全国旅行支援でチェックインが大混雑?フロント業務の課題を考える
令和4年10月から実施されている「全国旅行支援」。旅行需要を大きく引き上げるとして、宿泊業界にとっても歓迎するべき政策ですが、チェックインが大渋滞するなどの問題も起きています。実際に現場で起きている問題や、突然の政府の方針に対応するためにできることを解説します。
全国旅行支援とは?
令和4年10月から政府によって「全国旅行支援」が実施されています。
前回の「Go To トラベル」のように、宿泊施設や観光地にとって高い経済効果が期待されている一方で、主体が政府から都道府県になったことで、さまざまな問題点も指摘されています。
この章では、そもそも全国旅行支援とはなにか、具体的に解説していきます。
全国旅行支援とは観光需要喚起策
「全国旅行支援」とは、政府が実施する、全国46都道府県を対象とした観光復興事業です。政府主体で実施された「Go To トラベル」とは違い、都道府県が主体となって実施されます。そのため、内容については自治体によって対応が異なります。
大和総研では「旅行需要を大きく押し上げる効果が期待できる」として、波及効果を含め約8300億円の経済効果が見込めると試算しています(出典:産経新聞THE SANKEI NEWSより)。
全国旅行支援の具体的な内容
全国旅行支援の内容としては、旅行代金の40%相当が割引され、上限は交通費込みのパック旅行で8,000円、宿泊のみまたは日帰り旅行で5,000円となっています。さらに買い物や飲食に利用できる地域クーポンが平日3,000円分、休日1,000円分が配布されます。
これにより、1人1日最大11,000円もお得に旅行をすることが可能になります。
ただし、利用するにはさまざまな条件や用意するべき書類などがあり、都道府県によって異なるケースもあるので、予約の時点で確認することが必要です。
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全国旅行支援の問題点
上の章でご紹介したように、全国旅行支援を利用すると、大変お得に旅行を楽しむことができます。しかし、実際に全国旅行支援が実施されると、さまざまな問題が指摘されるようになりました。
問題点は大きく分けて次の3つがあります。
全国旅行支援の3つの問題
- 予約が複雑でわかりにくい
- チェックイン時に大渋滞が起きる
- チェックイン機が対応していない
それぞれの問題について解説していきましょう。
予約が複雑でわかりにくい
利用者側の意見として、今回の全国旅行支援は「予約が複雑でわかりにくい」という声が多く上がっています。
前回の「Go To トラベル」では、政府が主体となっていたため、支援への対応が一律的でした。しかし、今回の支援は都道府県が主体であるため、ルールが自治体によって異なります。そのため予約時に、宿泊先の自治体のページでルールを確認しないと、支援を受けることが出来ない可能性もあります。
さらに、全国旅行支援を利用するためには
・「ワクチン接種歴(原則3回)」または「PCR検査結果証明書(3日以内)」
という条件があり、誰でも気軽に申し込みができるわけではありません。
また、支援開始から売り切れが相次ぎ、都道府県によっては早々に支援が終了するなど、「利用したくても利用できない」状況が続いています。旅行サイトによっても対応が異なるため確認事項が多く、複雑でわかりにくいことが問題となっています。
チェックイン時に大渋滞が起きる
全国旅行支援が実施されたことで、多くの施設でチェックイン時の大渋滞が起きています。というのも全国旅行支援を利用すると、「本人確認書類」と「ワクチン接種歴、または証明書」の確認、書類の記入をおこなわなければならないためです。
全国旅行支援を利用したチェックインの際に必要な手続き
- 「本人書類」の確認
- 「ワクチン接種歴、またはPCR証明書」の確認
- 全国旅行支援の割引手続き
- 地域共通クーポンの配布
- 書類への記入
通常のチェックインに加えて利用者全員の手続きを行う必要があるため、かなりの時間がかかります。ホテルによっては、通常宿泊のゲストと、全国旅行支援を利用するゲストの受付カウンターを別にするなど対策を取っている施設もありますが、根本的な混雑回避には至らないようです。
特にチェックインが集中する15時〜16時は混雑しやすく、チェックインの長い順番待ちが発生しています。
チェックイン機が対応していない
最近急速に導入が進んでいる「チェックイン機」が、旅行クーポンなどに対応していないことも問題です。チェックイン機とは、セルフチェクイン(ゲストが自分でチェックインできる)システムや機器のことで、フロント業務の自動化や省人化を実現するものです。
しかし、全国旅行支援を利用した際の受付業務のほとんどは、チェックイン機が対応していません。チェクイン機では、本人確認やパスポートチェックが可能なものもありますが、PCR検査の確認や、クーポンの配布、書類の記入など、今までになかった業務やアナログ作業については人の手が必要です。
そのため、チェックイン機によってフロントスタッフを省人化している施設や無人ホテルなどは、全国旅行支援専用のスタッフを配置するなど、特別な対応が必要になっています。
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突然の国の方針に対応するためにできること
国による前回の「Go To トラベル」や今回の「全国旅行支援」は、ゲストだけではなく、旅行業界や宿泊業界にとっても恩恵の多い政策といえます。しかし、突然の国の方針は、施設やホテルにとってはその都度対応するのが大変というのが現実です。実際のところ、宿泊事業者と一般消費者への通知タイミングは同時であり、消費者から事業者への問い合わせに忙殺されることも珍しくありません。
方針をよく理解し、ルールに沿った対応が必要な上、スタッフへの教育や人数調整、チェックインの混雑時への対策、さらに急増するゲストからのお問い合わせへの対応など、施策に振り回されることになります。そんな突然の方針に柔軟に対応するためには、何が必要なのでしょうか。全時点でできることは次の2点です。
政府の方針に柔軟対応するには?
- フロント業務オペレーションの見直し
- セルフチェックインシステムの利用
それぞれなぜ対応しやすくなるのか、解説していきます。
フロント業務オペレーションの見直し
まずやるべきことは、フロント業務オペレーションの見直しです。
今回の「全国旅行支援」では、利用するゲストのチェックインは、通常以上に確認事項や記入するべき書類が増え、手間や時間がかかることになりました。
そのため、フロント業務を根本的に見直し、業務の効率化を上げることが大切です。
たとえば、今までの習慣として行っている作業でも、省けることはないか、見直すことはないかなど「業務の棚卸し」をします。
フロント業務の業務の棚おろし(例)
- 口頭で伝えている案内や説明を、紙での「ご案内書」に変える
- チェックイントークを短く出来ないか見直してみる
- 過剰と思われるサービスをやめてみる
- フロント業務がしやすい導線になっているか再確認する
- 業務のペーパーレス化をすすめる
- フロントの空き時間でやるべき作業を決めておく(手持ち無沙汰の時間をなくす)
- フロント以外のスタッフでもチェクイン業務ができるようスキルアップする
- フロント業務をマニュアル化し、統一した対応ができるようにする
このような対策の積み重ねが、フロント業務を効率化します。業務をマニュアル化し統一させることでスタッフの余裕も生まれます。急な国の方針や業務が増えても柔軟に対応できるようになります。
セルフチェックインなどのシステムの利用
フロント業務にセルフチェックインなどのシステムを利用すると、急な政府の方針にも対応しやすくなります。セルフチェックインを導入するには、セルフチェクイン機(自動精算機)とセルフチェクインシステムを利用する方法があります。
セルフチェックイン機(自動精算機)とセルフチェックインシステムの主な違い
それぞれ違いはありますが、ゲスト自らがチェックインを行うので、フロント業務を効率化します。また、電子キー(スマートロック)と連携すれば、物理的な鍵の受渡しがなくなるため、フロントの大幅な省人化・無人化も実現できます。
もちろん、急に決まった国の方針などに完全に対応することはできません。ゲストも慣れていないため、口頭で説明しなければならない事や、必要書類の確認・記入、クーポンの配布など、アナログな作業についてはやはり人の手が必要です。
しかし、チェックイン自体はゲストが行うため、スタッフが対応することは限定されます。さらに、通常の宿泊ゲストへの影響が最小限となるため、混雑などの影響は最小限となるでしょう。
【まとめ】全国旅行支援で分かったフロントの課題
いかがでしたでしょうか。「全国旅行支援」は、宿泊業界や旅行業界にとって経済的な効果が高い一方で、ルールに振り回されて現場が混乱するような問題も抱えています。
これからもあるであろう急な国の方針に対応するために、いまこそフロントオペレーションの見直しや最新システムの導入で、効率の良いフロント業務を見直す時期が近づいてきているのかもしれません。さらにホテルだけではなく、方針を実行するための国全体のシステムやPMS側の仕様なども、柔軟な変化が求められています。弊社のスマートロック「RemoteLOCK」も、フロント業務の効率化に役立つソリューションですので、ぜひ下記の資料もチェックしてみてください。