顔認証によるホテルの非対面チェックインとは?導入事例も紹介
近年、急速に活用シーンが拡大している顏認証サービス。飛躍的な顏認証精度の向上と、コロナウィルスの影響もあり、さまざま場面で採用されるようになっています。完全な「非対面・非接触」が実現する顏認証は、ホテル業界でも新築やリノベーションの際に、最新のチェックインシステムとして採用する施設が増えています。そもそも顏認証とは一体何か、そのメリットと、顔認証を使ったホテルの非対面チェックインの仕組みや事例をご紹介します。
顔認証とは?
顏認証とは、人間が普段相手を判別する手法である「視覚」をシステム化した生体認証方法のひとつです。よくある顔認証の手法としては目や鼻、口など、パーツの特徴点や位置、大きさをもとに照合を行いますが、最近では変化や環境に応じる性能がどんどん進化しています。
たとえば、マスクなどで隠れた顏に対しては、従来の顔全体で判断する方式だと精度が落ちてしまいがちでした。しかし、最新の技術では、隠れていない目元を重点的に照合することで精度を上げるなど、柔軟な対応ができるようになっています。
さらに、懸念材料であった、写真やディスプレイ、3Dマスクなどによる「なりすまし」を高精度に検知する技術が開発されたことで、信頼度も飛躍的に向上しています。
その他の生体認証方法
- 虹彩認証
- 指紋・指静脈認証
- 指紋・掌紋認証
- 声認証・耳音響認証
顏認証の適応領域は広く、出入国などのセキュリティや国単位でのインフラ、企業の入退室管理、パソコンのログオン状態の把握、さらに無人店舗の運営まで、これからますます活用される場が広がっていくことでしょう。
顔認証のメリット
顏認証は、顔を識別するだけではなく、セキュリティの強化になるなど、たくさんのメリットがあります。
顔認証を取り入れるメリット
- 指先さえ触れずに、非体験・非接触対応が可能で感染症対策になる
- 荷物などで手がふさがっていても認証が可能になる
- 照合が素早く簡単なのでスムーズに本人確認や入退室ができる
- 物理的な鍵や認証カードが必要ないので、紛失や盗難などのリスクがない
- 照合時の画像を残せるので、不正抑止効果が高い
- 本人確認のための証明書や書類が不要になる
- 認証のためのスタッフの配置や設備が不要になり、業務が効率化する
このように多くのメリットがある顔認証は、将来的には感染症の水際対策や、介護施設・子供の施設での見守り対策、コンサートなどチケットレスによるスムーズな入場、さらには物理的な鍵や認証カードなどの代わりなど、日常生活レベルでの活用が期待されています。
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顔認証のデメリットとリスク
メリットの多い顔認証ですが、もちろんデメリットやリスクもあります。例えば顔認証は、唯一無二の「顔」自体が鍵やパスワードとなるため、セキュリティのレベルは高く、偽造がしにくい反面、個人情報の観点から拒否反応を示す方もいます。さらに、万が一、データが流出してしまうとプライバシー問題に発展する可能性もあります。
そのため、必ず個人の同意や了解を得てから顔認証システムを利用してもらい、同意がない方の入口は別に設けたり、スタッフが応対するなど、柔軟な対策を立てておくことも必要でしょう。
また認証精度の低いシステムを選ぶと、精度にムラが出て逆に手間がかかったり、誤作動や機能停止などのトラブルが発生しやすくなります。時間やスタッフの手間がかかるだけではなく、修理や代替えシステムのコストが発生することもあるので注意が必要です。そのため、必ず信頼のおけるメーカーの製品を選ぶようにしましょう。
なお、テロ対策など国家レベルで使われているほど顔認証の精度や信頼性は年々高くなっています。リスクをきちんと把握しつつ、社内や個人情報が守られる環境での利用にとどめるなど、利用シーンに合わせて活用することで利便性高く使っていくことができます。
ホテル業界で広がる「顏認証」を使ったチェックイン
ホテル業界でも顔認証を使ったチェックインサービスが始まっています。まずは、ホテルに導入するメリットについてみていきましょう。
顔認証・ホテル特有のメリット
ホテルに顔認証を導入する最大のメリットは、なんといってもフロント業務が効率化することでしょう。業務が軽減されるため、余った人材や労力をサービスに回すことができますし、フロントの人数を減らせるので、人的コストの削減や、人手不足の解消にも貢献します。
顔認証・ホテル特有のメリット
- 混雑時でもゲストのフロント滞留時間が短くなり、チェックイン・アウトがスムーズになる
- 「非対面・非接触」が、感染症対策に敏感なお客様へのアピールになる
- 不正な入室を抑制でき、セキュリティアップになる
- 日本語が話せない海外旅行者の方への対応がスムーズになる
- フロント業務の効率化により、少ないスタッフでの運用が可能になる
また、セルフチェックインシステムと連携することで、フロントの無人化や無人ホテルの運営も可能になります。
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顔認証によるチェックインの流れ
では、実際に顔認証を取り入れる場合、どのような流れになるのか一例をご紹介しましょう。ただし、システムの運用会社やホテルによって順序などは若干変わります。共通して言えるのは当日までに「登録」などの作業をしていただく(顔認証に同意していただく)ことで、スムーズなチェックインが可能になります。
- ゲストがネットでホテルの予約をする
- アプリのダウンロード
- 予約情報の登録
- 顔認証登録
- チェックイン準備の完了
- 宿泊当日のチェックイン
顔認証を導入したホテルの事例
では、顔認証を導入したホテルはどのような運用を行っているのでしょうか。実際に導入し、運用しているホテルをご紹介しましょう。
顔認証を導入したホテルの事例
プリンスホテルが展開する ICTやAIを活用した次世代ホテル「プリンス スマート イン 熱海」では、顔認証によるセルフチェックインを導入しています。
このシステムを運用するためのスマートフォンアプリや顔認証などのデジタル技術はNECが提供しており、宿泊予約からチェックアウトまでをスマートフォンのアプリで完結し、さらにアプリをルームキーとしても使用することが可能です。
東急ホテルズ
「東急ホテルズ」は全国39の施設で顔認証やQRコードでチェックインできる「Webチェックインシステム」を順次導入しています。こちらは東急ホテルの「コンフォートメンバーズ」に入会すると利用が可能になり、宿泊者情報の登録で顔写真を登録しておくと、顔認証でのチェックインが可能になります。
また、予約時にクレジットカードでの事前精算を済ますと、チェックイン時に利用するQRコードが発行され、セルフチェックインがスムーズに行えるようになります。事前精算と顔認証、QRコードの活用で、ホテルスタッフやゲスト同士での接触機会が限りなく少なくなること、チェックイン・チェックアウトにほとんど時間がかからないなどの成果を上げているようです。
sequence SUIDOBASHI
三井不動産系列のホテル「sequence SUIDOBASHI」 は、マルチモニターを設置した屋外のバーラウンジや120インチスクリーンの大画面があるコミュニティースペースなど、都会のなかで仲間とコミュニケーションやライブ感を味わえる「体験型ホテル」です。
NECの「Smooth Check-in」システムを導入することで、顔認証を含むスピーディーなセルフチェックインを実現しています。なお、支払いは現金の取扱がなく、クレジットカードか一部のQR決済のみを扱うキャッシュレス決済を取り入れており、最新のスマートな宿泊体験ができるでしょう。
【まとめ】顏認証によるホテルの非対面チェックイン
いかがでしたでしょうか?今や、顔認証サービスは世界中に広がっており、アフターコロナでインバウンドが急激に戻ることが予想されるホテル事業者にとっては、無視できない存在でもあります。
顔認証を取り入れたホテルは業務の効率化を実現し、新しい時代に即したスマートな運営を実現しています。たどたどしい外国語を話すこともコミュニケーションの一つではありますが、チェックインだけでもスムーズに問題なく済ませることは、ゲストの不安を取り除き、心地よい滞在にもつながります。急速に広まりつつあるホテルの顔認証について、参考にしていただけましたら幸いです。
(おまけ)顔認証やデジタル化が必ずしも正義ではない!シーンや実現したいことに合わせた選び分け、使い分けが大切!
本ブログでは今後普及が進むことが予想される顔認証について取り上げましたが、必ずしもすべてのシーンにおいて顔認証が安全で便利だとは言えません。例えば、中高齢層の利用が多い温泉旅館や大規模なシステム導入が難しいような中小規模のホテルの場合、セルフチェックインを導入するにしても、顔認証ではなくQRコードや予約番号を活用する方がゲストにとっても抵抗感が少なく、利便性も高いと言えるでしょう。
また、客室キーについてもキーレス化による業務効率化や非対面化が目的であればテンキー式のスマートロックが最適です。非対面で鍵の受け渡しができるテンキー式スマートロックの詳細は下記よりお気軽に資料ダウンロードくださいませ!