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公開日2024.01.15

【セミナーレポート】施設運営のプロが解説~最新事例から学ぶ 空き家のスマートな利活用

全国に1,000万戸近く存在するといわれている空き家。現在その対策は大きな社会課題のひとつとなっています。
今回は、去る12月12日、株式会社 GLOCALさんと弊社株式会社構造計画研究所が共同で開催したオンラインセミナー 「施設運営のプロが解説~最新事例から学ぶ 空き家のスマートな利活用」の模様についてレポートいたします!

空き家の利活用の現状と同社の取り組みについて(株式会社GLOCAL)

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全国に存在する空き家の数は、2023年時点ですでに1,000万戸に近づいており、今後毎年200万戸ずつ増加し、10年後の2033年には2,000万戸に達するともいわれています。この空き家をどうするかという、いわゆる「空き家問題」は、全国の自治体、民間事業者、NPO等が現在直面している喫緊の課題です。

そこで今回のセミナーでは、ホームシェアリング事業やICTを活用した宿泊事業を通じて地域の活性化事業を全国で展開する株式会社GLOCAL代表取締役 加藤 学氏をゲストにお迎えし、「空き家の宿泊施設としての利活用」をテーマに、詳しい解説と事例紹介を行なっていただきました。

会社概要及び事業紹介

株式会社GLOCALは2008年に創業。代表取締役の加藤氏は、もともとボードセーリング(ウインドサーフィン)の競技者でした。競技生活を続ける中で、世界各地で空き家を借りるなどしながらチームメンバーの拠点となる宿泊施設を確保していました。この経験が日本でのホームシェアリングの必要性と重要性を強く意識するきっかけになり、2018年から本格的に空き家の利活用の事業に取り組んでこられたそうです。

特にここ数年、さまざまな試行錯誤を繰り返し、事業ノウハウを積み重ねていく中で、地域の課題解決につながるような成果が表れてきたといいます。
そこで今回は、空き家をどのように利活用していくかという問題と、自治体や地域の方々とどう連携して事業を行なっているか、といった点についてお話しいただきました!

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株式会社GLOCALの事業コンセプトは、『ホテルなど既存の施設と競合するのではなく、地域を回遊するためのベースキャンプとして中長期滞在が可能な、そして、多目的で利用できるような拠点づくりを目指す』ということです。北は北海道から、南は沖縄‣宮古島まで、全国各地でさまざまな施設運営に取り組んでおり、現在は、オーナーの異なる約200件の施設と契約、DXを賢く活用しながら運営業務に携わっているとのことでした。
その中で、弊社の提供するIoTシステムRemoteLOCKも積極的にお役立ていただいています。

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空き家の利活用をめぐる社会動向

全国各地で人口が減少する一方、空き家や遊休施設が増えています。これをもっと有効活用できないかということで、国も自治体もさまざまな検討を行なっています。その中で、現在、国の施策として出てきているのが、都市圏に集中せずにデジタルを活かしてどんどん地方に分散していこうという、「デジタル田園都市国家構想」であり、地方分散化の動きに対して、国のレベルでも支援を行なっていこうという姿勢が表れてきているそうです。

また加藤氏は、リモートワークなどに代表されるコロナ禍を通じたパラダイムシフトによって、人々の動きに変化が生じている点に注目します。地域における人的交流について見てみると、これまではホテルや旅館といった宿泊施設を起点とした人々の活動が地域の賑わいを創出してきたという状況がありました。これからは宿泊施設だけでなく、コワーキング施設、ホームオフィス、ゲストハウス、遊休施設といったさまざまな拠点に人々が集まってくることが地域のクリエイティブな価値を創出し、そのような動きと連携した事業活動を展開していきたいとの展望を示しました。

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そのような中、加藤氏は、これからは空き家の経済的な価値を上げていくということが非常に重要になってくると述べ、空き家を売却したり、賃貸物件として活用したりといった選択肢もある中、自分でも使いながら新しい利活用で運営していくという手法に注目していると語ります。そして、その背景として、今はインターネットやSNSを通じて自分の所有する物件の情報をシェアリングすることが可能であり、物件に対する世の中のさまざまなニーズを拾い上げることができるので、新しい価値を見出すことができるようになってきたという点を挙げました。

空き家が注目される理由

次に、加藤氏は空き家を具体的に宿泊施設(ゲストハウス)として活用する場合の差別化の4つポイントを空き家を活用した施設が注目を集める社会背景に絡めて解説しました。

1つ目の要因はゲストハウスとしての優位性です。
空き家を宿泊施設(ゲストハウス)と転用する場合以下のような優位性が挙げられます。

ゲストハウスが抱える優位性

  • 調理・自炊ができる環境(キッチン)
  • 大きめの冷蔵庫
  • 歓談できるリビング・ダイニング
  • 駐車場・冷蔵庫
  • 大人数で宿泊することができる

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2つ目の要素として、加藤氏が挙げたのがコンシャストラベラー(意識の高い旅人)の増加です。
たとえば、環境意識の高い人々であれば環境に良くないことが行なわれている施設には決して宿泊しないでしょう。サステナビリティに関心のある人々であれば使い捨てのアメニティがない施設をあえて選択するということが考えられるということです。観光地化されてない地方に関心があるという旅行者の数も増加傾向にあるそうです。

3つ目の要素は、マイクロツーリズムや体験重視型の旅行の増加です。
観光地を訪れることよりも、現地の文化やアクティビティを体験することを重視する傾向が強まっており、その土地の生活や文化に触れたり、新しい発見を求めたり、といった人々が増えているそうです。そのような目的を持った人々は滞在期間も長くなる傾向にあり、また観光地化されていない土地であれば、ホテルなどを見つけることも困難であったりするため、その結果として空き家が選択されるという現象が起きてきているといいます。
中には、空き家を自分で購入して自ら宿泊施設の運営を始めるという方もいらっしゃるそうです。

最後に加藤氏が挙げたのが、リモートワークの普及によるワーケーション意向の強まりです。今はインターネット環境さえあれば、どこにいても仕事ができる時代です。街中で仕事をしなくても、温泉地やリゾート地で、その場所での滞在を楽しみながら仕事もするというライフスタイルが拡がってきました。楽しみ方や仕事の仕方は人それぞれですから、使い方において自由度の高い空き家との親和性は高いと考えられます。

【まとめ】空き家が注目される理由

  1. 転用することでの優位性
  2. コンシャストラベラーの増加
  3. マイクロツーリズムや体験重視型の旅行の増加
  4. ワーケーション意向の強まり

空き家の利活用が地域社会にもたらす効果

空き家の利活用を地域で展開する場合、ビジネス型の取組とコミュニティ型の取組という二つの側面があると加藤氏は解説します。
ビジネスの側面では、雇用の創出、所得の向上、地域経済への波及といった経済的な効果が、コミュニティの側面では地域の絆の向上、住民の生きがいの向上、地域の良さの再発見といった社会的な効果が想定され、実際にそのような現象が生じているそうです。

そして、地域産業の活性化や定住・移住の誘発促進につながっていくということが、実際の事例の中で起こってきており、そのような実績から、現在同社はさまざまな自治体からの呼びかけで空き家対策に取り組むに至っているという解説でした。

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事例紹介

最後は株式会社GLOCALが実際に取り組んでおられる空き家の利活用の事例紹介です。各地の自治体との連携による事例を紹介いただきました。

北海道美幌町

2018年に美幌町からのお声がけがあってスタートした事業です。空き家を地域外からの来訪者が使うスペースとしてリフォームしたオーナーに町からの補助金が出る仕組みを利用した事業で、リフォームした後の運営をGLOCALが担当しました。事業がスタートすると、地元の商工会、観光協会、銀行、農協などが参画して美幌町観光街づくり協議会が発足、GLOCALと連携する形で事業は進みました。

加藤氏によれば、同社の再委託先となっている地元のサテライトパートナーの存在が大きかったということで、最初は宿の食事を届けてもらうお弁当屋さんだったところが、時間を経るにつれてノウハウを蓄積、今ではチェックイン、清掃、ごみの回収と業務の幅が拡大しているそうです。

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また、導入いただいている弊社のRemoteLOCKがPMS(インターネットを活用した施設管理システム)とつながって、施設利用者に予約した期間だけ有効な暗証番号を自動で発行する機能は、同社が少人数で多数の施設を運営していく上では必須である、というコメントもいただきました。

内閣府デジタル田園都市国家構想交付金などを活用した空き家利活用プロジェクト

続いて加藤氏からは、内閣府のデジタル田園都市国家構想交付金を活用した自治体との取り組みについてご紹介いただきました。空き家の利活用を軸として地域の観光・文化資源の活性化を目指す事業で、本年4月から新潟県佐渡市と静岡県南伊豆町での取り組みがスタートしています

佐渡市では、内閣府と佐渡市からの交付金を活用して、空き家活用に関する地域住民を対象としたセミナーを開催、また同時に、GLOCALが直営で空き家を宿泊施設として運営(5軒)することで、具体的な事例を作っていくという取り組みを行なっています。事業推進にあたっては、佐渡市の港湾地区にある遊休施設をコワーキング施設として再生し、その運営を行なっているJR東日本企画新潟支社と連携、チェックインの窓口業務やシステムの共有化などといった面での協業が進められています。

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南伊豆町でも同様の取り組みがスタートしており、まさにに現在、どうやって空き家の利活用を行なっていくかというテーマでのセミナーを開催しているとのお話しでした。

この他、広島県東広島市、岐阜県養老町などでも、各種の交付金を活用して空き家や遊休施設を中長期滞在型施設やテレワーク施設として再生、利活用するプロジェクトが進んでいるそうです。

その他の空き家や遊休施設利活用事例

以上のような自治体との取り組みの事例に加えて、加藤氏からは、個人所有の空き家や古民家の利活用の事例についてもご紹介いただきました。

神奈川県逗子市にある加藤氏ご自身のご自宅をゲストハウスとして活用しておられる事例では、ご自身の私物が保管されている部屋はオーナーズルームとしてあらかじめゲストが使えない空間として設定、賃貸物件ではこのような方法は許されないことから、シェアリング物件ならではのメリットとして紹介いただきました。これは、地方に行くと仏壇があるために賃貸できない、というケースが多くみられるそうですが、そのような空間もオーナーズルームであるという形にすれば無理なく活用できるという事例につながっているそうです。

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また、加藤氏にはご自身の事例における収支状況も公開いただきました。ゲストハウスの開業にあたって、旅館業法上の許認可に関する費用、防災設備、什器備品や家具、自社に対するサポート費など、一定程度のまとまった初期費用は必要となるものの、初年度から収益化することができており、次年度以降はより収益率の高い運用が可能となっていることを、具体的に理解することができました。

この他、空き家となっていたお寺の離れを寺泊が体験できる宿泊施設として活用した事例、囲炉裏のある古民家の活用事例、鎌倉にあるビルの空き部屋の活用事例など、盛りだくさんな事例を、あわせてご紹介いただきました。

最後に加藤氏は、空き家の利活用において、今では空き家の価値を上げることが地域の価値を上げることにつながっており、これを観光やビジネスで積極的に利用してもらいたいとし、運用面ではインターネットとIoTの活用が非常に重要であるとして、前半のパートを締めくくりました。

RemoteLOCKを使った空き家のスマートな利活用(株式会社構造計画研究所)

後半の登壇者は、弊社、構造計画研究所 RemoteLOCKセールスチーム 川村 晃一郎です。簡単な自己紹介に続けてRemoteLOCKの概要説明、そして、株式会社GLOCALとの取り組み事例の紹介しました。

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RemoteLOCKの概要

RemoteLOCKとは何か?川村によれば、RemoteLOCKは基本的に暗証番号で開ける電子錠のことを指します。そして、Wi-Fiを通じてインターネットにつながることで、インターネット上で暗証番号の変更、追加、削除が可能であるという点が大きな特長となっています。

RemoteLOCKにはいくつかのタイプがあって、施設の取り付け条件などによって選択できるようになっていますが、大きくは、5i、7i、8jの3つの機種、および8jの兄弟機種8j-Q、8j-Fからなっています。共通していえることは暗証番号で開けるということと、その暗証番号をインターネットのクラウド上で作成したり削除したりすることができるということなので、遠隔地でのカギの受け渡しも暗証番号を伝えるだけで、非常に簡単です。

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RemoteLOCKにかかる費用としては、初期費用(本体費用と取り付け費用)と月額費用(システム管理費用)があり、月額費用は一般的なビジネスス・タンダードプランで1台2,000円/月(税別)となっています。

GLOCALの導入事例

2-2. GLOCALの導入事例
続いてはRemoteLOCKの導入事例紹介です。今回は、特にGLOCALとの取り組みに絞って。加藤氏からもコメントをいただきながらの進行となりました

東京某大学京都研修施設

最初の事例は、加藤氏が招聘教授を務める仏教系大学の京都研修施設で、建物のオーナーが最上階に居住している物件です。学生や教職員が施設の利用を希望すれば、大学の総務課に設置されたPMSのシステムが建物に設置されたRemoteLOCKと連携して自動的に暗証番号を発行できるようになっています。利用にあたって、現在は大学の事務方が調整を行なっているそうですが、4月からは利用希望者自身が操作を行なって、即座に暗証番号を取得できるようになる予定であるとのことでした。

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富山県氷見市ホテル物件

次に、ホテルオーナーがリノベーションを機に経営方針を転換、運営をGLOCALに委託して、大胆な省人化に成功した事例です。RemoteLOCKを導入することで、カギの受け渡しに関する手間を大幅に簡略化し、運営に関わる人手を極限まで減らすことが可能となりました。結果として、収支も改善することができたそうです。

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この事例は、最初にオーナーからRemoteLOCKを導入したいという引き合いがあって、その際に施設運営をどうしようか悩んでおられたオーナーに、RemoteLOCK側からGLOCALを紹介させていただいたという経緯があるそうです。ハード面を提供するRemoteLOCKと、施設運営というソフト面のエキスパートであるGLOCALが、それぞれの強みを活かしてうまく連携した事例だと思います。

神奈川県逗子市のコワーキング施設「ON/OFFice ZUSHI」

三つ目の事例は、ビルのオーナーである戸田建設から運営代行の委託を受け、GLOCALがコワーキング施設として管理・運営を行なっている逗子海岸近くの物件です。GLOCALでは、「インスタベース」や「いいアプリ」といった貸しスペースのプラットフォームをフルに活用して集客を行ない、収益化をはかっています。

GLOCALが管理する施設の入口にはRemoteLOCK5iが設置されています。RemoteLOCKは上記の各プラットフォームと連携していますので、事前予約やドロップインなど利用形態に関わらず、利用者はスムーズに暗証番号を受け取ることができる仕組みとなっています。

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その他

この他にも、GLOCALでは全国各地で古民家やさまざまなリノベーション物件の運営を手掛けており、それぞれの物件にRemoteLOCKを導入、無人化や省人化を実現しています。現在GLOCALでは、リノベーションの構想策定の段階からオペレーションを想定してデザインに落とし込む「デザイン・ビルド・オペレーション」という概念に基づいた提案や相談を積極的に行っているとのことでした。

Q&Aコーナー/参加者からの質問にリアルタイムに回答

最後は参加者とのQ&Aコーナーです。今回もオンラインで数多くの質問が寄せられました。ここでは、その中から4件ピックアップしてご紹介いたします。

Q:リニューアルした後の集客方法はどのようにしていますか?マーケティング、ブランディングはどうしているのかを教えてください。⇒株式会社GLOCAL 加藤氏への質問
:現在ではOTAなど集客に利用できるいろいろなサイトができています。また、自社サイトを立ち上げて自社予約を上げていくこともできます。時間貸し、ウィークリー、マンスリーに特化したサイトもあります。体験できることから遡って予約に結びつける方法もあります。これらの中から最適な複数のものを使い、それらをまとめて一つの管理画面で管理していくことが重要です。そのようなサイトはネット上にたくさんありますので、ネットに網を張る、仕掛けを張る、といったことを徹底的にやることが第一だと思います。
Q:宿泊施設として貸し出す上で、想定外のトラブルの経験はありますか?その解決方法は?
⇒株式会社GLOCAL 加藤氏への質問
A:これまでの経験によるノウハウの蓄積があって、大きく旅前、旅中、旅後、と分けて考え、そこで起こりそうなトラブルをあらかじめ予測して、トラブルが起こらないように前もって手を打っておくことを心がけています。例えば、施設に来てみたら写真と全然違う、というありがちなクレームがありますが、われわれは予約の時点から悪いところをしっかり伝えておくことが大事と考え、それを実践するようにしています。
Q:都市部とそうでないところでの空き家化の進み具合に傾向の違いはありますか?(自治体関係者からの質問)
⇒株式会社GLOCAL 加藤氏への質問
A:私たちの取り組みは都市部を分散化させていくことにつながっていると思いますが、大事なのは交通です。海外などと比べると、日本は離れた地域でも1日に何本かはバスが通っているなど、総じて便利にできています。遠いからとあきらめられている方が多いですが、無理して遠いところから人を呼ぼうとせず、近隣の都市部から人を呼ぶという発想が大事だと思います。
Q:RemoteLOCKは停電時や災害時でも使えるのでしょうか?⇒ 株式会社構造計画研究所 川村への質問
A:RemoteLOCKは基本的に電池で駆動していますので、停電になっても電池がちゃんと入っていれば動かすことはできます。またクラウドにつながっていて、電池残量は常時管理画面から把握できますので、電池切れのリスクは限りなく低くできます。また、たとえ万が一故障した場合にも、最後は物理鍵で開けることができる点も強みです。

以上、いかがでしたでしょうか?今回は株式会社GLOCAL 代表取締役 加藤 学氏をお迎えし、全国の空き家の利活用に関する現状を知るとともに、全国各地のさまざまな事例を見てまいりました。いずれの事例も、その土地の自治体や住民の方々の「地元を何とかしたい!」という想いと、施設運営のプロならではのアイデアの力が結びついて、見事な成果を生み出しているという、大変有意義な取り組みであると感じました。

構造計画研究所では、今後とも、さまざまなテーマでのオンラインセミナーの開催を予定しております。引き続きご注目いただければ幸いです。

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