを記録できるという機能を持っています。そのため、施設内にいつ誰がいるかを管理することができ、施設のセキュリティ向上が期待できます。
美術館の受付を省人化する3つのステップ
これまで、美術館の受付を省人化した方が良いのかどうかということをご紹介してきましたが、具体的な省人化の方法を解説していきます。受付を省人化するためには以下のような3つのステップが必要になります。
受付を省人化するための3つのステップ
- 展示室への導線上にドア( セキュリティゲート)を設置する
- 予約システムとドア(セキュリティゲート)の連携
- システムをオペレーションに組み込む
展示室への導線上にドア( セキュリティゲート)を設置する
省人化のためのファーストステップは、ドアもしくはセキュリティゲートの設置です。これがない限り機械導入による省人化は不可能に近いものになります。来館したお客様が否応なく通る場所を作ることで初めて人がいなくてもドアやセキュリティゲートが受付業務を担うことができます。
予約システムとドア(セキュリティゲート)の連携
次のステップは予約システムとドア(セキュリティゲート)の連携です。これもドアやセキュリティゲートが受付業務を担うために必須な項目になります。例えば、「TOBIRA」では予約システムと連携して、お客様が事前予約をした際に自動でQRコードをメールとともに送付する機能があり、受付の方がチケットを確認する手間を省くことができます。
業務オペレーションに組み込む
最後のステップは、受付の省人化システムを組み込んだ業務オペレーションに更新することです。省人化の目的は施設によって違ってくると思いますので、一概には言うことはできませんが、目的に合ったオペレーションに改善していくことがポイントです。
もし「システムを業務オペレーションにどういう風に組み込めばいいか悩んでいる」という方がいらっしゃれば、是非導入を検討している会社様に問い合わせてみてください。彼らはその道のプロなので、ベストに近い回答をしてくれるはずです。
【まとめ】受付を省人化してより良いサービスを!
いかがでしたでしょうか。美術館のみならず集客施設は繁忙期の混雑と人件費というのが長年の課題です。 美術館などの集客施設での受付業務を機械によって省人化するか考える一助になれば幸いです。