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公開日2024.03.11

農泊・ガストロノミーツーリズムって? 施設運営のポイントとは

近年、旅行の形態が多様化し、新たな需要が生まれている中、「農泊」と「ガストロノミーツーリズム」が話題を集めています。それに合わせて、地方自治体をはじめ、宿泊業者側もさまざまな取り組みが始まっています。その人気の理由や運営のポイントについて解説していきましょう。

いま話題を集める「農泊」「ガストロノミーツーリズム」とは

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近年、旅行の形態や目的が多様化し、新たな需要が生まれています。この需要に応えるため、宿泊業者側もさまざまな取り組みを行っています。その中で注目されているのが、「農泊」と「ガストロノミーツーリズム」。地方の文化や食文化を楽しむことを目的とする旅行のことです。

具体的にどんなものなのか、そしてなぜ人気があるのか、詳しく解説していきましょう。

「農泊」は農業体験を楽しむ旅行形態

農泊」とは、農村地域において、農家や農園などで宿泊体験を楽しめる、体験型の旅行を指します。宿泊するだけではなく、農業体験、農作物の収穫体験、地元で採れた食材を使った料理や食事体験などが含まれます。また、農業だけではなく、林業や漁業も「農泊」に含まれます。

ゲストは、農作業をすることで自然と触れ合い、思いっきり体を動かし、五感を使うことで、心身ともにリフレッシュすることができます。また、普段の生活とは違う空間の中で、非日常感を楽しむことが可能です。

「ガストロノミーツーリズム」は食文化を楽しむ旅行形態

ガストロノミーツーリズム」は、「ガストロノミー(美食学、美食術)」と「ツーリズム(観光)」を組み合わせた言葉で、その土地ならではの食文化や食材を楽しむ旅行形態を指します。「ただ食べること」が目的の旅行ではありません。食材を生産する農家や加工業者を訪れるツアーや、自ら収穫したものを料理する体験などを通して、地域の歴史や文化、近隣の人との交流などが含まれます。

たとえば、ワイナリーのツアーのあとワインをメインとした食事を楽しんだり、歴史や文化由来の料理を味わったりして「食」を学びます。ガストロノミーツーリズムを提供する側にとっても、地元の資源を活用しながら、収益を上げることができます。

農泊やガストロノミーツーリズムが注目されているわけ

「農泊」が関心をもたれるようになったきっかけは、2016年3月、国土交通省によって「明日の日本を支える観光ビジョン」が策定されたことです。

第1項目として「観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に」という目標が掲げられました。

《明日の日本を支える観光ビジョン:滞在型農山漁村の確立・形成》

訪日外国人旅行者に、美しい農山漁村等で日本の自然や生活を体感し満喫してもらうため、「農泊」推進地域を選定し、地域の情報発信や「農泊」という滞在手段の提供、関連施設の整備等を支援していきます。


目指すべき将来像の例:石川県春蘭の里

「農家民宿による日本らしいおもてなし:田植え、稲刈り、山菜・キノコ採り、 川魚掴み取りなど、昔ながらの農村生活を体験するプログラムを提供」


出展:国土交通省官公庁「明日の日本を支える観光ビジョン施策集

ビジョン自体はインバウンド向けです。しかし、生活のデジタル化が急速に進む中、「自然回帰」の高まりなどを受け、国内での人気も徐々に高まってきました。さらに、社会的にサスティナブル(持続可能)な社会」への関心が高まっており、農業についても、再注目を集めています。その取っ掛かりとして、「農泊」や「ガストロノミーツーリズム」があるといえるでしょう。

農泊DXを推進するLINKED CITYの取り組み

農泊をDX化(デジタル技術の活用)し、地域と企業が共同で地域課題解決や新産業創出を行う取り組みもすでに始まっています。というのも、日本の農家は高齢化が進み、人手不足などで「農泊」を受け入れることが実現的ではない地域も数多くあるからです。高齢化や労働者不足を補うために、企業の協力のもと、新技術を導入し、効率的な生産活動や経営方針へ切り替えなどは、必要不可欠といえるでしょう。

農泊DXの取り組みの一つとして「LINKED CITY」があります。LINKED CITYは、100社近い企業と5つの協会団体が連携し、DXの⼒で地域を活性化するための企業集団です。内閣府やデジタル庁が提唱する「地域の核となる人材創出」と「サテライトオフィス」の実現に向けて、民間一体となってさまざまな取組をおこなっています
(参考:「LINKED CITYとは」)

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農泊やガストロノミーツーリズムの施設運営のポイント

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1章では、農泊やガストロノミーツーリズムについて解説をしました。しかし、農業体験と食事、宿泊施設を提供すれば、「農泊」や「ガストロノミーツーリズム」になるわけではありません。実際に農泊やガストロノミーツーリズムの施設を運営するためには、次のようなポイントを抑える必要がありあます。

施設運営のポイント

  • 地域の魅力を最大限に活かす
  • 地元の人との連携をする
  • サステナブルに配慮した運営をする
  • 最新システムを導入し、新しい価値を提供する

これらのポイントについて、詳しく見ていきましょう。

地域の魅力を最大限に活かす

農泊やガストロノミーツーリズムにとって一番大切なのは、地域の魅力を最大限に活かすことです。他の地域との差別化をPRし、いかに魅力があるかを伝えることも重要です。

たとえば、単に「農作業ができます」「地域の特産品を味わえます」だけでは魅力は伝わりません。ほかの地域とは何が違うのか、どのような特色があるのかをレクチャーし、実際に伝統的な行事や作業を体験してもらうことで、特別感を味わってもらうことができます。

地元の人との連携をする

農泊やガストロノミーツーリズムは、地元の人との連携が欠かせません。実際、ほとんどの宿泊施設や体験プログラムでは、各地の民間団体や地元の有志によって運営されています。

ゲストにとって地域の人と触れ合い、自分の田舎に里帰りしたような、楽しくて充実した時間を過ごせることは、農泊やガストロノミーツーリズムの魅力の一つです。農作業や食事を通して、地元の人と深い交流が満喫できるような場を提供しましょう。それには、宿泊施設側が率先して、地域の人に理解を求め、協力を呼びかける必要があります。

サステナブルに配慮した運営をする

農業体験をするような人は、サステナブルにも興味があります。サステナブルとは、「人間・社会・地球環境の持続可能な発展」を指しており、特に環境問題については厳しい目を持っていると言えるでしょう。「農泊」自体が、地域の伝統・文化や自然環境を保全し、新たな世代へ継承していくプロセスとなるので、自然や環境に配慮した運営は当然です。

たとえば、無理に新しい建物や施設を建設するのではなく、居住者がいなくなった家屋や維持が大変な文化財をリフォームして宿泊施設にしたりするなども、「サステナブル」といえます。

最新システムを導入し、新しい価値を提供する

農泊やガストロノミーツーリズムは、古い価値を押し付けるのではなく、今の時代との共存を目指します。そのため、最新システムを導入し、新しい価値を提供することも大切です。また、高齢化や人手不足を補うためにも、システムの導入は欠かせません。

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たとえば、宿泊施設にはチェックインや鍵の受け渡しが必要になります。ゲストが到着する時間に合わせて、施設側が受付や説明をすることになりますが、高齢者や人手不足の地域の場合、それすらも難しい場合があります。また、宿泊先が農家の一軒家などの場合、都会から来たゲストにとっては、セキュリティ面で不安を感じることもあるでしょう。

そういった課題を解決するのが、チェックインシステムやスマートロックなどの最新ITシステムです。ゲストのスマートフォンでチェックインをしたり、パスワードが宿泊施設の「鍵」となるため、受付に人を在中させる必要がありません。特にスマートロックは、パスワードを知らない人は、扉を開けることができないため、防犯効果もあります。地域の自然な暮らしと新技術の融合こそが、新しい価値を提供し、伝統を次世代に伝えるためにも重要といえるでしょう

農泊やガストロノミーツーリズムの3つの成功実例

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では、実際に農泊やガストロノミーツーリズムで成功している実例をご紹介しましょう。それぞれ特徴が際立っており、多くの人が価値を感じ、何度でも利用したくなる宿泊施設です!

⼤館市まるごと体験推進協議会

伝統芸能や農業体験など取り入れた「滞在・体験型観光」を推進している⼤館市まるごと体験推進協議会は、地元農家のお母さんたちが運営する「陽気なお母さんの店」が中核となっています。

ブランド米の「あきたこまち」の田植え、稲刈りなどの農家体験をはじめ、本場のきりたんぽ作り体験や、そば打ち体験、大館曲げわっぱ作り体験など、雨の日でも対応できる、様々なメニューが選べます。インバウンドにも対応するため、(⼀社)秋⽥⽝ツーリズム観光協会も設立するなど、農泊への取り組みが積極的で、さらなる旅行者の誘致を目指しています。

静岡ガストロノミーツーリズム

静岡ガストロノミーツーリズムは、「日本一豊かな食を生み出す静岡の自然、食文化を育む人々の思いを紐解く旅」がキャッチフレーズ。富士山をはじめとする豊かな山の幸と、駿河の海の恵みを両方味わえる、静岡全域を対象とした美食の旅です。プランの一つ、「匠の歴史と文化が行き交う東海道の食彩を巡る旅」では、創業1596年、東海道を行き交う人々をもてなしてきた「とろろ汁の丁子屋」で、14代目当主の話を聞きながら、昔ながらの「とろろ汁」を味わうことができます。

「水の食彩を巡る旅」では、浜名湖周辺の養殖場の見学や水産業について学んだり、本場の「うなぎ」や「三ヶ日みかん」を、生産者のお話とともに楽しむことができます。ほかにも、様々なコースがあり、鈴岡の食文化と歴史を満喫することができます。

兵庫県豊岡市 一棟貸切のお宿 KAZABI

「一棟貸切のお宿 KAZABI」は、兵庫県豊岡市但東町にある、1日1組限定の「田舎暮らし体験」ができる一棟貸し宿泊施設です。茅葺屋根の母屋と小さな離れがあり、静かで穏やかな景色と、どこか懐かしく心地よい空間を存分に楽しむことができます。

昔ながらの宿泊施設ですが、屋根裏部屋には「ワークステーション」として、仕事ができる環境を完備。ローデスクに座椅子、エアコン、無料Wi-Fi、加湿空気清浄機、インクジェットプリンターなども整っており、非日常感を味わいながら、仕事をすることもできます。

近くには「シルク温泉」があり、7000万年前の花崗岩と4億5000万年前のミネラル豊富な蛇紋岩の境界から湧出するシルクの湯を堪能。お食事処では、地元産但馬牛や八鹿豚を使ったお食事や、手打ち十割そばなどを楽しむことができます。

【まとめ】農泊・ガストロノミーツーリズムの施設運用のポイント

いかがでしたでしょうか。
注目を集めている「農泊」や「ガストロノミーツーリズム」は、地域活性化に貢献します。地域に人を呼び込むことで、雇用を生み、経済も循環します。反面、旅行者を取り込みたいと考えつつも、高齢化や人手不足に悩む地域も少なくありません。そういった課題を解決するためには、最新のITシステムなどを導入し、効率化を促進することも大切です。

地域の自然な暮らしと新技術を融合することで、伝統を次世代に伝えることが容易になるでしょう。
参考になりましたら幸いです!

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