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公開日2022.09.11

最終更新日2023.08.01

1度は泊まってみたいリノベーションホテル5選

今、旅行者の間で人気を集めている新しい形態の宿泊施設がリノベーションホテルです。今回は、全国各地に数あるリノベーションホテルの中から、特に注目したい施設の事例を5つピックアップして、人気の背景にある施設の魅力に迫ってみたいと思います。

今人気のリノベーションホテルとは

Renovation

リノベーションホテルとは、一般的に、古民家や古い建築物を改築、改装して、ホテルとしてよみがえらせた施設のことを指します。とはいえ、ひと口に古い建築物と言っても、オフィスビルから、学校、倉庫、アパート、美術館など、さまざまな対象があります。ですから、宿泊施設としての特徴や利用者の属性もさまざまです。

そこで今回は、異なったタイプのリノベーションホテルの事例を見ながら、それぞれの施設の特徴やセールスポイント、利用者を惹きつける理由について考察したいと思います。

1度は泊まってみたいリノベーションホテル5選

今回は全国の5つの事例をピックアップしてご紹介します。

篠山城下町ホテル NIPPONIA|江戸時代から続く城下町の古民家をリノベーション(兵庫県)

大阪、神戸から車で約60分。兵庫県丹波篠山市には、山々に囲まれた自然豊かな山間に、江戸時代から続く美しい町並みが残されています。約400年前に徳川家康によってこの地に築かれた篠山城の城下町として栄え、以来今日まで歴史を刻んできました。

町のあちらこちらに歴史的建造物が点在し、風情のある景観を形成するとともに、丹波篠山の歴史・文化を今に伝えています。

そんな丹後篠山の地で、明治前期に建築された元銀行経営者の旧邸宅、江戸末期に建てられた長屋など、建物がもつ趣はそのままに、歴史性を尊重しながらリノベーションを行ない、2015年に誕生したのが、篠山城下町ホテル NIPPONIAです。

同ホテルは、城下町全体をホテルに見立て、「滞在を通して、丹波篠山の歴史・文化を体感する」ことをコンセプトとしています。篠山城址を中心に点在する歴史的建造物10棟をリノベーション。うちフロント・レストラン棟を除いて9棟21室の客室を有する分散型ホテルとなっています。

日本における「分散型ホテル」の代表例ともいえる篠山城下町ホテル NIPPONIA

客室は、土間やかまど、茶室や縁側など、古民家ならではの意匠を残しつつ、ベッドや浴室、水回り、冷暖房などは現代的な設備を導入して滞在の快適性を確保しています。インテリアのデザインにも細かい配慮が行き届いており、マガジンハウス発行の暮らしにまつわるデザイン情報誌CASA Brutusが選ぶ日本の宿ベスト50にも選ばれました。

また、施設の方針として、「日本家屋の風情と非日常感をお楽しみいただくため、TVや時計、明々とした照明をご用意しておりません」とのことをあらかじめ明記しています。この点については、利用者の口コミなどを見ても「ゆっくりした時間を過ごせて良かった」、「非日常を味わうにはもってこい」などポジティブに受け止められているようです。

それぞれにストーリーを持つユニークな空間で気軽に非日常が味わえる客室

一方、レストランでは、古民家を改築した落ち着きのある空間の中で、四季折々の丹波篠山の地元食材を取り入れたフレンチを提供。宿泊客に留まらず、多くの利用者から高く評価されています。

ホテルの名称ともなっているNIPPONIAは、各地に点在して残されている古民家を、その歴史性を尊重しながら客室や飲食店、または店舗としてリノベーションを行い、その土地の文化や歴史を実感できる複合宿泊施設として再生していくプロジェクト全般の呼称ともなっており、プロジェクトごとにその地域により適した事業体を形成して、全国各地で取り組みを進めています。

ここ丹後篠山でも、関係自治体、金融機関、民間企業、地元新聞社、地元住民などが有機的に連携し合うことで、プロジェクトが実現しました。

HOTEL K5|築97年の銀行がおしゃれなシティホテルに変身(東京都)

ここ1~2年、東京にいくつもの新しいホテルが誕生しました。そんな中、特に建築ファンやホテルファンの間で評判となっているのが、2020年、中央区兜町の東京証券取引所裏通りにオープンしたHOTEL K5です。このホテル、実は1923(大正12)年に銀行として建築されたビルがリノベーションされた施設なのです。

このビルは、新一万円札の顔となることで注目が集まっている実業家の渋澤栄一氏が創設した第一国立銀行本店の別館として建設されました。当時銀行建築の第一人者であった西村好時氏の設計によるまさに歴史的建造物の名にふさわしい建築です。リノベーションにあたっては、スウェーデン、ストックホルムを拠点とする建築家デザインユニット「CLAESSON KOIVISTO RUNE(通称CKR)」が空間デザインを担当しました。

現在、地上4階、地下1階からなるビルは、2階から4階が20の客室を有するホテル「HOTEL K5」になっており、1階にはレストラン「CAVEMAN」、カフェ「Switch Coffee」、バー「青淵(あお)」、地下1階はビアホール「B」が配置されています。各施設はホテルに付属する一部分と位置付けられるのではなく、それぞれのコンセプトに基づく独立した個性的な空間になっていて、同社WEBサイトにある通り、小規模(マイクロ)な複合施設を形成しています。

ホテル利用者の口コミを見てみると「随所にこだわりが感じられる」、「とにかくすべてが洗練されていておしゃれ」、「モダンで無国籍な雰囲気で、東京らしさがありつつも、海外リゾートのような気分を味わえた」など、特に施設のファッション性、デザイン性に極めて高い評価が集まっています。旅行者だけでなく東京在住の方の滞在利用も散見され、ここでも非日常を望む最近の消費者の志向性が伺えます。

「K5」の名称は、改修前のビルの名称、兜町第5平和ビルに由来しています。そこには、かつて証券街として活況を呈していたものの、現在では株取引のオンライン化などの影響で賑わいを失ってしまった日本橋兜町に、再び人の流れを取り戻したい、という願いが込められているといいます。この「K5」、地域の再活性化プロジェクトとしても重要な意義を担っています。

ONOMICHI U2|港町のサイクリストフレンドリーなホテルは元倉庫(広島県)

瀬戸内しまなみ海道は、広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ全長約60kmの自動車専用道路です。自転車・歩行者専用の道路も併設されていて、眼下に瀬戸内の島々を眺めながらサイクリングを楽しめることから国内外の自転車愛好家の間で人気を博し、「サイクリストの聖地」とも呼ばれています。そのしまなみ海道の本州側の起点である尾道市に倉庫をリノベーションしたサイクリストフレンドリーな施設ONOMICHI U2がオープンしたのは2014年でした。

倉庫は第2次大戦中に建てられた海運倉庫「県営上屋(うわや)2号」です。リノベーションを経て、現在では、ホテルを始め、レストラン、バー、カフェ、ベーカリー、雑貨店、サイクルショップからなる複合施設になっています。コンセプトの中心にあるのはサイクリスト。施設のメインであるホテル「HOTEL CYCLE」にはスロープやエレベーター、自転車用スタンドが各所に設置され、また、客室に愛車を持ち込むこともできます。

その他、パブリックスペースには、自転車のメンテナンスができるリペアスペースがあり、自宅から発送した自転車の受取・保管、自宅への自転車発送も受け付けていて、サイクリストにはいたれりつくせりの体制が整えられています。施設内のサイクルショップでは、宿泊者限定でレンタルサイクルのサービスも行っています。

リノベーションにあたっては、広島県出身の建築家、谷尻誠氏が設計を担当。高い天井高、コンクリート打ちっぱなしの支柱など、倉庫ならではの構造上の特徴を活かしながら、施設全体として統一感のある洗練されたデザインが施されており、建築ファンの間でも話題となりました。

口コミを見ると、サイクリングを目的とした利用者から高い評価が集まっているのはもちろんですが、自転車を利用しない方も多く宿泊されていて、おしゃれな空間デザインや食事のクオリティの高さなども評価のポイントになっていることがわかります。

また、施設を運営するディスカバーリンクせとうちは、地元の特産品である尾道デニムのブランディングを始めとして、幅広く地域の活性化に取り組んでいます。ONOMICHI U2でも、施設内各所で、地元の生産者、アーティスト、子供たちとのコラボによる、展示やワークショップなどが随時開催されており、地域に密着した活動の拠点ともなっています。

tefu yoyogi uehara|住む。働く。泊まる。リノベーションから生まれた複合施設(東京都)

東京の街中の一見ありふれたオフィスビルも、発想の力によって時代が求める新しい空間に変身することができます。小田急電鉄が所有する代々木上原駅徒歩5分、築35年、地上4階建の物件は、リノベーションを経て、タイムシェア型レジデンス、レンタルスタジオ、ホテルからなる小さな複合施設に生まれ変わりました。それがtefu yoyogi ueharaです。

tefu yoyogi ueharaは、全4階のうち2~4階で展開する「タイムシェア型レジデンス」が最大の特徴です。従来型のオフィスから発想を転換し、「住みながら働ける、時には貸し出せる」をコンセプトに、タイムシェアの発想と空間的工夫、運営の仕組みにより実現した新たなタイプの住居です。

住戸内での事務作業はもちろん、ゲストを招いた打ち合わせやオンライン会議などの利用にも配慮した間取りや機能を設け、家の居心地の良さと働く場所としての機能性を兼ね備えた家具を配置するなど、「住みながら働く=自宅におけるリモートワーク」という利用シーンを重視した工夫が施されています。

さまざまなワークスタイルを可能とするコモンエリア

また、入居者の不在時はもちろん、滞在中であっても、民泊として貸し出すことを想定して利用シーンに応じた空間のセパレートが可能な企画・設計となっています。ワークスペースとして利用しない週末や連休には民泊プラットフォームであるAirbnb(エアビー)に宿泊施設として掲載、一般のゲストの方に貸し出すこのできる仕組みになっています。収益は入居者と運営会社でシェアするというルールだそうです。

施設の設定と運営を担当するUDS株式会社によれば、このような斬新な発想の背景には、2拠点生活など、一つの場所に縛られないライフスタイルへの志向の高まりや、リモートワークの浸透などのトレンド変化、自宅や事務所などの空き時間をレンタルスペースとして貸し出すタイムシェアニーズの高まりなどがあるとしています。

tefu yoyogi ueharaは、このタイムシェア型レジデンスを中心に、1階にはイベントやポップアップストア、ギャラリーなどに利用できるレンタルスタジオと、無人チェックインに対応したスマートホテル(1室)を備えています。運営側では、こうした機能を複合させることで、さまざまな利用シーンに対応し、本施設の入居者のほか、来訪者が集う、地域コミュニティーとして価値を分かち合い共有する場を提供したい、としています。

このように、tefu yoyogi ueharaでは、平日は住居兼ワークスペースとしての利用、週末は一般の方の宿泊、また1階のスタジオやスマートホテルの貸し出しなど、空間の利用形態がかなり複雑なものとなっており、特にセキュリティの確保が重要な課題でした。そこへ、弊社の提供するスマートロック RemoteLOCK を導入いただき、施設の安全な運営にお役立ていただいています

TWAホテル|なんと国際空港のターミナルが丸ごとホテルに!(米国・ニューヨーク)

(1962年に完成した国際線ターミナル、未来的なフォルムは歴史的名建築と評された)

最後に、番外編として、アメリカの事例をご紹介したいと思います。なんと、国際空港のターミナルが丸ごとホテルに変身したという事例です。場所は、今も世界有数の国際線利用者数を誇るニューヨークのJ.F.ケネディ空港国際線の敷地内、2001年に閉鎖されたTWAの国際線ターミナルがホテルとしてよみがえりました。

TWA(トランスワールド航空)は、1920年に設立されたアメリカの航空会社ですが、2001年にアメリカン航空に吸収合併される形で消滅、これを機にJFケネディ空港にあった同社専用の国際線ターミナルも閉鎖となりました。このターミナルは、フィンランド人の建築家、エーロ・サーリネンの設計によるもので、彼の代表作ともいわれ、ニューヨーク市の歴史建造物、アメリカ合衆国国家歴史登録財にも指定されています。

2001年に閉鎖して以降、さまざまな紆余曲折を経て、ホテルとして改装することが決定、一部区域の新築を含むリノベーションが施され、2019年5月、ホテルとしてオープンするに至りました。505室の客室、6軒のレストラン、8軒のバー、3700㎡の会議スペース、930㎡の展望デッキが備えられています。

TWAのコーポレートカラー、赤と白を基調にデザインされた内装は、モダンでありながら、60年代のレトロっぽさを感じさせます。そして、国際線ターミナルならではの構造を活かしたアイデアが満載。同ホテルのWEBサイトを閲覧しただけでも、次のような面白い仕掛けを見つけることができます。

TWA HOTELのここがユニーク?

  • ホテルフロントがまるで空港のTWAチェックインカウンター(セルフチェックイン)
  • 部屋から滑走路を行き交う飛行機をゆっくり鑑賞(窓には防音ガラス)
  • TWAロゴ入りポーチに入ったアメニティは国際線で配られる機内アメニティ
  • かつての空港ロビーをそのまま利用したロビーやラウンジ
  • ホテルスタッフのユニフォームは1960年代のTWAクルーのユニフォーム
  • 引退した飛行機を使用したカクテルラウンジでは席も飛行機の座席そのまま
… などなど、まだまだ書ききれません。

かつての空港ロビーを利用したサンクンラウンジ

この他にも、ホテル内にはTWAの歴史を紐解く展示物の数々があったり、屋上には滑走路を望むインフィニティプールがあったりと、一旅行ファンとしても興味の尽きないホテルです。同時に、国内ではお目にかかれないようなアイデアの斬新さも感じます。ここに発想のヒントが隠れてはいないでしょうか?

【まとめ】リノベーションホテルにはアイデアの力が溢れている

以上、5つのリノベーションホテルの事例を見てまいりました。地方の古民家、金融街の銀行建築、海辺の海運倉庫、街中のオフィスビル、空港のターミナル。リノベーションの対象はさまざまですが、そこに共通しているのは、対象となる建築物の持つ歴史的、文化的、建築的な意味を活かしながら、そこにアイデアやデザインの力を吹き込み、新しい価値を生み出そうとする前向きな精神ではないでしょうか?

それに加えて、地域や建築物を取り巻く多くのステークホルダーとWin-Winの関係を築き、サステナブルなビジネスを成立させている点も見逃せません。今回の記事を、読者の皆さまの今後のビジネスの参考にしていただくことができれば、大変幸いに思います。

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