ホテルや旅館が脱OTAを進めるメリットとデメリット
OTA(Online Travel Agent)を活用して、販路を拡大することで集客を向上させるホテルや旅館が多い一方、一部の事業者の間では「脱OTA」の動きも活性化しています。強力な集客ツールでもあるOTAを利用せずに集客をすることは可能なのでしょうか。脱OTAのメリット・デメリットと、自社サイトでの集客を増やすポイントなども解説しております。
脱OTAのメリットと問題点とは?
OTAとは「Online Travel Agent」の略で、インターネット上で取引・仲介をおこなう旅行会社を指し、実店舗を持たないことが特徴です。端的に言えば「宿泊施設の公式ホームページ以外の外部予約サイト」です。利用者は24時間、簡単に同じような条件の宿泊施設を比較検討でき、検索から予約、保険までインターネットで完結することができます。
代表的なところでは、国内では楽天トラベルやじゃらん、一休ドットコム、海外ではブッキングドットコム、エクスペディアなどがありますが、最近、ホテルや旅館など宿泊業界の間で、手数料などの高さから「脱OTA」、つまり自社サイトからの集客へシフトする動きが活発化しています。
しかし 「本当にOTAを使わないで予約は入るの?」と疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、完全にOTAを利用しないのではなく、うまく使いながら自社サイトからの予約の割合を上げていくことで、どちらのメリットも享受することが可能になります。
この章では、まずOTAのメリット・デメリットを整理したあと、脱OTAのメリットと問題点を解説していきます。また、2章では脱OTAを実践するために必要なポイントを説明しています。最大限効率よく集客する方法がわかりますので、ぜひ最後までお読みください。
OTAのメリット
脱OTAについて説明する前に、まずはOTAのメリットについてまとめてみましょう。いまやほとんどの人が、ホテルや旅館を探す時にはOTAを利用します。それは、次のようなメリットがあるからです。
OTAを利用するメリット【ユーザー側】
- 交通アクセスが良いホテルを簡単に検索できる
- 低価格のホテルを検索しやすい
- 複数のホテルの料金を比較検討できる
- 予約から支払いまでネットで完結できる
- 口コミに関する情報を得ることができる
OTAを利用するメリット【宿泊施設側】
- 認知度が広がる
- 販売経路を増やせる
- 多言語に対応してくれる
- 電話予約などが減り、業務が簡素化する
ユーザーにとってもホテル側にとっても「利便性」の高さは大きなメリットです。ユーザーはたくさんのサイトを検索する必要がありませんし、ホテル側も特別な宣伝や広告を打たなくても、多くの人の目に触れるようになります。
また、OTAによっては「インバウンドに強い」「年齢層が高い人がよく見る」などの特色があるので、既存客以外の層にアピールすることも可能になります。
しかし、このようなメリットがあるにもかかわらず、脱OTAの動きが強いのは、同時にデメリットや問題点もたくさんあるからです。
OTAのデメリット
OTAは、ユーザーにとってはさほどデメリットはありません。しかし、ホテル事業者にとってのデメリットは次のようなものがあります。
OTAを利用するデメリット(注意したい点)
- 手数料が高額
- 低価格競争に陥る
- ホテルの情報や魅力を伝えきれない
- 多数のOTAに掲載するあまり管理や確認が大変になる
これらは脱OTAの動きの直接的な原因となるものです。
それぞれの問題点についてみていきましょう。
手数料が高額
一番大きなデメリットは手数料が高額、という点です。たとえば、2022年の時点でOTAの手数料は次のようになっています。
通常の予約だけで1割の手数料がかかる上、決済利用料やキャンペーンの利用料も引かれるとなると、2割近い手数料が引かれる可能性もあります。
その上、次に紹介する低価格競争に巻き込まれた場合には、利益のあがりにくい価格設定を続けることになります。
低価格競争になりがち
OTAのユーザーは簡単に「比較検討」ができるため、低価格のホテルが有利になります。同じようなランクや条件のホテルがある場合、ユーザーは少しでも安いホテルを選択したいもの。ホテル側は常に他社をリサーチし、他社より低価格で販売し続けなくてはならなくなります。
その対策として、経費削減でサービスやアメニティの質を落とし、結局ユーザーからの口コミが悪くなったり、ホテルとしての質が落ちてしまったりするケースもあります。
ホテルの情報や魅力を十分に伝えきれない
OTAにはそのサイトごとに決まった形式があり、どのようなホテルでも同じような紹介がされ、差別化が図りにくいのです。質のよいサービスやホテルの魅力も、数枚の写真や説明文だけでは伝わらず、「ぱっと見」で判断されてしまうのはデメリットでしょう。
では、これらOTAのデメリットは脱OTA(自社サイトにシフト)することで解決するのでしょうか。次に脱OTAをすることのメリット・デメリットについてみていきましょう。
多数のOTAに掲載するあまり管理や確認が大変になる
OTAを多数利用することによる課題もあります。複数のOTAに掲載する場合、客室の在庫管理にはサイトコントローラーを利用することが鉄則です。サイトコントローラーは、在庫管理の人的なミスを防ぐとともに、業務を効率化してくれる強い味方です。
他方で、すべてが全自動になるわけではなく、OTAごとに掲載内容を確認したり、都度調整するような作業は当然ながら発生します。つまり、掲載数が多くなると、その分作業量も多くなるということです。この点は、サイトコントローラー & PMS & 予約エンジン「Beds24 」様の記事「掲載すべきOTAの数とオススメのOTA」が参考になるので、ぜひご参照ください。
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脱OTAをすることのメリット
実際に脱OTAをすると、次のようなメリットがあります。
「脱OTA」のメリット
- OTAの手数料を支払わなくてよい
- 競合と直接、価格競争しなくてよい
- 自由にホテルの魅力を伝えやすい
それぞれ解説していきましょう。
手数料を支払わなくても良い
手数料を支払わなくてよいので、その分の予算をサービス向上や宿泊費に反映することができます。ホテルのサイト経由で予約をしてくれたゲスト専用の割引券やサービス券、ポイントカードをつくれば、またサイトを通じて予約をしてくれる可能性も高くなります。
価格競争をしなくてもよくなる
同じサイトで比べられることがなくなるので、不毛な価格競争から抜け出すことが可能になります。
ホテルの魅力が伝わりやすい
インターネットの検索からきたユーザーは、ホテルのサイトをじっくりと見る傾向があるので、ホテルの魅力をダイレクトに伝えることができます。たくさんの写真や詳しい説明文まで読んでくれるユーザーが多いので、価格ではなくホテルの魅力で集客することができるのです。
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脱OTAのデメリット・課題
では次に、脱OTAによるデメリットを見ていきましょう。
デメリットや課題をまとめると次のようになります。
「脱OTA」のデメリット・課題
- OTAしか利用しない人の目に留まらなくなる
- 自社サイトの充実が必要となる
- SNSでの発信が必要となる
- マーケティング戦略が肝要となる
それぞれを解説していきます。
OTAしか利用しない人の目にとまらなくなる
一番の問題は、OTAしか利用しない人の目にとまらなくなる、という点です。OTAが高い手数料を取れるのは、それだけの強い集客効果があるからです。
特にインバウンドは、翻訳機能のあるOTAしか利用できません。どんなに凝ったサイトを作っても、OTAを利用している人からは見てもらえないのです。
自社サイトの充実が必須となる
OTAを使わず、インターネットで検索するユーザーの場合でも、検索上位に入っていないホテルは目にとまりません。検索上位になるには、自社サイトの充実が必須ともいえます。
しかし、充実したホームページを作ろうとすると、高額な費用や時間がかかることもあります。また、季節やイベントごとに内容を更新する手間や、コンテンツ内容の充実など、目に見えない作業が必要となるでしょう。
SNSでの発信が必要となる
今や、SNSでの発信も、時にはOTAに負けないくらいの集客ができます。とはいえ経験や知識のないまま発信しても、十分な集客につながらないことが多いです。
InstagramやTwitterにはそれぞれ「バズる」ポイントがあり、それぞれにあった対策が必要になります。時にはインフルエンサーやアフィリエイトの力を借りるため、費用が発生することもあります。
マーケティング戦略が肝要となる
自社サイトで集客を行う場合、しっかりとしたマーケティング戦略が必要となります。OTAの場合、利用者は「地域」「駅名」「価格」「評価の高い順」などから、自分の優先順位に沿って検索することが可能です。しかし、自社サイトのみの場合は、ターゲットに絞った明確な情報発信をしない限り、利用者に見つけてもらうことはできません。
どの層にもまんべんなくアピールすると、対象がぼやけて「一応なんでもあり」の面白みのないホテルとなってしまうからです。
OTAを利用しながら自社サイトの割合をあげることが大切
OTA依存による高い手数料負担から脱却し、安定した予約獲得が期待できる直販を増やすことは、これからのホテルや旅館の経営においてきわめて重要な考え方です。しかしながら、自社サイトだけで集客を行うことは、手間や時間、時には高い費用まで必要となります。では、どうすればいいのでしょうか。
OTAからの依存から脱するには、OTAを利用しつつ自社サイトの充実を図るべきです。今の時点では多くの宿泊施設にとって、「完全な脱OTA」は難しいからです。
OTAを完全に利用しないのではなく、うまく活用しながら自社サイトからの予約の割合を高めることに注力することが大切です。
インバウンドや広い層の新規開拓はOTAに任せて、OTAを利用しない人やリピーターを自社サイトから取り込むという戦略です。それにはまず、自社サイトの充実が必要です。次の章では、自社サイトを充実させるためのポイントをご紹介していきましょう。
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【脱OTA】自社サイトを充実させるポイント
この章では、OTAをうまく活用しながら自社サイトからの割合を増やす方法について解説していきます。OTA以外のユーザーからの予約を増やすには次のことが大切です。
・多くの人の目にとまるようにすること(自社サイトからの予約)
・また利用したいと思ってもらうこと(リピーター、顧客からの予約)
それにはまず、自社サイトを充実させることから始めます。具体的には次のような方法があります。
①自社サイトのコンテンツの充実
②自社サイトから予約した場合の特典の充実
③InstagramやTwitterなどのSNS運用と連携
「脱OTAのデメリット」と重なりますが、逆にいえばこれらのことをすることで、OTAに依存しなくても良くなるということです。詳しく説明しましょう。
自社サイトのコンテンツの充実
脱OTA化は、自社サイトのコンテンツの充実が必要不可欠となります。
ここでいう「コンテンツ」とは「内容、中身」を表し、ユーザーにとって価値のある「情報」です。
たとえば、施設の写真や案内はもちろんのこと、ホテルの歴史やニュース、従業員の紹介などのコンテンツがあれば、ユーザーは親近感を覚えます。
さらに、付近の観光地や名所、交通サービスなどの情報が充実していると、サイトとしての価値が高まり、インターネットの検索順位もあがりやすくなります。従業員などによる簡単なブログなどもあると良いでしょう。
少しずつサイトのコンテンツを増やすのもいいですし、プロに依頼して一気に充実させることも可能です。
自社サイトから予約した場合の特典の充実
自社サイトから予約をした場合の「わかりやすい特典」を充実させるとよいでしょう。OTAと自社サイトからの価格は同じであることや、自社サイトから予約を入れると割引やポイント還元があることなど、特別なサービスが受けられることを積極的にアピールするのです。
たとえば、世界的に有名なヒルトンホテルでは、今から5年以上も前に「ストップクリックアラウンド」というキャンペーンを行い、自社サイトの呼び込みを行いました。
OTAで何度もクリックを繰り返すよりも、自社サイトから予約することで費用も安く、特典も受けられることをアピールし効果を上げています。
これにより、リピーターや固定客の囲い込みが容易になります。
インスタグラムやツイッターなどのSNS運用と連携
現在、女性や若年層のユーザーの多くがインスタグラムで情報収集を行っています。インスタグラムというと「映え」の写真を載せればいいと思われがちですが、人の目に触れるためには、いくつかのコツがあります。
インスタグラムで人の目に止まるために、特に重要なのがハッシュタグ(♯)です。
たとえば、「♯温泉のあるホテル」「♯子供連れ大歓迎のホテル」「♯おしゃれなホテル」など、ターゲットが検索するであろうワードを入れて投稿することで、「この情報は有益である」と認識されます。
これによって上位表示がされるようになったり、ユーザーが積極的に保存したりするようになります。
Twitterなども、バズりやすいちょっと面白い情報などを定期的にアップするようにするとユーザーの目に留まりやすくなります。これらのSNSと自社サイトがうまく連携し、相乗効果をあげることで、自社サイトでの予約を促すことができます。
このように、色々な角度から自社のサイトを盛り上げて、
・多くの人の目にとまるようにすること
・また利用したいと思ってもらうこと
が、OTAからの依存から脱出し、自社予約の割合を増やすことになるのです。
【まとめ】脱OTAはOTAを利用しないことではない!
いかがでしたでしょうか。「脱OTA」は完全にOTAを使わないということではなく、OTAをうまく活用しつつ、自社予約を増やしていくことを考えなくてはいけません。
今やOTAなしでの集客は大変難しくなっています。確かに1割〜2割の手数料は痛手ですが、OTAには強い集客力があり、認知度や販売経路も増えます。また、多言語対応なので、インバウンド対策としても有効です。広い層の新規客やインバウンドはOTAにお任せして、まずは自社サイトの充実から始めましょう。
自社サイトによる予約割合を増やすには?
- 自社サイトのコンテンツの充実
- 自社サイトから予約した場合の特典の充実
- InstagramやTwitterなどのSNS運用
などを積み上げることで、自社サイトからの予約の割合が増えていきます。脱OTAを進めていくうえで、参考にしていただけましたら幸いです。